斎藤知事の四宮神社参拝は「私的」だったのか――「知事の秘書」連絡、知事名看板と政教分離
【2026年8月2日 加筆・訂正】 初出では、参拝先を「西宮神社」「生田神社」と記していましたが、兵庫県の公式会見録で確認できる舞台は、神戸市の四宮神社です。固有名詞を訂正します。
また、タイトルと本文で用いた「出禁」「政教分離違反の決定的な証拠」という表現は、現時点で確認できる資料を超えた断定でした。本件について裁判所の判断はなく、神社が正式な立入禁止処分を出した事実も確認できません。これらの表現を撤回したうえで、県職員の関与や「兵庫県知事参拝」と記した看板が、知事のいう「私的参拝」と整合するのかを検証します。
2026年1月4日、兵庫県の斎藤元彦知事が、神戸市の四宮神社を参拝しました。
斎藤知事は、1月7日の定例記者会見で、この参拝は「プライベート」だったと説明しています。公用車は使わず、初穂料にも公費を支出していないという説明です。
その一方、会見では、神社の入り口に「1月4日 兵庫県知事参拝」と書かれた看板が置かれていたことや、「知事の秘書」から事前連絡があったとする宮司への取材結果が示されました。
私的な参拝だったのなら、誰が、どの立場で神社へ連絡したのでしょうか。なぜ「斎藤元彦氏」ではなく、公職名を使った「兵庫県知事参拝」という看板が用意されたのでしょうか。
本件だけで政教分離違反と断定することはできません。しかし、「公用車と公費を使っていないから私的参拝だ」という説明だけで、すべての疑問が解消したともいえません。
県の公式会見録から確認できること
まず、事実と、会見で記者が提示した取材内容を分けて整理します。
兵庫県が公開した2026年1月7日の知事会見録では、記者が四宮神社への参拝について質問しています。会見録から直接確認できる斎藤知事の説明は、次のとおりです。
1月4日に四宮神社を訪れたこと自体は否定していない
参拝はプライベートだった
公用車は使っていない
初穂料に公費は使っていない
自分には私設秘書はいない
一方、記者は宮司への取材結果として、次の内容を示しました。
神社には事前に「知事の秘書」から連絡があった
当日、入り口に「1月4日 兵庫県知事参拝」と書かれた看板があった
神社側は、知事の参拝を公的な性格のあるものと受け止めていた
ここで注意が必要です。県の公式サイトに会見録が掲載されているからといって、記者が述べた取材内容のすべてを県が事実認定したことにはなりません。看板や事前連絡については、記者が宮司への取材結果として示した内容です。神社が独自に公表した資料も、この記事の更新時点では確認できていません。
それでも、知事自身が会見の場で具体的に問われた重要な論点であることは確かです。知事は「私設秘書はいない」と述べましたが、では連絡したのは誰だったのか、県職員だったのか、支援者だったのかについて明確な説明はしていません。
「公用車なし・公費なし」だけでは決まらない
知事にも、一個人として信教の自由があります。私費で神社に参拝すること自体が、直ちに憲法違反になるわけではありません。政治家と宗教施設の接触を、すべて禁止するのが政教分離でもありません。
憲法20条は国やその機関による宗教的活動を禁じ、89条は公金その他の公の財産を宗教上の組織・団体のために支出、利用することを制限しています。裁判では、行為の目的と効果、社会的・文化的な背景、行政と宗教との関わり方などを総合して判断してきました。
そのため、本件を考える際には少なくとも、次の要素を確認する必要があります。
参拝の目的は、純粋に個人的なものだったのか
神社への事前連絡に県職員や県の設備が使われたのか
連絡は勤務時間中に、公務として行われたのか
「兵庫県知事参拝」という表示を、誰がどのような経緯で依頼・了承したのか
初穂料以外に、県の人的・物的な資源が使われていないか
一般の参拝者から見て、県知事としての公式行事に見える態様ではなかったか
公用車を使わず、初穂料を私費で支払ったという説明は重要です。しかし、それは判断材料の一部にすぎません。県職員が知事の肩書で事前調整をしていたのであれば、金銭の支出がなくても、公務と私事の境界が問題になります。
「私的です」と名付ければ私的行為になるわけではありません。実際に誰が動き、何のために公職名が使われたのかが問われます。
参拝者がその場から外された問題は、別に検証すべきだ
同じ会見では、知事の参拝時に起きたとされる、別の問題も質問されました。
1月7日の会見で記者は、参拝に訪れた元アナウンサーの男性について、女性の知事支持者が「暴力を振るった人物だ」「反知事側の人間だ」などと神社側へ伝え、その場から外すよう求めた、とする宮司への取材内容を紹介しました。女性は自らを氏子だと説明したものの、宮司が地域の関係者に確認したところ氏子ではなかった、という説明も会見で示されています。
