2026.7.13(月)・7.14(火) ヴィンセント・オンさん ピアノリサイタル@東京オペラシティ
コンサート開催の告知があってからずっと楽しみにしていたリサイタルです。
2月の浜離宮のときは指がよく見えない席だったので、今度は絶対に手の動きが見える席がいい!と思ってチケット取りに参戦し、何だか血迷った席を取ってしまったので、追加公演のほうも行くことにしました。
結果、2日連続でヴィンセント・コスモ(主催命名)を浴びることに。
最高でした。
普段は記憶の新しい内に書きたい派なのですが、今回は週初めで仕事が忙しかったことと、何だか無性にピアノが弾きたくなってしまったので、感想を書くよりもピアノを優先させてしまいました。
ヴィンセントさんのピアノを聴くと、何故だかとてもピアノに向かいたい気持ちになるのです。
今まで大好きな曲や憧れの曲が増えることがあっても、自分も弾いてみたいと思って実際弾いてみることってなかったので、とても不思議なんですよね。
私にとってピアノを弾くということは、自分との対話であるのかもしれない。
ヴィンセントさんの音楽と出会って、そう思うようになりました。
記憶が混ざってしまっているので、2日間まとめての感想を書きます。
とはいっても初見のほうがインパクト強いので、初日が多めだと思います。
開演前
ホール入る前の掲示板。高まる期待。

今回も浜離宮と同じ、大きなパネルがいらっしゃいました~



プログラム
今回のプログラムはこちら。
https://www.japanarts.co.jp/wp-content/uploads/2026/07/concert_2211_tokyo.pdf
ショパン:24の前奏曲 Op.28
※※※※※※※※※※※※※※※
メンデルスゾーン:無言歌集 第8巻 Op.102
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番変ロ長調 Op.84「戦争ソナタ」
プログラムを知って、まず思ったこと。
「無言歌集の最終巻なんて、ほぼ聞いたことないよ~」
「戦争ソナタも第7番じゃなくて第8番なの?何かよくわからないからあんまり聞いたことないやつだ~」
一般的に、ショパンコンクールで入賞した後のリサイタルって、一年間くらいは、オールショパンかほぼそれに近い構成になることが多いと思います。
なので、意欲的なプログラムだなと思いました。
確かにショパコンで演奏した曲を聞きたい気持ちもあるけれど、それよりも色んな曲の演奏を聞きたい気持ちの方が大きかったので、どんなリサイタルになるのかワクワクしたことを覚えています。
第一部
ショパン:24の前奏曲 Op.28
椅子に座った途端に始まったno.1。
波間の水の揺らめきのようにゆらゆらする感じ、あの強弱のコントロールすごすぎ。何度聞いても驚いてしまいます。
とても自然な揺らぎのように聞こえるけれど、ものすごく高い技術力ですよね。
相変わらず音色と音量のコントロールが絶妙すぎます。
メロディラインはffでもppでもしっかり聞こえてきて、他の音もメロディを邪魔しないちょうど良い音量で、バランスが本当に良い。
一口にfやpといっても、記号では一つだけれど、色んなfやpがあるよね、という当たり前のことを再確認させてくれる、そんな演奏だなと思います。
ショパコンのときとも、日曜コンサートのときともニュアンスが違うように思いました。
強弱のメリハリがもっとくっきりはっきりしたような印象。
ショパンの即興性を大切にしてると言っていたように記憶しているので、その瞬間、その瞬間に感じたこと、アイディアを音にしているのかなと思いました。
最高超えてて好きが溢れすぎてつらい。好きすぎる。
そんな思いに溺れながら、ヴィンセントさんの創り出す世界観に浸っていました。
今思い出しても至福の時間です。
ショパンの24の前奏曲はどの曲も好きすぎるのですが、特に印象に残ってることだけ書きます。
no.7
とってもキュートで優しい演奏で大好きです。
これは私の日本人としてのDNAがそうさせるのであって、もはや仕方ないと思うのですが、no.7を聞くとどうしてもあのCMのことを想起してしまうので、純粋にその曲だけを楽しめないのが辛いです‥
no.10
ラストのほうの左手。
