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小説|怪獣のいない春休み②

①はこちら。


【第二章 消えた怪獣】

終業式が終わると、校舎中があわただしくなった。
ドタバタの大掃除も終わり、学年最後のホームルームが終わると、再び校内は賑やかになる。
あちこちで「また春休み明けにね」「同じクラスになるといいね!」と声が飛び交っている。

夏休みや冬休み前の終業式と違い、春休みはひとつの学年が終わるタイミングだ。
賑やかさの中にも少しだけ寂しさが混ざりあっている。

ショウタは、ランドセルの中に通知表と机の中や棚のガラクタを押し込み、持ってきた手提げ袋に道具箱を詰める。
「おーし!最後に校庭でサッカーしようぜ!」
クラスの男子の声に「やるやる!」と答えると、ショウタはランドセルを背負った。
教室を出る時に、帰り支度をするナツキに声をかける。

「ナツキ、サッカーやっていかない?」
ナツキはちょっとびっくりした様子でショウタを見た。
「えっ?うん…いいけど…」
「じゃあ行こうぜ!ほら早く!」
「あ、ちょっと、ちょっと待って。僕、図書館に本を返してから行くから、先行ってて」
「早く来いよー」
「わかった」

30分も遊ぶと、みんな空腹に耐えられず「帰ろうぜ」とばらばらと帰り始めた。
ナツキが「僕ボール返してくるね」と言って、サッカーボールを抱えると校舎に入っていく。
ショウタは自分のランドセルと手提げ袋を持って、校門でナツキが戻るのをしばらく待っていたが——

「あっ!」
と大きな声を出すと跳ねるように立ち上がった。

俺の大傑作「怪獣ショウタ2号」を忘れてた!
ナツキを追いかけて昇降口へ向かったが、すでにいない。
とりあえず急いで教室に戻る。

粘土細工が並ぶ棚の前に立ったショウタは、きょろきょろと見回した。
残っている作品はもうわずか数体だ。
まだ教室にいくつかのランドセルがあるから、残っている生徒のものだろう。

「……え?」

思わずつぶやく。
もう一度、棚の端から端まで目を走らせる。

そこに、ショウタの怪獣は、いない。

背中がすうっと冷えていく。
一瞬でいろんな可能性が頭の中を駆けめぐる。

——誰かが間違えて持っていった?
——倒れて壊れて、捨てられた?
——ふざけて隠したやつがいる?

「……え?え?まじでないの?」

教室全体を見回す。
赤と青の派手な粘土細工はどこにも見当たらない。

廊下からは、まだ誰かの笑い声が聞こえていた。


「ショウタ?」

棚の前に立ち尽くすショウタは急に声をかけられて飛び上がった。
声のした方を向くと、教室の入口にランドセルを背負ったナツキが立っている。
「——どうしたの?」

「俺のショウタ2号がないんだよ」
「…えっ?」

ナツキが教室に入ってきて、棚を見て、そしてぐるっと室内を見回している。
「教室の中、探した?」
「いや…まだ。ちょっと見てみるか!ナツキ、手伝ってくれる?」
「う、うん」

ふたりは、他の生徒の棚や掃除道具入れからそれぞれの机の中、教卓の下、覗けるところを片っ端から覗き込んだ。
「——ベランダ!……にもないかぁ」
あ〜、と言いながらショウタが頭を抱えた。髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回す。

「なんだよぉ〜俺の大傑作ぅ〜」
「ショウタ……」
ナツキも困ったようにショウタを見る。しかしショウタは、いや、と呟いた。
「諦めるにはまだ早いぜ!みんなに聞いてみよう!!」
「そうだね……ええと、今残ってるのは……あ、先生に聞いてみる?」
そっか!とショウタは手打ちした。
「もしかして!俺の作品が傑作すぎて、先生が持っていったかも!どっかに飾るためにとかさ」
「——ショウタって、前向きだねえ」
ナツキが困った顔のままで笑う。
「いーんだよ!ほら!一回職員室行くぜ」
ショウタはナツキのランドセルをバンと叩いて促す。
ナツキはちょっとビクッとして「叩かないでよぉ」と抗議した。

ふたりが職員室へ入ると、担任のタカナシ先生が自分の席に座っていた。
「どうしたんだ?」
「先生、俺のショウタ2ご…粘土細工がないんだけど、知りませんか?」
「ええ?あの怪獣の作品か?」
「はい、教室に見当たらなくて」
「知らないなあ」
「……傑作すぎて、先生が持っていったとかじゃない?」
「なんで先生が?」
「図工室に飾ったりしてない?」
タカナシ先生はきょとんとしたまま「飾らないが?」と返した。

「——とにかく、先生は知らないぞ?」
「誰かが持っていったとしたら?それ、盗みじゃない?」
「そりゃあ、そうだけども……。持っていかれたとはっきりわからないものは、先生にもどうにもできないよ。もし休み中に見かけたら、とっておいてあげるから。いつまでも学校にいないで、家に帰りなさい」
「でもあれは……」
「ショウタ、行こう?」
傍らに立ってやりとりを見守っていたナツキが言った。ショウタはしぶしぶ頷く。

「えと、じゃあ、もし見かけたらお願いします」
「わかったよ」
「先生さようなら」
「うん、さようなら。また新学期にな。いよいよ6年生だぞ、がんばれよ」
そしてふたりは職員室を出た。


→③【第三章 怪獣はどこへ?】へつづく。


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