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#151 測れば変わる──製造業の物流DX・輸配送:積載効率が利益を左右する――「走った距離」ではなく、「使えた時間」を測ろう。

■ はじめに:積んでいるのに、利益が出ない。

データは揃っているように見えるが、使える形ではないのか、それとも見ていないのか――そこが議論の出発点である。

「積載率80%。発着時間も、輸送コストも揃っています。」
それでも、なぜか利益が上がらない――。

多くの製造業で、いま似たような違和感が生まれています。

数字はある。帳票も揃っている。

けれど、その数字が「判断」にはつながっていないのです。

積載率が高くても、実はその車両が“使い切れていない”ことがあります。

積んでいる時間より、止まっている時間のほうが長い。

あるいは、中継や積み替えで同じ荷物を何度も触っている。

測っているようで、測りきれていない。

本当に見るべきは、「走った距離」ではなく、「使えた時間」。

トラック1台をどう使うかが、利益率を決めているのです。


■ 積載効率とは──数字の“動き方”を測る指標

国土交通省の定義では、積載効率=積載率×実車率が基本です。

つまり、トラックの“働きぶり”を表す指標です。

積載率という言葉は、トラックの積載可能量に対して、どれだけ荷物を積んだかを示す「荷台の埋まり具合」です。

けれど、それだけを見ても輸送の効率は判断できません。

なぜなら、積んでいる時間動いている時間が見えていないからです。

そこで必要になるのが「積載効率」という考え方です。

これは、積載率 × 実車率(積んで走った時間 ÷ 稼働時間)で求められる指標。

単に“どれだけ積んだか”ではなく、“積んだ荷物をどれだけ有効に動かせたか”を表します。

たとえば積載率が80%でも、半日待機して動かなければ積載効率は40%以下に落ちます。

逆に積載率60%でも、帰り荷を確保して連続稼働できれば、積載効率は80%を超える。

積載率は静止画、積載効率は動画。

この指標を測ることで、トラック1台が“どれだけ働けているか”を、初めて正しく捉えられるようになります。


■ まず取るべき3つのデータ

荷待ちや荷役のロス時間も、積載効率を左右する大きな要素です。

止まっている時間=使えない時間として捉え、改善対象に含めることで、より実務的な分析につながります。

たとえば家庭で言えば、冷蔵庫の中を整理するようなものです。

どこに何が入っていて、どれだけ残っているかを把握するだけで、ムダな買い物や取り出しの手間が減ります。

現場のデータも同じで、トラックの“動き”を見える化することで、必要な改善ポイントが自然と見えてくるのです。

積載効率を高めるには、感覚ではなく「どの動きを測るか」を決めることが大切です。

積載率のように“結果の数字”ではなく、トラックがどう動き、どこで止まり、何を積んでいたかを見える化する。

そのために必要なのが、次の3つのデータです。

ここが、現場を変える最初の3ステップです。

1️⃣ 区間データ:どこを走り、どれだけ拘束されたか
出発地と到着地だけでは、途中に生まれるロスが見えません。

中継・回送・渋滞・進入待ちなどルート上の“拘束時間”を区間単位で記録します。

距離は補助変数として保持しつつ、評価の主軸は時間(拘束)に置きます。→ 時間起点でムダを測る。

※ 料金体系(個建/車建/時間建/距離建/混在)に応じて、距離・時間の重みづけを変えるのが実務的。

まずは拘束時間原価(円/拘束時間)を基準に整えると比較が容易になります。

2️⃣ 稼働データ:いつ動いて、どこで止まったか
発着時間だけでは、待機や積み込みの“止まっている時間”が見えません。

GPSやTMSのログから稼働・停止を分け、ロス時間を定量的に分析します。→ 時間のムダを測る。

3️⃣ 積載データ:どれだけ積んで、どう変化したか
荷姿・重量・積み残しを連続的に記録し、“いつ・どこで・どれだけ空いたか”を把握します。→ 空間のムダを測る。

この3つのデータを掛け合わせると、時間を主軸に、区間(距離・道路条件)×稼働(拘束/待機/実走)×積載(容量・荷姿)を重ねる“動きの三次元モデル”が生まれます。

これにより、車両ごとの使われ方が明確になり、積載効率を正確に可視化できます。


■ 用語メモ:拘束時間と実車時間の定義

  • 拘束時間:点呼開始から点呼終了までの運行拘束時間(法定休憩・待機を含む)