ここはショパコンのときのが衝撃的だったので、注目しております。
両日とも派手な動きはなかったように思います。
手をひらりとさせていただけかな。
no.12~no.13
やっぱりここは一呼吸置くのですね。ここはいつも同じなので、ここは決まってるのかもしれないなと思いました。
no.15
24曲中やっぱり一番好きな曲です。
ため息が出るほどの美しさでした。
色彩の変化を感じるような、ストーリー性のある曲だからこそ、よりいっそうヴィンセントさんの表現力が光るように感じます。
no.16
no.15からno.16の流れが本当に大好きなんです。
浜離宮のときの最終音が消えるか消えないかくらいでガツンと始まったのもかっこよくて好きでしたが、今回のもかっこよかったです。
今回はぱっきりと音が切れてから、雷鳴が轟くように始まってました。
この嵐がびゅんっと吹き荒れる感じ、大好きなんだよな。
no.24
no.23の残響がある中で始まったラスト曲。
かっこよすぎて震えました。
ラストのD音、一音目は高音も聞こえたように感じました。
倍音なのか錯覚なのか幻聴なのかよくわからないけど、でもかっこよ‥と思ったことは確か。(一日目の話。二日目はそんな印象を受けませんでした)
もうかっこいいがゲシュタルト崩壊しそうな感じだったので‥
かっこよすぎて意味がわからないよ‥
完全に観客・会場の空気を支配してました。
ヴィンセントさんが立ち上がるまで、皆集中力が切れなくって、立った瞬間に万雷の拍手。
プログラム終わりのカーテンコールかってくらい一部から鳴りやまないくらいの盛り上がりでした。
記憶が定かではないのですが、拍手とともにわぁっという歓声も上がったような?すごっ!というざわめきだったかもしれません。
何にせよ圧倒されたので、記憶が曖昧です。
まだ一部なのに、クラクラクライマックス!
えーーーーーー二部聴いたらどうなっちゃうの?!?!?!?!?!
第二部
メンデルスゾーン:無言歌集 第8巻 Op.102
私は今回のリサイタルに向けて、無言歌集のBook8の曲を6曲ともさらってから臨んだんですよ。
ヴィンセントさんの演奏聴いたらきっと弾きたくなるんだから、予めさらっておけば良くない?と思った次第です。
練習しながら「ヴィンセントさんはこういうふうに弾くかな?」などと妄想してはいたのですが、予想を遥かに上回る表現力でした!
きっと面白く弾くのだろうな~と思ってたのですが、思ってた100倍くらい面白かったです。
no.1
曲が始まって、一瞬フリーズしました。
あれ?第二部の最初は無言歌集からだよね?Book8だよね?!
と思ってしまったんです。
それくらい、想像していたのと違っていました。
こんなに楽しい解釈ができるのかってはっとする連続でした。
6曲中、たぶん1番が一番面白い表現をされるのではないかと事前に予想していたのですが、その予想は大当たりでした。
この曲をこんなに素敵に感じたのは初めてです。
no.2
帰り道にとったメモでは「これが一番解釈好きかも」と書いてあるのですが、詳細がわかりません‥
たぶん1番から受けた衝撃で、詳しいこと思い出せなくって、ただただ素敵だった記憶からメモしたのだと思われます‥
no.3
プレスト~!思ったよりも速かった!ぴゅんっって感じ。
軽やかで可愛くって、この曲がもっと大好きになりました。
no.4
練習しながら、「これ聴いたら絶対好きになっちゃうよな~」と思ってたんですけど、全然違う曲でびっくりした!
無事に好きになりました。ありがとうございます。
ねえ、あの楽譜からあのように立体的になるの?!?!
音が浮かび上がってくる感じ、息の長いフレージング、どの瞬間を切り取ってもため息がでるほど美しい‥
とても素敵でした!
no.5
Book8の中で一番お気に入りの曲です。
私のイメージよりも優しい弾き方でした。とても良き。
もっと軽やかな感じだと思っていたけれど、ペダルも使って弾いてたなあ。
後半にある大好きなフレーズを軽やかにとてもキュートに弾かれてて、きゅんとしました。好き。
no.6
この曲ってアンダンテだし、ほっとするようなメロディなんですけど、もうここまでで混乱しすぎてて、とても素敵だったことしか記憶にないです。
私の記憶力、残念過ぎる‥!
