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[人事制度 ver.28]人事制度導入時に避けられない降格(給与ダウン)における解体新書

「人事制度導入時に給与が下がってしまう方をどのように対応すれば良いですか?」
これは必然的に発生します。
人事制度を導入する前から在籍しているメンバーがいらっしゃると思います。
人事制度、つまり報酬制度(報酬レンジ)がない時期に給与を決めていた手前、報酬レンジを測定すると、どうしても歪みが出ます。
その場合、どのように対応すれば良いのか?について説明したいと思います。


0. 人事制度を作る前までの給与の決定方法

まず前提として、人事制度を策定する時期は、社員数で言うと20名を超えてきた頃からくらいであることが多いです。
そのため、20名くらいまでの期間はどのように給与決定をしているのか?について説明したいと思います。

0-1. 前職年収と希望年収

皆さまも馴染みがあるかと思うのですが、採用時における前職年収と希望年収のバランスを鑑みて決定することがほとんどだと思います。
ただ、創業当時のベンチャー企業は、給与の支払い能力がそこまで高くないため、前職年収から下げた形でのご提示もよく発生します。
一方で、前職年収よりも希望年収が高い場合も存在するため、その場合は相談しながら決定していきます。

0-2. 市場感

転職市場における市場価値が高い職種、市場価値が高いスキルを持つ方は、必然的に提示年収が高くなります。
なぜならば、採用時に自社以外の複数社の選考が進んでいる場合、自社+複数社の内定を獲得する場合があります。
その場合、他複数社からの年収提示が、その求職者さまの前職年収と希望年収よりも高い場合も発生します。
特に昨今においては、エンジニアやプロジェクトマネージャーの需要が高騰しており、希望年収よりも数百万円高い提示なんてことも見受けられます。

0-3. (入社後)社内における貢献度合い

たとえば、2018年に設立したベンチャー企業があるとしましょう。
順調に事業成長して、2022年に初めて人事制度を作るとなった場合、2018年から在籍しているメンバーさまは、4年間人事制度が存在していないため、上司(おそらく社長)と人事制度がない中で都度給与を決めてきた可能性が高いです。

人事制度が無い中での給与決定は、どうしても感覚的になります。
そのため、事業成長の角度が高ければ年収ベースで1,000,000円あげるケースもあるでしょうし、若手のメンバーさまは突如として花が咲いた場合は、マネージャーや事業責任者になってほしいと言う口説きをする場合もあります。
その場合、4,000,000円で入社したメンバーさまが7,000,000円に4年間で上がる場合も少なくはないでしょう。

3つの要素をご紹介しましたが、人事制度を導入する「前」の給与算出方法について記載いたしました。
こちらを読んでいただきご理解いただけるかと思うのですが、人事制度を策定する前、すごく強固な基準で給与を決めているわけではないことはご理解いただけるかと思います。

何が言いたいかと言うと、人事制度を導入する前に決定している給与は、そして人事制度を決定する前に昇給している給与については、基本的には何かルールを導入する前と比較しても確実にずれるという事実があるということです。

1. とにかく重要なのは、等級定義

人事制度を策定する前から「このメンバーは少し給料が高すぎる」と感じるメンバーが各社確実に存在すると思っています。
ただ、「少し給与が高い」という「基準」は何なのでしょうか?

たとえば、会社の創業時に活躍する人と、会社が1000名になったときに活躍する人の違いは何だと思いますでしょうか?
また、経営・戦略コンサルティング会社で活躍する人と、コピー機の代理販売をしている営業会社で活躍する人の違いは何だと思いますでしょうか?

2つ質問を記載しましたが、これらの事例において、「給与が高い」人材の特徴は異なるのではないでしょうか?
それこそ「等級定義」なわけです。
等級とは「レベル」のことです。
等級定義は「その企業で、どのような人材がレベルが高いべきかというルール」のようなイメージだと思ってください。

何が言いたいかと言うと「このメンバーは、感覚よりも少し給与が高い」と言う場合、その感覚は間違ってはいないと思うのですが、「等級定義次第」になると思います。

2. 次のステップとして報酬レンジを作る

「社内の給与決定におけるルール(秩序)を作りたい」というオーダーをいただくことは多いです。
むしろ、人事制度構築のプロジェクトの最初のきっかけが「報酬レンジを作りたい」という場合が3割程度存在します。
これは当たり前の心理で、「人事制度を作るか否かは、そこまで強い関心はないが、ただメンバーが最も関心が高い給与(報酬)についての規定は先に作っておきたい」ということだと思います。

ただ、報酬レンジだけ先に作るのは、僕は賛成はしていません。
少なからず、「等級定義」+「報酬レンジ」を作りましょうかという話をしています。
なぜかというと、報酬レンジというのは、「レベル定義(役割)」とセットだからです。

