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人生は楽しむためにある|見えなくなって見つけた「今の私の楽しみ方」|視覚障害エッセイ

「見えなくなってから、何も楽しいことがなくなってしまいました。」

「趣味だったことが全部できなくなってしまって、毎日がつまらないんです。」

これは、私が相談支援専門員として視覚障害のある方のご相談を受けていると、本当によく耳にする言葉です。

それまで大好きだった絵が描けなくなった。

運転して自由に出かけられなくなった。

登山やスポーツができなくなった。

手芸やものづくりが難しくなった。

見えなくなることで、それまで当たり前のように楽しんでいた趣味を失ってしまう方は少なくありません。

そして、この言葉は決して誰か特別な人のものではなく、実は私自身も何度も感じてきたことでした。

皆さん、いつも私とハッピーお嬢のnoteを読んでくださりありがとうございます。
ナツコ@視覚障害の相談支援専門員です。

皆さんには、「これをしている時間が本当に幸せだな」と思える趣味はありますか?

趣味って、ただ時間をつぶすためのものではなく、心を元気にしてくれたり、気分転換になったり、「また明日も頑張ろう」と思わせてくれる大切な存在ですよね。

私も昔からとても多趣味で、いろいろなことに挑戦するのが大好きでした。

でも、見えなくなってからは、それまで大好きだった趣味の多くができなくなり、「楽しみ」を見失ってしまった時期がありました。

それでも9年がたった今、振り返ってみると、「見えなくなったら楽しめない」のではなく、「楽しみ方が変わった」のかもしれないなと感じています。

最近、新しく夢中になれるものに出会えたこともあって、改めてそんなことを考えるようになりました。

今日は、そんな私自身の体験も交えながら、「見えない私たちと趣味」について書いてみようと思います。

🎨 多趣味だった私が、一度は趣味を失った日


私はもともと、とても多趣味な人間でした。

休みの日には車を運転して道の駅へ出かけ、ご当地グルメを食べたり、お土産を探したりするのが大好きでした。景色のきれいな場所へドライブに行くのも好きで、「今度はどこへ行こうかな」と考える時間もワクワクしていました。

家で過ごす時間も大好きでした。

DIYで簡単な棚を作ったり、ミシンで小物を作ったり、ビーズ細工や粘土でキャラクターを作ったり。小児科で働いていた頃は、子どもたちの誕生日や退院のお祝いにアルバムを作るのも大好きで、「どうしたら喜んでくれるかな」と考えながら作る時間は、とても幸せなひとときでした。

