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「広がれ!」と叫ぶほど悪化する|団子サッカーを生む構造的原因と自然な脱却アプローチ

はじめに

「広がれ!」
「スペースを使え!」
サイドラインからいくら声を張り上げても、磁石のようにボールへ群がってしまう子どもたち――。
一向に解消されない団子サッカーを前に、自分の指導に限界を感じてはいないでしょうか。

しかし、「広がらないこと」を力づくで正そうとするアプローチ自体が、実は大きな誤りなのです。

団子サッカーが長く続いてしまう根本原因は、子どもの能力や意欲の低さではなく、指導側が年代ごとの認知の発達段階を無視し、「ボールへの関わり方」の規準を整理できていないことにあります。

私自身、サッカー未経験の状態で指導の現場に立ち、ボールへ群がる子どもたちを前に自分の声掛けの無力さを痛感しながらも、現場での観察と学びを重ねてJFA公認B級ライセンスを取得するに至りました。
その探求の中で得たひとつの強い確信は、「団子サッカーは外から陣形を強制するのではなく、子どもたちの発達段階を理解し、思考と環境を適切に整えてあげることで自然に解消される」ということです。

本記事では、JFA(日本サッカー協会)の指標に基づく年代的特性、団子サッカーを生む5つの構造的原因、無理なく脱却へ導く指導ポイント、そしてメリット・デメリットの整理までを論理的に構造化して整理しました。

焦りや苛立ちを手放し、子どもたちの成長に寄り添った確かな指導を行うための、あなたの指導の“軸”を整える一助になれば幸いです。

■ 本記事で学べること
・JFAの年代別発達指標から読み解く、団子サッカーが起きる5つの根本的原因
・指示でバランスを取らせる指導がもたらすリスク
・「広がれ!」と叫ぶのをやめ、自然とスペースへ目を行かせる2つの指導習慣
・フリーな場所でボールを受ける成功体験をつくるコーチの介入方法とポジショニングの工夫
・低学年特有の欲求を活かしつつステップアップさせる団子サッカーのメリット・デメリット


なぜ団子サッカーになってしまうのか

①ボールを持つことが目的になっている
②年齢的な問題
③サッカーを観る機会が少ない
④良いポジショニングをとることによる成功体験を得ていない
⑤プレーエリアに対して参加人数が多すぎる

①ボールを持つことが目的になっている

団子サッカーになる原因はいくつも考えられますが、これが最も大きく、最も多い原因です
トレーニングによってここが変わればほとんどの団子サッカーは解消されます。

②年齢的な問題

当たり前のことですが、選手は様々なトレーニングや経験を経て成長していくものです。
サッカーを始めてすぐに大人のようなサッカーができるわけではありません。

日本サッカー協会(JFA)が発行している「JFAキッズハンドブック」には以下の通り記載されています。

こどもたちにとってサッカーは「ゲーム」であり、「遊び」の延長としてとらえ、こどもたちが「サッカーを楽しむこと」が大切です。
この年代のサッカーは大人のサッカーとはまったく別のものです。

引用元:JFAキッズ(U-8/U-10)ハンドブック

また、子どもたちがサッカーをどのような関係性でとらえ、どのように自分たちのサッカーの世界を広げていくかについても以下の通り記載されています。

U-6まで:自分とボール
はじめのうちは、自分とボールだけの関係です。
とにかくボールは自分のものとして追いかけ続けます。

U-6~U-8:自分と相手とボール
次に自分をじゃまする相手という存在が現れます。
自分のボールを取りに来るのはみな相手。
相手も味方もわかりません。

U-8~U-10:自分と味方 みんなでプレー
それからチームとして、味方となるグループと相手となるグループがわかりはじめます。

U-10以降:チームの中の自分 チーム対チーム
チームでチームを相手にするということがわかってくると、チームの中の存在としての自分が理解できるようになります。

引用元:JFAキッズ(U-8/U-10)ハンドブック

当然個人差はあるものの、小学校3年生ごろまでは団子サッカーの状態が残っている方がむしろ自然であると言えます。
少しでも早く団子サッカーを解消しようと焦る気持ちもわかりますが、今一度ご自身が指導されている年代がどの時期にあたるのか冷静に確認してみてください。

少し話が逸れるのですが、以前参加した小学1~2年生の大会で、とあるのチームがバランスよくポジションをとり、ドリブルを全く使うことなくフリーな味方にパスを回してゴールを量産しているのを見たことがあります。
各選手の判断ではなくベンチからの指示によってプレーがコントロールされていて、選手の将来が心配になったのを覚えています。

③サッカーを観る機会が少ない

サッカーを始めたばかりでも、
「三度の飯よりもサッカーが好き」
といった感じで休みの日もサッカー三昧であったり、プロのサッカーチームや選手について大人顔負けの知識を持っているような子がいます。