たとえば、皆さんは、10歳の甥っ子がいた場合に、お年玉はいくら渡しますか?
1000円ですか、3000円ですか、5000円ですか、10,000円ですか?
また、18歳の姪っ子がいた場合は、お年玉はいくら渡しますか?
少し乱暴な事例ですが、相手が何歳だからという理由で金額を選ぶ基準についてはあなた次第かと思うのですが、この基準こそが人事制度で言う等級定義なわけです。
他にも事例を挙げるとするのであれば、

  • ホテルの部屋料金だけ決めるが、部屋ランクの基準がない
    → 料金だけあって、部屋グレードが不明なため納得感がない。

  • スポーツチームで年俸だけ決めて、ポジションや期待役割を定めない
    → 役割がないまま年俸だけ決めると不公平感が生まれる。

  • 料理コースだけ値段を決めて、品数や内容を定めない
    → コースの中身が不明なまま価格だけあると不信感につながる。

こんな感じのイメージです。

何を申し上げたいかというと、報酬(給与)を決定するにあたり、等級定義は必要で、
本ブログでお伝えしたい内容としては、「人事制度導入において給与が下がってしまう方」というのは言い換えると、「設定した等級定義に合致しない方は、給与が下がってしまう場合がある」ということなのです。

そのため、等級定義に「マネジメント」という要素が強いようであれば、もし仮に現在御社で活躍している人であっても、マネジメント力が低い方は給与が下がってしまう可能性もあるでしょうし、等級定義に「能力」の記載が多い場合は、もし仮に現在御社で活躍している人であっても、能力はあまり高くないかもしれないけれども、会社への貢献度合いが高い人は給与が低くなってしまう可能性があるということです。

では、どうすれば良いのか?についてご紹介していきます。

3. 人事制度説明時の、人事ポリシー・等級定義の説明は必須

メンバーが最も関心度が高いのは「自分自身の給与」です。
その次に「役割や役職」であると山根は感覚的に思っています。
つまり、人事制度が導入されるという場合、どのような「評価項目」にするのか?なども大事ではあるのですが、自分自身の給与や役割や役職に関心度合いが高いため、その点をまず初めに認識してください。
その上で、「なぜ給与が下がる(上がるorステイ)のか?」という文脈や背景が必要なわけです。

僕が申し上げるのは、人事制度を決めたんだけど、このような等級定義で、このような評価項目で、このような報酬レンジにしたから、これにみんな(メンバー)を当てはめていくと、佐藤さんと高木くんが給与が下がることになったよ。
という話をするのではなく、「人事制度を決めるにあたり、下記の要素を重要視しました。

  • 当社の現在の事業(プロダクト)のフェーズ

  • 当社がこれまで築き上げてきたカルチャー

  • ミッション・ビジョンの方向性

  • 今後どのような人材に活躍してもらえると、会社は成長するのか

これらの要素を統合して、鑑みた際に、当社の事業は既にPSFのフェーズを超えており、PMFのフェーズ、つまり事業やプロダクトのニーズ検証を終え、これからは拡販フェーズに入ってくるということ。
そのため、組織を構造的に構築したいと思うため、マネージメントやリーダーシップ、つまり自分自身のみならず周りのメンバーをリードしてくれる人材に高いレベルでいて欲しいということ。
とは言いつつ、これまで当社が築き上げてきたカルチャーも大事にしていきたい、つまり主体性や当事者意識などの様子は入れていきたい。
それらを考慮した上で「どのような人材に高いレベル(投球)抜いて欲しいのか?」というのをものすごく追求・探求してみました。
それに従って完成したのがこの等級定義になります。

このようなイメージで、伝えること。
つまり、「等級定義と報酬レンジがこのようになりましたよ」という事実ではなく、「なぜこのようになったのか?」という理由だけではなく、「これまでの当社の文脈や背景を鑑みた上で、そしてこれからの未来も想定した上でこのようになった」という、
文脈思考の考え方+未来創造思考の考え方
この2つを考慮した上で決めた、という話をすることが非常に大事です。

話は少し逸れますが、人事制度構築において「視座」がものすごく重要であると最近思います。
なぜならば、「点」でしか物事を見ることができない視座だと人事制度構築は間違いなく崩壊します。
そうではなく、「線」で把握する、つまり過去と未来を線で繋いだときにどのようなイメージなのか?

そして「面」で複合的に考えること、つまり人事制度を策定する側である自分自身が見えている景色を絶対視してしまうと、うまくいかない場合も多いです。
なぜならば、「自分が良かれて思って作った制度」という観点に変調をしてしまうと、全体最適ができないからです。
一方で、全体最適すぎてしまうと、部分最適が難しい、そういった鑑定を持てる方に人事制度構築に携わっていただいた方が良いです。

4. 給与が下がってしまう場合の具体的なフロー

前項目で等級定義・報酬レンジを決めた文脈や背景の話をしました。
つまり、この時点である程度「もしかすると、自分の給与は下がるのかもしれない」と該当者は察知します。
そして「あ、転職しよう」と思われてしまうともったいないです。
そのため、具体的なフローを説明していきたいと思います。

