[組織ブログ Ver.72]自己変容のステップをポテンシャライトなりに解説します
「僕も、組織やグループ、個人に対して影響(変容)を及ぼせるような人材になりたいです」
こんな発言をあるメンバーがしていました。
僕からすると、そのメンバーは十分にある個人やグループや組織に対して影響度合いが高いメッセージングをしていると感じていました。そのため「十分それを体現できていると思うけど」と伝えると、全く自覚がない様子。
確かに、僕も具体的にそのメンバーが「どのように影響を及ぼしているのか?」と言うことを説明するのが少し難しく、ただ最近すごくふに落ちた表現があったので、その説明をしたいと思います。
0. システム思考におけるレバレッジポイント
システム思考とは:
物事の全体像を捉え、さまざまな要素とのつながりを把握したうえで、最も効果的な解決法へ向かうアプローチのこと
突然「システム思考」という言葉を登場させましたが、本ブログの文脈に必要な言葉です。システム思考を学び、取得すると、視野が広がり、視座も高くなってくると個人的には思っています。なぜならば、一歩先ではなく、2歩先、3歩先まで見えることができるからです。
ただ、システム思考は、ただ学んだとしても、もちろん実践しなければ意味がないわけですが、実践したとしても、1つ大きな問題が発生します。それは、「そのシステムにどのような影響を及ぼせば良いのか?」についてです。
つまり、システム思考を用いて、ある問題(事象)を取り巻くループ図を描くことができた。ただ、その状況が見える化したのは良いものの、どのようにそれを良い方向に導けば良いのか?と言ういわゆる「解決策」がわからないともったいないですよね。
0-1. システム思考のレバレッジポイント
レバレッジと言うのは「梃子(テコ)」のことです。梃子とは、支点の周りに回転し得る棒のことで、システム思考のループ図の
どの部分に
どのような作用を及ぼすのか
になります。
皆さまも人生で経験があるかと思うのですが、「慢性的なずっと解決することができない問題が発生していたが、〇〇の施策を投じた際に、一気に解決の方向に向かっていった」と言う類の件です。
もう少しイメージが湧きやすい話で言うと、例えば、どの部署でもいまいち活躍することができない高木さんと言うメンバーがいたとして、突如として、〇〇と言う部署に異動をしたら活躍をした。この場合「異動をした部署」における職務内容が高木さんにマッチしていたと言う考えもありますが、
「高木さんの上司がレバレッジポイントの施策を投じた」
と言う捉え方もできます。
ただ、このレバレッジポイントとは何か?についてもう少し詳しく説明したいと思います。
0-2. レバレッジポイント詳細
皆さま、何でも良いので、身の回りにある問題をイメージしてください。できれば、慢性的に解決することができない問題だとベストです。例えば、
夫婦関係で仲良くしたいという根底の想いは持っていながらも、なぜかツンツンとした態度を取ってしまう
本当はものすごく信頼しているのに、会話をする際にどうしても相手の話を聞く前に口を出してしまう。
などの類です。
次に、その慢性的に解決できていない問題に対して「解決策」を考えてみてください。「慢性的」と言っている時点で、解決策を何度か投じても解決できなかったのかもしれませんが、ひとまず考えてみてください。
その上で、下記をご覧ください。

こちらの表は、システム思考におけるレバレッジポイントを12種類並べたものになります。
まず、皆さまが立案した施策は、どの類に当てはまりますでしょうか?数値の調整をしたり、バッファの調整をしたり、ルールを調整したり様々あったのではないでしょうか?
