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警察小説と漫画のコラボ

警察小説をコミカライズ(漫画化)したものについて以下の記事にしましたが、警察小説の人気シリーズに漫画のキャラクターが登場したり言及されていることもあります。

ここではシティハンター、こち亀、パトレイバーがコラボしているところをご紹介します。


大沢在昌の描く冴羽獠

大沢在昌の新宿鮫シリーズの鮫島はその名の通り新宿署生活安全課に勤める警察官ですが、北条司のシティハンター(及び続編、というよりパラレルワールドのエンジェルハート)の冴羽獠もまた新宿を拠点とするスイーパー。
なのでその2人が面識があっても不思議はありません。
『鮫島の貌 新宿鮫短編集』に収録の『似た者どうし』に鮫島の彼女であるロッカーの晶の視点で冴羽獠とその相棒の槇村香が描かれています。以下の引用でのあいつ、とは鮫島のことです。

「やあ、君たち。仲よく何してるのかなあ」
やけに明るい声で、割って入った男がいた。くせっけのある髪をしていて、Tシャツにブルゾンを着た、あいつと同じ年くらいの男だ。いつのまにそこに現われたのか、まるで気づかなかった。妙にヘラヘラとしているが、目が笑っていない。

大沢在昌『似た者どうし』

ここでは鮫島が獠のことを黙認している様子も描かれています。
タイトルは似た者どうしで、確かに晶と香は似た者どうしかもしれません。
ちなみにその晶のキャラクターをギャグ方面に最大限活用したのが月村了衛『ガンルージュ』です。群馬の中学教師で名前も違いますが、明らかにそれと分かる記述があります。
香の兄はもとは警察官でしたが、鮫島がその槇村と同じ署だったという設定となっています。なおその槇村と冴羽が相棒だった頃は最近の鈴木亮平主演のNetflix実写映画でも描かれていました。
なお、エンジェルハートセカンドシーズンの最終16巻には北条司の描く鮫島と晶が出てきます。

大沢在昌の描く両津勘吉

この新宿鮫短編集には『幼な馴染み』という、鮫島視点で両津勘吉を描いた作品もあります。言わずとしれた秋本治の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両さんです。
ここでは新宿署鑑識の藪が両津と幼な馴染みという設定で、鮫島と晶と藪が浅草に行った時に両津に出会います。

その店先からひとりの男がでてくるところだった。革のジャンパーを着け、岩を彫ったようないかつい顔立ちで、太い眉がつながっている。年齢や職業の見当がつきにくく、小柄だががっちりとした体つきから、職人のように見えた。

大沢在昌『幼な馴染み』

新宿鮫シリーズでは藪が医者にならなかった理由として名前が藪だからと言及されますが、その設定を藪の幼な馴染みの両さんがあっさり一言でひっくり返します。
掏摸の扱いや晶への気遣いなど両さんらしさが満載の一編となっています。

なおこの『鮫島の貌』の巻頭には以下の但し書きがあります。

※「似た者どうし」は、漫画「エンジェル・ハート」(作・北条司)の一部キャラクターを使用して書かれた作品です。
※ 「幼な馴染み」は、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(作・秋本治)の一部キャラクターを使用して書かれた作品です。

大沢在昌『鮫島の貌』巻頭但し書き

また、こち亀の文庫版2巻には巻末に大沢在昌の解説エッセイ「大人のマンガ」が収録されており、漫画へのスタンスを明らかにしています。

私は「マンガの好きな」 小説家、ということになっている。もう少し格好をつけると、「マンガを理解する」あるいは「マンガにうるさい」という意味でもあるらしい。(中略)
たまたま小説家というだけで、「マンガが好きですよ」というと、人は「ヘー」と驚いた顔をする。ただ好きなだけでなく、仲間とマンガの原作もやっている。
小説より、はるかに身近な表現方法がマンガ、という世代なのである。

こち亀文庫版2巻 解説エッセイ「大人のマンガ」


逢坂剛の描く両津勘吉

新宿鮫とこち亀のコラボはもともとはこち亀の小説版企画が初出でした。この小説こち亀には大沢在昌のほかにも、逢坂剛、今野敏、柴田よしきと警察小説の書き手が目白押しです。
作家本人がモデラーでもある今野敏は、プラモデルネタですが、自身のシリーズのキャラは登場させていません。
また柴田よしきは元刑事で幼稚園の園長兼探偵の花咲を起用していますが、警察小説とは言えません。
そんな中、逢坂剛は御茶ノ水署シリーズとコラボさせています。
両津と麗子が御茶ノ水署に研修にやってきたという設定です。

サトは、軽く眉をひそめてから、もう一人の男を示した。
「そちらが、同じく地域課同派出所勤務の、両津勘吉巡査長。仲良く頼みますよ」
両津勘吉、と呼ばれたいかつい男がこくんとうなずき、横柄な口調で言う。
「両津です。よろしく」
梢田は、両津をつくづくと見た。
濃い眉毛が、数字の3を左へ九〇度寝かせたような格好で、目の上にかぶさっている。

逢坂剛『決闘、ニ対三!の巻』

御茶ノ水署シリーズ自体がドタバタのスラップスティックコメディですが、そこに両さんを投入してさらなるドタバタを狙ったような作品です。


今野敏の描く後藤喜一

機動警察パトレイバーはゆうきまさみの漫画のほか、テレビシリーズのアニメ、押井守の劇場版のアニメや実写版のほか、横手美智子の小説版もありいろいろとメディアミックスされています。
今野敏の安積警部補シリーズに警備部の謎の装備を持つ部隊として特車二課が登場します。作者と押井守との親交によるので、漫画版というよりは劇場版とのコラボというべきかもしれません。

「後藤喜一。カミソリ後藤だよ」
安積は驚いた。
「後藤は、公安にいたんじゃないのか?」
「警備部に異動になって、特車二課に配属されたらしい」
後藤喜一は、安積や速水と同期だった。若い頃から優秀な警察官で、安積などは話をするだけで劣等感を抱いてしまいそうだった。
年を経るにつれて、昼行灯などといわれるようになったそうだが、それはおそらく処世術を身につけたからではないかと、安積は思っていた。
「そうか。東京湾臨海署の別館に後藤が来るのか......」
速水が妙に苛立っている様子なのは、そのせいかもしれないと思った。 速水は昔から後藤をライバル視していた。だが、後藤のほうは、交通警察など歯牙にもかけないという態度だったのだ。

今野敏『夕暴雨』

安積と交機隊の速水が同期の安積班シリーズですが、なんと特車二課の昼行灯、後藤警部補も同期だったようです。ルパン三世と名探偵コナンのコラボで銭形警部と目暮警部が同期という設定がありましたが、個人的にはそれ以上のインパクトでした。
情報通でいつも余裕のある速水が苛立つというのも実は相当なことです。なお特車二課の面々は直接は登場しません。


押井守が特車二課を描いた小説もあります。ただお馴染みの特車二課の面々ではありません。ここに相互乗り入れ的に安積班の須田達が登場してきていました。警察小説というよりはサッカー小説でしたが。


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