さらに2月10日の会見で記者は、宮司が男性に謝罪し、「神様は誰でも受け入れる」という趣旨の話をした、と改めて説明しました。
ただし、ここでも確認できるのは、記者が宮司への取材結果として会見で述べた内容です。女性の発言、宮司の認識、当日の詳しい経緯について、すべての当事者から一致した説明が出ているわけではありません。「四宮神社が男性を正式に出入り禁止にした」と断定できる資料もありません。
したがって、この出来事をそのまま政教分離の問題と結び付けたり、「神社による出禁」と表現したりするのは正確ではありません。
一方で、もし政治的な立場を理由に、一般の参拝者が排除されたのであれば看過できません。宗教施設が政治的対立の選別場所になってはならないからです。誰が排除を求め、神社側は何を根拠に対応し、その後どのように事実を確認したのか。これは政教分離とは分けたうえで、説明されるべき問題です。
資料を示されても「知らない」で終わらせてよいのか
2月10日の会見で記者は、写真1枚と約11分の動画を県の広報担当を通じて提出したものの、知事が多忙であることを理由に返却された、と説明しました。
斎藤知事は、この日の会見でも詳しい事情を把握していないという趣旨の答弁を繰り返しました。支持者による排除行為について一般的な見解を求められても、個別の事情が分からないとして明確な評価を避けています。
1月7日の質問だけで詳細を答えられなかったことは理解できます。しかし、その後に具体的な写真と動画を確認する機会があり、約1か月後の会見でも「分からない」という状態が続いたのであれば、説明責任の果たし方として疑問が残ります。
知事本人が当日のすべてを把握していなかったとしても、県職員が関与した可能性を質問されている以上、県として事実関係を確認することはできます。必要なのは、その場の記憶だけに頼った答弁ではなく、連絡記録や日程調整の有無を調べたうえでの回答です。
斎藤知事と兵庫県に答えてほしいこと
現時点で、政教分離違反が確定したとはいえません。しかし、次の疑問には具体的な回答が必要です。
四宮神社へ事前連絡した人物は誰で、どのような立場だったのか
県職員が関与した場合、その連絡は公務か、私的な手伝いか
県の電話、メール、車両、勤務時間など、公的資源は本当に使われていないのか
「兵庫県知事参拝」という看板は、誰の依頼または了承で用意されたのか
神社側は、なぜ知事個人ではなく「兵庫県知事」と表示したのか
提出された写真と動画を確認せず返却したのはなぜか
参拝者が政治的な理由で排除されたとの指摘について、県は事実確認をしたのか
これらは、知事の個人的な信仰を詮索する質問ではありません。知事個人の行為と、兵庫県という公的機関の活動が混ざっていなかったかを確認するための質問です。
まとめ
四宮神社への参拝が、憲法上の政教分離に違反すると断定できる資料は、現時点ではありません。公用車や公費を使っていないという知事の説明も、無視すべきではありません。
しかし、事前に「知事の秘書」から連絡があったとする宮司への取材内容や、「兵庫県知事参拝」と掲げた看板は、「完全な私的参拝」という説明と簡単には噛み合いません。誰が連絡し、誰が公職名の表示を依頼・了承したのかが分からないままでは、公私の区別が適切だったと確認することもできません。
違憲と断定するには証拠が足りません。だからといって、「私的参拝だった」という一言で検証を終えてよいわけでもありません。
問題の中心は、知事が神社へ行ったことそのものではなく、公的な肩書や人員がどのように使われたのか、県がその事実を確認して説明する意思があるのかです。
政経プラスは、断定を訂正すると同時に、この具体的な説明責任を引き続き問います。
参照資料
▼あわせて読む
・存在しない法律で現行犯逮捕!?四宮神社で起きた「ガチギレ神職」の信じられない大失態
https://note.com/poliplus/n/nabc1677cf775
・神戸の夜景(かまやみひ)アカウント調査
https://note.com/poliplus/n/n8e6beb33b6ba
・「私は氏子よ!」と息を吐くように嘘をつく。斎藤元彦知事を全肯定する「斎藤マダム」たちの恐るべき暴走と現場の光景
https://note.com/poliplus/n/na4213cec3c3d
・ドンマッツ氏が約48時間で釈放――「逮捕すべき事件だったのか」と実名・住所報道を問う
https://note.com/poliplus/n/nb12f1442e5d1
・斎藤知事は重要会議にいつ到着したのか|「1時間遅刻」と公式記録の空白
https://note.com/poliplus/n/nfbdef6dc4034
▼このテーマのまとめ
・兵庫県問題まとめ
https://note.com/poliplus/n/ndae47bad720e
▼有料マガジン
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