連載小説 | 蛍光女②
前話はこちら(↓)
蛍子が生まれる前の9ヶ月ほど前に、現在の夫と紫陽花を見に行ったことがあった。
「いろいろな色の紫陽花が咲いていて綺麗ですね」
「そうですね。ここは水が豊かだから綺麗な花が咲くのかもしれません。詩織さん、ここは夜になると蛍が舞うのをご存知ですか?」
「蛍ですか?最近ではめっきり見かけなくなりましたが。蛍が舞うなんて素敵ですね」
「もし良かったら、一緒に蛍も見ていきませんか?」
私たちはその夜、蛍も見ていくことになった。
日が長くなっていたから、だいぶ待つことになったが、7時半を回った頃から、たしかに蛍が青白い光を発しながらたくさん舞う様子を見ることが出来た。
「きっとあぁやって蛍も、僕と同じように求愛しているのでしょうね」
「求愛ですか?昭吾さんは誰に?」
「誰にって、詩織さんしかいないじゃないですか?」
私は昭吾さんのことを「いいな」とは思っていたが、交際しているということはあまり意識していなかった。しかし、好意をもっていたのも間違いなかった。
「私で良ければ、お付き合いしていただけますか?」
「ほんと?や、やったぁ。ほんとに?ありがとうございます」
「こちらこそよろしくお願いいたします。それにしても、こんなところに、こんなにたくさんの蛍がいるなんて知りませんでした」
「ところで詩織さん、この場所には、ひとつ伝説があることをご存知ですか?」
「いえ、蛍がいることも知らなかったくらいですから。どのような伝説があるのですか?」
昭吾さんは、ちょっと間をおいてからこう言った。
「この近くにある沢の水を飲んで、男性と女性が結ばれると、蛍のような子供を授かると言われています」
「蛍のような子供と言うと、お尻が光るとか…」
「さぁ、詳しいことは僕もわかりません。みんなから愛されるような子供という意味かもしれません。まさか、本当に蛍のようにお尻が光る子供が生まれるとは思いませんから」
「そうですよね。でも、ここら辺の沢の水は本当に澄んでいて綺麗ですね。飲んでも大丈夫でしょうか?」
「それは大丈夫だと思います。沢の上流には人家はありませんし、湧水ですから」
「じゃあ一緒に飲んでみませんか?ちょっと喉が渇いてしまって」
私たちは両手で沢の水をすくって一緒に飲んだ。その晩、私たちは初めて結ばれた。
…つづく
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