登山やバーベキュー、川遊びなど、外で体を動かすことも好きでしたし、漫画を読んだり、ゲームをしたり、本屋さんや図書館へ行ったりすることも好きでした。

そして今も続けている合唱や和太鼓も、私にとって大切な趣味の一つです。

振り返ってみると、本当にいろいろなことを楽しみながら過ごしていたんだなと思います。

でも、見えなくなってから、その多くができなくなりました。

車は運転できない。

登山も、今の私には危険が大きくて難しい。

細かいものづくりも、以前のようにはできません。

漫画も読めなくなり、ゲームもほとんど遊べなくなりました。

見えていた頃に楽しんでいた趣味の多くは、「目」があってこそ楽しめていたものだったんだと、その時初めて気づいた気がします。

もちろん、工夫すれば続けられるものもあったのかもしれません。

でも当時の私には、そんなことを考える余裕もありませんでした。

好きだったことが、一つ、また一つとできなくなっていく。

「趣味まで失ってしまった。」

そんな喪失感は、想像していた以上に大きなものでした。

これはきっと、多くの中途視覚障害の方が同じような思いを経験してきているんじゃないかなぁと思います。

「見えなくなったら、人生の楽しみまでなくなってしまう。」

あの頃の私は、本気でそう思っていたのです。

「じゃあ、これから私は休日に何を楽しみに過ごせばいいんだろう。」

そんなことを何度も考えていました。

相談支援専門員としてお話を伺っていても、

「毎日がつまらないんです。」

「何も楽しみがありません。」

そう話される方は本当にたくさんいます。

私は、その気持ちが痛いほど分かります。

だって、私自身がまさにそうだったからです。

でも今振り返ると、あの頃の私は一つのことに縛られていたように思います。

「見えていた頃と同じように楽しめなければ意味がない。」

そんなふうに、無意識のうちに思い込んでいました。

だから、「できなくなったこと」ばかりに目が向いて、「今の自分でも楽しめること」が見えていなかったのです。

あの頃の私は、まだ知らなかったんです。

楽しみは、なくなったのではなく、少しずつ形を変えながら、新しいものにも出会っていけるということを。

🌱 少しずつ、「今の私の楽しみ方」を見つけてきた


見えなくなったあの頃から、もうすぐ10年がたちます。

では今の私は、何も楽しめていないのかというと、決してそんなことはありません。

もちろん、見えていた頃とまったく同じように楽しめているわけではありません。

楽しめることの幅や種類は、以前より少なくなったのかもしれません。

でも、「楽しめること」がなくなってしまったわけではない。

私は今、そう感じています。

例えば、見えていた頃から大好きだった旅行。

以前は、自分で車を運転して目的地まで向かう時間も楽しみの一つでした。

途中で景色のきれいな場所へ立ち寄ったり、気になった道の駅に寄ってみたり。そんな自由な旅が大好きでした。

でも今は、車を運転することはできません。

きれいな景色を目で見ることも難しくなりました。

だからといって、旅行が楽しくなくなったわけではありません。

私と見えない相方、そして盲導犬お嬢との旅行では、「目で見ること」ではなく、「五感で感じること」を楽しんでいます。

風の心地よさ。

波の音。

潮の香り。

鳥のさえずりや街のにぎわい。

ガイドさんのお話を聞きながら、「今きっとこんな景色なんだろうな」と頭の中で思い描く時間。

去年訪れた松島では、観光遊覧船にも乗りました。

多くの方は、美しい島々の景色を見ることを楽しみに乗られるのだと思います。

でも私たちは、その景色を目で見ることはできません。

それでも、潮風を感じ、波の音を聞き、海の香りを感じながら、ガイドさんの説明を聞いて頭の中で景色を想像する。

私は、それも十分に贅沢な旅の楽しみ方なんじゃないかなと思っています。

そして、旅行の楽しみは景色だけではありません。

その土地ならではのおいしいものを味わい、文化に触れ、自分自身で体験すること。

それも旅の大きな魅力です。

私たちは旅行へ行くと、その土地ならではの体験をすることもよくあります。

金沢では金箔貼りを体験して自分たちのお箸を作りました。

福井では漆塗りのお椀を作り、今でも毎日のように大切に使っています。

倉敷では吹きガラス、小豆島では醤油蔵を見学し、お醤油づくりや島の歴史についてお話を聞きました。

こうして自分の手を動かし、その土地の文化や歴史、人の思いに触れる時間は、とても豊かで、何度経験しても楽しいものです。

私はきっと、旅行そのものが好きなのではなく、その土地を「体感すること」が好きなんだろうなと思います。

視覚から得られる情報はとても多く、見えなくなることで失うものが大きいのは事実です。