ものすごく奥行きがあって、音楽が目の前に立ち上がってくるような、とても立体的な演奏だなと思いました。
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番変ロ長調 Op.84「戦争ソナタ」
めちゃめちゃかっこよかったです。
めちゃめちゃかっこよかったです。
大事なことなので何度でもいいます。もう一回言っておこうかな。
めちゃめちゃかっこよかったです。
私のプロコフィエフとの出会いは、「ピーターと狼」です。
幼稚園の頃くらいに「ピーターと狼」を鬼リピして育ったので、かなり長い間親しんでるんですよ。
基本的にプロコフィエフの音楽ってかっこよくって大好きですし。
だけど、戦争ソナタ第8番は、何回聞いてもよくわからないな~と思ってました。特に第1楽章。
それなのに、第1楽章の初めの一音目からずっと集中して聴けました。
第1楽章、全然わけわからなくなかった!
今ではどこがよくわからないと思っていたかがわからなくなってます‥笑
何か、土台から丁寧にしっかりと建築しているなぁという印象を受けたんです。深く考察して、ものすごく精密に作られてるんだなと思いました。
ヴィンセントさんはプロコフィエフのこの曲が大好きなんだろうなというのがひしひしと感じられて、あっという間に曲の世界観に引き込まれてしまい、「よくわからない」なんて思う余地がありませんでした。
プロコフィエフの音楽って宇宙的な響きがするなあと思うことがよくあるのですが、ヴィンセントさんの演奏を聴きながら、「なるほど。これがヴィンセント・コスモなのか‥?!?!」と噛みしめながら聴きました。
(これは2日目の感想です。主催のpostを貼っておきます)
リサイタルツアーは
— ジャパン・アーツ(Japan Arts Corporation) (@japan_arts) July 14, 2026
今夜7/14 東京オペラシティ
7/16 ザ・シンフォニーホール(大阪)
7/17 電気文化会館(名古屋)
7/19 FFGホール(福岡)へと続きます。
大阪以降はプログラムが変わり、再びまだ誰も見ぬヴィンセント・コスモ🪐🌠が待ち受けます……
第2楽章は第1楽章からガラリと変わって優しいメロディに溢れていて、心がほっとする感じがしました。第1楽章は緊迫した感じだったので。
第3楽章はワクワクするような音楽でずっと楽しかったです。
戦争ソナタって、作曲された時代背景的に、プロコフィエフの鬱屈とした内にこもるようなモニャモニャした感情がこめられてるのかなと思っていて、ちょっと敬遠していたのですが(自分がやみやみしてるので、闇属性よりも光属性の曲を聞きたい‥)、第8番は大好きな曲になりました。
ヴィンセントさんの解釈は、いつも私に新たな曲の魅力を教えてくれます。
これからも色々な曲に光を当てて、私の「大好き」を増やしてくださると嬉しいです。
アンコール
本編だけでお腹いっぱい堪能しましたが、アンコールは両日とも3曲も弾いてくださいました。
7.13(1日目)
enc1 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 K282より 第1楽章 アダージョ
プロコフィエフで混乱してざわめいていた心に沁みる優しいモーツァルトでした。
じんわりとしみじみ良いなあという音楽ですね。
浄化されていく思いがしました。
ヴィンセントさんのモーツァルト、もっと聴きたいな。
しかし、プロコフィエフからの振れ幅がすごい‥
enc2 カプースチン:8つの演奏会用エチュード op.40より 第1番 プレリュード
私は常日頃から「ヴィンセントさんがカプースチン弾いたら、めちゃくちゃかっこいいんだろうな~聴いてみたいな~」と妄想していたので、実現して夢かと思いました。
曲が始まってびっくりしました!思わず息飲んだ!!
こんなに早く夢が叶うとは‥!!生きてて良かった!!!!!
めちゃくちゃはちゃめちゃにかっこよかったです。
予想を遥かに上回っていました。
私の妄想が本物に全然及んでませんでした‥
弾いてるご本人もノリノリの感じがしました。
リズム感えぐかったです。グルーヴ感~!
曲が終わって、ふぅ~↑みたいな歓声上がったけれど、私も思わず声が漏れました‥あれは仕方がないよね‥
ブラボーでした。
もうやめて、かっこよすぎて、とっくにわたしのライフはゼロよ‥‥
プロコフィエフの衝撃をモーツァルトで回復したはずが、とどめ刺されました‥‥
enc3 シューマン:幻想小曲集 op.12より 第1曲「夕べに」
シューマン!