上記の表は下記のように補足ができます。
上に行けば行くほど物理的な構造(ハード面)の変容、下に行けば行くほど「情報やルール等(ソフト面)」の変容 ※ただ11番と12番は非該当
上に行けば行くほど「外的システム」下に行けば行くほど「内的システム」
ただ、文言の意味がわかりづらいので補足をいたします。
① 物理的な構造(ハード面)の変容
設備や制度、仕組みなど“目に見えるもの”を変えるアプローチです。例としては、採用数の目標設定や評価制度のスコア変更、会議体の見直しなどが該当します。即効性はありますが、根本的な行動変容にはつながりづらいこともあります。
② 情報やルール等(ソフト面)の変容
情報の見せ方や意思決定ルールなど、“組織内の動き方”を変える介入です。たとえば、1on1の運用ルール変更や、メンバーへのフィードバック方法の見直しなど。心理的安全性や風通しの良さに影響しやすく、文化づくりの土台にもなります。
③ 外的システムへの介入
「メンバーをどう配置するか」「誰と誰を組ませるか」など、個人の外側にある環境・状況に働きかけるアプローチです。異動やチーム再編、制度導入などが典型。人に直接働きかけるより手軽ですが、深い変化を起こすには限界があります。
④ 内的システムへの介入
メンバーや組織の「当たり前」や「価値観」に働きかけるアプローチです。例えば、リーダー層のマインドセット転換や、キャリア観の問い直しなど。本人の内面を揺さぶる介入で、変化が起これば大きい反面、時間と信頼が必要です。
1. 個人やグループや組織に影響(変容)を及ぼすとはどういうことか?
前項目でシステム思考+レバレッジポイントの説明をいたしました。特にレバレッジポイントの12種類をご覧いただいて、皆さま感じることがあったかもしれません。
そんな中で、相手に対して、どのような「影響」を及ぼせるのか?について、影響を及ぼすことが目的ではありません。ただ、何かしらの問題が発生していたときに、何か「施策(採用)」を及ぼすほうが物事が前に進む可能性がありますよね。そんな中で下記をご覧ください。
その問題を解決するために「問題に取り組む時間を増やした」
その問題を解決するために「週1回の振り返りタイムを設け、余白時間をバッファとして確保した」
その問題を解決するために「面談希望者が集中しないよう、エントリーから面談までのフローを2段階に分けた」
その問題を解決するために「1on1のフィードバックを翌日から即日実施に変更した」
その問題を解決するために「小さな成功を積み重ねるフィードバックループを仕組みとして定着させた」
その問題を解決するために「成功体験を共有することで“やればできる”という実感を強めた」
その問題を解決するために「目標進捗を全体チャットで毎週共有することで、全員の意識を同期させた」
その問題を解決するために「“Slackは即レス”という暗黙ルールを“24時間以内でOK”と明文化し直した」
いかがでしたでしょうか?
皆さま、ご自身がよく投じる施策はありましたでしょうか?
これらは「よくある施策」ですよね。
また「これらの施策を投じたとしても、状況が好転しない」なんてこと、ありませんか?僕もたくさん経験したことがあります。
「自分自身では状況が好転すると思って、真摯に、気合を入れて投じた施策であったが、なかなかうまくいかない」
という類です。その場合、あなたはこんなことを考えるかもしれません。
「私は、この個人・グループ・組織に、影響を与えられているのであろうか?」
と。
そうですよね、状況が好転しないので、自分自身が投じた施策が誤っている可能性もある、と言う振り返りをするのは当たり前のことだと思います。
また、下記をご覧いただけますか?
その問題を解決するために「この組織の目的は“成果を出す”ことではなく“成長し続けること”と再定義した」
その問題を解決するために「“短期で成果を出すこと”ではなく“自分たちのやりたい未来をつくること”に視点を変えた」
その問題を解決するために「“仕事は我慢してやるもの”という前提を“仕事は成長と充実の場”という前提に変えた」
その問題を解決するために「“成果を出すこと自体が目的”という枠組みそのものを手放して、意味づけや価値観を自ら選ぶようにした」
いかがでしたでしょうか?
このような施策を投じたことはありますか?
