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カード売上が消えた日――今年最大の倒産に学ぶ、国の連鎖倒産対策「経営セーフティ共済」

【追記07/08】
一部で、今回の破綻は経営セーフティ共済の対象でないかも…という情報も出ています。また情報が出次第更新します。


先日の、全東信破産の記事が反響をいただいたため、今回その周辺事項で「経営セーフティ共済」という制度に関して、Fable5を活用してリサーチ、当方で編集してまとめました。

2026年7月6日、クレジットカード決済代行の全東信が破産しました。負債約1259億円、今年最大の倒産です。全国の飲食店で「カード決済したのに売上金が入ってこない」という悲鳴が上がっています。自分の会社に落ち度がなくても、取引先が倒れれば明日の入金は止まる。今回は、この「連鎖倒産」に国の制度で備える方法――経営セーフティ共済を解説します。

【はじめに――負債1259億円、今年最大の倒産が示したもの】

2026年7月6日、クレジットカード売上の早期決済代行サービスを手がける株式会社全東信(大阪市)が大阪地裁に自己破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けました。負債総額は約1259億円。今年最大規模の倒産です。

この倒産で深刻なのは、全東信そのものよりも「巻き込まれた側」です。

全東信は、飲食店などの加盟店に対して、カード売上代金をカード会社より先に立て替えて入金するサービスを展開していました。その全東信が突然破産したことで、全国の飲食店・小売店では「カード決済したのに売上金が入金されない」という事態が発生。業界団体が緊急声明を出し、決済端末の使用停止や代替サービスへの切り替えを呼びかける騒ぎになっています。

自分の店は何も悪くない。売上もちゃんと立っている。それでも、取引先が倒れた瞬間に現金が入ってこなくなる――これが「連鎖倒産」のリスクです。

※全東信破産そのものの詳細は、以前の記事で解説しています →

今回はこの事件を教訓に、中小企業・個人事業主が連鎖倒産に備えるための公的制度、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)を解説します。

【経営セーフティ共済とは何か】

経営セーフティ共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する国の共済制度で、正式名称を「中小企業倒産防止共済制度」といいます。その名の通り、取引先の倒産によって売掛金などが回収できなくなったとき、連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐことを目的としています。

制度の柱は大きく2つです。

1つめが、本来の目的である「もしも」への備え。取引先事業者が倒産して売掛金債権等の回収が困難になった場合、無担保・無保証人で、掛金総額の10倍(上限8,000万円)まで共済金の借入れができます。

2つめが、副次的なメリットとして経営者の間で有名な「税務上の扱い」。掛金は法人なら全額損金、個人事業主なら全額必要経費に算入できるため、決算対策としても広く活用されてきました(ただし後述の通り、2024年の税制改正で一部制限が入っています)。

【制度の基本スペック】

・運営:独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)
・加入資格:引き続き1年以上事業を行っている中小企業者・個人事業主(業種ごとの資本金・従業員数要件あり)
・掛金月額:5,000円〜20万円(5,000円単位で自由に設定・増減額可)
・積立上限:掛金総額800万円まで
・共済金借入:取引先倒産時、無担保・無保証人で「回収困難となった売掛金債権等の額」または「掛金総額の10倍(上限8,000万円)」のいずれか少ない額
・掛金の税務:全額損金(法人)/必要経費(個人)。前納分も支払った期に算入可 ・解約手当金:任意解約でも掛金納付40か月以上なら100%戻る(受取時は益金・収入として課税)

【「もしも」のときに何が起きるか――共済金貸付の仕組み】

取引先が倒産し、売掛金債権等が回収困難になった場合、共済契約者は共済金の借入れを申請できます。ポイントは3つです。

◆借りられる額

「回収困難となった売掛金債権等の額」と「掛金総額の10倍(上限8,000万円)」のいずれか少ない方です。月20万円を40か月払い込んで掛金総額800万円に達していれば、最大8,000万円まで借りられる計算になります。

◆無担保・無保証人・無利子。ただしタダではない

担保も保証人も利子も不要ですが、借入額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅します。実質的なコスト負担がある点は押さえておきましょう。

◆対象となる「倒産」に注意

法的整理(破産、再生手続開始など)や取引停止処分などは対象になりますが、「夜逃げ」は対象外です。さらに、取引先の倒産日から6か月を経過すると借入れができなくなるため、被害が判明したら早めに動く必要があります。

このほか、取引先の倒産がなくても、解約手当金の範囲内で事業資金を低利で借りられる「一時貸付金」制度もあり、緊急時の資金繰りの選択肢になります。

【経営者に人気の理由――「節税」の実態は「課税の繰り延べ」】

経営セーフティ共済がここまで普及した最大の理由は、正直なところ税務メリットです。

掛金は月最大20万円、年間最大240万円を全額損金・必要経費にできる
1年分の前納が可能なので、決算直前に「今期は利益が出そうだ」というタイミングで最大240万円を一気に経費化できる
・40か月以上納付すれば、任意解約でも掛金が100%戻ってくる

「経費にしながら積み立てられて、あとで全額戻ってくる」――こう聞くと夢のような制度ですが、冷静に見るべき点があります。

解約手当金は、受け取った期の益金(個人は事業所得の収入)として課税されます。つまりこれは「節税」ではなく、正確には「課税の繰り延べ」です。掛けるときに税金を減らし、戻すときに税金がかかる。トータルの税負担を減らすには、赤字の期や大きな設備投資・退職金支出がある期に解約をぶつけるなど、「出口戦略」の設計が不可欠です。

【重要:2024年10月改正――「解約→即再加入」の節税スキームは封じられた】

かつては「40か月経ったら解約して益金計上、すぐ再加入してまた損金化」というサイクルを回す使い方が一部で横行していました。これに国がメスを入れたのが令和6年度税制改正です。

2024年(令和6年)10月1日以降に共済契約を解約した場合、解約日から2年を経過する日までの間に再加入して支払う掛金は、損金・必要経費に算入できません。

つまり「出し入れ」による利益調整はもう通用しません。改正後の実務では、短期の節税ツールとしてではなく、長期で積み立てて手元流動性と借入枠を確保する「守りの資産」として設計するのが現実的な使い方になっています。

【デメリット・注意点まとめ】

良い制度ですが、注意点も正直に挙げておきます。

  1. 12か月未満の解約は掛け捨て(1円も戻りません)。40か月未満だと元本割れします

  2. 解約手当金は全額課税対象。出口を考えずに解約すると、繰り延べた税金がまとめて襲ってきます

  3. 共済金を借りると掛金の1/10が消滅する実質負担があります

  4. 夜逃げは対象外、倒産から6か月以内の申請が必要など、貸付の条件は意外と厳格です

  5. 解約後2年以内の再加入は掛金が損金にできません(2024年10月以降の解約から適用)

  6. あくまで「借入れ」であり、もらえるお金ではありません

【全東信のケースで考える――「決済代行の倒産」は共済でカバーされるのか?】

ここで冒頭の全東信破産に戻ります。

今回被害を受けた加盟店が持っているのは、商品やサービスを売った相手(お客さん)への売掛金ではなく、決済代行会社に対する「立て替えてもらうはずだった売上代金」の請求権です。

経営セーフティ共済の共済金貸付は、原則として「取引先事業者との取引による売掛金債権や前渡金返還請求権」が対象です。決済代行会社への債権がこれに該当するかは、債権の性質や契約関係によって判断が分かれる可能性があり、一概には言えません。実際に被害に遭われた加入者の方は、自己判断せず中小機構の共済相談室や顧問税理士に確認することを強くおすすめします。

ただ、いずれにせよ今回の事件が突きつけた教訓はシンプルです。

「自社に落ち度がなくても、取引の連鎖のどこかが切れれば、明日の入金は止まる」

売掛金の回収サイトが長い業種、特定の取引先への依存度が高い会社、そして今回のように決済インフラを一社に頼っている店舗ほど、このリスクは他人事ではありません。経営セーフティ共済は、そのリスクに国の制度で備えられる数少ない手段の一つです。

【まとめ】

・全東信の破産(負債約1259億円・今年最大)は、連鎖倒産リスクが「普通に営業している店」を直撃することを示した
・経営セーフティ共済は、取引先倒産時に掛金の10倍・最大8,000万円まで無担保無保証で借りられる国の制度
・掛金(月5,000円〜20万円、累計800万円まで)は全額損金・必要経費。ただし本質は「課税の繰り延べ」であり出口戦略が必須
・2024年10月改正で「解約後2年以内の再加入」は損金算入不可に。短期の節税目的ではなく、長期の守りの資産として設計を
・加入・解約・貸付の判断は、必ず最新の制度内容を中小機構公式サイトで確認し、税理士等の専門家に相談を

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※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務・法務判断を保証するものではありません。実際の加入・解約・借入れにあたっては、中小機構および税理士等の専門家にご確認ください。

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