[組織ブログ Ver.82]意思決定の質は、要素の認識と対話の深さで決まる
最近、社内外の方々と意思決定の話をすることが増えました。
様々な観点において、意思決定をする必要があるかと思うのですが、それを体系立てて説明することが社内で発生しています。ただ、場面場面において必要に応じて話しているため、ブログに残しておこうと思ってこちらを執筆しています。
では、早速まいりましょう。
0.意思決定は簡単ではある(のでしょうか?)
少し含みを持たせたスタートになりましたが、意思決定は「エイヤー!」でする場合は簡単です。もう決めちゃえばいいんですからね。たとえば、
・今サボるのかやるのかの意思決定
・お茶を買うのかコーヒーを買うのかの意思決定
・帰りにラーメンを食べるのか食べないかの意思決定
様々な意思決定が存在しますよね。「エイヤー!」と言う表現をしましたが、何も考えずに決定するのであれば、そこまで難しいわけではありません。
そんな中で、意思決定において、非常に重要なのは「要素」だと思っています。
0-1. 要素について
たとえば「どこに旅行に行くのか?」という会話を友人3人でしていたとしましょう。
北海道が良い。
沖縄が良い。
シンガポールが良い。
この3つの意見が出たときにどのように決定しましょうか?という話になります。
「今は夏だから暑いし、北海道に行ったほうが涼しいし、海鮮もおいしい北海道にしない?」
「夏だからこそ、暑い沖縄に行って、海で泳ぐこともすごく楽しそうじゃない?海外っぽいし」
「ついこの間、沖縄に行ったばかりだし、最近海外に行っていないから、シンガポールが良いんじゃない?」
このような会話は誰しもしたことがあるのではないでしょうか?
この会話を紐解いてみると、
1人目は「過ごしやすさ」「食べ物」と言う要素。
2人目は「季節を感じる」「アクティビティ」「雰囲気」という要素。
3人目は「行った回数」「国内/海外」という要素。
このような要素に従って主張をしています。
意思決定をする上で、北海道VS沖縄VSシンガポールという見え方をすることがあるのですが、前述した7つの要素が複雑に絡み合って、決定を難しくしているわけです。
ここで議論が上手な人が何をやっているのか?についてご紹介します。
0-2. 議論が上手な人は「要素」の主張が上手。
前述した7つの要素において、自分自身が主張したい候補地における要素の優先度が上がるような話をすることについて、議論が上手な人は得意なわけです。
具体的には、前述した内容で言うと、北海道をプッシュしたい1人目の人は、こんな話をするわけです。
「みんなよく考えてみて。今年の夏は本当に暑くて、40度を超える土地もあるみたいじゃない。そうなってくると外で遊ぶなんて本当にきついよね。旅行で熱中症になったらどうする?せっかくの旅行が台無しだよ。
あと僕らってもう40代になってきたじゃない。だから、ご当地料理が食べたいけれども、魚とか少しあっさりめなご飯がおいしい場所に行ったほうがなお楽しめるんじゃないかなって。せっかく大きなお金を払ったのに、ご飯で少し胃もたれして、次の日楽しめなかったら嫌じゃない。
旅行でずっと室内にいるなんて事はありえないから、涼しい北海道のほうがいいんじゃないの?」
というような話をするのではないかと思います。
何を申し上げたいかと言うと、北海道プッシュしたい人は、その要素がただ「結」になる話を延々とし続ければ、きっと北海道になるはずです。
ただ、ここで非常に重要なのは、北海道にとって不利な要素ももちろんあるわけです。たとえば、
「移動のしにくさ」
「観光地の少なさ」
この2つを要素として提示するとどうでしょうか?
