最も無駄で、最も人間らしい仕事 佐々涼子『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』
「国際霊柩送還士」という仕事を知っていますか?
海外で死亡した人々を祖国へ返す業務を行なっている人たちです。
この本を読んでいて「陰徳を積む」という言葉を思い出しました。
「人知れず良いことをする」という意味です。
といっても、別に当人たちは隠れてるつもりもないのだろうけど……。
ただ、私は知らなかった。
そんな仕事があることも。
それがどんなに大切で、大変なものなのかも。
佐々涼子『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』
あらすじ
海外で死亡した人々を祖国へ返すための様々な業務を担っている「国際霊柩送還士」。
その専門業者である「エアハース・インターナショナル」の仕事現場に密着したルポ。
遺体が国境を越えるための事務手続きから、空港での出迎え、エンバーミング、遺族のもとへ送り届けるまで。
彼らの仕事は多岐にわたる。
場合によっては遺族のメンタルケアまでも行うことがある。
海外で事件・事故があれば昼夜を問わず呼び出される。
扱う遺体は状態が悪いこともしばしば。
遺体を生前に近い状態に修復するのも彼らの仕事だ。
肉体的にも、精神的にも辛い仕事である。
世の中に仕事は数多ある中で、彼らはなぜこの仕事を選び、どんな思いで続けているのか。
知られざる「国際霊柩送還士」の現場を描く。
無駄で非合理的な仕事、でも……
ある意味で最も無駄な仕事かもしれません。
とんでもない手間と金とエネルギーを割いて遺体を運ぶのです。
最後は燃やすか、埋めるかするために。
自分でも家族でも、もし海外で死亡してしまったらどうするべきか?
徹底的に合理的な判断をするならば、現地で火葬してしまうのが一番良いでしょう。
骨と灰ならスペースも取らないし、何より腐りません。
可能なら現地で散骨でもしてしまえば、もっと手間は減りそうです。
でも、それを選ばなかったからといって、遺族を批判する気にはなりません。
そして、遺体を運ぶ人々のことも。
最も人間らしい仕事
人間は非合理的な生き物です。
馬鹿馬鹿しく、非合理的、無駄も多く、自然に逆らってばかりいる。
でもそれこそが「人間らしさ」であるかも知れません。
だとしたら、「国際霊柩送還士」とは、最も人間らしい仕事とも言えるでしょう。
誰かの人生の最後の最後で尊厳を守ってくれているのだから。
陰徳あれば陽報あり
冒頭に述べた「陰徳」という言葉ですが、「陰徳あれば陽報あり」というフレーズもあります。
「密かに善行を重ねれば、巡り巡って良いことがある」という意味です。
国際霊柩送還士たちにも、どうか「陽報」があってほしいと思います。
なんか、この本を読んだ感じでは、当人たちは自分で自分の「陽報」を願わなそうなので、私が代わりに全力で願っておこうと思います。
頑張った人、良いことをした人が報われる世界であって欲しいものです。
願わくば、この本自体が「陽報」の一部でありますように。
悪徳業者にも報いあれ
ところで、どこの世界にも悪徳業者というのはいるもので、この本にも出てきます。
金だけ取って杜撰な処置をしたり、不要な措置を勧めて追加料金を請求したり……
酷いなぁ。
死者の財布にまで手を突っ込むのか。
羅生門かよ!
こちらにも報いがあることを願って止みません。
とはいえ、さすがに生死に関わるような報いを願うのは気が咎めます。
ここは、例の呪いをかけることにしましょう。
「靴下に穴が空き続ける呪い」です。
↓この呪いについてはこちらから
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