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37歳独身休職中、仕事を探して神社に行ったら結婚した話【後編】

ここまでのあらすじ
アラフォー独身、婚活するも失敗続きの私はある日、会社で倒れて休職することに。2年が経って一念発起、小さな転職エージェント『ソーシャルリンクス』に登録して転職活動を開始。ところがゲン担ぎに東国三社に参拝したところ、予想もしなかった波乱に次々と見舞われるように。なんとか大手メーカー子会社『フューチャーベース』に内定を得たものの、別業界の小さなベンチャー『ザイン』に強い興味を持つ私。ザインの選考が進む中、ソーシャルリンクスの昔のクライアントである一人の男性と知り合って…?【前編はこちら

初デート


小渕さんに紹介された男性と初対面の日。お食事の約束をして、繁華街の駅前で待ち合わせました。

写真も交換しておらず、お互い名前以外に大した情報はありません。それでも小渕さんのご紹介なら、お人柄に間違いはないと思った私。たとえ彼の外見が自分の好みじゃなくても、今日はとにかく楽しくお話をしよう!と決めていました。失礼な話だな

「あの、ぽたまるさんですか?」

そこに現れたのは、細身で切長の瞳が印象的な、シュッとした感じの男性でした。年齢は確か、3つか4つ上だったはず。

「あ…は、はい。ぽたまるです。今日はよろしくお願いします」

え!うそ、ラッキー。全然、好みなんですけど!!

それが私の彼に対する第一印象でした。

彼が近くのお店を予約してくれていたので、一緒に歩き出しました。二言三言交わしながら歩いていると、

「…あれ。すいません。道間違えちゃった」

ちょっと焦った感じで彼が笑っています。どうやら、入る道を一本間違えたみたい。

実は私、めちゃくちゃ方向音痴なのです。目的地まで、迷わずに行けたことがない。まして今回のお店の場所も知らないので、とっさに言ってしまいました。

「え、そんなの言わなきゃいいのに」

彼の自己申告がなければ、私は道の間違いなんて全然気づかないのに。彼、いい人だな。思わずふふっと笑ってしまいました。

後から聞くと、彼はどうやらこの瞬間、私のことをいいなと思ったそうなんです。

道を間違えてちょっと焦ったけど、あんな返しをされて驚いた。普通、黙ってるか「あ、そうなんですね」くらいじゃん。こんな人、今まで会ったことないと思った。


だそうで…
世の中とは本当にわからないものです。まさかそんなところがハマるとは。ご縁って、そんなものなのかもしれません。


***


その日、無事にたどり着けた居酒屋さんで、気がつけば4時間近く話し込んでいました。

彼はとにかく多趣味な人で、なんでも本当によく知っています。それをひけらかすでもなく、ただ会話の延長でふと取り出してくれる。それがとても面白くて心地よくて、私も夢中でしゃべっていました。

うん、たしかに小渕さんの言うとおり、彼、ちょっと変わってる。

でも私だって、相当変わってるんだな。

その日のうちに私たちは、次の約束をして解散しました。別に、運命の人に出会ったとか、そんな風には全く思いませんでした。面白かったから、また会えたらいいなと思った。そんな感じでした。


ザイン3次(CEO)


こうしてプライベートもちょっといい感じになってきて、なんか波が来てる!とウキウキしながら迎えた、ザインCEO面接の日。

なんといっても面接前にすでにCEOにはご挨拶させていただきましたから!しかもめっちゃいい感じでしたから!!これはもう、今日で決まりでしょ。

「失礼しま~す」

はやる気持ちを抑えてドアを開けました。


ん?


CEO、いない。


出迎えてくれたのは、2次面接の取締役(推定40代イケオジ)と、1次面接の人事部長(ロマンスグレー)の2人。


え…っと…?


取締役が気まずそうに、口を開きました。

「申し訳ございません。本日急遽、CEOが業務都合にて不在となりました」

はい…?CEO面接って聞いてましたけど、まあ、やり手と噂のCEO、そりゃお忙しいでしょうしね、そういうこともあります…かね…?

なんとか必死で事態を飲み込もうとする私に、脳天をブチ破る衝撃の言葉が放たれました。


「本日は、ぽたまる様が不採用になった理由について、丁寧にご説明を差し上げるようにCEOより申し付けられております」



はいーーーーーーーーーーー?

なんだってぇ?

今なんつったぁぁぁぁぁぁ?!



不採用となった理由を説明する?



ちょちょちょちょ待てよ。

どういうこと?

あの流れからの不採用??

いや落ち着け、私が勝手にミラクルとか浮かれてただけで、仮に(仮じゃないんだけど)不採用だとしてもよ。

不採用と「なった」ってあんた、3次に呼びつけといて、

もう合否決まっとるやんけ。

こっちは今日で結果が決まると思ってめちゃめちゃ気合い入れてきたっつの。もう結果すでに出とるって、どういうことよ。ってかそれさぁ、普通に「2次落ちました、終了です」って連絡くれればよかったんじゃないの?


