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[人事制度 ver.32]人事制度における「昇格者レポート」の解体新書

「昇格者レポートってあったほうが良いのですか?」
そんなご質問を頂戴することがあります。
結論としては僕はあったほうが良いと思っています。
昇格者にとっても評価者にとっても、会社にとっても。
とは言いつつ、どのように進めるのか?どんなフォーマットがあるのか?など不明瞭な部分が多いかと思いますので、説明して参りたいと思います。


0. 「昇格」とは?

割と混同してしまいがちなのは「昇格」と「昇給」と「昇進」の違いです。様々なメディアや書籍を拝見するに、微妙に異なる定義が記載されていることが多いように思います。僕の定義としては、
昇格:「等級」が上がること
昇給:「給与」が上がること
昇進:「役職」が上がること

です。至ってシンプルですね。
本ブログでは「昇格」レポートについて触れていますが、「昇進」レポートについても意義があるものだと思います。

0-1. 昇格と昇給を混同していることが多い

前項目で記載した通り、昇給というのはただ給料が上がるだけです。
そして、給与が上がるためには「プラス評価」を得なければなりません。
たとえば、最高評価のS評価を得た場合に、2つのパターンが想定されます。

  • S評価の場合は、月給3万円up

  • S評価の場合は、3ランクup

あれ、「ランク」とは何なのか? ランクとは「等級内に存在するレベル」だと捉えてください。
たとえば、等級が7つある場合、各等級に8つずつ「ランク」が存在する場合は、56の箱が存在しているイメージです。

  • 等級1-1, 1-2, 1-3…1-7

  • 等級2-1, 2-2, 2-3…2-7

  • 等級7-1, 7-2, 7-3…7-7

というイメージです。

そのため、ランクという定義を導入している企業では、メンバーたちは「自分は3-2のランクにいる」「私は4-3だ」という理解をすることもあります。
何が言いたいかというと、

  • ランクが上がることは「昇格」ではない

  • 等級が上がることが「昇格」である

ということです。

会社によっては「ランクが上がること」を昇格という定義にしていることがあるかもしれませんが、僕からすると違和感があります。
昇格というのは「等級が上がること」になりますので、ご認識ください。

1. なぜ昇格レポートが必要なのか?

では、なぜわざわざ手間をかけて昇格レポートを作成するのか?について触れていきたいと思います。
いくつか理由があります。

1-1. 等級定義に満たしている事例を作ることができる

前項目で昇格と昇給の違いを細かく説明した背景は、本項目にありますが、「昇格」をするためには、「次の等級定義に満たしていなければなりません」。
ただ、これは入学要求に限った話をしています(入学要件の説明を割愛します)。

話をできるだけ拡散させたくはないのですが、「昇格」と「評価」は異なります。
「評価」というのは、評価対象期間におけるメンバーのパフォーマンスを評価すること。
「昇格」は「次の等級定義に満たすことができているかを確認する」です。
つまり、評価は「等級定義」について意識しているわけではないのです。
つまり、評価が限りなく高かったからといって、次の等級定義に満たすかどうかは分かりません。

誤解がないように言うと、「評価が限りなく高い」というのは「次の等級定義に満たしている」という暗黙のイコール関係があるかもしれないのですが、たとえば下記のような事例も発生します。

高木さんは、現状等級3。
今回の評価では最高評価を獲得していた。
ただ、最高評価の中でも、行動評価の「リスペクト」という項目のみ低い評価になっていた。
つまり、チャレンジングな性格があるし、成果を上げているかもしれないけれども、周りへの配慮がないという評価であった。
高木さんは次は等級4に足を踏み入れるフェーズにいるのだが、等級4の等級定義では「リスペクト」の項目が強く記載されており、高木さんは等級4の等級定義に満たなかったため「昇格」することができなかった。

高木さんの事例は「評価は高かった」けれども「昇格はできなかった」ということです。

話を戻しましょう。
この事例は「昇格できなかった事例」になるのですが、昇格できなかった事例を大々的に社内発信することはないかと思いますが、その逆の事例、つまり良い事例として昇格できた事例を作ることによって、次に昇格対象になる方が現れた場合に参考になります。

1-2. 忖度をなくすことができる

前述した通り、評価と昇格は異なります。
また、昇格するためには、等級定義に満たしているという事実がなければなりません。

ただ、皆さんが所属している企業の「等級定義」は、抽象度が高い表現になっていませんか?
これは何故かというと、等級定義は、各職種や各部門によって分けて策定する企業様が少なく、つまり共通の等級定義や、もしくは各部門で全職種共通の等級定義になっていることが割と多いです。
そのため、営業と管理部門の方が同じ等級定義になっていたり、抽象度がどうしても高くなってしまうのです。