その一方で、
「仲のいい友達がいるからチームに入った」
「兄弟・姉妹がすでにチームに入っているからその流れで自分も入った」
というような特段サッカーへの興味がない子もいて、結構温度差があったりします。

生活の中でサッカーをどのように位置づけるかであったりサッカーを始める動機であったりは各自の自由なので、それら自体を問題視したいわけではありません。

しかし、普段プロの試合や上の年代のプレーを見ていないと、

「自分がどのように動いたらよいか・何をしたらよいかわからない」
→「とりあえずボールに絡もうとする」
→「団子サッカーになる」

となってしまうのは、事実としてよくあります。

これは低学年の子どもたちに限らず、普段サッカーを目にしていない生徒が集まれば高校生の体育の授業でもしばしば目にします。

もし有名な選手が出ている試合や日本代表の試合があるようであれば、「今度の日曜日の夜7時からテレビでやるよ」と教えてあげたり、時間や状況が許すようであれば高学年の練習の様子を見せてあげたりすると、少しずつ変化が生まれてくるでしょう。

④良いポジショニングをとることによる成功体験を得ていない

団子サッカーが続いていても、次第に団子状態を避けようとする選手が1人2人と出てきたりします

そうした子になぜボールを触りにいかないのか聞いてみると、
「ゴチャゴチャしてるところでボールを持っても何もできない」
「こっちでボールを受けられたらチャンスだから」
などと自分の意見や考えを持ってプレーしていることが多いです。

そうした子が他の子よりもたくさんゴールを決めたりシュートを打ったりすることで、「ああいうやりかたもあるんだ」と他の子が気付き、次第に団子 サッカーが解消されていくのを何度も見てきました。

しかし一方で、そうならないこともしばしばです

それは、いくら良いポジショニングをとっていても、その選手に気付いてボールを出してあげる人がいなければ、しびれを切らして良いポジショニングをとることをやめてしまうこともあるからです。

それは非常にもったいないことです。

良い場所にいるけれどもそこにボールが出てこないというケースが出てきたら、指導者・コーチがフリーマンとして参加し、そうした子に積極的にボールを出してあげましょう
フリーでボールを受けて簡単に得点を奪う子を目の当りにしたら、少しずつ真似をする子が出てきます。

⑤プレーエリアに対して参加人数が多すぎる

これは指導者のオーガナイズの問題です。

年齢が低ければ低いほど「待つ」というのが難しいため、本当は4チーム編成で「2チームが対戦している間は他の2チームは待機」としたいところを「最後の試合は全員参加だ!」としてしまうケースも多いのではないでしょうか。

しかしこれにより、「20m×15mの広さで8人対8人」など、どう頑張ってもフリーでボールを持つスペースが生まれないゲームになってしまうことがあります

ボールコントロールが未熟なためにより広いスペースを必要とする子どもたちに向かってコーチが、

「空いている所を探そう!」
「逆サイドが空いてるよ!」

などと言っているのを見たことがありますが、

「この狭さでこのレベルの子どもたちがボールから目を離してスペースを探しながらプレーするのは無理だろう」
「あなたと違って、子どもたちは相手と2m離れているだけでは空いている所でプレーしていることにはならないだろう」

と内心考えていました。

全員を上達させたいからと全員を参加させることは、かえって誰も上達させないこともあるのです

団子サッカーの背景には、
「どこで・どんな向きで・どんな意図でボールを受けるか」
という“関わり方の規準”が整理されていないことがあります。

この規準を体系的にまとめた【概要編】はこちらからご覧いただけます。


団子サッカーを脱却するための指導ポイント

団子サッカーを解消するために必要なのは、指導者が「広がれ!」と指示することではありません。

大切なのは、次の2つの習慣を身に付けることです。

①次のプレーを考えてからボールを受ける習慣
②フリーな場所を見つける習慣

①次のプレーを考えてからボールを受ける習慣

「ボールを受けてから次のプレーを考える」のでなく、「次のプレーを考えてからボールを受ける」という思考の順番を習慣化させることを目指します。

ここが変わると、
・意味もなく狭いスペースに入らない
・体の向きを工夫する
・プレッシャーを受ける前に少ないタッチでプレーする
といったプレーが自然と出てきます。

“次のプレーを考えてから受ける”ためには、何を根拠に判断するのかという「予測の規準」が必要です。

その規準を整理した記事はこちらです。

②フリーな場所を見つける習慣

“人が少ない場所を見つける・選ぶ”という感覚を育てることもとても重要です。

これは、
・周りを観る
・状況を判断する
という基礎を身に付けるトレーニングによって可能になります。

これらの習慣を“練習の流れ”として落とし込む方法は、【実践編】で1日のメニューとしてまとめています。


団子サッカーのメリット・デメリット

「いかにして団子サッカーから脱却するのか」
「いかにして団子サッカーを解消するのか」
についてここまでお話ししてきましたが、そもそも団子サッカーになることは悪いことなのでしょうか?

