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現場でしか学べない事④〜同じ現場を見ても、問題点に気がつく人と気がつかない人の違い〜


第1章 経験談

 同じ物や光景を目にして、すぐに問題点に気がつく人がいる。
 あなたの身の回りでこんなことはないだろうか?
 「提出した資料を全て読み切る前に、内容に不備があると判断される。」
 「売り場をみて、即座に陳列を直す」
 「入荷した部品を見て、すぐに仕様の確認をし直す」
 「稼働中の工作機械を見て、何かに気づきすぐに止めて整備を始める」
 など。そしてベテランの方が判断し、手直ししたものは、大抵うまくいく。

 現在私は、看板の製造・設置やドアプレートの製造を行っているが、社内の設備で製造できないものについては、他の企業に製造をお願いしている。
 その際に、納期が短いこともあり図面の行き違いや勘違いなどで想定と異なる仕様で出来上がってくることがあるのですが、熟練者は完成品を見ただけで、「これは取り付けられない」とすぐに気がついたりする。

 なぜ、同じ物を見ているのに、熟練者は異常に気づき、そうでない人は気づかないのか?

第2章 なぜ起きたのか

 私は、違和感があってから、少し時間が経って原因に気がつくのですが、逆に説明されるまで全く気がつかない人もいます。何故でしょうか?
 熟練者に言わせると、いつもと違うと思う情報は、

  • 穴あけ時の音が違う(ドリルの歯が欠けていたことが判明)

  • レーザー加工中、臭いが違う(材料の裏側がごげていたことが判明)

  • 丸のこでの加工中、加工感(手応え)が違う(歯の切れ味が落ちていたことが判明)
    などと言います。そしてその「違和感」がある状態を、熟練者によっては「気持ちが悪い」と言う。

 これらは、製造業の話ですが、他の職種でも、

  • メールの文面がいつもと違う

  • 報告書の文面がいつもと違う

  • 会議での発言がいつもと違う

  • 報告の仕方がいつもと違う
    などの「違和感」があるかもしれません。

 では、何を感じ取っているのか?
 それは、本来なら「正常」であるべき状態と無意識に比較し、違いがあると「違和感」や「気持ち悪さ」に現れて、警鐘を鳴らしている。
 そして、熟練者が言語化しない「経験」に基づいて、行動して修正している。

 熟練者はそれを「経験」と呼ぶが、私は単なる「経験」ではなく、経験に裏付けられた「想像力」と表現している。
 本来あるべき「正常」な状態なら、どのようにあるべきか?を「想像する力」が必要になる。
例えば

  • 新人が完成品を見る

  • 「完成している」
    しか見えない

  • 熟練者が完成品を見ると

  • 取付穴に「違和感」がある

  • 確認したら、この穴位置だとビスが入らない

  • 取付できるように追加加工が必要

  • 追加作業によって他の作業が遅れる

  • 納期に影響する
    と頭の中で「未来」を再生している。

 つまりここで書いている「想像力」とはこの後の事態を予測しているのです。

 問題に即座に気がつく人と気がつかない人は下記のような差がある。

気がつく人

  • 正常な状態を知っている(基準となる状態を把握している)

  • 前工程を想像する(ここに至るまでに何が起こったのかを想像する)

  • 後工程を考慮する(この後、どうゆう状態なら作業しやすいかを想像する)

  • 人の動きを見る(現状で何が起きているのかを想像する)

  • 最悪のケースを想像する(目の前の作業で何が起こると問題となるのか想像する)

気がつかない人

  • 目の前の作業しか見ていない

  • 指示されたことだけやる

  • 現物だけ見ている

  • その先を考えていない

  • 問題が起きてから考える

第3章 どう改善したのか

 地道に経験を積むしか方法が無いのでは、時間がかかる。
 かといって、熟練者がつきっきりでは、生産性も落ちる上にどこまで指導すればよいかきりがない。
 では、どうするべきか?

 それは、常に考え続け、作業中に感じた「違和感」を放置しない。

 例えば、自分の担当以外の工程を「自分が担当する」と仮定して、何が最善かを考え続ける。
 そして、「違和感」を感じたときに、漠然としていて対応方法が分からなくとも、下記のような「違和感の記録」をとってみてはどうだろうか?
 「違和感 記録ノート」

  • なぜ違和感を感じたのか
      何を感じたか?何が気になったのか何でも良い。

  • 結果どうだったのか
      その日に問題がなくても、記録する。(時間が経ってから、問題が発覚することもあるので)

  例えば
  例1)違和感:「なんか音が変だった」
     結果 :その日は何も起きなかった。
         ↓
         翌日ベアリング破損
  例2)違和感:「何となく大きさが怪しいと思った」
     結果 :図面ミスだった

 最初のうちは、「なんとなくそうおかしいと思った」ぐらいしか書けないかもしれないが、繰り返しているうちに「○○と感じた」と書けるようになってくる。
 そして、こういう経験を記録し、蓄積していけば、「違和感」の精度が上がり、先が予測できるようになる。

第4章 本質は何だったのか

 結局、熟練者はこのあとどうなるのか「想像」し予測した結果、問題が起こりそうな状態を「違和感」や「気持ちが悪い」と言っているのである。
 まだ、問題が起こっていないために、明確な言語化ができず、このような言葉を使っているだけなのだ。

 何が正常な状態なのかを把握し、何が正常なのかを常に考え、この後を想像する力が必要。

 問題点を見出す人は、「今」ではなく、「未来」を見ている。
例えば、

  • この部品で組めるか?

  • この図面で作れるか?

  • この段取りで納期に間に合うか?

  • このまま放置したら何が起きるか?
    「未来」を見ているから、「今」が正常かを判断している。
    だから問題に気づく。

 だからこの問題は、「障害対応」などの文書化された内容ではすべてが伝わらない。
 一部の熟練者に作業が集中し、属人化の温床となる原因の一つでもある。
 これは、以前書いた「属人化シリーズ」の記事でも触れています。

 熟練者が見ているのは「今」の作業だけではなく、その先に想定される「未来」も同時に見ている。

まとめ 読者への還元

 すぐに問題点に気がつく人は、特別な力があるわけではない。
 「本来あるべき状態」を知り、現状と照らし合わせ、この後どうなるのかを常に考え続けているのである。
 現場では、ただ作業するだけではない。ときには、想定外の事態に遭遇することもある。
 そんなとき、熟練者は、現状を把握し、そのままでは何が起こるのかを考え、「本来あるべき状態」に軌道修正するためにはどうするべきかを考え続けているだけである。

 それこそが、問題点に気がつく力の正体なのだ。

 常に考えながら手を動かすのは、非常に精神力が必要だが、未来に起こるかもしれないトラブルを未然に防ぐためには、考え、予測し続けていくことが重要である。

前回記事は、こちら

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