ベトナム・ヴィン市観光ガイド🇻🇳|ハノイから飛行機で約1時間、歴史・ローカル・グルメを楽しむ週末旅に!
何かと「通り道」扱いされるゲアン省の省都ヴィン市。
面白いところばかりなのに悔しいっ!
ヴィン市は鉄道・航空で各地とつながる“移動の要”のみならず、歴史好きにはたまらない革命史と文化遺産が眠っている街。

ハノイからは飛行機で40分、寝台列車で一本、朝起きれば到着しているのでちょっと変わった週末旅やハノイの喧騒を離れたい人にもいいかもしれない。
本記事では「ヴィンはただの地方都市にあらず!」ということを伝えるべく、ヴィン市の観光スポットを歴史と紐づけながらまとめてみようと思う(なんと6000字を超えてしまった)。ベトナムの歴史に少しでも興味がある人や、ハノイやホーチミン市とは違う地方都市の空気を味わいたい人、ローカルなものが好きな人の参考になれば幸いである。
ヴィン市とは?
ベトナムを南北に貫く主要ルート上に位置するヴィン。古代から戦略的に極めて重要な土地で、丁・黎・李・陳といった歴代王朝は、この地を守るために有能な将軍を配置し続けてきたとされる。

ヴィンの歴史の中でも特に印象的なのが、18世紀の西山朝の時代。英雄・クアンチュン帝(グエン・フエ)は、ヴィンに新たな都「鳳凰中都」を築こうとした(クアンチュンが亡くなることで頓挫する)。
19世紀末からフランス統治下に入ると、ヴィンは急速に都市化。港、工場、商社、銀行が集まり、フランス人、華僑、インド系商人が行き交う商業都市へと変貌した。やがて、フランスの過酷な搾取から、愛国運動・革命運動の拠点になる。
ベトナム戦争期、ヴィンは北部でも特に激しい爆撃を受けた都市のひとつで街はほぼ完全に破壊された。

終戦後は、東ドイツの支援とソ連の都市計画の影響を受け、広い道路と集合住宅を持つ都市として再建される。ヴィンの街並みがどこか無機質な「社会主義都市らしさ」を感じさせるのは、この復興の歴史が背景にあるためらしい。
ヴィン市街ぶら
ホーチミン広場|まず歩きたいヴィン市の中心スポット

ベトナム人にゲアン省について尋ねたら、多くの人が「ホーチミン主席が生まれた省」と答えるだろう。ホーチミン主席は、ゲアン省ヴィン市から車で約20分の貧しい農村で生まれる。一時期はヴィン市のフランス植民地政府が運営する学校でも学んでいた。
ヴィン市にはホーチミン主席を記念した広場があり、ベトナムで一番大きなホーチミン像が設置されている。朝や夕方にはランニングや体操などを楽しむ市民であふれかえり活気のあるエリアとなっている。

中央公園には、ハノイのホーホアンキエム湖を模した湖もあり、周辺の喫茶は茶のしばき甲斐があるスポットとなっている。

ヴィン古城|五稜郭を思わせる歴史スポット

この、函館の五稜郭をどこか彷彿とさせる建造物が、ヴィン古城である。五稜郭もヴィン古城も、近代の西洋式要塞建築の流れをくむものであり、ともにフランスの軍事技術者ヴォーバンの築城思想の影響を受け、城壁や突出部を幾何学的に配置して防御力を高める造りになっている(ヴォーバンが建設した城砦はフランスの世界遺産として登録されている)。
ベトナムには、ヴィン古城以外にもヴォーバン式の影響を受けた城塞がいくつか残っている。たとえば、四角形のソンタイ古城やクアンチ古城、不整六角形のディエンカイン古城がその代表例である。さらに、王都フエの京城も、外郭にヴォーバン式要塞の特徴を取り入れた城郭として知られている。