  • 実車時間:拘束時間のうち、積載状態での走行・作業時間

  • 拘束時間原価(円/時間):固定費+人件費+車両費+共通費を拘束時間総量で割った値

これらを明確に定義しておくことで、評価指標やTMS設定時の誤差を防ぎ、現場・経営双方で一貫した分析が可能になります。


■ データが“改善の順番”を教えてくれる

たとえばA工場では、同じ路線を走る2台のうち1台だけ待機時間が突出していました。

現場を調べると、積み込み場の段取りに小さなズレがあり、それを直すだけで拘束時間が20%改善したのです。

「同じ距離を走っているのに、あの車両だけ時間がかかるんです」――そんな現場の声が、分析を始めるきっかけになる。数字の裏には、必ず人の動きがある。

積載効率を可視化すると、ムダの構造が見えてきます。ここで重要なのは、「どの課題から手をつけるか」を決められることです。

闇雲な改善ではなく、データが“順番”を教えてくれます。

たとえば、ある工場では同じルートを2台で走っていましたが、拘束時間を分析すると1台で十分回せることがわかりました。

こうした改善の瞬間に、データの価値が現れます。

1️⃣ 車両が合っていない
小型車で往復、大型車でスカスカ。

積載率は良くても、距離や時間を見れば非効率。

積載効率で見ると、最適な車両配置が見えてきます。

2️⃣ 中継が多すぎる
経由拠点が多いほど、待機と積み替えが増えます。

ルート全体を俯瞰すれば、“止まっている構造”が見える。

距離ではなく時間で評価する視点が重要です。

3️⃣ 戻り便が空いている
片道で終わる輸送は効率を半減させます。

ここで鍵を握るのが、TMS(Transportation Management System:輸配送管理システム)

TMSは配送ルート・車両・荷物・時間を一元管理し、区間・稼働・積載データを結びつけて可視化します。

空車発生の要因を特定し、帰り荷・共同配送・ルート再設計などの改善策を数値で選べるようにします。

改善は順番です。

  • 車両選定(サイズ・車種)

  • ルート設計(中継削減)

  • TMS導入・帰り荷連携・共同配送

測ることは、改善の順番を知ること。

順番を間違えなければ、DXは確実に進化します。


■ 数字にも、“流れ”を。

積載率、実車率、積載効率。

どれも、動きの記録にすぎません。数字は過去の断片です。

そこに“流れ”を与えなければ、改善は続きません。

データは本来、流れるものです。

現場の動きとともに変化し、日ごとに姿を変える。

定期的に見返し、変化の方向を読み取ることが「測る力」です。

積載効率も固定値ではなくリズムです。

距離・時間・空間の使われ方が整い、トラック1台の動きが滑らかになる。

その変化を見守ることが、DXの継続です。


“数字にも流れを”。

それは、データを「管理の道具」から「学びの鏡」に変えるということ。

測る目的は、結果を並べることではなく、現場が日々どう変わっていくかを見つめることにあります。

数字を流れとして捉えたとき、改善は単発の施策ではなく文化になります。

そしてその文化こそが、物流DXを支える本当の基盤です。


▶ 第3回につづく

「保管:在庫精度は信頼の源」
――動かす物流から、ためる物流へ。数字が語る“信頼の循環”を次回は追っていきます。


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小濱 裕士|MapDX  物流・モビリティ業界向けのDX推進コンサルタント|防災士 ありがとうございます。励みになります