二次元の水平線 六
駅方面に視線を向けた乃木は時計に目を落とした。藤原が予定通りの電車に乗っていれば丁度駅を出たくらいになるはずだ。分かっているつもりでもイライラ感はぬぐえない。煙草があれば吸いたいが、その煙草も藤原が来ないと手元にはなかった。何度もリュックの中身を確認して時間がなかなか経たないことに苛立ちを募らせていたが、そんな時間も永遠に続くわけはない。
駅の方に視線を移すと右手を挙げ振りながら小走りで近づいてくる藤原が見えた。時計に目をやると15時10分になろうかというところだった。
「ハァー、ハァー、乃木先生ー、お待たせー、しましたァー」
両手を両膝につきながら苦しそうにしていたが
「藤原さん、煙草買ってきてくれた?」
まだ息が整わないままカバンからセブンスターを取り出し
「ハァー、これでー、良かったー、ですよねー」
「ありがとう、いくらだっけこれ?」
乃木は煙草代を払おうとポケットの小銭を取り出したが、藤原は右手で制するような仕草をした。
「ありがとう、煙草吸ってるから少し休んでてよ」
藤原は無言でうなずいた。
煙草のフィルムを剥がし、ボックスを開け銀色の包み紙を引き抜いてポケットに突っ込んだ。中指で煙草の片側をはじいて、飛び出してきたうちの1本を取り出し、口に咥えて火をつけた。大きく吸い込みゆっくりと吐き出した。1日ぶりの煙草に一瞬クラっとしたが、落ち着く自分がそこにはいた。
藤原の呼吸が落ち着いてきたのを確認し、煙草をもみ消した。吸い殻のフィルター部分を切り離しポケットに入れた。
乃木は駅とは反対方向の河川敷を指さしながら
「あの橋の手前辺りをイメージしているんだけど、どう思う?」
藤原は視線を同じ方向へ向け
「なるほど…とにかく現場に行ってみましょう」
「そうだね、じゃあ行こうか」
「はい、そうしましょう!そう言えば夕方ごろ雨降るかもしれませんよ。
でも全然降りそうな感じじゃないですけど…天気予報あてになんないですからね」
二人は土手を降りて河川敷の目的地に向かって歩き始めた。
乃木は徐々に目的地に近づくにつれ、心臓の高鳴りが早まるのを感じ冷静さを保とうとほとんど無意識で煙草に火をつけていた。

では 素敵な1日を✨
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