お気づきの方はいらっしゃるかもしれませんが、先ほど箇条書きで記載した施策、直前に箇条書きで記載した施策については、先ほどご説明をしたシステム思考のレバレッジポイントを上から順に転用した施策となっています。つまり、一番上の施策は、「数値の調整」となっています。
箇条書きの部分について、下に行けば行くほど「効果がある」と言うわけではないのですが、ただ影響を及ぼすと言う話で言うと、下に記載がある施策の方が大きな影響がある可能性が高いです。
2. 「変容」とは何か?
皆さま自身や、そして周りにいらっしゃる方々で「この人は変わった!」とびっくりすることがあることってありませんか?
自分自身の変容にはあまりピンとこない方も多いかと思います。ただ、皆さまの周りにいらっしゃる方、特に毎日のように顔を合わせる方で「変わった!」と言う方がいらっしゃるかもしれません。
その方は、システム思考のレバレッジポイントにおける1番下の2つである、
マインドセット/パラダイムの転換
パラダイムの超越
を体験した可能性が高いです。
ただ1つ、ここで誤解がないように記載しておくと、僕もこちらのブログを偉そうに書いていますが、個人的にこのパラダイムの転換やパラダイムの超越を完全に掴めたわけではありません。ただ、「おそらくこれがパラダイムの超越だったんだろうな」という経験をここ最近何度かさせていただいたことがあったので、その体験をもとにこのブログを記載していることをご認識ください。
そして、このパラダイムの超越(変容)について、いくつか感じることが最近多く、手ごたえというか、これが道筋なのではないか?と感じることがあったのです。
2-1. (前提) 自己喪失について
「変容」の説明をする際に、成人発達理論の「発達段階」について説明することが多いです。成人発達理論については、説明し始めるとものすごく長くなるので、割愛しますが、いわゆる人間的な器や心の成長が進む際には何かきっかけが必要だと言われています。その一つが「自己喪失」だと言われています。
自己喪失とは、「自分を失うこと」です。言い換えると、自分の"枠組み(固定観念)"の外で発生した事象を受け入れざるを得ないことが発生することです。詳しくお知りになりたい方は下記をご覧ください。
何が言いたいかと言うと、何かしらの自己変容を起こすためには、自己喪失が必要だという1つの説があるわけですが、ただこの自己喪失には2つのパターンがあると思っています。
①偶発的な自己喪失
②意図的な自己喪失
これらを説明させていただいた上で、具体的な「変容」のステップについて説明できると思います。
2-2. 変容のステップ
変容は「一瞬の気づき」ではなく、「段階を踏んだプロセス」であり、直線的というより循環的・螺旋的に進んでいきます。
自己変容のプロセスには、以下の6つのステップがあるとされています。
ゆらぐ
とどまる
みつめる
ためす
ふりかえる
つくりなおす
これらのステップは、人が主観から客観へと視点を移し、意味構造を再構築していくプロセスを丁寧に辿ったものです。
特に後半のステップ(ためす・ふりかえる・つくりなおす)は、個人が変化を「自分のものとして取り込む」ために欠かせないフェーズであり、単なる“気づき”にとどまらない実践的統合を支えます。
3.「ゆらぐ」について
突然ですが、例え話をさせてください。
お茶を飲むような緩やかなコップをイメージしてください。そのコップの縁から小さなビー玉のようなものを落としてみます。すると、ボールは下降して底辺に達し、そしてまた対極にある縁にビー玉が上昇し、転送して再度底辺を通って、ビー玉を落とした縁まで到達します。振り子のようなイメージですね。
時間が経つにつれて、このビー玉の「振り子のような動き」は範囲を小さくしていき、いずれ底辺にビー玉が静止するような、そんな軌跡をたどると思います。
もし仮に、そのビー玉があなただとしましょう。もし仮にあなたの精神状態が「平穏」だとした場合、ビー玉は底辺に静止した状態になります。逆の発想で言うと、「平穏ではない」ことが発生したとしましょう。
例えば、
いつもうまくいっているミーティングで、鋭い指摘を受けてしまい、慌ててしまった。
これまでとは、経験したことがないような仕事が舞い込み、気が動転してしまった。
上司とそりが合わず、コミュニケーションが少し攻撃的になって、内心ハラハラしてしまった。
このような事象が発生すると、ビー玉は左右に「ゆらぎ」が発生します。ただ、皆さまお気づきかもしれませんが、このゆらぎには「尺度」があることをご理解いただけますでしょうか?
