[新ノウハウ] 採用ブランディング × 選考フェーズごとのメッセージング大全
「6つの理論を用いて求職者さまの深層心理を探っているんですよね」
そんな話をお伺いしたのは、本当に最近のことでシンプルに「すごい」と思いました。
当社はこれまでたくさんの求職者のインサイトデータを蓄積して、それを活用して、採用活動における魅力設計をしていたのですが、それとはまた別の角度で気づきを提供いただいたような、そんな感覚がありました。
本ブログでは、これまでの魅力訴求とは一線を画した内容をご紹介したいと思っております。
0. インサイトの種類について
まず下記ブログをご覧ください。
これまで当社はTIMというサービスにおいて、インサイトの種類を追求してまいりました。
職種別のインサイトから始まり、業態別にインサイトは異なる、年齢層でも異なる、会社のフェーズでも異なる、発達段階でも異なるなど、様々なインサイトの種類を追求してきたわけですが、あといくつインサイトの種類が存在するのか?については、探求のしがいがありました。
それと同時に、もう少し構造的に整理ができるのではないか?という印象も持っておりました。
そんな中で、先日お打ち合わせをさせていただいた方が、いくつかの理論を反映させて、求職者さまの思考の分析をしていらっしゃる姿を見て、「これはすごい」と思ったわけですが、いくつか理論を教えていただいた上で、それらを少し整理してみることにしたのです。
その理論と言うのは、
進化論の7つの本能
ハーズバーグの二要因理論
キャリアアンカー理論
エンゲージメント理論
行動心理学
これらです。
簡単に説明してまいります。
1. 候補者の「なぜ?」を解き明かす5つの理論
今回採用活動において、求職者の指向性やインサイトを探るにあたって、5つの理論を活用してみることにしました。
これらはお打ち合わせをさせていただいた方に教えていただいたもの+僕の方で良いなと思ったものをひとまずこれで説明していきたいと思います。
1-1. 進化論の7つの本能
これは、人の行動の根っこにある、抗えない欲求を理解するための理論です。
たとえば、「安定した環境で働きたい(生存・安定の本能)」、「チームに所属していたい(所属・共感の本能)」、「認められたい(承認・優位性の本能)」といった、人間が生物として持つ7つの欲求に分類します。
候補者のキャリアチェンジの裏にある、最も深い動機を読み解くのに役立ちます。
1-2. ハーズバーグの二要因理論
「給料が上がっても、仕事の満足度は上がらない」なんて話、聞いたことありませんか?
この理論は、まさにそれを説明してくれます。
仕事における「満足」と「不満足」は全く別のものだと考え、給与や労働条件といった「衛生要因」は不満を減らすだけ、一方で「達成感」や「成長実感」といった「動機づけ要因」こそが人を本当に満足させる、という理論です。
候補者が本当に求めている「やりがい」の正体を探るのに有効です。
1-3. キャリアアンカー理論
人がキャリアという大海原を航海する上で、絶対に手放したくない「錨(アンカー)」は何かを見つける理論です。
「専門性をとことん極めたいのか」「安定した港にいたいのか」「新しい挑戦に乗り出したいのか」。
候補者が人生の岐路で何を最も大切にするのか、その価値観の軸を特定することができます。
1-4. エンゲージメント理論
人が仕事に熱意を持って自発的に貢献したいと感じる状態(エンゲージメント)が、どのような要素で生まれるかを解明する理論です。
上司の支援や成長機会といった会社からの「支援(仕事の資源)」と、本人の自己効力感といった「本人の資質(個人の資源)」、この2つの掛け合わせでエンゲージメントが決まる、という考え方です。
1-5. 行動心理学
人がついやってしまう、面白い「心のクセ」を解き明かす理論です。
たとえば、「何かをしてもらうとお返ししたくなる(返報性)」や、「『限定1名』と言われると欲しくなる(希少性)」など。
候補者の心を動かし、行動を後押しするためのコミュニケーションのヒントが詰まっています。
2. 14のインサイトを3つの「深さ」で整理する
アジェンダ0番と1番でご紹介させていただいたインサイトの種類を合計すると14になりました。
これらを羅列してみた際に、1つ気づきがあったのです。
それは、「人間の深層心理にアプローチできるものと、少し表層的なものが混在している」という気づきでした。
採用・転職市場で働く僕からすると、「表層的な転職理由」と「無意識的な深層的な転職理由」と表現できますかね。
つまり、インサイトの「深さ」が異なると感じたのです。
そのため、これらの14のインサイトを3つの階層で分類することができると感じたのです。