え、私、今日ここに何しに来たの?


脳内でテンパること、時間にして5秒くらい。実際に口から絞り出せたのは、これだけ。


「もう、私が御社で働ける可能性は、ないということでしょうか?」


「…はい」


終わった。

ウソでしょ。


茫然と前を見やると、イケオジとロマンスグレーが揃ってめちゃくちゃしょっぱい顔をしていました。

特にロマンスグレーは、無言のままメガネの奥から全力で私に向けて「申し訳ない」ビームを放っています。

いやあんた、そんなビーム放たれても。

不採用にした理由を説明するためだけに、不採用になったことを知らない求職者を面接に呼ぶって。御社の人事部門、なんかおかしくないですかね…?


その後「理由」とやらの説明を受けたはずですが、記憶にありません。



帰り道、ちょっと春めいてきた風を頬に受けながら、小渕さんに電話で顛末を報告しました。

小渕さん、大激怒。

「人事部長にクレーム入れる!こんなことは初めてだ!」と、呆然とする私の代わりにめちゃくちゃ怒ってくれました。


***


後日、ザインの人事部長と話をしたと、小渕さんから連絡がありました。

事の真相ははっきりとはわからないけれど、おそらく私は一旦は内定していて、それが何らかの理由で面接直前に「ドタキャン」された可能性が高い、というのです。3次キャンセル連絡が間に合わなくて、結果ああいう形になったのではないか、と。

なんじゃそりゃ、とツッコむ気力ももうありませんでした。そんな会社とはもう、関わらなくていいや。そう思いました。


あーあ。転職、どうしよっかなぁ。


この時点で3月下旬。手札はイマイチ気の進まないフューチャーベースの内定のみ。他の面接予定はゼロ。

そこに、フューチャーベースから連絡をいただきました。


フューチャーベース フォローアップ


フューチャーベースでは、独自の取り組みとして内定者に対し「フォローアップ面談」を行っているとのことでした。内定後に業務内容や給与について改めて詳細を説明することで、会社と求職者互いのミスマッチを減らすのが目的の面談(面接ではない)だそうです。

とはいえ、COO面接とその時偶然すれ違った社員さん達の姿から、フューチャーベースにあまり良い印象を抱いていなかった私。何の準備も期待もせずに、面談当日を迎えました。

ちなみにこの時の私は、適応障害で前の会社を休職したっきり。激務だった前の職場を離れたことですっかり元気を取り戻し、寛解の診断書ももらっていました。

でも転職は、実に2年ぶりの社会復帰です。

一般的に考えて、休職明けの人間を中途で雇うこと自体、会社にとってはかなりのリスクだと思います。今思えば、ザインドタキャン事件の背景にはそれもあったのでしょう。

フューチャーベースの人事部長は一枚の紙を取り出し、こう言いました。


ぽたまるさん。

こんな言い方をして、失礼になったら本当に恐縮ですが。久しぶりに、しかもフルタイムで働かれることについて、多少なりとも不安な気持ちをお持ちではないかと思うんです。

それをできるだけ和らげられないかと考えまして、ご提案があります。

入社から6か月間は、一旦正社員ではなく契約社員という形をとるのはいかがでしょうか。と言っても、給与や福利厚生はすべて、こちらに明記するように正社員と全く同等の条件です。

これでしたら、半年経ってここで働くのはしんどいと判断された場合、自己都合退職ではなく、契約期間満了という形にできます。逆に、ここでなら働けそうと思っていただけたら、条件そのまま、手続きなしで正社員に移行したいと考えています。

いかがでしょうか?

 


じん、としました。

こんな真摯な対応をしてくださるとは。面接前、フューチャーベースはちょっと微妙だなと思っていましたが、かなり心を動かされました。

こんなイレギュラーな条件を検討してまで私に来てほしいと言ってくれる会社、他にある?

仮にここで断ったとして、フューチャーベース以上に私に働いてほしいと言ってくれる会社をまたゼロから見つけることは、きっと難しい。

そう思いながらも、その日は内定受諾の返事を保留して帰宅し、小渕さんに事の成り行きを伝えました。すると小渕さんはすかさずこう言いました。

「あなたは、フューチャーベースに行くべきだと私は思う。私は、あなたの能力を評価して、あなたを大切にしてくれるところで働いてほしい」

あろうことか、ライバルエージェント案件を推薦してくださったのです。


そこで初めて気がつきました。

私は転職活動の間ずっと「自分がここで働きたいかどうか」ばかりを考えてきたけれど、「あなたに来てほしい」と求められる環境で働けるということは、とても幸せなのでは?と。

そうか。

もしかしたら仕事って、こちらから求めるばかりじゃなくて、「あなたにこれやってほしい」って向こうからやって来るのかも。私が自分にできることをやって、それが誰かに喜んでもらえる。それって最高じゃない?

そのことに気づくために、ザインドタキャン事件があったのだとしたら…?


