二次元の水平線 七
土手を降りてからどれくらい経っただろうか。乃木は次の煙草に火をつけていた。そんな乃木を心配そうに藤原が声をかけた。
「乃木先生、ちょっと吸い過ぎじゃないですか?」
「別にいいじゃないか!今は吸いたい気分なんだよ!」
乃木は上から言われたような気がして苛立ちを覚えた。
「髪も髭もだいぶ伸びましたね、ちょっと仙人みたいですよ」
藤原は少しバツが悪いと思いながら、このまま沈黙に向かうことが耐えられずに冗談ぽく続けた。
「さっきマンションの住人にも白い目で見られたけど…そんなに変か」
「えっと…そうですね…正直、外出されるときはもう少し整えた方がいいと思いますよ」
言いにくいが藤原はやんわりと答えた。
「あっそう」
乃木は不貞腐れるように返した。藤原はこれ以上喋るとさらにご機嫌を損ねてしまいそうだと思い次の言葉を発するのをためらった。
話の流れで昨日の原稿に対して提案をしていこうと思っていたが、どうやら自分がメールで指摘したことに対して憤りを感じているような気がして時期尚早だったと後悔するばかりだった。
乃木が次の煙草に火をつけて丁度吸い終わった頃に河川敷の目的地に到着した。藤原が会話の切り出しをどうするか迷っていると乃木が先に口を開いた。
「始まりのシーンは絶対!変えたくないんだよね」
「いいと思います」
色んな提案をしていきたいの抑えつつ、乃木の反応を確認することにした。
乃木は前方の背丈が膝上程の草むらを指しながら
「あの辺りで橋に対して30度くらいの方向を向いて立ってみて」
藤原は乃木の言う通り草むらに入り立ってみた。
「こんな感じでいいですか?」
「そううだね、イメージ作りをしたいからそのまま橋の方を向いてみてくれないか。」
「わかりました」
乃木の指示通りに橋の方を向く藤原の背中を見ながら乃木はリュックからハーピーナイフを取り出し、高鳴る心臓の鼓動と押さえきれない衝動のまま藤原の左肩をつかむと同時に肝臓の辺りを何度も刺し続けた。
藤原は右の背中に冷たさを感じるとともに激痛を感じた。逃げようとしつつ右に振り返ろうとしたが、そのままショック状態に陥り前のめりに倒れた。
乃木は何とも言えない達成感と共に異常なまでの高揚感に包まれていた。
ナイフについた血を確認した後、握っている手は離され血まみれのナイフは草むらに潜るように落下した。
ポケットからセブンスターの箱を取り出し、蓋を開け中指ではじいて出てきた煙草の1本を口にくわえた。鉄臭い血の味がした。煙草に火をつけ、ゆっくりと肺に吸い込んで大きく吐き出した。手に持った白い煙草のフィルターは真っ赤に染まっていた。もう一度吸い込み吐き出した煙が空に登っていくのと同じタイミングで突然雨が降り出した。
藤原が雨が降ると言っていたことを思い出しながら、もう一度煙草を吸いこんだ。

では 素敵な1日を✨
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