2-1. 第三階層:目に見える「WHAT」のインサイト
まず一番分かりやすいのが、候補者が面接の場で直接的に口にするような、目に見えるインサイトです。
これらは候補者が求めている『WHAT(何)』を直接的に示しており、採用コミュニケーションの入り口として非常に重要になります。
具体的には、下記のようなインサイトがこの階層にあたります。
魅力項目別のインサイト: 「給与」「働きがい」「企業文化」など、候補者が言語化する希望や不満。
行動心理学: 「返報性」「希少性」など、特定の状況下で現れる観察可能な行動パターン。
2-2. 第二階層:経験が創る「CONTEXT」のインサイト
次に、もう少し深いレベルには、その人の経験や環境、ライフステージといった『CONTEXT(文脈)』によって形作られる価値観があります。
深層的な欲求が、具体的な形で現れる領域ですね。
候補者の過去を理解することで、なぜその『WHAT』を求めるのかが見えてきます。
ここには、以下のようなインサイトが含まれます。
仕事文脈での価値観: キャリアアンカー理論、ハーズバーグ理論、エンゲージメント理論
経験や環境: 会社フェーズ別、業態別、職種別、年齢別、性別の各インサイト
キャリア志向: キャリアの方向性に関するインサイト
2-3. 第一階層:根源的な「WHY」のインサイト
そして最も深いレベルにあるのが、その人の根源的な『WHY(なぜ)』にあたるインサイトです。
これは、いわばその人のOS(オペレーティングシステム)であり、簡単には変わりません。
候補者のあらゆる言動の源泉であり、ここを理解できると、その人の本質的な動機を捉えることができます。
この最も深い階層に位置するのは、以下のインサイトです。
進化論の7つの本能: 人間としての最も根本的な行動原理。
発達段階別のインサイト: 個人の心理的成熟度や世界観。
思考/志向性のインサイト: 内発的/外発的動機型など、思考の根本的なクセ。
これはすごく納得感があるなと個人的に思っていました。
なぜならば、インサイトと一言で言ったとしても「心の中の隠れた心理」と僕は表現していたのですが、
心の中の隠れた心理
心の中の中の隠れた心理
心の中の中の中の隠れた心理
という「心の中」という部分の「尺度」があるなと感じ、この3つの階層を設定することによって、この尺度を表現できていると感じていました。
3. 候補者の心に響かせる、コミュニケーションの「深め方」
インサイトを3つの階層に整理できると、候補者とのコミュニケーションをより戦略的に設計できます。
候補者との関係性が深まるにつれて、アプローチするインサイトの階層も深めていく、というイメージですね。
3-1. 無知 → 認知
このフェーズは、候補者がまだ自社のことを知らない状態。
SNS広告やPR記事などで、まずは存在を知ってもらうことが目的になります。
ここで重要なのは、複雑な話ではなく、シンプルで分かりやすいメッセージで注意を引くことです。
アプローチのポイント: 「年収1000万円以上!」「フルリモート可」といった、誰にでも分かりやすい第三階層(表層的)の具体的なメリットを提示し、まずは足を止めてもらう。
3-2. 認知 → 興味
会社の名前は知ったけれど、まだ「自分ごと」にはなっていない段階ですね。
求人媒体のキャッチコピーなどで「おっ?」と思わせ、興味を持たせることがゴールです。
アプローチのポイント: 第三階層から第一階層への橋渡しを行います。
「事業責任者候補、募集!」という表層的な言葉で、候補者の無意識下にある「認められたい」という深層的な欲求を刺激する、といった具合です。
3-3. 興味 → 応募
候補者が興味を持ち、求人票の詳細や社員インタビュー記事を読み込んでいる状態です。
他社と比較し、「この会社は自分に合うか」を合理的に判断しようとしています。
アプローチのポイント: ここでは第二階層(中間的)が主役。
「30代でSIerから転職した先輩社員」のインタビューのように、ターゲット候補者と全く同じ「文脈」を持つ情報を提示し、「これは自分の話だ」と強く共感してもらい、応募への納得感を醸成します。
3-4. 応募 → カジュアル面談
応募はしたけれど、まだ選考に進むかは決めかねている。
まずは会社の雰囲気や人柄を知り、期待値のズレがないかを確認したい、という心理状態です。
アプローチのポイント: 第二階層と第三階層のすり合わせを行います。
「どんな時にやりがいを感じますか?」といった仕事の価値観(第二階層)をヒアリングし、期待値のズレを解消していきます。
3-5. 一次面接
本格的に選考に進む意思があり、自分のスキルや経験が通用するか、この会社で成長できるかを真剣に確かめたい段階です。