例えば、
ものすごく丹念に育成をしてきた若手のメンバーが突如として退職。その退職理由の一部に自分が関わっていた。非常に残念で落胆した。
これまで数年お付き合いしていた方と別れた。その理由を聞いてみると、自分が直そうと試みて諦めてしまった内容だった。
突如としてご両親が離婚してしまい、必然的にどちらかの親についていくことになり、モヤモヤした。
このような事象が発生した場合、とにかくビー玉が「大きな尺度」として揺れるイメージをご理解いただけますか?
これが「揺らぎ」です。
言い換えると、これまで自分が信じていた“当たり前”に違和感が生まれること。
ここで言う「当たり前」は、僕は「枠組み」と表現することがあります。「枠組み」とは、これまでの人生における原体験が構築している「固定観念/思い込み」のようなイメージです。これは人間であれば誰しも持っているもので、持っているから悪いというわけではありません。この枠組みから「超える」と人は「揺らぎ」が創発されるわけです。
では、もう少し詳しく見ていきましょう。
3-1. 「ゆらぎ」は2種類存在する
・偶発的な揺らぎ:
想定していない出来事(退職、別れ、トラブルなど)によって、構造が自然に揺れる
・意図的な揺らぎ:
問いや対話、ワークなどによって、構造に意図的にヒビを入れる
例えば、僕の場合は、数年前に信頼しているメンバーが突如として複数名退職しました。自己喪失が発生したわけですが、僕にとっては「尺度が非常に大きいゆらぎ」でした。これは「偶発的な揺らぎ」に該当します。
一方で、人材開発や組織開発を学んで、「変容」の影響を提供したいメンバーには、「意図的な揺らぎ」を提供することもできると思っています。その点について詳しく記載しています。
3-2. 意図的なゆらぎとは?
僕の場合は、無意識的に相手に対して「揺らぎ」を提供していることが多く、ただその揺らぎのパターンが遠いわけではありません。なんとかパワーで押し切ってしまうこともあるし、様々な揺らぎのパターンを持っていた方が良いと思っているので、取りまとめてみました。
① ゆらぎの提供スタイル

② ゆらぎの角度

③ ゆらぎの対象レベル

3-3. ゆらぎを起こす問いについて
前項目でいろいろと整理してみましたが、実際のミーティングや1on1の場で詳細な表を見ながら問いを投げるのは難しいかもしれません。そこで、実践の中で使いやすい問いを10個、分類ごとに整理してみました。
内省・静的系の5問い(深く染み込むタイプ)
「本当の自分が選びたかったこと?」
→ 自分の選択が“誰のものだったか”を問い直す導入問い。「見せたら壊れるって、どこで覚えた?」
→ 防衛の起源にアクセスし、自分を守ってきた構造を炙り出す。「いつからそれが“当たり前”になった?」
→ 無意識の前提や信念の起点に気づかせ、構造を対象化する。「見せてない自分がいたら、何て言う?」
→ 抑圧された“本音の自分”に代弁させることで揺らぎを起こす。「その正しさを手放すとしたら、何が怖い?」
→ 握っている“正義”の裏にある恐れに揺さぶりをかける。
パワー・直撃系の5問い(刺し込むタイプ)
「で、“いつまで”そのままでいるつもり?」
→ 現状維持の構造を撃ち抜く、覚醒を促す直球。「何も変わらなかったら、それ誰のせい?」
→ 他責の構造を崩し、自己責任に引き戻す強烈な鏡。「お前がいないと困る人って、ほんとにいる?」
→ 役割と存在を切り離し、自己重要感を揺らす問い。「今までの“やり方”、これからも通用する?」
→ 過去の成功モデルの陳腐化を突き、再構築を促す。「変わらないままで得してることって何?」
→ “変われない”の裏にある無意識の利得を可視化する。
4. 「とどまる」について
もしあなたが「ゆらぎ」の事象と直面したら、何を思いますでしょうか?
