(書評)第34回「残酷人生論」(池田晶子 著)☆哲学の巫女。日本で唯一本物の哲学者。46歳の若さで他界☆
アマゾンのレビューや、他の人の書いた解説をいくつか読みましたが、本当に理解していると思えるものが無かったので、自分で解説します。

専門用語による学問としての哲学ではなく、日常の言葉によって平易に哲学を語る「哲学エッセイ」を確立して、幅広い読者から支持されます。とくに若い人々に、本質を考えることの面白さ、形而上の切実さを、存在の謎としての生死の大切を、語り続けました。
ソクラテスやプラトン、ヘーゲルなどの昔のすぐれた哲学者とコリー犬、そしてワインをたしなみ美酒佳肴を生涯の友としました。『14歳からの哲学』『14歳の君へ』などの著作で話題を呼びました。著作は約40冊出ています。

2007年2月、腎臓癌により死去。その業績を記念して、精神のリレーに捧げる「わたくし、つまりNobody賞」が創設されました。

物心ついた頃から「なぜか精神性以外は認められなかった」と言っています。人生と魂についての真実だけを知りたいと願う、その真摯な生き方は、もはや哲学者というよりは求道者です。卓越した論理性と直観力、孤高ともいえる大胆な表現は、多くの人を惹きつけます。
本書の内容を紹介します。
生死、私、自由、情報、信じる、わかる、善悪、神、魂、幸福、の10章から成り、各5項目ずつのテーマで、各4ページの短文から成ります。全256ページです。

以下、いくつかポイントになるフレーズを列挙します・・・
「人間は真善美、神の概念はあらかじめ備わっている」
「「わかる」とは「わからない」ということがわかることである」
「死は「無」だから存在しない。存在するのは「他人の死(あるいは死体)」だけ」
「社会(国家)も存在しない。社会を存在させているのは、各人の「社会があると錯覚する考え」だけである」
「貨幣も考えればただの紙切れか金属片で「価値があると信じている考え」があるだけである」

「考えることは、悩むことではない。世の人、決定的にここを間違えている。人が悩むのは、きちんと考えていないからにほかならず、きちんと考えることができるなら、人が悩むということなど、じつはあり得ないのである」
「情報と知識は違う。情報は他人の考えで、知識は自分の考え」
「重要なのは、内容よりも形式」
「哲学は「垂直的孤絶性」「凝縮的透明性」」
「「救い」というのは、ありのままの事実を認めることである」
「嘘は信じることしかできないが、真実は認めることしかできない」
「「死」こそが、人間にとって最大の謎であり魅惑なのだ」
「「自分の死」はまさしく「無い」のだから、恐れるのは間違い」
「倫理と道徳は違う。倫理は自由(自律的)で道徳は強制(他律的)」

究極の論理思考で、当たり前の人生観・世界観を疑い、見せかけの知性を容赦なく一刀両断します。わからない人にはわからない。読んでいてわかってしまった人にとっては、ネジが飛んだように可笑しくて仕方がない内容です。
「処世術」とは対極にある本です。気鋭の哲学者・哲学の巫女・日本で唯一本物の哲学者だと思います。