アプローチのポイント: 第二階層から第一階層への深掘りを行います。
「これまでのご経験(第二階層)を踏まえて、仕事人生でこれだけは譲れない価値観(第一階層)は何ですか?」といった質問で、候補者のキャリアの核を特定します。
3-6. 二次/最終面接
入社の意思がかなり固まってきており、この会社で働くことが自分の人生にとって本当に正しい選択なのかを、経営層との対話を通じて最終確認したい段階です。
アプローチのポイント: 第一階層(深層的)の対話が中心になります。
会社のビジョンを語り、それが候補者の「社会に貢献したい」といった最も深い人生観とどう接続するのかを、対話の中で一緒に見出していきます。
3-7. 内定
オファーを受け、入社を最終決断する直前の状態。
待遇面への納得感と同時に、「本当に後悔しないか」という最後の不安を解消したい段階です。
アプローチのポイント: 全階層の総括でクロージングします。
「あなたが大事にしている〇〇という価値観は、△△という経験から来ていますよね。
だからこそ、弊社で働くことがあなたのキャリアにとって最高の選択です」と、一貫したストーリーで語りかけ、決断を後押しします。
4.【実践】ある候補者のインサイトを分析してみる
では、このフレームワークを使って、実際に一人の候補者を分析してみましょう。
先日拝見した、「大手メーカーで5年間活躍された後、30歳を前にHR系のベンチャー企業へキャリアチェンジされたAさん」を例に考えてみます。
この方の経歴から、14のインサイトがどのように見えてくるでしょうか。
第一階層(深層的)のインサイト
進化論の7つの本能: 大企業の「生存・安定」を捨ててでも、「成長・探求」や「貢献・利他」といった欲求を優先した方だと読み取れます。
「承認・優位性」の欲求も、営業でトップクラスの実績を上げていることから強いことが伺えます。発達段階/思考: 会社にキャリアを委ねるのではなく、自らの意思で道を切り拓く、非常に「自己主導的」な発達段階にいると考えられます。
また、理学部出身でVBAでの業務改善も行っていることから、「論理的思考」の持ち主でもあるでしょう。
第二階層(中間的)のインサイト
キャリアアンカー: まさに「純粋な挑戦」や「専門・職能別能力」が彼のアンカー(錨)ではないでしょうか。
ハーズバーグ理論: 前職の「不満(衛生要因)」は、おそらく大企業特有のスピード感の欠如。
現職の「満足(動機づけ要因)」は、成長実感や裁量権だと推測できます。経験(職種/業態/フェーズ): 「大手メーカー」と「HRベンチャー」、「営業」と「人事」という両極端の経験を持つ、極めて希少な「文脈」を持った方です。
第三階層(表層的)のインサイト
キャリアの方向性: 明確に「専門性を高める」方向へと舵を切っています。
魅力項目: 「成長機会」「裁量権」「事業への貢献実感」といった項目に強く惹かれるタイプだと考えられます。
5.【実践】その候補者の心に響くメッセージを創る
さて、このAさんのインサイト分析を基に、各フェーズでどのようなメッセージを送れば彼の心に響くでしょうか。
興味を引くスカウトメールの件名
「パナソニックからHRの世界へ。
その稀有なご経験の先に『日本の構造課題』を解決するキャリアを描きませんか?」
(Aさんの経験という中間的インサイトに寄り添い、貢献欲求という深層的インサイトを刺激する)
応募を促す社員インタビューのタイトル
「元大手メーカー出身者が語る、『事業の手触り感』と『圧倒的成長』。私たちが裁量権を選ぶ理由」
(Aさんと同じ中間的インサイトを持つ人物を登場させ、Aさんが求める表層的インサイトである「裁量権」や「成長」を提示する)
最終面接での口説き文句
「Aさんが営業としてトップの実績を出し、そして今HRという新しい領域に挑戦されているのは、根底に『自分の力で未来を切り拓き、社会に貢献したい』という強い想い(深層的インサイト)があるからだと理解しました。
私たちの事業は、まさにその想いを実現するための、最もパワフルな舞台です。」
(候補者の最も深い価値観を言語化し、自社のビジョンと完全に接続させる)
最後に
いかがでしたでしょうか。
このように、インサイトを構造的に捉え、候補者の心理フェーズに合わせて戦略的にコミュニケーションを設計することで、採用活動はより科学的で、効果的なものになります。
ぜひ、皆さんの採用活動の参考にしていただけますと幸いです。
※当社の採用/人事組織系支援にご興味がある方はお気軽にお声掛けください。
今後も採用/人事系のアウトプットを続けていきます。
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