ヴィン古城は、ベトナム最後の王朝であるグエン朝の初代皇帝・嘉隆帝の時代に建設が始まった要塞である。しかし、フランス植民地時代には政治犯を収容する場としても使われた。植民地期のベトナムには、政治犯を収容する刑務所が各地に設けられており、ハノイのホアロー刑務所などがよく知られているが、ヴィン古城もまたその一つであった。

その後、ベトナム戦争中にはアメリカ軍の空襲を受け、古城の建物の多くは破壊された。現在では、3つの門と堀が、往時の姿をかろうじてしのばせている。
下の写真は、ゲアン古城の正門。


門の両脇には、
「鴻嶺藍江如在左右」
「黃童白叟怡然往來」
と漢文が彫ってある。
「鴻嶺(ホンリン)の山並みと藍江(ラム川)が、左右に寄り添うようにある。」
「子どもから白髪の老人まで、のどかに行き来している。」
という意味である。現地ではこの2句は、表向きは「平和で人々が行き来する」という褒め言葉に見せつつ、「子ども(=未熟者)=売国の輩」「白い=フランス」と、当時の状況をふまえて フランスやその協力者を皮肉っている、という解釈もあるようだ。
ゲティン・ソヴィエト博物館|革命史がわかる博物館

ヴィン古城の中には、2つの博物館がある。ゲティン・ソヴィエト博物館とゲアン博物館である。ベトナム革命史をまったく知らなくとも、展示が英語併記で見やすく背景を知ると街歩きが一気に深くなるため、ゲティン・ソヴィエト博物館への訪問をお勧めする。
ゲティンソビエト博物館は、ゲティン・ソヴィエト運動に関する資料が充実している博物館である。初めて「ゲティン・ソヴィエト運動」を聞く人も多いと思うので簡潔に説明する。
ゲティン・ソヴィエト運動(Xô Viết Nghệ Tĩnh)とは、1930年から1931年にかけてフランス植民地支配に対してゲアン省とハティン省の農民・労働者・知識人が起こした大規模な反植民地蜂起運動である。名称の「ゲティン」は当時は一つの省だったゲアン(Nghệ An)とハティン(Hà Tĩnh)を合わせた呼称、「ソヴィエト」は評議会という意味である。

フランス植民地時代の1929年から30年にかけて世界恐慌が起こるとベトナムの経済は大打撃。ベトナム全土で農産物価格の急落や重税に苦しむ農民の不満が高まっていた。ゲティンでは慢性的な飢饉まで発生するような過酷な状況であった。ゲティンの人々はあまりの現状に耐えかね大挙して一斉蜂起、現地行政を倒し、なんと農民や労働者が自ら政府を立ち上げ自治を行うことまで成功する。重税廃止、地代引き下げ、地主の余剰米の分配、土地の農民への再分配、識字教育の推進など革新的な政策を打ち出した。
ゲティン・ソヴィエト運動はベトナム中部一帯で急速に広がり、植民地権力を震撼させる規模へ発展する。

しかし、フランス植民地当局は1930年秋頃から本格的な鎮圧に乗り出すこととなる。フランス軍は、デモ隊に対する航空機による機銃掃射と爆撃、村々を焼き払い、見せしめの処刑などが行われることとなる。1931年初頭までにすべての農村ソビエト政権は崩壊し、運動は武力で徹底的に弾圧された。

この弾圧により1000人以上が逮捕、そのうち約400人に長期刑、指導者を含む80人余りが死刑判決を受け処刑される。さらに推定数万人が各地の刑務所や収容所に送られ、その劣悪な環境で1300人以上の男女や子供が病死するなど犠牲は甚大であったとされる。
ゲティン・ソビエト運動の重要性は、「初めて大規模に立ち上がった」→「自分たちで社会を動かしてみた」→「その経験が後の独立革命につながった」という流れにある。ベトナム革命史では、単なる地方事件ではなく、後の独立と革命の出発点の一つとして非常に重く見られているのである。
クエット山とクアンチュン王廟|街を見渡せる展望スポット

