【連載 Vol.4】探求の扉を開く、たった一つの関わり方 ── 「共感」の本質(への入口)
── noteマガジンの連載記事です。
○ はじめに
前回の記事『豊かな土壌の姿とは?——ロジャーズが描いた「成長する人」』では、自己探究の先にある「豊かな土壌」の姿を、ロジャーズの言葉を借りて、具体的に描いてみる試みでした。
それは、完璧な状態ではなく、ありのままの自分として、しなやかに成長し続ける「プロセス」そのものへの誘いに思えました。
では、そのようなかけがえのない生きていくための成長の旅を、聴き手として、どのように支えることができるのでしょうか…

今回は、その探求の扉を開く、とても重要な鍵となる「共感」の本質に、一緒に触れてみたいと思います。
○ 似ているようで、全く違う3つの関わり
「共感の姿勢で関わるのが大切だ」
一度は、耳にしたことがある言葉だと思います。
「相手の気持ちに寄り添う関わり方でしょ?」と思われるかもしれません。
もちろん、その通りなのですが、私たちは無意識のうちに、よく似た二つの関わり方と、これを混同してしまいがちなのです。
それが、「同情」「同感」そして「共感」です。
この3つは、似ているようで、話し手との関わりの質が全く異なります。
1.同情(Sympathy)
これは、「かわいそうに」「気の毒に」と、相手を自分より一段、下に見てしまうような関わりです。
もちろん、相手を思う優しい気持ちから生まれるものかもしれませんが、嫌な感じもしませんか?
その眼差しは、相手を「助けられるべき弱い存在」と見なすことで、その人が本来持っている成長の力を、無意識に奪ってしまう(無力化)ことがあるのかもしれません。
私なら内心で(もやっ…イラッとしそうです笑)
2.同感(Agreement)
これは、「わかる!」「私も同じ経験をしたよ」と、自分の経験や価値観に強く重ね合わせる関わりです。
一見、相手に深く寄り添っているように感じられますね。
しかし、その関わりの中では、いつの間にか話の主役が自分に移り、自分の物差しを相手に当ててしまう関係性になります。
相手が感じている、その人だけのユニークな体験を、軽視してしまう危険性もはらんでいます。
この辺りは、私の個人ブログの過去記事でも触れています。
3.共感(Empathy)
では、「共感」とは、どのような関わりなのでしょうか。
それは、良い悪いの評価や判断、分析・ジャッジから別のところにあります。
たとえ、それが自分の価値観にはなかった話であったとしても、もしくは理解できなさそうな話であっても、です。
(どんなお話でも同感しようとは、言っていないためです。)
ただ、話し手の世界に没入し、その人が見ている世界を、その人の隣で、感じ入るように、身体感覚や内臓感覚とともに沁み込ませていくようなプロセスです。
「同情」のように、上下関係は生まれません。
「同感」のように、自分の経験で相手を塗りつぶすこともありません。
この「共感」によって育まれた安全な空間だけが、人が安心して自己探究の旅に出るための、唯一の扉を開くのかもしれません。
(※ 意味だけ知っても出来るわけでないため、そのための具体的なステップも傾聴メンバーさんと共有して、実践練習を重ね続けています。)
もっと、しっかりと知りたい方は、以下の書籍を推奨いたします。
○ ロジャーズが示した、3つの基本態度条件
この「共感」は、ロジャーズが示した、自己探究を支えるための3つの基本態度条件(中核三条件)の一つです。
参考までに、もう2つ『無条件の積極的関心 (Unconditional Positive Regard)』と、『自己一致 (Congruence)』については、こちらの記事でも触れています。
https://work.honwaka.club/archives/3591
これら三つが揃った時、人は最も深く、自分自身の心を探求できると言われています。
もっと、しっかりと知りたい方は、以下の書籍を推奨いたします。
○ 次回の予告
今回は、自己探究の旅に不可欠な「共感」の本質に触れてみる試みでした。
それは、ただ優しいだけではなく、相手の世界を深く尊重する、誠実な関わり方のようですね。
しかし、ただ共感的に聴くだけで、本当に人は変われるのでしょうか。
時には、相手の成長を信じるからこそ、安易に同調しない姿勢も必要になるかもしれません。
次回、いよいよ最終回です。
セラピスト自身のあり方と覚悟、「鏡になる勇気」について触れ、この旅を締めくくりたいと思います。
【Vol.5】鏡になる勇気——セラピストの覚悟と「伴に成長する」ということ に続きます。
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