ガラスがりんごになった日。|ヨーロッパのクリスマスにガラスの飾りが愛され続ける理由。
こんにちは、ピカキュウhomeです。
初夏の風が気持ちいい、この季節。
まだ冬は先なのに、なぜか毎年この時期になると「今年はどんなクリスマス飾りにしよう」と考えはじめる、中の人です。
ヨーロッパでは何世代にもわたって、ガラスのオーナメントが愛されてきました。
布でもなく、
プラスチックでもなく、
どうして”ガラス”なのか。
その理由をたどっていくと、クリスマスの景色が少し違って見えてきます。ぜひ最後までご覧ください。
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ツリーに揺れていたのは、本物の「りんご」でした
時代は中世のドイツ。
12月24日に行われていた宗教劇「楽園劇」のなかで、のちのクリスマスツリーへとつながっていく、ある工夫が生まれます。
物語の舞台は、アダムとイヴが暮らしたエデンの園。
本来なら「りんごの木」をステージに置きたいところですが、真冬のドイツで“実のついたりんごの木”を用意するのはかなり大変。
12月にもなると、りんごの木はすっかり葉を落とし、寂しい姿に。

そこで人々が選んだのは、真冬でも青々と茂る常緑樹「モミの木」でした。
枯れることのない強い生命力を宿す緑の枝に、エデンの園を象徴する本物の真っ赤なりんごを吊るしたのです。
こうした風景が少しずつ家庭の中へ広がり、“クリスマスツリー”の文化へと育まれていきました。

時を重ねた1605年、当時ドイツ圏だったストラスブールの古い記録にも、
「モミの木に、紙で作った花やりんご、お菓子を吊るす」という、当時の一般家庭のクリスマスの様子も残されています。
今では当たり前になったオーナメントも、そのルーツをたどっていくと、冷たい冬のなか、人々のあたたかな知恵や想いに包まれながら揺れていた “本物のりんご” にたどり着くのです。
“代わり”として生まれた、ガラスの球
時は流れ、19世紀。
ドイツで、“りんごの代わり”が生まれます。
場所は、1597年からガラス産業で栄えてきた小さな町「ラウシャ」。
森に囲まれたこの場所で、職人たちは代々、吹きガラスの技術を受け継いできました。

ある冬、本物の赤いりんごやナッツを飾るのが難しかったガラス職人が「それなら、自分の手で飾りを作ろう」と、りんごによく似た丸いガラスの球体を作ります。
ただの代用品として生まれたはずの、ガラスのりんご。
しかし、その美しさはいつしか人々の心を捉え、“飾りたくなるもの”へ。
やがてその輝きは、国境を越えていきます。

1848年。
イギリスのヴィクトリア女王と、ドイツ出身の夫アルバート公が邸宅でクリスマスツリーを囲む姿が、新聞の挿絵として紹介されました。
その光景は大きな話題となり、ツリーに飾られたガラスのオーナメントは、たちまち人々の憧れの的となりました。
そして、ドイツのガラスオーナメント文化は海を越え、ヨーロッパからアメリカへと広がっていったとも言われています。

かつてドイツの小さな工房で、誰かを想ってそっと息を吹き込んだ小さなガラスの球。
その温かな手仕事が、今のクリスマスオーナメントへとつながっていったんですね。

15世代、ひとつの家族に受け継がれてきたもの
そんなドイツには、今でも伝統的なガラスオーナメントを作り続けるブランドがあります。
そのひとつが、Inge-Glas(インゲ・グラス)。
100年以上の歴史を持つ、ガラスオーナメントメーカーです。
このブランドを守り続けてきたのが、ミュラー・ブレヒ一族。
なんと15世代にわたって、技術を受け継いできたそうです。

口吹き、
銀加工、
手描き。
そのすべてを、今も職人さんたちがひとつずつ手作業で仕上げています。


最高級ラインに付いている「スタークラウン」という星型キャップには、
5つの意味が込められているのだとか。
ドイツで手作りされたもの。
家族。
情熱。
生きた伝統。
そしてサステナビリティ。
小さな星なのに、ちゃんと“ものづくりの姿勢”が詰まっている。
そういう背景を知ると、オーナメントってただの季節飾りじゃないんだなって思います。

インゲ・グラスのものづくりへの想いや歴史を知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
毎年また飾りたくなる理由
ラウシャで生まれた、丸いガラスの球。
今では、プラスチックの飾りもたくさんあります。
軽くて、割れにくくて、扱いやすいものも増えました。
それでも、ヨーロッパでガラスが愛され続けているのは、“見た目”だけじゃない気がします。
手に持ったときの質感とか、光の宿り方とか。
「誰かが手で作った」という感覚が、ちゃんと残っているからかもしれません。

そしてまた来年も、箱から出して飾りたくなる。
そんな気持ちが、何世代にもわたって続いてきたのかなと思います。
おわりに:知ると、冬が少し待ち遠しくなる
中世の舞台に飾られていたりんごが、
ガラスの球になって、
職人の町で受け継がれ、
海を渡って、
今年のツリーに飾られている。
そう思うと、オーナメントを箱から取り出す時間も、少し特別に感じませんか?

ものの“来た道”を知ることで、暮らしの中の小さなことが、ちょっとだけ豊かになる。
そんな感覚を、これからもお届けできたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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