そんな中で、等級4から昇格をする場合に「等級定義に満たしているのか?」というのは、その判断の「解釈」が多分に含まれるのは想像いただけるかもしれません。

ただ、昇格レポート(内容は後ほどご紹介します)を作成することによって、等級定義に満たしているのか?についての解像度をかなり高めることができます。
そのため、昇格判定者や評価者側の「忖度」を少なくすることができると、個人的には考えています。

1-3. 個人の振り返りにもなる

個人=昇格者になります。

昇格者、つまり昇格する側からすると、

  • これまでのどのような行動が、次の等級定義に満たしていて

  • これまで取り組んできたことの何が評価を受けていて、

  • ●●

  • ●●

などは、自分自身(昇格者)も振り返った方が良いと思っています。

シンプルに昇格者自身の学びや気づきの創発にもなりますし、何より「他の方へメッセージングがしやすくなる」というメリットもあります。

どういうことかというと、昇格経験者は、周りのメンバーからすると「良い参考事例」になり得ます。
皆様も高校受験や大学受験の時に「過去問」を一生懸命解きましたよね?
それと同じ原理で、過去の昇格者がどのような評価を受けて、どのようなアクションをしていたのか?については、未来の昇格者からすると非常に気になりますし、そのような質問は間違いなく受けます(と山根は思っています)。

また、「振り返り」と記載したのですが、未来に対してのメリットも大いにあります。
昇格者は基本的に過去の振り返りをして昇格レポートに記載します。
ただ、過去の振り返りをするということは「過去から現在」までのアクションを頭の中で整理できた状態になります。

また、昇格した=次の等級定義に満たしているということになるため、これから自分自身(昇格者)が属する「求められていること」も改めて認識することができます。
つまり、未来(昇格後)にどのように振る舞うのか?何が求められるのか?これらを自律的に考えることもできるようになると思っています。

1-4. 評価者・マネージャーの視座を揃えることができる

昇格レポートを導入すると、副次的な効果として、評価者やマネージャーの視座を揃えることができるというメリットがあると感じています。

どういうことかというと、昇格者がレポートを作成し、それを人事側でレビューするプロセスがあることで、「この評価者はこういう解釈をしているんだな」とか、「等級定義の読み取り方にこのくらいの違いがあるんだな」ということが見えてくることがあります。
これは、大事なポイントだと思っています。

等級定義はそもそも抽象的なので、それをどう読み解くかは人によって差が出ます。
結果として、「あの人は昇格できたのに、なんで自分は…」という話が出てくるのですが、これって制度の問題というより、評価者間の解釈ズレであることも多いです。
レポートという「共通のアウトプット」があることで、そのズレが言語化されていくので、結果的に制度運用の解像度が上がっていくと思っています。

1-5. 組織の価値観の浸透につながる

もうひとつ、昇格レポートがあることで得られる大きな価値が、「組織の価値観が具体的に言語化されて、浸透していく」という点です。

どういうことかというと、「この人が昇格した理由は何か?」をちゃんと掘り下げていくと、「うちの会社では、こういう行動が評価される」とか、「このマインドが大事にされている」という“価値観”みたいなものが浮かび上がってくるんですよね。
特に、等級定義の中にバリューや行動指針が組み込まれている企業様の場合、昇格レポートってそれを「抽象論」じゃなくて「実例」で伝えるツールになります。

これって意外と侮れない話で、文化って理念じゃなくて、日々の言動や評価される行動を通じて伝播していくものなので、レポートがひとつの文化醸成装置になる、というか。
だからこそ、単なる制度運用ツールにとどまらず、組織づくりの観点からも有効なんじゃないかなと、僕は思っています。

2. 昇格レポートの内容について

ここからは、「実際に昇格レポートってどんな内容を記載すれば良いのか?」について触れていきたいと思います。

先にお伝えしておくと、昇格する側の方も、昇格を支援・判断された側の方も、実施対象をお勧めしています。
なぜならば、「昇格する本人がこう捉えていた」「それに対して上司はこう評価していた」という観点の違いをうまく表現することができるからです。また、見える景色の違いが、むしろ可視化されることに価値があると感じているからです。

また、レポート内容は共通項目として設計していただくと良いと思っています。項目を分けてしまうと、どうしてもレポートが別々の文脈で進んでしまいますし、制度としての再現性や透明性も下がると思っています。
では、早速ご紹介していきたいと思います。

