無料で読める19世紀の手芸本が、日本のマクラメに与えたもの
皆さまこんにちはっ、手芸愛好家の owarimao です!
先週は、19世紀に作られた有名な手芸の本が、ネット上で無料で読めることを書きました。↓かなりの反響をいただきました。
ネット上にあるのは英語版ですが、原書はフランス語で、1886年に出ています。さまざまな手芸が解説されており、マクラメもその一つです。
下はマクラメを作るときに土台にするクッションの図。一見写真のようにも見えますが、エッチング(銅版画)です。この技法は西洋で16世紀ごろから発達し、きわめて細密な、芸術的にもすぐれた作品が多く生み出されました。

by Thérèse de Dillmont
19世紀になると写真術が発明され、しだいに銅版画にとってかわるようになりました。けれどもこの本が出たころには、手芸本の挿画としてはまだまだ銅版画が主流だったようで、写真と見紛うばかりの精巧な図版がたくさん載っています。すべて人の手で描かれたとは信じにくいほどで、伝統の凄みを感じます。
ところでさっきのマクラメクッションの図ですが、まったく同じ図が、昭和初期のマクラメ本にも出ています。「フランスではこのようなものが使用されている」という解説つきで。

当時の日本の手芸家たちも、私たちがネットで見るのと同じ本を手に入れて、参考にしていたことがわかります。
昭和初期の「第一次マクラメブーム」のときには、複数のマクラメ指導者が、それぞれ独自に考案した「マクラメ台」や「ボビン」を売り出していました。まるでそれらを買わなければちゃんとした作品は作れない、みたいに。本当はボビンなんて必要ないし、マクラメ台もありあわせのものでOKなんですが。
『Encyclopedia of Needlework 』を見ていると、どうして当時の先生たちがそれらの道具にこだわったか、想像がつきます。西洋の権威ある本に「こういう道具がある」と書いてあることから、「これが正しい」「こうでなければいけない」という思い込みが生じたのでしょう。そして「うちのやり方こそ正統ですよ」と権威づけ、ライバルとの差異化を図る意味で「ちゃんとした道具」を売り出したのだと思います。
西洋の本を真似している点はほかにもあります。下の2枚の図を見比べてみると……


よく似ていますね。日本の図のほうがはるかに素朴ですけれど、頑張って真似して描いている感じがします。

ボビンレースの影響かも

手元にある昭和初期のマクラメ本をよく見ると、異なる著者の本に、まったく同じ模様の作品が載っていたりします。

これはたぶん、同じ外国の本を参考にしているからだろうと、前から思っていました。で、Encyclopedia of Needlework を見てみると、案の定同じ模様が載っていました。

そのうち作ってみよう
当時の著作権法はどんなだったか知りませんが、今よりずっとユルかっただろうことは想像がつきます。昔の本を見ていると「これは今だったらアウトではないか」と思うこともちょいちょいあります。

「草履表」も当時人気のアイテム
マクラメの編地を下駄屋さんに持っていくと、草履に仕立ててくれた

DMC(フランスの有名な糸メーカー)の糸が推奨されている
「マクラメ100年プロジェクト」などと称して、昔の本を見ながらマクラメを作っています。でも本当は100年どころじゃないですね。100年前の日本のマクラメは、19世紀のヨーロッパと地続きだったんだと思いました。手芸の歴史は長く、層は厚いです。

だいぶ進んだけどまだ完成していない
もうちょっとがんばれ
