非効率な時間でしか、育たないもの
前回は、
マルチタスクや効率について考えました。
マルチタスクには、
同時進行と同時処理があります。
そして効率も、
何を目的にしているのか。
どの段階にいるのか。
そこを見ないまま求めると、
本来必要だった時間や経験から、
少しズレてしまうことがあります。
前回の記事はこちら▼▼
今回は、
非効率に見える時間は、
本当にムダなのか。
むしろ、
非効率に見える時間の中でしか、
育たないものもあるのではないか。
このあたりを考えていきます。
1章:できてしまう人の落とし穴
あなたは、
運動神経はいい方ですか?
たとえば、
社会人になってから、
ゴルフを始めたとします。
最初から、
ある程度ボールに当たる人がいます。
なんとなく打っても、
そこそこ前に飛ぶ。
一方で、
なかなかボールに当たらない人もいます。
当たっても、
右に曲がる。
左に曲がる。
思った方向に飛ばない。
この時、
基礎を学ぼうと思いやすいのは、後者です。
まったくできなければ、
「これはちゃんと習った方がいいな」
と思いやすい。
でも、
ある程度できてしまうと、
「このまま練習すればうまくなる」
「少しコツを覚えればいける」
と思いやすくなります。

もう一つ質問です。
あなたは“要領”はいい方ですか?
要領がいい人は、
初めてのことでも、
なんとなく流れをつかむのが早い。
人のやり方を見て、
「ああ、こういうことか」
と感覚で理解できる。
これは、
大きな強みです。
ただ、
ある程度できてしまうからこそ、
問題意識が生まれにくいことがあります。
要領がつかめず、
最初はうまくいかない人は、
人に聞いたり、
やり方を確認したり、
基本や基礎から入ろうとします。
でも、
要領が良い人は、
ある程度できてしまう。
だから、
そもそも問題意識が生まれにくい。
すると、あとから、
“成熟期の落とし穴”
にハマることがあります。
2章:タイミングの影響
では、
成熟期の落とし穴とは何なのか。
その前にまず、
導入期、成長期、成熟期の違いを整理してみます。
導入期は、
そもそも“知られていない”時期です。
それは何なのか。
誰の役に立つのか。
なぜ必要なのか。
ここを分かりやすく伝えないと、
なかなか興味を持ってもらえません。
つまり導入期は、
説明する力が問われます。
でも、
成長期に入ると、
少し話が変わります。
認知が広がってくる。
求める人が増えてくる。
しかし、
提供できる人はまだ少ない。
つまり、
需要に対して、
供給が足りていない状態です。
この時期は、
極端に言えば、誰でも売れやすい。
少し動くだけでも、
反応が出る。
多少やり方が粗くても、
結果につながる。
説明が多少足りなくても、
相手の方から興味を持ってくれる。
その中でも、
要領が良い人は、流れをつかむのが早い。
だから、
早い段階で結果を出しやすい。
すると、
「簡単じゃん」
「意外と余裕かも」
「自分って、
けっこう仕事ができる方かも」
と思いやすくなります。
もちろん、
それ自体が悪いわけではありません。
成長期の流れに乗れることも、
要領よく動けることも、
大きな強みです。
ただ、
成長期と成熟期の違いは、“必ず”あります。

3章:それって、実力?
一言でいえば、
「なぜ売れたのか」
を考える時間を取っていない。
ここに、
成長期の落とし穴があります。
自分に実力があったから売れたのか。
自分の伝え方のうまさや、
提案力があったから売れたのか。
それとも、
需要があったから売れたのか。
競合が少なかったから売れたのか。
タイミングが良かったから売れたのか。
ここを整理しないまま、
結果だけが先に出てしまうことがあります。
たとえば、
ゴルフの話に戻すと、
運動神経がよかったり、
感覚をつかむのが早かったりすると、
自己流でも、
スコア100前後までは、
わりと早く行ける人がいます。
ゴルフをしない人には、
少し分かりにくいかもしれませんが、
100前後というのは、
まったくできないわけではない。
ある程度は、
形になっている。
そんな状態です。
でも、
そこから伸び悩むことがあります。
なぜなら、
最初はセンスや勢いで進めても、
ある段階からは、
基礎や土台の差が出てくるからです。
仕事でも、
同じようなことがあります。
成熟期に入ると、
需要よりも供給が増えます。
似たような商品やサービスも増える。
お客さんも比較するようになる。
すると、
ただ動けば売れる、
という状態ではなくなります。
選ばれる理由が必要になる。
他との違いを伝える力が必要になる。
相手の不安や迷いを理解する力が必要になる。
そこで初めて、
基礎や本質の差が出てきます。
成長期は、
要領が良ければ、
早い段階で結果が出ることがあります。
でも、
その結果が何によって生まれたのかを、
整理しないまま進んでいると、
成熟期に入った時に、
修正や応用が効きにくくなることがあります。
怖いのは、
最初から失敗することではありません。
ある程度、
うまくいってしまうことです。
うまくいってしまうからこそ、
本当は何が効いていたのかが、
見えにくくなるのです。