ヴィン市を広く一望できるのがクエット山である。そしてその山頂に厳かな雰囲気が流れるクアンチュン王廟がある。
祀られているのはグエン・フエ(Nguyễn Huệ)、のちに「クアンチュン王(皇帝クアンチュン)」と呼ばれるようになった、18世紀後半のベトナムの英雄である。当時のベトナムは、国内は混沌としており、名目上の政府である黎朝がありつつ、北では鄭氏、南では阮氏が力を持っていた。グエン・フエは兄弟たちとともに、こうした古い支配体制を打ち破り、分裂していた国を再び一つにまとめようとした。
特に有名なのは、1789年に清(中国)の軍を破ったことである。この勝利は、ベトナムで「国を守った大勝利」として今でも強く記憶されており、ホーチミン市にもグエンフエの名を冠した通りがある。
そんな英雄、グエンフエは、ゲアン省がベトナムのほぼ中央にあり、北と南の両方を抑えやすいという戦略的な理由から、ヴィンをベトナムの首都にしようとした。結局、グエンフエが亡くなったことによりヴィン首都化計画は潰えるのだが、ヴィン市民にはグエンフエが深く心に残っているのである。
ヴィン市場|ローカルな暮らしを感じる市場

海の幸、山の幸が一堂に会するのがゲアン省でもっとも大きなマーケットであるヴィン市場である。特に朝と夕方はかなり盛り上がる。欲しいものは探せば大体ここにある、と言っていいだろう。



あんまマッサージ|歩き疲れを癒す腕利きのマッサージ
ヴィン市には、視覚障害のある方々を対象とした職業訓練の一つとして、マッサージの訓練所がある。そこで技術を学んだ人たちが、市内各所でマッサージ店を営んでいる。
実際に受けてみると、ツボというツボを的確に押してくる、悶絶するほど痛いこともある、でも気持ちがいい。正直、ハノイ旧市街のマッサージ店よりも腕がいいのでは……と思ってしまうほどで、しかも料金も良心的。マッサージを受けているとぞろぞろと地元の老若男女が「やってる~?」と入ってくるので地元でも人気なのだろう。

ヴィン市内を歩き回って疲れたときには、ぜひ試してみてほしい。
ベトナム語が話せなくても、Google翻訳などを使えば十分にコミュニケーションは取れるので心配はいらない。Googleマップで「tẩm quất người mù」と検索するといくつか店舗が出てくるので、気になるお店を訪ねてみるとよいだろう。
街ブラTips
ヴィン市内はGrabやXanhタクシーが利用できる。また、レンタルバイクもあるので移動も便利。
ヴィン市で食べたい名物グルメ
ウナギスープ(Súp lươn)
ヴィンの食は「うま味×香り×辛味」が特徴。日本人には“出汁文化”との相性が良い一方、唐辛子や香味野菜の強さが出る店もあります。
やはり定番は、「Súp Lươn(ウナギスープ)」。朝の定番として大人気。

レストラン:HỒNG SƠN (đặc sản lươn xứ Nghệ)
レストラン:Cháo lươn Bà Ngọ
チャオカイン(Cháo canh)
うどんに似た小麦粉麺と豚骨をじっくり煮込んた優しいスープの麺料理。

レストラン:Quán Ăn Tuấn Mai
バインムオット(Bánh mướt)
朝食で人気の豚肉やきくらげなどを包んだ、米粉の薄い蒸しクレープ。

レストラン:Bánh mướt Lan Thanh
レストラン:Bánh mướt Thu Bình (Chuẩn vị)
バインダースックヘン(Bánh đa xúc hến)
香ばしく焼いた胡麻せんべいをスプーンのように使い、炒めたシジミをすくって食べる料理。

レストラン:Quán Xưa(「Hến xào xúc bánh đa」という名前でメニューにあります)
他にも飲み屋さんなどで一般的に見られますので店員さんに聞いてみてください。
バインベオゲアン(Bánh bèo Nghệ An)
タピオカで餡を包み、もちもち食感がくせになるゲアン版バインベオ。

レストラン:Bánh bèo nhàn huế
レストラン:Bánh bèo dì hằng
クドー(Cu Đơ)
ピーナッツの香ばしさとと麦芽糖の優しい甘さが特徴のゲアン伝統菓子。ゲアンお土産にもぴったり!

