食より気になる夫の話 宮下奈都『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』
ちょっと重い内容の本を読んだので、気軽に読めそうなものをと手に取りました。
(Kindle Unlimitedで)
こういう時にエッセイは良い。
ひとつひとつのエピソードが短いし、日常的な話題が多いから流れるように読めるのがありがたい。
特に食べ物の話は、書き手それぞれの個性が出ていて面白いものです。
人間、誰しも食べなくては生きていけないわけで、
「食べ物にこだわりありません」
「栄養が取れればそれでいい」
みたいな人でも、それ自体がこだわりというか、自分にはない視点でそれもまた興味深い。
そんなわけで、この本も気分転換にサクッと読もうと思ったのだけど、思いのほか苦戦してしまいました。
宮下奈都『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』
あらすじ
第13回本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』の作者による「食」にまつわるエッセイ。
といっても外食や高級食材の話ではなく、日々食べたものとか、家族や友人とのやり取りで想起された思い出の味なんかが中心。
読むのに時間がかかってしまった理由
私、読むのが早いのですよ。
学生時代に友人に借りた本を返しに行くと、大抵ドン引きされていたものです。
でも、この本はゆっくりしか読めませんでした。
というのも、1話が絶妙に短いうえに、読みやすい文章なので、普段のペースで読むと話が入ってくる前に終わってしまうのですよ。
読み飛ばすには惜しい話ばかりなので、自然とペースを落として読みました。
現代文の長文読解以来じゃなかろうか、こんなに一字一句きちんと読んだのは……。
で、そんな感じで読み終えて印象に残ったのは、食べ物よりも家族の話でした。
特に「夫」の話。
著者が「夫」を好きすぎる件
この人、夫大好きすぎだろ!
ちょっといくつか抜粋してみましょう。
こんな具合である。
その①:スイカの種についての筆者と友人の会話
「几帳面に取りすぎる男とつきあうのは大変かも」
急に話が飛んだ。
「でも、気にしないで飲み込むのも程度ものだよ。種にひとつも気づかない男もちょっと」
じゃあ何粒出すのがベストか、という話になった。
「七粒くらいかな」
私の意見に、彼女があきれた顔になった。
「ねえ、それ、いい加減すぎ。そもそもスイカひと切れの大きさだって違うのに、七粒って」
(中略)
その夜、晩ごはんの後にスイカを切った。友人との会話を思い出し、黙って見ていた。
(中略)
夫のお皿に残った種は、ぴったり七粒だった。
なんだよ、惚気かよ!
その②:バレンタインのチョコレートの思い出
昔、好きな人にチョコレートを送ったのに、反応が芳しくなかったというエピソード
失恋の話か……。
ちょっとしんみりしながら読んでいたら、最後の最後でその相手が夫であることが判明。
また「夫」かよ!
どんだけ好きなんだよ!
食べ物よりも気になる「夫」
他にもちょいちょい出てくる夫ネタ。
これがまた積極的に惚気るとか、自慢するという感じではありません。
ごく自然に出てきた感じなのです。
こうなってくると、食べ物よりも俄然「夫」が気になってきてしまいます。
なんとなくだけど、隙のないイケメンというよりは、ちょっと天然で包容力のあるタイプのような気がする……
いやいや、何やってるんだ私!
気になりすぎてつい、他人様の配偶者について妄想するという、なかなかに痛いことをやらかしてしまいました。
でも、不思議と悪い気はしない。
仲良きことは美しき哉
家族仲、夫婦仲が良いのは素敵です。
当事者はもちろん、見ている者にとっても。
偉い人は言いました。
「仲良きことは美しき哉」と。
少子化対策で謎の施策にとんでもない予算をかけるよりも、この本を配る方が効果があるんじゃなかろうか。
そんなことを考えたりしました。
今回紹介した本

Kindle Unlimitedについてはこちらでも説明しています。

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