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夜鳴き蕎麦屋のお菊さん(20) 第1587幕

【スピンオフ : 花修行編】 

第20話 『夢見の巫女見習い②』

花は、ひいばあちゃん(桜婆)から、一人の指導霊のゴン爺を紹介された。

ゴン爺:
花かい。

俺のことは、ゴン爺とでも呼んでくれ。

お前の祖先の一人であり、指導霊の一人だ。

じゃあ、桜婆、花を連れてくぞ。

花(幽霊):
ひいばあちゃんの桜婆。

ありがとう。私、頑張って修行してくるね。

ゴン爺、初めまして。

どうか、ご指導よろしくお願いします。

ゴン爺:
ああ、よろしくな。

じゃあ、行くぞ。

ゴン爺は、花を自分の住んでいる家へ連れて帰った。

家の側には、轟々ごうごうと大きな音を立てて流れ落ちる、大きな滝があった。

ゴン爺:
花、まずは、ここで滝行を行う。

ここで、お前に一つの呪文を授けよう。

これは、光明真言(こうみょうしんごん)という、お経じゃ。

光明真言とは、大日如来だいにちにょらい智慧ちえと慈悲が込められた言葉であり、

災難を取り除き、心身を浄化し、開運招福、病気平癒へいゆ、先祖供養など万能なご利益があるお経じゃ。

よし、覚えたか?

じゃあ、早速滝行してこい。

滝に打たれながら、一心不乱に、この光明真言を唱えるのじゃぞ。

そのうち、冷たさも、背中に当たる痛みも、水の音も消えていくことじゃろう。

無心で祈りなさい。

そのうち、空(くう)を感じることができるはずじゃ。

般若心経はんにゃしんぎょうというお経の中に、『色即是空 空即是色(しきそくぜくう くうそくぜしき)』という言葉が出てくる。

色(しき) すなわち これ 空(くう)なり。 
空(くう) すなわち これ 色(しき)なり。

この世のすべてのものは固定された実体がなく、常に変化し関係し合って存在している。

ということじゃ。

『空(くう)』とは、『からっぽ=零』ということではなく、実体がない(定まった形がない)ことを指し、空(くう)であることで初めて現象界の万物(色)が成立するということじゃ。

ちと、難しかったかのう。

まあ、いい。講釈はこのぐらいにして、まずは滝行をやってみろ。

己がいかに弱く、他人に依存していたかがわかるはずじゃ。

きっと、この滝行の後、お前の心は見違えるように成長しておろう。

花:
ゴン爺、わかった。

やってみるよ。

ひゃ〜 冷たい。

それに、背中が痛い。

前が見えない。

あっ、いけない。

呪文を唱えなきゃ。

『オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラハラバリタヤ ウン』

『オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラハラバリタヤ ウン』

『オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラハラバリタヤ ウン』

・・・・・

花:
あれ、なんか、だんだん冷たさや、背中の痛み、それと水の音が消えていくみたい・・・

・・・・・

あれ、ここは?

なんか、真っ暗な空間にいるようだ。

これが、空(くう)なんだろうか?

だけど、なんだろう。

凄く温かい。

温もりを感じる。

あれ、一筋の光が差し込んできた。

きれい!

これが、愛なの?

不思議な感覚!

ゴン爺:
今日は、このくらいでええじゃろう。

花は滝から出ると、服を着替えてゴン爺の家の中に入った。

ゴン爺:
さあ、腹が減っただろう。

食べなさい。

部屋に入った花は、温かいご飯をご馳走になった。

一口食べた瞬間、幽霊になって、魂だけになって初めて、今まで感じたことのない感触・味覚が・・・

花:
あれ、味がする。

ご飯が美味しい。

触感もある。

久々の感覚だあ。

ゴン爺、どうして?

わずかにみを浮かべる、ゴン爺。

ゴン爺:
そうか、美味いか?

よかったなあ。

感覚を思い出して。

実はなあ、お前が滝行をしている間に、ちょいと呪文を唱えておいたのじゃ。

飯を食っても、美味しくなくちゃ、食った気がせんじゃろうと思うてのう。

ホッホッホッ。

花:
ゴン爺、ありがとう。

美味しいって感じるのって、こんなに幸せなんだね。

次の日も、また次の日も、滝行は続いた。

そして、花は、すぐに瞑想めいそう状態に入れるようになり、

少しづつだが、心(魂)も磨かれ、強く光り輝いていった。

そんな修行が1週間続いた夜に、ゴン爺が花に言った。

ゴン爺:
花、よく頑張ったな。

今日で、修行は終わりじゃ。

お前の魂が光り輝いておる。

もう、どんなことがあっても、お前の心は折れることはないじゃろう。

これで、お菊を守れるな。

教えた呪文、万能だから、忘れるなよ。

それから、もう一つプレゼントじゃ。

現世に帰ってからも、お前の味覚と触感だけは残しておいてやる。

美味しいご飯を楽しむんじゃぞ。

ホッホッホッ。

花:
ゴン爺、ありがとうございました。

お世話になりました。

ゴン爺、大好き!

ゴン爺は、花を連れて、ひいばあちゃんの桜婆のところにやってきた。

ゴン爺:
桜婆、これでワシの役目は終わりじゃ。

あとは、任せたぞ。

じゃあ、またな。

花、元気にやりなさい。

花:
ゴン爺、ありがとう。

また、いつか会おうね。

桜婆(ひいばあちゃん):
ゴン爺、世話になったねえ。

流石さすが、ゴン爺だ。

花のこと、しっかり仕上げてくれたみたいだね。

ありがとうよ。

また、今度酒でも飲もうや・・・

ゴン爺は、満面の笑みを浮かべて、自分の家に帰っていくのであった。

ゴン爺:
流石さすが、ワシじゃ。

流石、花じゃ。

よくやりきリおったわい。

ホッホッホッ。

さあ、今日の酒も美味いじゃろうて・・・🤣

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