エルメスのカレが教えてくれた、40代おしゃれ迷子の出口【後編】
エルメスでカレを買ったことを発端に、42歳にして自分のクローゼットに軸がないことに気づいてしまった私。
家族が寝静まった夜、私は猛然と断捨離を始めた。リビングに手持ちの服全てを広げ、一着ずつこれは本当に好きか?と自分に問いかける。自信を持って残すと決めた服は、アウターを含めても10着に満たなかった。
これから、どうしようか。
あのブティックに行けば、素敵な服が手に入るかもしれない。でも今、少なくとも自分のスタイルがわからないまま再訪しても、私はきっとオーナーの気迫に負ける。オーナーがオススメを探し出すスピードの方が、私が心の奥底から「好き」を掬い取る速度よりずっと速いだろう。
今やるべきなのは、やみくもに外に服を探しにいくことじゃない。「今・ここ」にいる私について知ることだ。
この本を読んで、そう確信した。ベテランスタイリスト・地曳いく子さんの大ヒット作『服を買うなら、捨てなさい』の続編だ。
地曳さんのメッセージをめちゃくちゃざっくりまとめると、こうだ。
スタイルとは今・現時点の自分のあり方そのもの。自分がおしゃれに思えないのだとしたら、今の自分を自分でわかっていないということだ。まずはそれを認めるしかない。自分も時代も常に移り変わっていくのだし、気づいた今始めればいい。スタイル=着方は生き方そのものだから、生きている限りスタイルのアップデートは続く。そこに正解もゴールもない。
この本で学んだのは、「自分らしさ」とは、ふわふわした抽象的な概念などではなく、あくまで地に足のついた現実だということ。ファッションで言えば、私はどんな背格好で、どんな毎日を送っていて、何が好きなのか。それこそが自分らしさだ。
一つずつ順番に、棚卸しをしてみる。
私の体形
断捨離をする中で痛感したのが、妊娠前にめちゃくちゃ気に入っていたアイテムが、びっくりするくらい似合わなくなっていること。
たとえばカシミヤのスリムなニットは、ウエストから腰にかけてのラインが決まらなくなった。くびれがなくなったことで裾が持ち上がり、腰回りで妙に生地がだぶついてしまうのだ。結果として、授乳で削げ落ちた胸の貧弱さがより強調されてしまい、シルエットがかなり残念になっている。
産後に体形が崩れたことは薄々承知していたが、その事実から目を背けていては前に進めない。私は冷めた目で鏡に向き合った。
平均身長の中肉中背。顔は面長で、頬が下がって重心が落ちてきている。首は短め、というか肩上の筋肉が厚め。胸板がとにかく薄い。鎖骨はまあまあきれい。腕は長い。ウエストのくびれなし。骨盤は張っていて腰回りの肉付きが良すぎる。脚は太めでししゃも脚でむくみやすいが、わりに長い。
よし(涙目)。これが40代の現実よ。
でもここまで冷静になると、似合う服・似合わない服がはっきりしてくる。
Vネック:卵型の顔と短めの首には似合わない。Uネック、特に馬蹄型みたいなネックラインで鎖骨を見せるとすっきり。
スカート:くびれがなく骨盤が張っているので似合いづらい。脚太のため似合う丈探しも厄介。潔くパンツに絞った方がよさそう。
ニット:体にフィットするものはNG。シルエットと丈にこだわって探すか、いっそシャツに転向するか。
書いてみて思うのは、欠点を強調する服を着るのは単純に損だし、欠点をカバーしようと労力を使うより、長所を生かす服を探した方がよっぽどいい。現実を直視する勇気、めちゃくちゃ必要。
私のライフスタイル
朝自然と手に取る服は、今の生活にフィットしている服。それが何かを知るために、今現在の日々の過ごし方を書き出してみる。
50%:在宅ワーク。一日家で、お昼は徒歩で外へ。夕方に自転車で子どものお迎え。靴の脱ぎ履きが多い。外出時の荷物はスマホショルダーのみ。
25%:子どもと外出。徒歩で海や公園へ、または車で動物園やショッピングモールへ。2歳を追いかけてとにかく歩く・走る。スマホショルダー+子どもと自分の荷物を入れたリュック持参。
15%:出社。駅まで徒歩20分+電車+電車。勤務地はNOTおしゃれエリア。かなり歩く上にPCを持ち運ぶのでリュック一択。
10%:1人で外出。電車で街へ。小ぶりのバッグできれいめ気分。
昨年引っ越しをして、今は日常の6割(在宅ワーク+子どもと外出の一部)を海の近くで過ごしている。街の空気に合い、かつ自分が過ごしやすいのは、リラックス感があって扱いやすく動きやすい服装。
一方でエルメスでカレにときめいたように、エレガントなアイテムも大好き(妊娠前のファッションは割とコンサバ寄りで、毎日7センチヒールを履いていた)。残り4割の生活ではエレガント欲も満たしたいところ。
そうなると、目指すところはカレがハマるくらいのきれいめカジュアルか。
新調するならやっぱりスカート・ワンピース<<<パンツ。トップスは洗える素材で。バッグの優先度は限りなく低い。靴は歩きやすさ第一かつ、きれいめに寄せられるものがいい。
お気に入りアイテム
自分が何に価値を見出すのか知るために、長く持っているファッションアイテムを並べてみる。置き画にセンスがないのはご容赦を。

艶感と凛とした形が好き。

馬蹄型ネックが絶妙。


色もたまらない。


こうして眺めてみると、共通項はこんな感じだろうか。
装飾よりラインの美しさで勝負するものが好き
上質な艶感、天然のふわふわしっとり感が大好き
自然をイメージさせる鮮やかな色が好き(森、夕陽、水辺など)
そうか、私、白黒よりきれいな色が好きなんだ!しかもパステルカラーじゃなくてはっきりした色。1着あれば絶対便利だから、と買ったブラックのジャケットをほとんど着なかった理由がようやくわかった。
カッティングの美しさや素材感を大切にするのなら、やはり上質なものを探すべきだ。これまでのようにお手頃価格の服を何枚も買うより、多少高額でも上質なアイテムを1つ選び抜いて買った方が満足度は高いはず。「洗える素材」で見つかるかどうかは、探してみるしかない。
***
ここまで書いてきて、「今・ここ」の私はかなり整理できた。方向性もうっすら見えてきている。でもまだ何か足りないような…と考えて、気づいた。
私は今、やっと迷路の出口に立っただけなのだ。ここからどこに向かっていくのか、行き先を設定しようじゃないか。
なりたい自分
行き先とは、これからどういう自分になっていきたいのか、というイメージ。とりあえず今思い浮かぶ像を言葉にしてみると、
イケてるおばちゃん。
「おばちゃん」は、私の中では決してネガティブな言葉ではない。家庭や社会での自分の立ち位置を表すと同時に、経験に基づくある種の逞しさを纏っていると思うから。
そのおばちゃんがイケてるって、ちょっと良くない?
イケてるおばちゃんは、無理はしないけど、楽もしない。いいものを知っていて、新しいことに興味があって、毎日を楽しんでいる。娘や周りの若い人たちからも「歳を取るのって楽しそう」って思ってもらえる、そんな感じ。
うん、めちゃくちゃいいじゃない!
よし。机上で考えるのはここまで。
エルメスのカレをさらっと巻いたイケてるおばちゃんに近づくべく、とびきりきれいなラインのパンツと、めちゃくちゃきれいな色のトップスを買いに行こう。
あー、ワクワクする!次は、洋服選びの実践編だ。と、その前にまだやることがあるので、それはまた別の記事で。
