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小説|怪獣のいない春休み③

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【第三章 怪獣はどこへ?】

廊下を歩いて昇降口を通りかかると、下駄箱の前で女子たちが数人で喋っている。
その中にいたのが、今日の大掃除で教室の掃除当番だった青山ユカだった。

ユカの方が先にふたりに気が付き、声をかけてくる。
「あれー?まだいたんだ?」
「おっ、ユカッペ、ちょうどいいところに」
ショウタがユカの方へ駆け寄った。ナツキもあとからゆっくりとついてくる。
「ペをつけるな!なに、どうしたの?」

「俺の怪獣見てない?粘土の」
ユカは一瞬考えて、ああ、とうなずいた。
「教室の後ろにあったやつ?あれすごかったねー、ショウタにもなんとかひとつ取り柄があったわけだ」
「ひとつだけじゃねえよ!それ!見てない?」
「見たって、いつ頃のこと?」
「——大掃除の時はどうだった?ユカちゃん、今日って教室の掃除当番だったよね?」
ナツキが口をはさんできた。ショウタがそうそう、とユカを見る。
ん〜……とユカが眉間にシワを寄せて記憶をたぐっている。
「み……たかなあ?赤と青だもんね、机運ぶ時に目に入ったような気はする」
「掃除終わったあととかさ、あと、帰る時とかは?」
「えー…?知らないよお、私粘土とか興味ないしぃ、大掃除でいっぱいいっぱいだったしぃ」
「ユカだから床掃除してたしぃ」
ショウタがユカの口調を真似てあおる。

「うわ、さむー!——ねー、ショウタの粘土細工ってどっかで見た?」
ユカが女子たちに振り向いて声をかける。
「しらなーい」と即答が返ってくる。
「——だって!じゃ、ほかをあたって!私たちもう帰るからね、ばいばーい!」
ユカはふたりに手を振りながら離れていった。
取り残されたふたりは、顔を見合わせる。
「ちぇっ、役にたたないな!」
「まあまあ……」
口をとがらせたショウタをナツキがなだめた。

「探すっていっても、あとどこだよ?」
「うーん、一回教室戻る?クラスメイトが誰かいるかも」
「だなあ」
そう言ってふたりは教室に戻った。
そこには生徒がひとり、ランドセルを肩にかけようとしていた。
クラス委員のヒロトだ。メガネが光を反射して、キラッと光っている。

「あ、ヒロトくんだ」
「おー、ヒロトいーんちょー!いいところに」
「どうしたの?」
「俺のショウタ2号がなくなっちゃったんだよ!知らない?」
「しょうたにごう……?」
訝しげな顔をするので、「ショウタの粘土細工だよ」とナツキが言い直す。
「ああ、あれね。よくできてたよね。ショウタくんがあんなに器用だとは思わなかったよ」
「それが、さっき取りに来たらなくってさ」
とショウタが言いながら、棚を指さす。
「あ、そうだそうだ、僕も忘れるところだった」
そう言いながらヒロトが棚に近づき、自分の作品を手に取った。

彼の作品は、小ぶりな亀だった。
「うちで飼ってるミドリガメを作ったんだよ」
ヒロトがにっこり笑いながら、丁寧にハンカチでつつみ、手提げ袋にしまった。

「——で、ショウタくんの作品はここからなくなったの?」
「うん、もしかして誰かが落として壊したとか、そういうの見てない?」
「見てないよ」
「あ、ねえ…ヒロトくんって最後にゴミ捨てに行ったよね?」
ナツキが尋ねた。
「うん、行ったよ」
「え、もしかしてゴミ箱に入ってたとかない?」
「——ないと思うけど」
「ほんとかあ?」
「なんで僕を疑うんだよ」
「なんか、役に立たないものを『これは不要』とか言って、捨てそうだから」
メガネをくいっと上げる仕草をするショウタに、ヒロトがあきれた顔をする。

「そりゃあ、教室を汚くするものは僕は嫌いだけど……ショウタくんの作品はゴミじゃないでしょ」
「誰かに壊されてゴミ袋に入ってたりしたら?絶対入ってなかった?ゼッタイ?」
ショウタが食い下がる。
「うーん……もう、わかったよ。じゃあゴミ捨て場を見に行こうか。仕方ないな」
ショウタはさっすがいーんちょー!とヒロトのランドセルをバンバンと叩いた。
ヒロトはふたりより先に教室を出て、ショウタ、少し遅れてナツキがついていった。

校舎外のゴミ捨て場には、各教室でまとめられたゴミ袋が積み重なっていた。
ヒロトがきょろきょろと見回して、自分たちが捨てたあたりからゴミ袋をがさがさと取り出す。
シワが寄っていて見にくいが、袋には「5-2」と黒いマジックで書かれていた。
「——んもー、なんで僕がこんなこと」
とぶつぶついいながら、ゴミ袋をふたりのもとへ差し出す。
「ほら、これ。中見てみれば」
「おっありがとう!開けてみようぜ」
「うん——」


→④へつづく。


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