お店:Keo Cu Do Que Quy
お店:Văn Minh - Lò sản xuất kẹo cu đơ gia truyền Bà Nghi
ヴィンをから行ける日帰りスポット
ヴィン市は周辺の観光スポットへのアクセスもかなり良く、様々な旅の選択肢がある。これから紹介するスポットはヴィン市から日帰りも可能である。
クアロービーチ――ゲアン随一のビーチリゾート

ヴィン市内からタクシーで約20分。気軽に行けるビーチリゾートがクアロービーチだ。遠浅で波も穏やかなので、のんびり海を楽しみたい人にぴったり。周辺には中級ホテルから高級ホテルまでそろい、手ごろな値段でシーフードも味わえる。2025年にはテーマパーク「VinWonders Cửa Hội」もオープンし、ケーブルカーで沖にある島へ渡ることもできる。

キムリエン村――ホーチミン主席の生家を訪ねる

ヴィン市からタクシーで20分ほど走ると、ホーチミン主席が生まれ育ったキムリエン村に着く。ここには、父方と母方それぞれの村があり、どちらも村全体が大切に保存されている。
ホーチミン主席が生まれ、5歳まで過ごしたのは、母ホアン・ティ・ローン(Hoàng Thị Loan)の家。その後、フエでの生活を経て、11歳から15歳まで再びこの地に戻り、父グエン・シン・サック(Nguyễn Sinh Sắc)の家で暮らした。現在ベトナムの紙幣50万ドン札の裏面に描かれているのはこの父の家である。キムリエン村は、ゲアン省にとって重要な場所であるだけでなく、ベトナム全体にとってもきわめて神聖で、特別な意味を持つ遺跡である。ベトナムの歴史やホーチミン主席の生涯に少しでも関心があるなら、ぜひ訪れてほしい。
ホーチミン主席の生家観光ガイドはこちら!
ダイテュエ寺院――圧倒的な絶景!

私が感動しお気に入りの場所がダイテュエ寺院(Chùa Đại Tuệ)。とにかく、とにかく景色が美しい。ヴィン市からタクシーで30分。ヴィン市や隣のハティン省まで見渡せる山の上に建つ。特に平原を蛇行するラム川は雄大の一言。ダイテュエ寺院「大いなる知恵」を授かる寺として知られ、ベトナム国内の寺院の中で最も多くの対句(門や柱の左右に一対で掲げられる飾り文句)が刻まれていることでも知られています。学業成就や仕事運向上を願う参拝者が絶えない。

タインチュオン茶畑――茶の島を小船でめぐる

ヴィン市からタクシーで約1時間。ここはかつて農業用ダム建設で沈んだ地域なのだが、小高い丘だけ湖から頭を出し、そこにお茶が植えられたことで、まるでお茶の島がポツポツと浮かんでいるような不思議な景観となった。小舟での島めぐりが面白い(1~2時間程度、一人おおよそ150.000VND)。船屋はいくつかあるが、こちらののホームステイのオーナーがある程度英語が話せるのでお勧め。

プーマット国立公園――ゲアンの秘境!圧倒的大自然

タクシーまたはバスで約2時間半。北ベトナム最大の面積とベトナム随一の生物多様性を誇る国立公園。高さ150mの滝であるケケム滝が一番の見どころ。時間に余裕がある人はぜひプーマット国立公園にも足を運んでいただきたい。楽しみ方や行き方は下の記事にまとめてますのでご参考ください!
終わりに
ぜひ、ヴィン市に立ち寄ったらいろいろと巡っていただきたい。
ご連絡いただければ旅行の色々とご相談にも乗れると思いますのでお気軽にどうぞ!
ではでは。
