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闇の王 (最終話) | 勝手に神になるな!




「あんた、謝罪しなよ。あんたの所業はすべて知ってるんだよ。これだけで終わりだと思うなよ!」

「あぁ、あれだろ、あなたが私を攻撃するつもりで出した偽書のことだろ?」

「いや、私の心象では、あなたの犯罪はハッキリしている。だから、神に代わってあなたを殺そうと思っている」

「殺す?あなたが私を? いつの間に、あなたは神になったんだ? たまに、老人たちと泳ぎに行って遊んでるだけのお前に、人を裁く権限など始めからないんだよ」

「お上は信用できぬから。目安箱にいくら批判を書いたって、まったくお上は動いてくれない。だから、束になってお前を倒す!」

「それは無駄なことだ。だいたい、あなたはあの女を守ろうとしているのかもしれないが、結局のところ、あの女がこの世にいるのを邪魔しただけだったのではないのか?」

「私たちが? 私たちはあの人を守るために、あなたに攻撃を加え続けた」

「だから、その戦略自体が間違いだったんだよ。あの女はいつも、『闇の王とその取り巻きの二人』という言い方をしていたよね? その事自体、事実じゃないんだよ」

「というと?」

「結論から言えば、闇の王たる私は、その二人とそれほど深い仲ではない。ちなみに、そのうちの一人の男とは面識すらないんだよ」

「いや、そんなことをない。住所録を見れば一目瞭然だ!」

「だから、それもおかしいだろ? 住所録に載っていれば親しく、住所録に載っていなければ親密ではないなんて言えるのか?。
 住所録なんて、ただの紙切れだ。載ってる名前が、友情や忠誠を証明するわけじゃない。あなたたちこそ、紙一枚で人を裁くなんて、神気取りもいいところだ」

「だが……だが、あの女は苦しんでいた! 闇の王の影が、彼女の人生を蝕んでいたんだ!」

「苦しみの原因を、俺に押しつけるな。あの女の心象風景は、彼女自身が描いた幻想だ。俺はその女の、ただの通りすがりの影に過ぎなかった。取り巻き? あいつらは勝手に寄ってきただけさ。一人は金目当て、もう一人はただの噂好き。面識がないと言ったのは本当だよ」

「嘘だ……全部、繋がってるはずだ!」

「繋がってるのは、あなたたちの妄想だ。目安箱に書いた批判が届かないからって、剣を振り回す? お上を信用できないからって、自分で神になるな。裁く権限は、誰も持っていない」

 男は剣を握りしめたまま、膝をついた。仲間たちがざわめく中、闇の王は静かに背を向けた。

「終わりだよ。偽書の攻撃も、束の結束も、すべて無駄だった。神に代わるなんて、勝手に思うな」

 夜風が吹き抜け、いざよう月を雲がおおった。そして、闇はさらに深まった。男の叫びは、誰にも届かず、ただの戯言として消えていった。闇の王はあらゆる空間に瀰漫した。物語は静かに連続し続け、収束することはないだろう。騒ぎたいヤツは叫んでいればいい。自らの身を焦がしながら、闇の中で微かな炎として輝き、消えゆく者として。


~「闇の王」(完)~




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山根あきら | 哲学者 記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします