英国を巡る#28|クレープって呼ばないでね 卵にバターに牛乳を救ったんだもの
本日は3人の登場人物をご紹介します!
英国🇬🇧のシャーロット、米国🇺🇸のライアン、そして日本🇯🇵のさくらです。
「パンケーキ、好き?」シャーロットが聞いた。
「うん好きだよ。あのふわふわの、バターとメープルの…ああ、幸せの味だ」と、ライアン。
そこへさくらも加わって言う。
「わたしも!ふわっふわで、3つに重なっているスフレパンケーキ、大好き。」
シャーロットは首をかしげる。
「ねえふたりとも、何の話してるのよ」
そう言ってシャーロットが見せてきたのは、薄くて大きなペラペラの一枚。
さくら 「これ、クレープよ」
同じ名前なのに、まるで違うもの。
けれど、どちらも幸せの味。
今日は、そんな「パンケーキ」のお話です。
みなさんこんにちは!🇬🇧らんです。
突如小芝居から始まりました今回は、
パンケーキ の巻です!
パンケーキというと、やっぱり思い浮かべるのはふわふわのそれでしょうか?
実はこのスイーツ、地域によって姿を変える食べ物のひとつなんです。
スコーンはアメリカに行けばビスケットだし、
逆にビスケットは英国だとサクサク薄いヤツ。
マフィンにも、イングリッシュマフィンとアメリカンマフィン、があるように。
パンケーキっていったい、いつ、どこで、どう生まれたのさ?
この好奇心がゆえに一枚のパンケーキを追いかけるだけで、気づけば何千年もの歴史を旅することになりました。
紅茶を淹れながら、ゆっくりどうぞ♪
0|はじまりの、名もなき一枚
パンケーキの物語、そのルーツをたどると、
なんと古代ギリシャ・ローマ時代まで遡ります。
驚くほどシンプルな「粉、溶いて、焼く」発想の料理は、何千年も前から人類のおなかを満たしてきたようです。
しかし!
この一枚が先祖様となって「英国パンケーキ」として独自の物語を歩み始めるのは、もう少し先のおはなし。
この一枚の粉モンは、ただの食べ物ではなく
宗教と暮らしを映す料理へと変わっていくのでした。
1|使い切れ!卵にバター、そしてミルク
時は中世ヨーロッパへと進み、
この一枚が突如として食材使い切りメシへと姿を変えます。
いや、卵、バター、牛乳を救うヒーロー!と言った方がよろしいか。
というのも、
当時の人々には卵、バター、牛乳を使い切らねばならない ある締め切り があったのです。賞味期限じゃないよ。
その名も、シュローブチューズデー ー Shrove Tuesday。
(某魔法学校の呪文みたいやな、と英国オタクニヤリ)
イースター前に始まる「四旬節」という断食期間の前日です。
四旬節のあいだは、この3つを控えるのが当時のならわしでした。
簡単にいうと、イエス・キリストが40日も断食するなら、そりゃーわてらも贅沢控えて過ごさねばな!!!ってことです。
そこで断食期間前日に全部ボウルへ放り込み、粉と一緒に鉄板で一気に焼くことにしたというわけ。こうして誕生したのが、薄ーーい その名も「パンケーキ」。
ちなみに名前の由来は、パン(=フライパン)で焼く、ケーキ。シンプルって、素敵ね〜〜
ちなみに当時シュローブチューズデーに教会の鐘が鳴ると、人々は礼拝へ向かっていましたが、この鐘はいつしか「パンケーキ・ベル」と呼ばれるようになり、この日も「パンケーキ・デー」になりました。
礼拝を知らせる鐘であり、パンケーキを示すようにもなった。
信仰と生活が重なり、なんとも実用的にその始まりを見せたパンケーキ氏。
と、
少々長くなりましたが、これこそが英国におけるパンケーキ誕生の物語でした。
ところが、人間というのは実に欲深い生き物でしてね…
使い切るために焼いていたはずが、そのうちこう思い始めます。
どうせなら、もっとおいしくできるな?
ここからパンケーキは、使い切りデザートでなく、新たな道を歩み始めることになるのです。
2|一枚の、ごちそう革命
そんな人類の欲望(いや向上心ともいうべきか)に応えるように、パンケーキ氏は16世紀、エリザベス1世の時代にぐぐっとレベルアップします!
かつて使い切りの一枚だったヤツは、ここいらでちょっとしたごちそうへ。
レシピをのぞいてみると、そこには卵黄、生クリーム、シナモン、ジンジャー、砂糖。ずいぶんと華やかなメンバーが集まってきました!
そしてパンケーキといっても、日本のように高さを競う世界ではありません。むしろ目指したのは、向こうが透けそうなくらい、うーーっすい一枚。
「これ、クレープよ」 うん、さくらよーーーー
その通りである。

英国人のこだわりが、一枚のパンケーキにうすーく詰め込まれたのでした。
けれどこの旅、ご存じの通り、まだ終わらない。
この薄いパンケーキが海を渡ると、また別の物語が始まります。
\もっと厚く、もっとふわふわに!/
人類の欲望、どうやらまだ止まる気がないようです!
3|海を渡れふわふわ
大西洋の向こう、時は19世紀、大きな変化が起きました。
ヤツが普及しはじめたのです。

ベーキングパウダーです。
こやつの普及により、「ふわふわ」パンケーキが姿を表すようになります。
これがいわゆるアメリカンパンケーキの始まり。バターとメープルシロップをたーーーっぷりかけて高く積むスタイルです。
20世紀になるとダイナー文化とともに米国全土に広まり、やがて日本にもやってきた。
こうして、「パンケーキ」という言葉が、同じ言葉を使いながら、海を渡ることで全く別の顔を持つようになったのでした。おしまい。

おわりに
「結局、パンケーキって何なんだ?」ライアンが聞きました。
薄いパンケーキをくるっと巻いて、レモンをぎゅっと搾ってみせるのはシャーロット。「これよ。」
すると、ライアンはバターをのせた、ふわふわのパンケーキを指さします。「いやいや、これだってパンケーキだよ。」
そこへ、さくらが笑いながらスフレパンケーキを運んできます。
「まあまあ。どっちもおいしいんだから、いいじゃない。」
歴史をたどってみると、まあ結局、三人とも正解でしたね。
古代ギリシャ・ローマで生まれた「粉、混ぜ、焼く」というシンプルな粉モン親分。イギリスで宗教と出会い、アメリカでふわふわになり、日本でさらにやわらかく進化。
同じパンケーキという名前でも、その国の歴史や暮らし、人々の「もっとおいしくしたい!」が積み重なって、まったく違う姿になったのです。
ここまで読んでくださったみなさんは、どちらを食べたくなりましたか??
レモンと砂糖で味わう、英国のうすーいパンケーキ。
バターとメープルシロップたっぷりの、ふわふわアメリカンパンケーキ。
私はというと…
何百年も前の人たちと同じように、うすい生地にレモンをきゅっと搾って、砂糖をぱらり。
一枚のスイーツを味わい、ほんの少しだけ歴史を旅してみたいと思います。
(味わい日記を綴る日も近いかもしれません。)
歴史は、教科書の中だけにあるものじゃなく、
こうして温かいお皿の上にも、ちゃんと残っています。
そんなことを考えながら味わう一枚(いや、2枚、3枚…)は、きっとものすごく美味しいパンケーキになる気がしています。
ではまた、次のお話でお会いしましょう🇬🇧
🇬🇧英国を巡る アーカイブはこちら🇬🇧
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