見出し画像

夜中に台所でぼくは谷川さんに話しかけたかった

十六歳の感傷に腰掛けて
ぼくは詩を書き始めた
ぼくの孤独といえば
せいぜいコップ一杯分の涙ほどしかなかったけれど
二十億光年の彼方の星からの引力で
コップの水が波立つことを幻想するのだった


十六歳の感受性の扉は
あけてもあけても無限に続いているようで
めまいを覚えながら
ノートのなかに扉の鍵をしまう毎日だった


ところが ある夏の昼下がり
いつものようにノートを開けたぼくは
たいせつな鍵をなくしてしまっていることに気づいた


あれ以来
鍵を探し続けて過去の町々を放浪したぼくは
いつしか大人というものとなり
いまでは海の見える透明な駅で遺失物係となって
業務日誌をつけているのだった


いつか かなしみにくれた少年が
扉を開けて入ってくるのを待ち焦がれながら・・・・



この詩は四十代を間近に、二十年ぶりぐらいに再び詩を書き始めたときに書いたものです。
谷川さんへのオマージュであると同時に、ほとんど谷川俊太郎のエピゴーネンのような詩を書き散らしていた十代のころのじぶんに、ちょっとアイサツしておこうと思ったのでした。
ちなみに下はそのころの詩。


いいなと思ったら応援しよう!