おそらく人間は無意識的に、「その揺らぎを止めるためのアクションを起こす」ことをします。
どういうことかと言うと、皆さまの心が「揺らいでいる」とき、何をしますか?「できるだけ冷静になろう」と深呼吸をしたり、別のことを考えたりすると思います。これが人間の本能的な当たり前のアクションです。
しかし、ここで「落ち着いて」しまうと、変容はしません。
変容することが絶対的に正!というわけではないのですが、せっかく「ゆらぎ」があるのにもったいないのです。
1つ補足をすると、ここで言う「ゆらぎ」とは、ポジティブなゆらぎだと思ってください。ただただネガティブに乱暴なゆらぎを提供されてしまった場合は、「ゆらぎを止めるアクション」でも良いと思いますが、一方で、ゆらぎを提供していただいた側からの貴重な言葉に際して、どんどん揺さぶられれば良いと思っています。そして、まさに「とどまる」の重要度が非常に高いのです。
4-1. 「ゆらぎ」が無効化してしまうパターン
前述した通り、もし仮に「揺らぎ」が自分に訪れた場合、コップの中のビー玉が「静止」するように、自分自身を「平穏」な状態にしようとするのは普通なことです。繰り返しになりますが、ここでもし静止して平穏な状態を保つ場合は、「変容」が起こる可能性が低くなります。よりイメージしやすい静止・平穏になってしまう場合の声のかけ方としては、
「大丈夫だよ、飲みに行って忘れようよ!」
「そういう捉え方もあると思うから、一旦気にしなくていいんじゃないかな。」
「いいよ、辛くなったらやめればいいんだからさ。」
これはすごく「良い」声掛けに該当するかと思うのですが、(この手法を否定するわけではありません。)ただし、「変容」が目的化すると、少し残念な言葉です。なぜならば、コップの中のビー玉が静止してしまい、また「通常通りのあなた」に戻ってしまうからです。
4-2. とどまるをフォローしてくれる人材について
ここで非常に重要なのは、「ゆらぎ」の状態を「とどまる」ことにフォローをしてくれる存在です。
重要なので、何度も繰り返し説明いたしますが、ゆらぎ自体は、人間誰しも体感します。ただ、ゆらぎを感じた99.99%のパターンにおいて、そこから変容することはないのではないかと思います。なぜならば、「相手を否定して、自分を変えない」という選択肢の方が楽だからです。
そんな中で、何か揺らぎが発生したとき、誰かしらに「相談」をします。もちろん1人で抱え込むことも多いかと思います。そして、その相談相手からすると「その場をなだめる」ことが目的になることが多いです。
「あなた(相談してきた人)が間違ってるよ」という人は、ほとんどいないかもしれません。
そして、「揺らぎを提供した相手が正しいよ」とは言わないでしょう。それを言うと、「揺らいでいるあなた」にとっては、さらに厳しい状況に追い込まれるからです。人間は誰しもコップにあるビー玉を静止させたいと思うのが普通です。にもかかわらず、相談した相手が「そのままビー玉を揺らし続けるようにしよう」とは言わないかもしれません。
さて、本ブログの本題です。
冒頭に「僕からすると、そのメンバーは十分にある個人やグループや組織に対して影響度合いが高いメッセージングをしていると感じていました」と記載しました。なぜかと言うと、この「とどまる」と言うステップにおいて大いに力を発揮してくれているメンバーが当初には存在するからです。
何度も繰り返しになりますが、「変容」をするために「揺らぎ」にスポットが当たりやすいですが、非常に重要なのはこの「とどまる」というステップです。なぜならば、コップにあるビー玉を静止しようとするのは、人間の本能だからです。そして、静止するのが悪いということではなく、もし次のステップに進む、つまり変容をする場合、その「揺らぎ」の状態にいかにとどまるかが重要です。
そのため、「揺らぎ」が発生した際に、相談をする相手が非常に重要であり、その相手がどのような振る舞いをするのかがカギだと個人的には思っています。