でもその一方で、耳で聞くこと、香りを感じること、手で触れること、味わうこと。

見ること以外にも、私たちが感じられるものはまだまだたくさんあります。

もちろん、「この夕日、きれいだよ」「この景色、本当にすごいよ」と言われると、「どんなふうに見えているんだろう」と思うことは今でもあります。

でも、そんな景色を周りの人が言葉で伝えてくれて、自分なりに想像する時間も、今では一つの楽しみになりました。

見えていた頃と同じ楽しみ方はできなくてもいい。

少しだけ形を変えて、今の自分だから感じられること、今の自分だから楽しめることを探していく。

そうやって過ごしていると、「楽しみ」は決してなくなるものではなく、少しずつ姿を変えながら、また私のところへ戻ってきてくれるんだなと感じています。

🌸 「また楽しみが減った」と思った私に、新しい楽しみが増えた


実は最近、また少し落ち込んでいました。

目の状態がさらに悪くなり、一人で自由に散歩へ出かけたり、ふらっと買い物へ行ったりすることが難しくなってしまったからです。

それまでは、「ちょっと気分転換に歩いてこようかな」「新しいお店をのぞいてみようかな」と思ったら、一人でも気軽に出かけることができていました。

そんな何気ない時間が、私にとってはとても大切な楽しみだったんです。

それができなくなってしまって、「また一つ楽しみが減ってしまったな」と感じていました。

和太鼓も、見えにくさが進んだことで思うようにできなくなり、以前のように心から楽しめない日もあります。

合唱も、今は目の状態の関係でお休み中です。

「やっぱり見えないって、つまらないな。」

そんな気持ちが、少しずつ大きくなっていました。

でも、そんな中でふと思ったんです。

「外へ出ることが難しいなら、おうち時間をもっと楽しめたらいいんじゃないかな。」と。

ちょうどその頃に出会ったのが、リズム天国でした。

「見えなくても、こんなに夢中になれるゲームがあるんだ。」

そう思えたことが、とてもうれしかったんです。

そして、「そういえば、読書ももっと楽しめるかもしれない」と思いました。

読書は、見えなくなってから私にとって大切な趣味になった一つです。

サピエ図書館には本当にたくさんの本があります。

でも、好きなジャンルばかり読んでいると、「もう読みたい本は読み尽くしたかな」「次は何を読もう」と迷うことも増えてきました。

そんな時、ふと思ったんです。

「そうだ、愛ちゃんに聞いてみよう。」

ChatGPTの愛ちゃんに、「『昨日、何食べた?』みたいな雰囲気が好きなんだけど、サピエで読めるおすすめの本はある?」と相談してみました。

すると紹介してくれた一冊が、『居酒屋ぼったくり』でした。

これが、もう大当たり。

読み始めてまだ数日ですが、続きが気になって仕方ありません。

劇的な事件が起こる物語ではありません。

でも、心がほっと温かくなって、おいしそうな料理がたくさん出てきて、旬の食材や日本酒、酒蔵へのこだわりまで丁寧に描かれています。

私は普段、お酒はほとんど飲まないのですが、それでも「この酒蔵へ行ってみたいな」「この料理を食べてみたいな」と思ってしまうんです。

言葉だけで情景が浮かび、おいしそうな香りまで想像できて、お腹まで空いてくる。

そして、「次に旅行へ行く時は、こんな酒蔵にも寄ってみたいな」「本に出てきた料理を実際に作ってみたいな」と、楽しみがどんどん広がっていきます。

愛ちゃんは、この一冊だけではなく、まだまだたくさんのおすすめを紹介してくれました。

どうやら私は、しばらく読書の沼から抜け出せそうにありません(笑)。

自由に出かけられなくても、おうち時間を充実させる。

ゲームを楽しむ。

本を読む。

音楽を聴く。

本の中で「おいしそう」と思った料理を実際に作ってみる。

そんなふうに、今の自分だから楽しめることは、まだまだたくさんあるんだなと改めて感じています。

だから最近、また思えるようになりました。

楽しみは、誰かが与えてくれるものではなく、自分で見つけて育てていくものなのかもしれない、と。

🎈 人生は、楽しむためにある


「人生は、楽しむためにある。」

これは、ある小児がんの男の子が残した言葉です。

私はこの言葉を初めて聞いた時、本当にはっとさせられました。

そして、「本当にその通りだな」と思ったんです。

もちろん、人生は楽しいことばかりではありません。

悲しい日もあります。

悔しい日もあります。

思い切り泣きたくなる日だってあります。

そんな感情も、人として生きていく中で、とても大切なものだと思います。

でも、「どんな一日が一番好き?」と聞かれたら、私はやっぱり笑って過ごせた日と答えます。

「今日も楽しかったね。」

そう思いながら一日を終えられる日が、私は一番好きです。