こうして私は転職活動を終え、この年の4月から、フューチャーベースで働くことになりました。


彼とのその後


小渕さんに紹介された彼とはどうなったか。

初対面ですっかり意気投合した私たちは、それから毎回、解散前に次の約束をしていました。

2人とも美味しいものを食べるのが大好き。彼はいい感じのお店を実によく知っていましたし、私もとっておきのお店をここぞとばかりに予約しました。お会計は毎回知らない間に終わってしまい、どうやっても1円も払わせてくれません。仕方がないので、ちょっとした手土産を持参するようにしました。

何度会っても、彼と話すことは尽きませんでした。

仕事のこと、学生時代のこと、友人や家族のこと、好きな映画、流行った歌、子供の頃見たアニメ…

話していると不思議なことに、2人そろって同じタイミングに、全く同じことを言おうとすることが何度もありました。


なんじゃこれ。何が起きてるんだ?

全てがあまりに理想的。


33歳からずっと結婚相談所とネット婚活を並行し、お見合いパーティーに行きまくっても鳴かず飛ばずだった私には、信じられないことばかり。

それなのに、私はどうしても彼に「異性」を感じませんでした。毎回会うのがとても楽しい。でも、付き合うとかは全く想像できない。これだから、アラフォー婚活こじらせは厄介です。



そうして彼と知り合って1か月が経つ頃。

初めて丸一日を一緒に過ごし、2人揃ってしたたか酔っ払った帰りがけ、不意に言われました。

「付き合いたいと思ってる」

私は、答えに詰まりました。とっさに「酔って言われても困る」と無理やりごまかして、答えを保留してしまいました。

それはちょうど、ザインドタキャン事件が勃発した頃のこと。それから間を置かずに、フューチャーベースのフォローアップ面談がありました。

小渕さんの過去のクライアントである彼ももちろん転職経験者なので、これらの経緯はリアルタイムで全て聞いてもらっていました。

彼は私にアドバイスはしませんでした。かわりに、

「それはひどい!」とか、

「それは良かったね!」とか、

ただシンプルに、私の気持ちに寄り添った言葉をかけ続けてくれました。私がフューチャーベースに入社を決めたときも、自分のことのように喜んでくれました。

そこでふと、気がつきました。

あれ?私、いいことも悪いことも、当たり前のように全部報告してる。

何か起きたら、彼に聞いてほしいと思うようになってる。

そういえばこの頃、いつも彼のこと考えてるな。

さらに考えてみると、彼は私が休職中だということも全く意に介していないようでした。

決して上から目線で物を言わない。色眼鏡なしで私を知ろうとしてくれる。



この人を、逃しちゃいけない。



知り合ってから1ヶ月半後、私の転職とほぼ同時に、私たちはお付き合いを始めました。


***


振り返ってみれば、ピュアフーズのトンデモ面接がなければ小渕さんと飲みに行くことはなかったし、その席で彼を紹介されることもなかった。そしてザインドタキャン事件がなければ、私はフューチャーベースへの入社も決断できていなかったでしょう。

東国三社が運んでくれた、不思議なご縁。

節分の参拝からぐるぐると振り回されながらも、こうして私は37歳の春、新しい職場と結婚相手に巡り合ったのでした。


ご縁の答え合わせ


ここまでお読みいただいて「え?東国三社別に関係なくない?」と思われた方に、後日談をひとつお伝えしたいと思います。

東国三社行きを勧めてくれたメンターから、転職活動を開始する前にこんなことを言われていました。


これ、気にしすぎると選択肢狭めちゃうから、お伝えすべきか微妙なところなんだけど…参考程度に聞いてね。あなたの転職先について、
F と 
っていうのがヒントになりそう。あ、それからは、方角とかNorthってことではなくて、漢字ね。


気になりはしたものの、転職活動が終わるまで結局この意味はわからずじまいでした。が、フューチャーベースに入社して数か月経ったある日のこと。突然、閃きました。


フューチャーベースの正式な社名表記は、株式会社 Futurebase。

CEOの名前は、川さん。


Fって、社名とCEOの頭文字なんです。確かに北は、方角とかNorthじゃなくて、漢字の

そういう意味だったか、と納得すると同時に、鳥肌が立ちました。

メンターに話してみると、メンターも「ええっ?!」と驚いていました。Fと北の話の時点で、私はフューチャーベースの求人票を目にしていませんでしたし、メンターもフューチャーベースとは一切何の関係もありませんでしたから。

この会社に巡り合えたことと、その過程で彼(夫)に出会えたことには、やっぱり何か神がかった力が働いていたんだなと、私は一人納得したのでした。

ちなみに小渕さんには、この件では一銭も成功報酬が入っていません。それでも、私たちが結婚したことで気を良くしたのか「オレ、結婚相談所もやろうかな!」と豪語していました。その後の成約は今のところゼロらしいです。

人生の転機を迎えられた方、ご興味があればぜひ、東国三社にお立ち寄りください。ただしその時は、どうぞご覚悟なさってくださいね…


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