4-1. 給与反映までの期間

人事制度を導入する、つまり等級定義と報酬レンジを導入すると発表した「時点」から、つまり即日で報酬レンジに当てはまる給与とする場合の規定についてきちんとしておくべきです。
具体的には、

  • 新報酬レンジにおいて「給与が上がる人」は即日で反映。「給与がステイな人」は変わらない。

  • 新報酬レンジにおいて「給与が下がる人」は1年の猶予期間を持つ。

これが最も妥当策だと思います。
「1年」と記載したのですが、これが半年だったり、1年半であったりなどもありますが、様々なことを考慮した上で1年と記載をしました。

どういうことかと言うと、たとえば2025年の9月に「新人事制度」を導入するとメンバーに発表したとしましょう。
その際に高木さんが年収7,000,000円だったとして、ただ高木さんは等級4の東急定義には満たしておらず、等級3になることになったのですが、報酬レンジにおいて、等級3の最高額の報酬は6,500,000円。つまり500,000円の差分が発生します。
そのため、高木さんはどんなに頑張ったとしても、6,500,000円の提示になってしまいます。

ただ、2025年9月に会社都合で新人事制度発表して、発表「時点」において、即日で給与を「下げる」のは、さすがに酷です(そのような対応される企業さまもいらっしゃいますが)。
そのため、2025年10月から2026年9月までは現給与である7,000,000円は担保する。
ただ2026年の10月からは、新人事制度の報酬レンジに沿って6,500,000円になるということになります。

ただ、誤解がないように申し上げると、「この1年というバッファー期間において等級3から等級4へ昇格してください」と言うメッセージングにも言い換えることができます。
この1年という期間において「現年収」に合わせていきましょうね、ということです。

もちろん、メンバーからすると、1年間で頑張って等級4に上がったとして、それで元年収を保てると言う事実になりますので、モチベーションをどのように保つのか?という話はありますが、会社の意思決定なので、致し方ないというのが事実ではあったりします。

4-2. 個別面談の実施

新人事制度導入後、報酬レンジと等級が確定したら、対象となるメンバーと必ず個別面談を実施してください。
この個別面談は、ただ「給与が下がります」と伝える場ではありません。
対話の場にすることを意識してください。
具体的には、以下のような流れで話すことをおすすめしています。

  1. これまでの本人の貢献に対して、まず感謝を伝えること

  2. 会社の現在地、そして未来像、それに紐づく人事制度設計の背景を共有すること

  3. 等級定義と報酬レンジの構造を説明し、その中でなぜこの等級・この報酬設定となるのかを丁寧に伝えること

  4. 1年間のバッファ期間を設けること、その期間内で昇格できれば年収維持が可能であることを明確に伝えること

  5. そして、今後どのような期待役割・期待行動を求めているのか、具体的に示すこと

ここで大事にしてほしいのは、「給与が下がる」という事実だけを一方的に伝えるのではなく、未来に向けた対話を意識することです。
本人のこれまでの努力に敬意を表しながら、未来に向かうポジティブな対話を意識して進めていきましょう。

4-3. 必要に応じた特例措置の検討

基本方針としては、新人事制度・報酬レンジに則ることが前提になります。
しかしながら、どうしても外せないキーパーソンがいた場合には、慎重に「特例措置」を検討する必要が出てくるケースもあります。
たとえばこんな選択肢が考えられます。

  • 新制度上はレンジオーバーだが、特別ポジション(CxO、事業部長など)扱いとする

  • 会社業績・組織フェーズを鑑み、1年後も半年間だけ給与据え置きを認める

  • 将来、全体の報酬レンジ見直しを行う前提で、一時的な現状維持を許容する

ただし、ここで最も大事なのは「なぜ特例とするのか」の理由を明確に持つことです。
安易に特例措置を乱発してしまうと、組織内に不公平感が生まれ、「人事制度」そのものが形骸化してしまいます。
あくまでも、特例措置はごく限られたケースでのみ、慎重に、丁寧に判断をすることを推奨します。

最後に

最後に、僕から強くお伝えしたいことがあります。

人事制度とは、単なる評価基準や報酬ルールを作るためのものではありません。
組織と人材の未来像を描き、実現していくための設計図だと、僕は捉えています。

給与が上がるか、下がるか。
役職が付くか、付かないか。
等級が何になるか。
これらは、あくまで結果に過ぎないと思っています。
本当に重要なのは、

  • どんな人材が、これからの会社を成長させていくのか?

  • どんな能力や行動を持った人が、未来の中心にいるべきなのか?

  • それをどうやって、組織全体で目指していくのか?

これを未来から逆算して考えることです。

「過去の功労者への敬意を大事にしながら、未来に向かっていく」
このバランスを取ることが、人事制度構築においては何よりも重要だと考えています。
点ではなく線で、線ではなく面で、組織と人を捉えること。
自分たちの視座を上げ、複合的な視野で制度を設計していくこと。
ぜひこの意識を持ちながら、人事制度策定・運用に取り組んでいただけたらと思っています。


皆さんいかがでしたでしょうか。
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