2-1. 直近で成果を出した取り組みと、それを生むために行った具体的な行動

昇格レポートにおいて、成果だけの振り返りでは効果は半減します。
重要なのは、その成果が「なぜ生まれたのか?」「どのような行動の積み重ねだったのか?」という視点です。
特に、行動と成果が乖離しているようなケースもあるので、成果だけで判断すると、昇格の再現性がなくなってしまいます。

また、これは評価者側にとっても、自分がどこを見ていたかを再確認する機会になると思っています。
だからこそ、単なる事実の羅列ではなく、「具体的な場面」「判断の背景」「他者への影響」などを含めて丁寧に書くことがポイントになると思っています。

2-2. 特に印象的だった挑戦・意思決定・判断と、その背景にあった意図

この項目は、いわば「象徴的なエピソード」の記載欄になるのですが、僕が大事にしたいのは、“等級らしさ”がにじみ出る瞬間を言語化できているかどうかです。

会社において「評価される瞬間」って、結局この“象徴的な判断”に集約されることが多いです。
たとえば、誰もやりたがらなかった仕事を巻き取った、とか、リスクをとって他部署とぶつかってでも前に進めた、などです。
そこに、本人の視座や覚悟、判断基準が見えてくると、「あ、等級がひとつ上がったな」という感覚を持つことができます。

2-3. 次の等級定義に照らして、自身(または対象者)はどのような点で満たしていたか?

ここが昇格レポートの中で最も本質的なパートだと思っています。

昇格とは、「評価が高かったから」ではなく、「次の等級定義に満たしているかどうか」を確認する行為です。
つまり、“今の延長線でいけるかどうか”ではなく、“すでに次のステージの思考や行動ができているか”の視点なんですよね。

ここでは、抽象的な言葉ではなく、定義の文言ひとつひとつと照らし合わせて、それに合致するエピソードや行動を紐づけることが大切です。
これがあることで、判定する側の納得感も大きく変わってくると思っています。

2-4. 今後、次の等級においてさらに伸ばすべき点・補いたい力・期待される役割

「昇格した=完成された人材」というわけではもちろんありません。
むしろ、「今後どのような責任を担い、どのような場面で力を発揮してほしいのか?」という期待は、等級が上がれば上がるほど明確に持つべきだと思っています。

そのために、「まだ足りていないところ」「本人が気づいていないズレ」「上司が期待している貢献領域」などをレポートの中で少しでも言語化しておくと、本人の今後の行動にも影響します。
また、それを記載することで、昇格が“スタート地点”として扱われる文化も根づいていくと思っています。

2-5. これから昇格を目指すメンバーに伝えたいこと(または評価の観点で共有したいこと)

最後は少し“おまけ”のような項目に見えるかもしれませんが、僕はこの部分こそが、会社の文化や空気感をつくっていくと感じています。

昇格した人がどんな価値観を持っていたか?
評価者が何を大切に見ていたか?
そういった情報がレポートを通じて自然に広がっていくことで、制度だけでなく、価値観が共有されていくんですよね。
だからこそ、本人からであれ、評価者からであれ、次の昇格を目指す人に向けて、何か一言残してもらう。
それが、意外と次に続く人たちにとって、一番響く内容だったりします。

このような5つの項目があれば、単なる“申請書”ではなく、学びと納得と文化の蓄積が生まれる昇格レポートになると思っています。
もちろん、会社の制度や文化に合わせて柔軟に調整いただければと思うのですが、骨子としてはこのあたりが最低限入っていると、かなり質の高い運用ができるのではないかと思っています。

3. 昇格レポート運用における補足・注意点

ここからは、昇格レポートを実際に運用していくうえでの、ちょっとした補足事項を簡単にまとめておきたいと思います。
細かい話ではあるのですが、運用する中で「このあたり抑えておくとスムーズかも」という観点になりますので、参考になれば幸いです。

  • フォーマットは何で作成するか?
    → GoogleドキュメントやNotionが使いやすい印象です。

  • 各項目の記載ボリューム感
    → 各設問500〜700文字程度が目安です。

  • 依頼タイミングの目安
    → 昇格が確定してから1週間以内に依頼するのが理想です。

  • 記載の締切日設定について
    → 2週間以内の提出を目安にすると、読み手も余裕をもてます。

  • 社内での公開範囲について
    → 原則、評価者・人事・必要に応じて昇格候補者向けに限定共有。

  • 文体やテンションのトーン設定
    → 硬くなりすぎなくて大丈夫。リアリティのある文章の方が伝わります。

  • レポートは“提出物”ではなく“文化の資産”
    → 蓄積することに価値があります。1人1通、丁寧に残しておくと後々活きてきます。

最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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