ここではあらためて団子サッカーのメリットデメリットについて整理してみます。

団子サッカーのメリット

①「ボールに触る」という目的が達成できる
②サッカーが好きになる
③個人技が身につけば簡単にゴールを奪える
④ボールを持っている相手に素早くプレッシャーをかける習慣がつく

①「ボールに触る」という目的が達成できる

小さな子どもたちにとってサッカーボールはおもちゃや遊び道具の一つです。
少しでもボールに触りたくて仕方がない子どもたちの心を満たしてあげることができます。

②サッカーが好きになる

団子サッカーをしている子どもたちはとても楽しそうです。
サッカーが好きにならなければ上達もしていかないので、楽しんでプレーしてもらうことはとても重要です。

③個人技が身につけば簡単にゴールを奪える

いったん団子状態を突破してしまえばディフェンスに邪魔されることなくゴールまで行けることも多いため、ドリブル突破する力やボールコントロールを身につけることができればたくさんゴールを決めることができます。

④ボールを持っている相手に素早くプレッシャーをかける習慣がつく

ディフェンスの問題点として、
「相手と距離を開けすぎてしまう」
「ボールを奪いに行くことができない」
ということが挙げられることがあります。

「抜かれるな!」
「飛び込むな!」
という指導を受け続けることがその原因であることが多いですが、団子サッカーをしている子どもたちはひたすらボールを奪って自分のものにしようとするため、相手に素早くプレッシャーをかける習慣が身につきます。

団子サッカーのデメリット

①将来的な成長につながらない
②他者とのコミュニケーションをとる必要のないプレーばかりになってしまう
③怪我の危険性が高まる

①将来的な成長につながらない

サッカーという競技について考えたとき、「どうやって密集から抜け出すか」という能力を向上させることは「フリーでボールを受ける」ことと比べて優先的に取り組むべき練習内容ではありません。

団子サッカーを続けることによって将来的にはあまり必要性を感じないプレーばかり上達してしまうと言えます。

②他者とのコミュニケーションをとる必要のないプレーばかりになってしまう

サッカーはチームスポーツです。
どのようなプレーをおこなうにせよ、チームメイトや相手選手との兼ね合いによってそれが正しい判断であるかどうかが決まります。

その点団子サッカーは、
「自分がドリブルしたいから」
「自分がボールを欲しいから」
という基準でのみプレーがおこなわれるため、技術の向上がチームを助けることにつながらない選手を生み出す結果となってしまいます。

③怪我の危険性が高まる

密集の度が過ぎるようだと過度に接触が多くなり、怪我の危険性が高まります。

団子サッカーのメリットとして、「たくさんボールに触ることができる」「サッカーが好きになる」ということを挙げましたが、ボールに触れる以上に他の子との接触やケガが頻発すると、サッカーが嫌いになってしまう危険性もあります。


まとめ

・「指示で陣形を固定化させる指導」をやめ、発達段階や環境などの根本原因を理解する
子どもがボールに群がるのは認知の発達段階やコート内の人数設定による自然な現象である。
「広がれ!」と外からコントロールするのではなく、現象の裏にある構造的原因を冷静に見極める。

・「次のプレーの予測」と「フリーな場所の発見」という2つの思考習慣を育てる
ボールを受けてから考えるのではなく「受ける前に次のプレーを考えておく」こと、そして「人が少ないスペースを選択する」感覚を、トレーニングを通して自然と体得させる。

・団子サッカーの価値を認めつつ、成長に合わせてストレスなく次のステップへ繋ぐ
ボールに触る楽しさやプレッシャーをかける習慣といったメリットは尊重しつつ、他者との関わりや判断力を育む環境を整えることで、子どもたちを自律したプレーヤーへと成長させる。


団子サッカーから自然に脱却するための指導アプローチ

団子サッカーを根本から解消するためには、「ボールへの関わり方」「プレーの予測」「トレーニングの環境設定」を体系的に整えることが不可欠です。
現場でそのまま使える具体的な指導理論と練習メニューを以下の記事でまとめています。


おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます。

団子サッカーからスタートするのはごく自然なことですが、その状態が続くとやはりメリットよりもデメリットの方が上回ってしまいます。

しかし、そこで焦って無理やり団子サッカーからの脱却を図るのでなく、子どもたちの年齢による特徴や団子サッカーになる理由を正しく認識し、ストレスを感じさせないやり方で少しずつ団子サッカー解消のための練習を取り入れていってください。

正しいステップを踏んでいけば、サッカー選手としてレベルアップしていくことと楽しくサッカーを続けていくことは、必ず両立させることができます。

そのために少しでも今回の内容をぜひ役立ててください!


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