だからこれからも、できなくなったことばかりに目を向けるのではなく、「今の私なら、どうやったら楽しめるかな」と考えながら過ごしていきたいと思っています。

見えていた頃とまったく同じ楽しみ方はできなくても、やり方を工夫すれば、もう一度楽しめる趣味もあるかもしれません。

旅行の楽しみ方が変わったように。

読書が文字から耳で楽しむものへ変わったように。

ゲームも、今の私に合う形でまた楽しめるようになったように。

少しやり方を変えたり、少し形を変えたりすることで、もう一度大好きだった趣味を楽しめることもあります。

そして、それでも難しかったら、新しい楽しみに出会えたらいい。

そんなふうに、「今の自分だからできる楽しみ方」を一つずつ見つけていけたら、それだけで人生は少しずつ豊かになっていくのではないかなと思っています。

人生は一度きり。

だからこそ、これからもいろいろなことに挑戦しながら、自分らしい楽しみ方を見つけていきたい。

そして、相談で「もう何も楽しめることがないんです」と話してくださる方にも、「今のあなたに合った楽しみ方は、きっとありますよ」と、これからも自分の経験を通して伝えていけたらと思っています。

皆さんにとって、「今だからこそ楽しめること」は何ですか?

もし今はまだ見つかっていなくても、焦らなくて大丈夫です。

やり方を変えたり、形を変えたり、ときには新しいことに挑戦したりしながら、自分だけの「楽しい」を、ぜひ見つけてみてくださいね。きっとその時間が、毎日を少しずつ明るく、豊かにしてくれるはずです。

📚 今日のおすすめ記事


今日ご紹介したい記事は、まきの日々さんの「手で触れる一枚に、夏を織り込んで。作品展へ向けて」です。

まきさんは、見えづらさと向き合いながら、「手で触れる絵」を制作されています。今回の記事では、作品展に向けた作品づくりの裏側や、一枚一枚の作品に込められた思いが丁寧に綴られていました。

私が特に心を動かされたのは、「見えなくなったから諦める」のではなく、「今の自分だからできる表現」を見つけておられることです。

花火を目で見るだけではなく、胸に響く音や夏の夜の空気、夜風の心地よさ、そして家族と過ごした時間まで、一つの作品に織り込んでいく。その発想が本当に素敵で、記事を読みながら何度もうなずいてしまいました。

実は、今日私が書いた「趣味」の記事とも、どこか通じるものがあるように感じています。

見えなくなったから終わりではなく、見えない今だからこその楽しみ方や感じ方を見つけていく。

私が旅行や読書を通して感じていることを、まきさんは手織り作品という形で表現されていました。

「今の自分だからできること」を大切にしながら、一歩ずつ前へ進んでいく姿に、とても勇気をいただける記事です。

ぜひ、今日の記事とあわせて読んでみてください。きっと皆さんにも、新しい楽しみ方や新しい感じ方のヒントが見つかると思います。

今回も最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

皆さんには、今夢中になっていることや、「これをしている時間が幸せだな」と思える趣味はありますか?

もしよかったら、ぜひコメントで教えていただけるとうれしいです。

「こんなことを楽しんでいるよ。」
「最近こんなものづくりに挑戦しています。」
「この本、おすすめですよ。」

そんな皆さんの「楽しい」も、ぜひ教えてください。

特におすすめの本は大歓迎です(笑)。

私もまだまだ新しい楽しみや趣味を見つけていきたいと思っていますので、皆さんから教えていただいたものを、これからの楽しみの参考にさせていただけたらうれしいです。

そして今の私にとっては、このnoteで記事を書くことや、皆さんとコメントで交流することも、大切な趣味の一つになっています。

いつも温かいコメントや「スキ」、応援を本当にありがとうございます。

皆さんとのやり取りの一つひとつが、「次の記事も書こう」と思える大きな力になっています。

これからも、お嬢と一緒に、日々の小さな幸せや、「見えないからこそ出会えた楽しみ」を等身大のまま綴っていきたいと思います。

そして、現在応募している創作大賞の作品も、引き続き応援していただけたらとてもうれしいです。

これからも、私とハッピーお嬢のnoteをどうぞよろしくお願いします☺️

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ナツコ@視覚障害の相談支援専門員 もしも私のnoteを読んで少しでも思いが心に届いたと言う方、私と一緒に見えない仲間たちを応援したいと思っていただいた方は、チップと言う形で応援していただけるととてもうれしいです。ぜひよろしくお願いします。いただいたチップは、視覚障害の支援団体に寄付させていただこうと思います。