4章:ゆでガエル
ゆでガエル現象は、
ご存じの方も多いと思います。
簡単に言えば、
急な変化には気づけても、
少しずつ起きている変化には、
気づきにくい。
という話です。
仕事でも、
似たようなことがあります。
環境は、
少しずつ変わっています。
昨日と今日では、
大きな違いはない。
先月と今月でも、
そこまで変わったようには見えない。
でも、
半年、一年と経つうちに、
気づけば前提が変わっていることがあります。
以前は、
比較されなかったことまで、
今は細かく比較される。
以前は、
他との明確な違いになっていたものが、
今は選ばれる理由になっていない。
でも、
その変化は、
ある日突然起きるわけではありません。
少しずつ、
少しずつ、
変わっていきます。
だからこそ、
気づきにくい。
ここで効いてくるのが、
過去の経験値です。
導入期から関わっている人は、
うまくいかない経験もしています。
思うように伝わらない。
なかなか反応が出ない。
必要性が伝わらない。
そういう苦労をしながら、
少しずつ修正してきた経験があります。
その経験値は、
あとから効いてきます。
反応が変わった時。
競合が増えた時。
今まで通じていたことが、
通じにくくなった時。
過去に試行錯誤してきた経験があるから、
小さな違和感に気づきやすい。
「あれ、前と少し違うかもしれない」
「お客さんの反応が変わってきたかもしれない」
「今までの伝え方では、
少し弱くなっているかもしれない」
そう感じる感覚が、
少しずつ育っています。
でも、
成長期に参入して、
早い段階で結果が出てしまうと、
失敗や試行錯誤の経験値が、
少ないまま進んでしまうことがあります。
すると、
環境が少しずつ変わっていても、
その変化に気づきにくい。
反応が鈍くなっていても、
なぜ変わったのかが見えにくい。
競合が増えたことで
選ばれる前提が変わったことに気づきにくい。
ここに、
成熟期の難しさがあります。
大きく変わったようには見えない。
でも、
少しずつ前提は変わっている。
その変化に気づけるかどうか。
その時に、
過去の失敗や試行錯誤の経験値が、
あとから効いてくるのです。

まとめ
ここまで、
ある程度できてしまう人ほど、
問題意識を持ちにくいこと。
結果が出たとしても、
それが本当に実力だったのかは、
分かりにくいこと。
そして、
失敗や試行錯誤の経験値が少ないと、
少しずつ起きている変化に、
気づきにくいこと。
このあたりを考えてきました。
非効率に見える時間は、
その時だけを見ると、
遠回りに見えるかもしれません。
思うように伝わらない。
なかなか反応が出ない。
必要性が伝わらない。
何度も試して、何度も修正する。
一見すると、
効率が悪いように見えます。
でも、
その経験は、あとから効いてきます。
うまくいかなかった経験があるから、
小さな違和感に気づきやすくなる。
試行錯誤してきた経験があるから、
変化が起きた時に修正しやすくなる。
何度も伝え方を変えてきた経験があるから、
状況に合わせて応用しやすくなる。
つまり、
非効率に見える時間の中で、
修正する力。
応用する力。
違和感に気づく力。
そういうものが、
少しずつ育っていきます。
だから、
非効率に見える時間は、
ただのムダではありません。
それは、
あとから効いてくる経験値を、
積み重ねている時間でもあります。
次回は、
この話を、
集客に置き換えて考えていきます。
続きはこちら▼▼