私にシューマンの面白さを気付かせてくださったヴィンセントさんのシューマン!
生で聴けたよ~感無量!
かっこいい系シューマンではなく、癒し系シューマンのほうでしたが、めちゃくちゃ心に沁み渡しました。
ありがとうシューマン、ありがとうヴィンセントさん、もう最高だよ‥!!
※蛇足ですが、シューマンに沼った経緯を過去に書いていたので、貼っておきます。暇で仕方ないときに暇つぶしにでもどうぞ。
7.14(2日目)
enc1 グリーグ:抒情小曲集 第1集 op.12より 第1曲 アリエッタ
グリーグ!北欧のショパン!
ということは知ってるのに、グリーグのピアノ曲ってあんまり聞いたことがなく、抒情小曲集も弾いてみたいな~とふんわり思ってる程度なので、曲を聞いてすぐにグリーグとわかりませんでした。
とっても美しくて穏やかで、私もいつか弾いてみたいなと思いました。
夢見心地~
enc2 シューマン:幻想小曲集 op.12より 第7曲「夢のもつれ」
昨日の今日でシューマンもう一曲聴けるの?
なんという僥倖‥嬉しすぎる‥
コロコロしててとても可愛い曲なので癒されました。
これはいよいよかっこいい系シューマンも聴きたくなりました。
いつかシューマンのプログラム聴かせてくださいね。
enc3 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第16番 ハ長調 K545より 第1楽章 アレグロ
始まった瞬間、会場ざわっとしましたね。私も心のボルテージが振り切れるかと思いました。
モーツァルトのピアノソナタ第16番、大好きなんです。
たまに思い出しては弾いてます。
つい先日も弾いたばかりだったので、ヴィンセントさんの演奏が聴けてとても嬉しかったです。
子どもの頃から弾いてきて、隅々まで知り尽くしてると思ってた曲だったけど、まだ知らないフレーズがありました。めちゃくちゃびっくりした!
帰宅してすぐに楽譜を開いたら、そこにはよく知ってる音符が並んでいました。
自分の楽譜の読み込みの甘さよ‥‥
粒のそろったコロコロしてキラキラするこの曲を聴けたことは一生の宝物です。
これからこの曲を弾く度に、この日の嬉しい気持ちが思い出されて、ますます楽しくなりますね。
私の人生をまた一つ豊かにしてくださって、ありがとうございます!
おわりに
血迷ってとった席の感想も残しておこうと思います。
身バレ防止のため、はっきりとは書きませんが、指がよく見える席がいいなと思い、某列の席を取りました。
結果、この判断は大正解でした!
音的にはやっぱり屋根の向いてる正面から聴いたほうが良かったのですが、何にも遮られることなく、指使いをずっと見てられたので、本当に幸せな時間でした。まさに至福の時。
指が細くて長くて綺麗だなと改めて感じました。
そしてめちゃくちゃ柔軟性がありますね。
見ても指がどんな動きしてるのかよくわかりませんでした‥笑
ケヴィンさんも「え?人間の指ってそんなふうに動かせるものなの??!!」みたいな動きをしますが、それに近しいものがあるのかもしれません。よくわからないけど。
上から見てる分には音の強弱で特に違うようには感じないのに、聴こえてくる音は全然違っていて、絶対にタッチが違うはずなのに、どうなってるのか全くわかりませんでした。
魔術師すぎる!
この日は(一方的に)ズッ友だよ‥と思ってる方も観賞されていたので、帰り道、ずっと「ヴィンセントさん、すごかった!やばかった!」と語彙力の失われた感想を言い合いながら帰りました。
ヴィンセントさんの素晴らしい演奏を共有できて嬉しかったです。
いつも本当にありがとうございます!
SNSで感想を見たりすると、V界隈の方々が楽しそうに交流されてるのを見て、いいなあと思う一方で、今自分がやみやみモードすぎてて、新しい方とはじめましてする元気がなく、某ミュオタ時代の自分の行動力が懐かしいです‥
ファンは写し鏡だと思っているので、ああやって温かい交流が育まれているのを見ると、やはりそれもヴィンセントさんの人柄のせいもあるのかな、なんて思います。
