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太陽より偉大だったおじいさん恒星の遺産

地球はお父さんともいうべき太陽に照らされて、我々は、そのおかげでぬくぬくと生きています。太陽は日本の稲作文化でも大事な要素で、国旗は太陽、一番偉い神様は天照大神。しかし、我々の今のこの幸せは、お父さんともいうべき太陽の他に、比較的短命で亡くなったおじいさん恒星の遺産にも大きく依存しています。あまり誰も偲んでくれず、お気の毒なのでその辺のいきさつを。


ビッグバンで宇宙が始まったとき、まだエネルギー状態が非常に高くて、陽子や中性子のような簡単な核子さえ存在できませんでした。しかし、宇宙が膨張しエネルギー状態が下がると陽子や中性子ができて、やがてこれらが星を形成すると、重力で凝集していく過程で温度が上がり、それによって熱核融合が生じるようになります。太陽の主なエネルギー源が核融合反応であるのはよく知られているところです。

ところが、実際の太陽の「歴史」は、ビッグバン、中性子・陽士形成、核融合の星へ、と言った一筋縄ではありません。証拠は地球にあります。地球も太陽も同じ宇宙のチリからできましたが、地球にはウランや金、プラチナといった重元素があります。そして、これらの周期律表で言うと下の方にある重い元素は、普通の核融合だけでは到達できず、R過程というむちゃくちゃ強力な中性子照射環境が必要なのです。そして、このR過程は、大きな恒星が寿命の終わりに超新星爆発を起こしたり、残った中性子星同士が衝突したりして生じます。

超新星爆発を起こした、いわばおじいさんの星は、地球にとってお父さんの星である太陽よりも数十倍の質量をもち、核融合によって鉄までの元素合成を行っていました。おじいさん星は太陽よりも圧倒的に短寿命であったと言われていますが、死後に偉大な財産(重原子核)を残しました。これらの中には生命にとって重要な元素も含まれています。

一方、太陽は、熱と光を太陽系に供給してくれていますが恒星としては平均的な大きさのもので、中で行われる核融合反応では、せいぜい炭素、酸素ぐらいまでしか作れません。おじいさんほどの甲斐性(質量)がないので、最後はひっそり白色矮星(その前に赤色巨星)。超新星爆発は無理です。しかし、寿命だけは長く、惑星の上に生命が誕生し、文明が発達するまでの時間を確保してくれました。そしてここ当分、輝き続けてくれています。つまり、我々が、今地球上で幸せに生きているのは、短命だけど一発当てた(?)おじいさんの遺産と、そこそこ勤勉でまじめなお父さんの絶妙のコンビネーションによるものです。


補足1 太陽と地球は同じチリからできたと思えない?


確かに、太陽は水素からヘリウムを合成してエネルギーを出し続けるガスの星、地球は水と土(と、ちょっとの空気)の星です。実は地球も最初は太陽と同じような物質割合だったのですが、重さが足りずに重力が弱く、ヘリウムなどの軽いガス成分は宇宙に逃げてしまい、比較的重い成分が多い星になりました。一方、チリの構成成分を全部引き留めることができた太陽はガス勝ちな星になりました。


補足2 核融合でも核分裂でもエネルギーが取れる。なんか変?


原子核が軽いうちは、2つ合わせてより重い原子核を作るとエネルギー的に安定になり、これが恒星の中で重い元素が核融合で合成され、恒星が輝く駆動力になります。しかし、これには限界があり鉄より重い元素は鉄よりエネルギー状態が高くなり、たとえて言えば、ボールは坂道を転げ落ちることはあっても、自然に坂道を上ることがないように、鉄以上の元素は、恒星内の核融合では作ることができません。でも、地球に金銀や、はてはウランまで存在するのは、無理やり既存の原子核に中性子を連続して注入する過程を経てきたからです。その猛烈な中性子照射環境がR過程で、比喩的に言えば、ウランは超新星爆発エネルギーの缶詰という事になります。

安定同位体における核子1個当たりの稀有郷エネルギーの原子番号による変化 https://www.chem.tsukuba.ac.jp/kazuya/kazuya/Chap03.pdf

このグラフは、原子核の『安定さ』を表しています。山の頂点にあるのが鉄(Fe)です。鉄より軽い元素(左側)は、核融合して右へ(鉄へ)向かうことで、より安定になりエネルギーを放出します。これが星の中で起こっている核融合です。しかし、鉄に到達すると、それ以上融合しても安定にはなれず、逆にエネルギーが必要になってしまいます。だから、普通の星の核融合は鉄で行き止まりになるのです。このグラフからもわかるように、よりエネルギー状態の高い鉄より重い原子核は、核融合ではなく、R過程による超強力な中性子照射環境が必須になります。
また、このグラフは最も安定な同位体について示されていますが、不安定な同位体も含めて、中性子数、陽子数の2つをパラメータとして、その時の結合エネルギー(あるいは、質量欠損)を示したのが3次元核図表というもので、こちらに説明があります。


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