北海道はとにかく広いです。そのため、観光地の距離があるとしましょう。その場合、おそらくレンタカーは必須になります。もしかすると、東京で言う渋谷から銀座に移動しようというテンションで、釧路から札幌まで移動しようというふうな距離感で考えてるのであれば、それは全く違います。釧路から札幌への移動は車で4時間程度かかるとのことですから。
そのため、これは移動のしやすさと言う要素を強く提示したら、おそらく北海道は候補からなくなります。
意思決定はとにかく要素の設定の仕方が非常に重要だと思っており、そして僕らは日々たくさんの意思決定をしているわけです。
1.会社内での意思決定について
では、皆さんが日々取り組んでいる仕事において、事業部、チーム、そして組織全体で意思決定をすることがあると思います。
その意思決定をする際に、非常に重要なのは要素であると記載しました。ただ、そんなにもたくさんの要素が思いつくのか?と言うと、僕も自信がありません。そこで非常に重要なことをいくつかご紹介します。
1-1. ディスカッション・対話時において想定外の要素もきちんと話を聞く
自分自身もしくはそのチームにおいて、意思決定をする際に、自分の枠組みの外の要素が提示されることがあります。
たとえば、事業戦略について話し合ったとしましょう。2つの事業戦略案があり、①の案でほぼ決定していたとする。その際に佐藤くんが、
「ただ、トランプ大統領が就任してから関税の影響って強いじゃないですか。日本のメーカー企業がそこで利益率を下げる可能性がある。つまり、利益率が下がる可能性があるユーザを対象としたサービスって、これから儲かるのでしょうか?」
という話をしたとします。
もしこの時点で「海外の情勢」という要素について、そのチームのディスカッションで意見が出ていないようであれば、新しい「要素」の提示なわけです。そして、それまでのディスカッションで意見が出ていないようであれば、おそらくそのチームにとっては、「枠組みの外」からの意見だったとします。
この意見は非常に貴重です。なぜならば、そのチームにとって枠組みの外からの意見(要素)であったからです。もちろんその要素を軸に意思決定をし直すということも、チームの判断としてはできると思いますし、一方で「ほぼ決定していた」と言う状況において、チーム全員の枠組みの外からの意見であった場合、もしかすると気分を損ねるメンバーもいるかもしれません。
1-2. 意思決定において、すべての要素を満たすことはほぼない
前項目で記載した「枠組みの外」からの要素をどの程度扱うのか?については、そのチームの判断によります。一方で、前述した枠組みの外からの意見においてある人がこんなこと言うとします。
「いや、トランプ大統領の関税の影響によって、今回のターゲットにネガティブな影響が及ぶことも予想はできるんだけれども、そこまで気にしても仕方がないから、それは一旦いいんじゃないかな」
「はい、そうですよね。失礼しました」
という会話がなされ、結果的にほぼ決定していた案に落ち着いたとしましょう。
このような体験を皆さんも一度はしたことがあるのではないでしょうか?「まぁいいか」と言うことで、却下をした側、された側の経験をお持ちなのではないかなと思います。僕もたくさんあります。
ただ、ここで非常に重要なのが、「時間軸」と言う観点です。たとえば、この事業アイディアを進めていくにあたり、実際に事業を立ち上げその事業を進めていたとしましょう。すると事業は割と好調に推移をしていた。
ただ、事業を開始してから1年半程度経過をしていた頃に少し不穏な雰囲気が流れ始めていた。それは、
「山根さん、最近ちょっと波風が変わってきたと思っていて、対象としているメーカーさんの意思決定がだいぶ渋くなってきました。話を聞いてみるとアメリカの関税の利率が日本にとって不利に働いていて、そこで徐々に利益率が圧縮されてきたみたいなんです。なので、来期については基本的にはもう契約を継続しないと言う会社が全体の4割程度出てきました」
という話です。
4割の企業が契約を継続しない。これは死活問題ですよね。時間が経過した上でそのような問題が発生したのです。
そこで事業立ち上げ責任者である山根はこんなことを思い出すわけです。
「事業立ち上げ前に、佐藤君が関税の話をしていたなぁ。今事業部の人数は50人。ここで売り上げ4割減は本当に会社としては大きな問題になる。佐藤くんの話をもう少し膨らませて調査をしていれば…」
という感じです。
ただ、さらに今の話をひっくり返すと、もし彼にそこで佐藤くんの話を真摯に受け止め、調査をしていたらどうなったでしょうか?
もしかしたら、その事業自体を取り組まないという選択肢もあったでしょうし、そのリスクを承知した上で取り組むということもあったでしょう。
ただ、もしその意思決定を「その事業はしない」という意思決定をしていた場合、その事業アイディアよりもさらに良いアイディアは存在するのか?という視点も重要です。
どういうことかと言うと、たとえば関税という影響によって、その新しい事業アイディアを実施しないと意思決定をチームとしてしたとしましょう。その上で別の事業アイディアを探求し始めると思うのですが、その別の事業アイディアにおいて「関税」と言う要素は問題ないという調査結果が出たとした場合に、果たして「それ以外」の要素はどうなのか?と言う議論が始まります。
つまり、
・当初の事業アイディアは関税と言う要素は×。それ以外は◯。
・次の事業アイディアは、関税と言う要素は◯。それ以外の1つの要素が×。さらにそれ以外は◯。
という感じになります。つまり、すべての要素が◯なんて事はほぼありえない(と山根は思っていて)、そのため何を認識しておかなければならないかと言うと…この後に項目を分けて記載します。
1-3. 要素の認識と受容
ここまで本文をお読みいただいた方はご理解いただけたと思うのですが、「要素」を複数挙げていった、すべての要素が◯である可能性がほぼゼロである事はご理解いただけたかと思います。本ブログの冒頭に記載をした旅行地の選定はまさにその事例です。
ただ、旅行時でも、彼氏や彼女とのお付き合いでも、結婚でも、会社選択でも、夜ラーメンを食べに行くか否かのすべての意思決定において、あまりよろしくない状況になった際に、