例えば、
相手が混乱している最中に、すぐに助言をせず「うん、それでも今ここにいてくれてありがとう」とだけ伝えていた。
1on1の終盤で「この話、まだ答えを出さなくていいから、また話そう」と“保留”を肯定する言葉を自然に投げていた。
揺らいでいる相手が感情的に語ったあと、「今の気持ち、すごく大事だと思う」と、その揺れそのものを価値として認めていた。
このような言動をしてくれることが理想だと思います。
4-3. みつめる(Subject → Object の転換)
「みつめる」は、これまで主観として自分と同一化していた信念・感情・前提・価値観などを、“対象(客体)”として捉え直すフェーズです。自分を動かしていた無意識の構造に初めて気づき、それを言語化し、扱える状態へと変化させていく時間です。
少し噛み砕いた表現をすると、
自分自身のメンタルモデルを知る。
自分自身の免疫マップを見える化する。
自分自身のシャドウやサブパーソナリティーの存在を知る。
このようなイメージです。
4-1. メンタルモデル、免疫マップなどの存在について
前述した箇条書き部分に記載がある4つのキーワードについてはWebで検索をしてみてください。よろしければ「●●(キーワード) 山根 note」と検索していただけるとブログが出てくると思うので、興味がある方は調べてみてください。ただし、本ブログではその詳しいブログをご覧いただかなくても理解することができます。
話を戻すと、なぜメンタルモデルや免疫マップ、シャドウやサブパーソナリティーの話をしたのか。その理由はまさに「主観から客体への転換」をすることができるからです。例えばメンタルモデルは「自分自身の固定観念/思い込み」のことです。つまり、「自分自身が確固たる信念を持って感じ続けていたことに、自分自身がとらわれ続けてしまっていた」という転換が起こります。僕の場合は「器が小さい男」というメンタルモデルがあるのですが、本来自分が思っていたことが逆です。つまり、
自分自身は信念があり、意志が強い人間だと思っていた。
それゆえに、継続することが得意で、やりきることも得意。すごく強い人間だと思っていた。そして、その動機にあるのは「成長意欲」であると思っていた。
ただ、自分自身が「隠したい自分」が存在していることがわかっていた。それがメンタルモデルの存在であった。
山根のメンタルモデルである「器が小さい男」という存在について、交換が合点が効く。山根はこれまで「器が小さい男を隠すために努力をしていた」「が小さい男を隠すために、ポテンシャル採用を推進していた。なぜならば、自分よりも器が大きい方が入社してしまうと、自分が器が小さいことがばれるからだ」。
と言うようなイメージです。
これは「主観が客体に転換した事例」で、「自分を動かしていた無意識の構造」への気づきです。この時期は僕にとって本当に重要なことで、まさに「みつめる」という時間だったのです。
言い換えると、このフェーズでは、「私はこうあるべきと思っていた」から「“こうあるべき”という前提を握っていた自分がいた」と認識が変わります。つまり、自分の中にある意味づけや行動原理が、“自然なもの”から“選ばれたもの”へと変化します。これが、主観から客体への転換です。
たとえば、
「正直であろうとするのは誠実だから」ではなく、
「誠実であろうとしなければ、自分の存在価値が揺らぐと思っていた」という構造への気づき。ここには深い痛みや防衛が伴うこともあります。このプロセスでは、メンタルモデルワークを通じて、自分の思考パターンや意思決定の背景にある信念を可視化することが有効です。また、免疫マップによって「変わりたくても変われない」背景にある恐れやビッグアサンプション(根本仮説)を明らかにしたり、シャドーワークを用いて否定してきた自分の一部と向き合うこともあります。さらに、サブパーソナリティーの対話を通じて、自分の中にいる「頑張る自分」「傷ついた自分」「見せかけの自分」との内的関係を整理することも、構造の対象化を促進します。
