あなたは騙されない自信があるか?映画『ピエロがお前を嘲笑う』(2014年)
2021.01.21 Thursday
ドイツ映画はテクノ!らしく「テクノな音楽最高!」という感想を見かけるけど、物語に引き込まれ過ぎて音楽なんて覚えてない(ダメじゃん)。
それにしても面白かった。まさかの展開。どんでん返しに次ぐどんでん返し。構成が重厚な点がドイツっぽいイメージ。仮想空間であるウェブ上(ダークウェブ)でのやり取りを、地下鉄に見立てて表現するシーンや、ピエロの扮装で4人が歩いていくシーンなど、オシャレで絵になる映像が満載。

4人組ハッカーグループによるスリリングなテクノスリラー
ひょんなことでベンヤミンとともにハッカーグループCLAY(=clown laughs at you(ピエロがお前を嘲笑う))を組むことになる3人組もいい味出している。
ベンヤミンを仲間に入れたマックスは、お調子者でカリスマ性のある野心家。全身刺青のシュテファンは陽気でマックス以上にお調子者だけど、いざというときにはさっさと逃げ出そうとする薄情者。唯一お調子者じゃないパウルは最初なかなかベンヤミンを仲間として認めようとしない。でも仲間だと認めたら最後まで「仲間を見捨てたりしない」と言ってくれるいい奴。そんなキャラも描かれる。

5分で読めるネタバレ(※ここからはネタバレあり)
CLAYの4人組はかなり子どもっぽく、「承認欲求の塊」みたいな人たち。
ほかのハッカー集団がわかりやすく「犯罪」に手を染めるのに対して、彼らは「ちょっとしたいたずら」を繰り返す。そのせいで、ハッカー集団にもハッカーを追いかける組織にも相手にされない。
相手にされないことで、どうにか相手にされたいと、行動がどんどんエスカレートしていく。ついに国家レベルのハッキングをするようになり、ほかのハッカー集団から命を狙われるようになる。
主人公以外の3人が殺されてしまい、助けを求めて主人公は出頭する。そこで彼が今までのことを語った結果、彼には「多重人格」の疑いが浮上。
そう、今まで4人組だと思っていたCLAYは、すべて主人公のベンヤミン一人だった。
ここで一つ目のどんでん返し。
ここまでなら、「どこかで見た映画の焼き直し」かもしれないが、本作はこれだけでは終わらない。
捜査官の勧めで自身のすべての情報を消し、新しいアイデンティティを手に入れた彼が髪を染めて乗り込んだフェリーには、4人(3人+マリ)の仲間が待っていた。そう、多重人格のふりをしたのは、仲間を守るためだったのだ。
どんでん返しに次ぐどんでん返し。
映画はここで終わる。
あなたはこのオチが読めたか?
本作の1つ目のどんでん返しは『ファイト・クラブ』にちょい似てるなと思ったらやっぱ影響を受けているらしい。ほかに『ユージュアルサスペクツ』と比較されることも多いそうだ。
たぶんフツーに見たらこのラスト、2つ目のオチは読めない。そしてラストまで見たところで、ふいにこの邦題の意味がわかる。
この邦題のセンスの良さだけで50点くらい上げたい。映画も80点はつけられるので私的には130点くらいの映画。もう一度テクノ音楽を味わいながらじっくり細部まで見たい。
2015年にハリウッドリメイクが決定したらしいんだけど、ハリウッドリメイクでそれをどこまで再現できるか?いや別物にするのか?
スタイリッシュさと豪華さは両立しないことが多い。低予算映画が時にスタイリッシュにまとまるのは、クールさとはシンプルさに直結するから。予算掛け過ぎて大げさにしてしまうと、それはなくなるよねぇ。
ドイツ映画といえば「ラン・ローラ・ラン」もすごく面白かった。こっちは映画の構成上バックに流れるテクノ音楽もバッチリ覚えてる。いいなドイツ映画。
『ピエロ』のハリウッドリメイク、まだかなー。ラストがわかってても楽しめるといいのだけど。
キャスティングメンバーの実年齢に驚き
驚いたのが、CLAYのメンバーが、結構年齢が上なこと。
2014年の公開時の彼らの年齢は以下の通り。
ベンヤミン: トム・シリング(1982年2月10日生まれ) - 32歳
マックス: エリアス・ムバレク(1982年5月29日生まれ) - 32歳
シュテファン: ヴォータン・ヴィルケ・メーリング(1967年5月23日生まれ) - 47歳
パウル: アントニオ・モノー・Jr(1975年6月22日生まれ) - 39歳
マリ: ハンナー・ヘルツシュプルンク(1981年9月7日生まれ) - 33歳
ヒロインの女の子は女子大生役だったのに、撮影当時32~3歳くらいだったのね。無理なく女子大生に見えたのがスゴイ。

主人公とリーダーのマックス役の人が同じ年ってのも驚きだけど、全身刺青のシュテファンは全員30代の中でも一人年上のアラフィフで、Wikiの写真がめっちゃまじめで笑える。

余談だが、前日に「スーパーヒーローにあこがれる映画(後半に描く「キックアス」)」を見たばかりなので、主人公・ベンヤミンの供述に「透明人間みたいな自分を変えたくて、スーパーヒーローになりたかった」というのが出て来て既視感を覚えた。
同じ「スーパーヒーローに憧れた少年」のその後を描く作品としては、対極にあるこの2本、その違いについて、次の『キックアス』で語ってみたい。
ピエロがお前を嘲笑う Who Am I - Kein System ist sicher
監督 バラン・ボー・オダー
脚本 バラン・ボー・オダー、ヤンチェ・フリーセ
製作 クイリン・ベルク、マックス・ヴィーデマン
出演者 トム・シリング・・・ベンヤミン: 主人公で天才ハッカー。学校ではいじめられっこ。
エリアス・ムバレク・・・マックス: 野心家のハッカー。ベンヤミンと「クレイ」を結成。
ヴォータン・ヴィルケ・メーリング・・・シュテファン: 弱点探索の得意なハッカー。無謀。
アントニオ・モノー・Jr・・・パウル: ハードウェア寄りのハッカー。慎重。
ハンナー・ヘルツシュプルンク・・・マリ: ベンヤミンの中学時代の同級生。
シュテファン・カンプヴィルト・・・マルティン・ボーマー: 捜査官。
トリーヌ・ディルホム・・・ハンネ・リンドベルク: ユーロポールの捜査官。
音楽 ミヒャエル・カム
撮影 ニコラウス・スメラー
編集 ロバート・ジェサチュ
製作会社 ヴィーデマン&ベルク・フィルムプロダクション、Seven Pictures、
Deutsche Columbia Pictures Film Produktion
配給 ドイツ Sony Pictures Releasing
日本 ファントム・フィルム
公開 ドイツ 2014年9月25日
日本 2015年9月12日
上映時間 106分
製作国 ドイツ
言語 ドイツ語
