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空から落ちてきた少女が俺に世界の敵と言った 第2話「ずれたままの世界」

第2話

音が、戻ってこない。

カイは夕焼けの下で立ち尽くしていた。

さっきまで確かに目の前にいた。

白い髪。

金色の瞳。

そして――

「お前は、世界の敵になる」

その言葉だけが、耳の奥に残っている。

「……なんだったんだ」

首元へ手を伸ばす。

ペンダントはある。

冷たい金属の感触。

だが、触れた瞬間だけ、脈打ったような錯覚が走る。

思わず手を離した。

風が吹く。

砂が転がる。

工事現場は、いつも通りだ。

……そのはずだった。

「……違う」

鉄骨。

重機。

資材。

見慣れた景色なのに、何かが噛み合わない。

配置が少しだけ違う。

そんなはずはない。

毎日見ている景色だ。

なのに、自分の記憶の方が間違っている気がしてくる。

カイは眉をひそめた。

足元を見る。

少女が倒れていた場所。

何もない。

砂だけが風に流れていく。

「夢……じゃないよな」

夢なら首に残る熱も説明できない。

胸の奥がざわつく。

理由は分からない。

ただ、この場所に立ち続けてはいけない。

そんな感覚だけが膨らんでいく。

深呼吸する。

落ち着け。

そう言い聞かせる。

しかし鼓動は速いままだ。

帰ろうと、足元の工具箱へ手を伸ばす。

持ち上げた瞬間、

「……軽い?」

違う。

気のせいだ。

そう思った瞬間には、何が違ったのか思い出せなくなっていた。

記憶が、少しずつ欠けていく。

その感覚だけが残る。

「なんだよ……」

嫌な汗が背中を流れた。

帰ろう。

そう決めて歩き出す。

一歩。

二歩。

三歩。

その瞬間だった。

ポケットの中で、小さな振動が伝わる。

「……?」

手を入れる。

硬いものが指先に触れた。

取り出す。

見覚えのない、小さなウェアラブルデバイスだった。

「こんなの……持ってたか?」

記憶にない。

なのに、手にはしっくりと馴染む。

まるで昔から使っていたように。

画面が、静かに点灯した。

文字が一行だけ浮かぶ。

『やっと、繋がったね』

「……誰だ」

返事はない。

送信者の名前も表示されない。

画面には、その一文だけ。

やがて光が消える。

沈黙。

風だけが吹いている。

カイはゆっくりと顔を上げた。

その瞬間。

世界から、音が消えた。

風が止む。

夕焼けが揺らぐ。

ほんの一瞬だけ。

景色が、ずれた。

背後に、人の気配。

カイの肩が震える。

ゆっくりと振り向く。

夕焼けを背に。

逆光の中に、誰かが立っていた。

その姿だけが、

静かに、

カイを見つめていた。

振り向いた先にには誰かがいた


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