4-4. ためす(行動的プロトタイピング)
「ためす」は、みつめるフェーズで見えてきた新しい構造や意味づけを、小さく行動に移してみるフェーズです。言葉や内省だけで完結するのではなく、自分の外側で現実を通して“仮構造”を検証するタイミングです。
このプロセスでは、「こうしたほうが良い気がする」ではなく、「実際にやってみるとどう感じるか?」という身体的・感覚的な手応えを重視します。たとえば、「本当はもっと助けを求めたい」と思っていた自分に気づいたのであれば、実際に誰かに小さく相談してみる。これが“ためす”です。
ただしこの段階では、まだ不安定さや恐れが残っていることも多く、「うまくできなかったらどうしよう」「今のままのほうが安全では?」という感情が湧きやすいです。そのため、「行動を先延ばしにする」「タイミングが悪いと理由づけして動かない」といった逃走パターンも発生しがちです。
だからこそ、このフェーズでは「完璧さ」ではなく「一歩動くこと」に意味があります。うまくいくかどうかよりも、「みつめたことを、まずは現実に投げかけてみたかどうか」が重要な問いになります。
4-5. ふりかえる(Double Loop Learning)
「ふりかえる」は、ためすフェーズでの行動体験を内省し、その意味を整理・再構築していくフェーズです。
ただ出来事を“思い出す”のではなく、自分がどのような構造のもとで動いたのか、行動によって何が見えたのかを言語化していくことが求められます。
たとえば、「助けを求める」という行動を試してみた結果、思っていたほど拒絶されなかった。そこには「頼ると嫌われる」という自分の前提が崩れた手応えがあるかもしれません。
このように、「実践 → 意味づけの更新」というループが発生してはじめて、行動は一過性ではなく構造変容に結びついていきます。
一方でこのフェーズでも、「振り返った“ふり”」に留まってしまうケースがあります。
たとえば、「とりあえずやってみたからOK」と処理してしまったり、「失敗だったことをなかったことにする」など、表層的な自己肯定で終わってしまう場合です。
本質的なふりかえりとは、「行動の成果」よりも「意味の変化」に焦点をあてた内省です。
このフェーズでは、“何が起きたか”ではなく、“その体験を自分はどう意味づけ直したのか?”という問いが、変容の深度を決定づけます。
4-6. つくりなおす(Reconstruction/再統合)
「つくりなおす」は、これまでのプロセスで見つめ、試し、振り返ってきた経験をもとに、自己の意味づけや構造を再定義・統合していくフェーズです。
ここでは、過去の信念や価値観を否定するのではなく、「それも自分だった」と受け入れたうえで、新しい意味づけを選び直していく営みが行われます。
たとえば、「自分は強くなければならない」という信念の下で生きてきた人が、「弱さを認めることが、むしろ人とのつながりを育む強さだった」と意味を更新する。
こうした再構成が起きたとき、はじめて“変わったふり”ではなく、構造レベルでの変化が現れはじめます。
この段階では、自己定義が新たに言語化され、「私はこうありたい」「これを選びたい」といった、自律的な選択が可能になります。
同時に、「前の自分に戻ったほうが楽では?」という誘惑も強まるため、支援者による関わりも引き続き重要です。
「つくりなおす」は、変容プロセスの終点ではなく、次のステージの起点でもあります。
再構成された自己が、また新たな現実と接触することで、次のゆらぎが始まっていく。変容とは、繰り返しのプロセスであることを、このフェーズが物語っているのだと思います。
最後に
皆さんいかがでしたでしょうか。
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