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人を大切にする経営には、先に与える力がいる

 人を大切にする経営を考える時、避けて通れないものがあります。

それは、お金です。

人を大切にしたい
社員に前向きに働いてほしい
挑戦してほしい
成長してほしい

そう思うなら、想いだけでは足りないことがあります。

給与
雇用
働く環境
挑戦できる余白
安心して失敗できる土台

こうしたものを整えるには、やはり稼ぐ力が必要です。

私は、給与は満足要素というより、不満要素になりやすいものだと思っています。

給与が上がったからといって、人がずっと満足し続けるわけではありません。
でも、ちゃんと払われていない。
頑張っているのに報われていない。
生活の不安がある。

そう感じている状態で、
「もっと頑張ろう」
「前向きに挑戦しよう」
と言われても、なかなか難しいと思います。

人を大切にする経営には、まず安心できる足場が必要なのだと思います。


自分で選んだ苦労を、社員に押しつけてはいけない

年配の創業経営者の方から、
「昔はもっと大変だった」
「今の人は恵まれている」
という話を聞くことがあります。

もちろん、その苦労を否定したいわけではありません。

裸一貫で会社を作る。
食べることにも苦労しながら、事業を続ける。
創業期を幹部と一緒に乗り越える。

そこには、本当に血のにじむような努力があったのだと思います。
その努力がなければ、今の会社はなかったはずです。

でも、その苦労を、今の社員にそのまま求めるのは少し違うと思っています。

創業者は、自分でその道を選んだ人です。
苦労もあったと思いますが、成功すれば、株や報酬や立場として自分に返ってくるものもあったはずです。

だから、自分で選んだ苦労を、社員に美談として押しつけてはいけないと思います。

従業員を雇ったなら、やっぱりみんなにいい思いをさせたい。
少なくとも、そういう気持ちは持っていたい。

社員には我慢を強いながら、経営者やその家族だけが豊かに暮らしている。
そういう姿は、私はかっこいいとは思えません。


挑戦は、安心できる足場があって初めて生まれる

以前、会社を任されていた時に、大きな危機がありました。

売上が一時的に大きく落ち込み、先がまったく見えない時期でした。
キャッシュもどんどん減っていき、このまま続けば会社はどうなるのかと、正直かなり具体的に想像しました。

社員も当然、不安だったと思います。
お客様が減っていることも分かる。
報道でも不安を煽られる。
いつまで続くかも分からない。

その時に私が大切にしたのは、
社員の雇用を守ること。
給与を減らさず、ちゃんと出すこと。

そのうえで、
今しかできないことをやってみよう
と伝えました。

ただ「挑戦しよう」と言ったわけではありません。

まず、安心できる足場を整える。
そのうえで、今まで忙しくてできなかったこと、後回しにしていたこと、諦めていたことに挑戦してみる。

すると、みんながそれぞれの立場で、自分にできることを一生懸命やってくれました。

この経験から感じたのは、
人は「やれ」と言われただけで頑張れるわけではないということです。

挑戦は、不安定な足場の上では生まれにくい。
安心できる足場があって初めて、人は前に踏み出せる。

人に力がないのではなく、
力を出せる状態が整っていないだけのこともあります。


ギブアンドテイクは、順番が大事

私は、ギブアンドテイクは順番が大事だと思っています。

先に与えるから、返ってくる。
先に信じるから、相手も応えようとする。
先に安心できる足場をつくるから、人は挑戦できる。

もちろん、無駄遣いをすればいいという話ではありません。
お金は有限です。
会社は続かなければいけません。

でも、人が前向きに頑張るために必要なお金はあります。

給与
教育
働く環境
挑戦できる余白
任せられる機会
安心して失敗できる土台

こうしたものにお金を使うことは、単なるコストではないと思います。

人にまつわる仕事は、すぐに費用対効果が見えにくいことがあります。
研修をしたから明日売上が上がるわけではない。
制度を整えたからすぐ利益が出るわけでもない。

でも、人への投資は、社員への信頼を形にする仕事なのだと思います。

社員の未来を信じる。
会社の未来を一緒につくっていく。
そのために、先に環境を整える。

そういうことにしっかり向き合える経営者は、かっこいいと思います。


頑張り損をなくすことも、経営者の仕事

私は、頑張ろうとしない人はいないと思っています。
ただ、頑張り方が間違っていることはあります。

本人は一生懸命やっている。
でも、会社が向かう方向とズレている。
本人の努力が成果につながらない。
周りからも評価されない。

これほどもったいないことはありません。

だから、評価制度や組織づくりで大事なのは、社員の頑張り損をなくすことだと思っています。

頑張る方向を、会社の未来とつなげる。
本人の努力が、本人の成長にも、会社の成長にもつながるようにする。

ここで大事なのは、頑張る方向を「揃える」ことではなく、
整えることだと思います。

揃えると言うと、全員を同じ形にするように聞こえます。
でも、本当に必要なのは、一人ひとりの力が会社の向かう方向とつながるように整えることです。

それも、経営者の大事な仕事だと思います。


還元する順番を間違えない

社会貢献や寄付をしている会社を見ると、素直にすごいと思います。
会社が利益を出し、その一部を社会に返していく。
それ自体は、とても価値のあることです。

でも、その一方で、もしその会社の社員が疲弊していたら、少し違和感があります。

誰の頑張りがあって、その表彰を受けているのか。
誰の努力があって、その社会貢献ができているのか。

遠くの誰かに還元する前に、
まず身近で支えてくれている人に還元できているか。

ここは、経営者として忘れてはいけないことだと思います。

もちろん、社員だけ見ていればいいという話ではありません。
お客様も、地域も、社会も大事です。

でも、足元で頑張ってくれている人を疲弊させたまま、外に向けて良いことをしているように見せるのは、どこか順番が違う気がします。

還元する器は、遠くを見る前に、まず近くにいる人をちゃんと見ることから始まるのだと思います。


先に与えるために、稼ぐ力がいる

稼ぐ力は大事です。

稼げなければ、守れないものがあります。
続けられない想いがあります。
社員に返せないものがあります。
未来に投資できないことがあります。

でも、稼ぐ力だけでも足りません。

能力がある人ほど、考え方がズレると大きなズレを生みます。
稼ぐ力がある人が、自分のことだけを考えれば、より大きく自分だけの世界を作ってしまう。

逆に、稼ぐ力がある人が、周りに還元する器を持てば、より多くの人を喜ばせることができます。

これは経営者だけではなく、幹部社員も同じだと思います。
優秀な人ほど、考え方が大事です。
力がある人ほど、その力をどこに向けるかが大事です。

だから、幹部社員ほど考え方の共有が必要になります。
能力だけではなく、何を大事にするのかをつなげておく必要があります。

人を大切にする経営は、気持ちだけでは成り立ちません。
想いを形にするには、力が必要です。

大事なのは、何のために稼ぐのか。
そして、得たものを誰にどう返すのか。

そこに、その人の器が出るのだと思います。

人を大切にする経営には、
想いだけではなく、
先に与えるための稼ぐ力が必要なのだと思う。


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