桜を見なかった春
桜が咲くと、
いつも思い出すことがある。
前の会社の近くにあった
古い桜の木が好きだった。
かなりの老木なのに、
満開になったときの桜吹雪が
とてもきれいで。
毎年、桜吹雪の中に入って
季節を感じていた。
おととしの三月。
忙しすぎて、
桜を見る余裕なんてなかった。
会社をあげた新しいプロジェクトの
中心メンバーを任されていた。
三月の始めから、朝五時から働いて
気がついたら夜中十二時。
それでも終わらない仕事。
そんな日が
四月の始めまで続いた。
当然、桜なんて
見る余裕もなく。
そして残念なことに、
お気に入りの桜は
倒木していた。
家のことも全て後回しにして、
プロジェクトを軌道に乗せるため
ご飯も睡眠も、
ほとんど自由がなかった。
桜はきっと満開だったのに、
私はそれを見ていない。
それがどうしても嫌だったのもあるけれど、
メンバーと折り合いがつかなくて
うまくやれなかった。
突き詰めて動いてしまう性格が災いし(笑)
完全に部の中で浮いてしまった。
適当にやっておけばいいのに、と
自分でも思った。
でも……
我慢できなかった(笑)
その年の年末、
身体を壊して退職した。
退職してから迎えた春。
桜を見たとき、
ものすごくホッとしたのを
今でも覚えている。
ああ、
今年も桜が咲いたんだなって。
今年の桜は
どんな風に、
私の目に映るんだろう。
今年は、
ちゃんと桜を見ようと思う。