「だから言ったのに…」
という方がいらっしゃいます。これは、
「だから言ったのに…。あの時、私はこの要素が危ないって、みんなに伝えたはずなのに、結局、それが要因で、上手くいかなかったじゃない」
と言いたいのだと思います。ただ、ここで言う「だから言ったのに…」というのが、その意思決定に携わった人、もしくはステークホルダーたちが「覚えている場合はほぼない」ということ。つまり、意思決定の前後に「懸念」をしていた事実とその詳細についてほとんど人が覚えていません。ただ、重要なのは「それを言った人」は覚えていたりします。また、
「実は、そう思っていたんですよね」
という場合もあります。つまり、
「実は、僕この施策はうまくいかないと思ってたんですよね、言わなかったのですが」
というパターンです。
本項目で何を申し上げたいかと言うと、まず前提として要素が多数存在していること自体をメンバー同士で「認識」をすることが非常に重要だと僕は思っています。そして、認識すること以上にさらに重要なのが、その要素が存在していること、そしてその要素が仮にその意思決定にあたりネガティブである場合に、そのネガティブな要素を「受容」したというその意思決定に携わった人の共通認識があることが僕は重要だと思っています。
「認識」と「受容」と表現しましたが、
繰り返しになりますが、意思決定においてすべての要素が◯になる事はほぼゼロです。そのため、ネガティブな要素が発生した場合は、それを認識しつつ受容して、そのリスクを常にウォッチしながら進めることが意思決定においても重要だと思います。
2. 上長や経営における「要素」の重要性
2-1. 要素提示は上長・経営の腕の見せ所
僕は、意思決定において、メンバーが認識しきれない要素を提示することが上長や経営の仕事だと思っています。
現場メンバーが実行するあらゆる意思決定において、上長や経営からすると警戒せざるを得ないパターンも多数存在しています。ただ、メンバーからすると一生懸命考えた末での意思決定だと思います。
そして、メンバーが決断をした意思決定に対して、上長が、
「その意思決定は微妙だと思う。なぜならば、〇〇という要素においては、その意思決定はネガティブだから」
というアドバイスをした場合、メンバーからすると「否定された」という体験だけが残りやすく、重要なのは「どの要素が足りていなかったのか?」を擦り合わせることだと僕は思っています。
ただ、これは本当に難しい。僕の経験上、この本質がメンバーにスムーズに伝わった事例はほぼ無いです。メンバーに残るのは
「自分の意思決定が力足らずだった」
「上長の意思決定が優先された」
という感覚になってしまいがちです。
2-2. 「枠組み」の違いと「こんなはず」問題
メンバーが意思決定をする際に「要素」は多くて2つ程度であることがほとんどです。正確に意思決定するにあたり、優先度が高いものもあれば、そうでないものもあります。そして重要なのは、メンバーの枠組み(経験)ではどうしても思い浮かばない要素であることです。
ここで出てくるのが「こんなはずではなかった」という感覚です。「こんなはず」とは、自分がこれまでの人生で経験してきた当たり前の延長線でしかありません。
たとえば、僕らは当たり前のように箸でご飯を食べますが、別のある国では手を使うのが当たり前。この「当たり前」の差が意思決定における食い違いを生みます。
つまり、上司と部下で「こんなはず(当たり前)」の数も深さも違う。その「深さ」とは視座のことです。
2-3. 実例:会議目的とアウトカムの設定
当社で先週発生した事例を紹介します。社内の定例ミーティングで「目的の再定義」を行ったときのこと。僕はそこで、
「目的を決めるなら良いことだと思う。ただ、アウトカム(理想のあるべき姿)も明文化した方がいいのでは?」
と話しました。アウトカムがあることでメンバーも前向きに取り組めるはずです。
しかし出た意見は、
「アウトカムは経営が決めてくれればいいのでは?」
でした。ここでの要素は「誰が決めるのか?」。
ただ、さらに重要なのは「時間軸のレバレッジ」という要素です。短期的には経営が決めてメンバーに伝えるだけでよいかもしれません。しかし、3ヶ月・6ヶ月と続いたとき、メンバーは当事者意識を持てず、お客様気分になってしまい、やがて「やらされ感」や「張りのなさ」につながるリスクがあります。
僕はこのような体験を社会人生活で何度もしてきました。その失敗を繰り返す中で、枠組みが少しずつ広がってきたのだと思います。そのため、要素が自然に頭に浮かび、メンバーにフィードバックをしますが、理解が得られないことも多いのです。
2-4. 要素を増やすのではなく「構造を理解する」
ここで言いたいのは「要素をどんどん増やそう」という話ではありません。大切なのは、
・要素の数と質は経験によって磨かれる
・しかしそれ以上に、意思決定における構造を理解する
という点です。異なる要素を提示されるのは当たり前。なぜなら、人生経験も視座も違うからです。その背景にはトラウマやメンタルモデルもあるかもしれません。
この理解があると、他人の意思決定にも寛容になれます。
僕は会社の代表という立場上、自分の意思決定が尊重されやすいですが、それでもメンバーに「別の要素もあるんだよ」と伝えることがあります。それは意思決定を変えることを求めているのではなく、光を当てる視点を共有したいからです。
つまり、上長や経営の役割とは、別の要素を照らし出すこと。
それを「否定された」と捉えるのではなく、「新しい要素を示してくれた」と考えてほしいのです。その方が見える景色は大きく変わります。
皆さんも過去の意思決定を振り返り、上司や他メンバーが出した要素を思い出してみてください。それが「否定」だったのか、それとも「寄り添い」だったのか。そうした経験の積み重ねが、意思決定の構造理解に結びつくのだと思います。
皆さんの社会人人生に少しでも参考になれば幸いです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
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