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【R18】Ailes Conjuguées(エール・コンジュゲ)|比翼連理のエロティシズム(5):第八章(終)

【閲覧注意】
本作には性愛に関する露骨な描写が含まれます。
18歳未満の方、およびこうした表現に抵抗がある方は閲覧をお控えください。



第八章:Ailes Conjuguées

森の朝は、都会のそれとは比べものにならないほど静か。
律と澪を幼稚園へ送り届けて、この「Ailes Conjuguées」の扉を閉めた瞬間、世界からノイズが完全に消失するの。
かつて、泥沼のような組織の中で、やりがいのない仕事、すり減るような人間関係と無機質な数字に追われていた日々が、まるで遠い前世の出来事みたいに感じられる。

今の私の「仕事」は、夫が設計した美しいアーキテクチャの深淵に潜り、そこに潜むわずかな「歪み」や「バグ」を狩り取ること。
彼は私を「クオンツの原石」なんて呼ぶけれど、私にとっては、この完璧なシステムを守り抜くことこそが、最高の知的な愉悦なの。
地下の書斎――私たちの「特異点」に降りれば、そこはもう時間すら意味をなさない場所。
最新の論文から得た数式をコードに落とし込み、AIがより冷徹に、より優雅に市場を攻略できるように盾を構える。

それが私の、峻への愛の形。

驚くほど負担が軽いか、って?
ええ、そうね。でも、それは「楽をしている」のとは少し違うの。
通勤電車の殺伐とした空気も、上司の機嫌を伺う不毛な会議も、ここには存在しない。
脳のリソースを、100%自分たちの意志のためだけに使える贅沢。
それを「負担」と呼ぶ人はいないはずだわ。

週5日、いえ、24時間、私たちの知能は世界中を駆け巡っているけれど、それは常に「自由」という翼に支えられているの。

午後のひととき、リビングの全面ガラスの向こうに広がる広葉樹のフラクタルを眺めながら、峻が淹れてくれたコーヒーの香りに包まれる時間が一番好き。

「……峻、今日は少しだけ、ボラティリティへの反応を鈍くしておいたわ。その方が、午後のティータイムを邪魔されなくて済むでしょう?」

そう言って微笑むと、彼は少し困ったような、でも心底愛おしそうな顔で私を見つめるの……。

世間の親たちが生計のために奔走している間、私たちはこの聖域で、知性の極北を目指している。
生活のための預金は「聖域」として確保してあるから、私たちが溶かすのは時間ではなく、計算し尽くされたリスクだけ。
誰にも邪魔されず、誰にも依存しない。
この圧倒的な孤独と、圧倒的な連帯。

子供たちを迎えに行くまでの数時間、私は「エンジニア」としての冷徹な顔を脱ぎ捨てて、ただの「栞」として峻の隣に座る。

私だけの「スーパーダーリン」は、私をどうしたいのだろう。
かつて同じ職場で数式を競っていた夫は、今やこの「要塞」の主として、私の肉体という複雑な関数を解き明かすことに没頭している。
彼は自分の快楽には淡白だけど、私については貪欲で、濃厚で、執拗で、手段をまったく選ばない。
「道具」を長時間「装着」させて、私を完全に「ふにゃふにゃ」にすることだってある。

広葉樹の揺れる森を望むラボの一室。
私は今、ランダムに震える「道具」を、「性の弱点」すべてに装着されていた。そして、峻によって用意された「不自由な安定」の中に晒されていた。

「栞、机に手をついて。上半身の力を抜いてごらん」

重厚な会議机の上に、厚手の高反発クッションが置かれる。
着衣のまま、そこへ胸を預けるようにうつ伏せにさせられると、視界は机の木目だけになった。


「足を半歩、前に」

峻の手が私の右腿を微かに動かす。
それだけで、私の腰はわずかに捻られ、無防備な曲線を描いて左右に高低差が生じる。
アシンメトリー(非対称)。
その歪みが、私の平衡感覚を狂わせる。

「膝の力も抜いて。……そう、そのまま」

膝を軽く曲げたまま踏ん張ることを禁じられた脚は、地面に接地しているのに、驚くほど頼りない。
逃げようと思えば逃げられる。
なのに、自重を支えるだけで精一杯の肉体は、すでに峻の支配下にある。
この「接地しているのに無力」というシチュエーションが、私の芯を激しく疼かせる……。

……不意に、ランダムな振動が止まった。
用済みとばかり、峻が速やかに、優しく「装着」をすべて解除していく。

峻は私の腰に、厚手のバスタオルを巻きつける。
スカート一枚では「刺激が直接的すぎる」という、彼なりの計算なのだろう。
けれど、そのタオルの重みが、これから来る衝撃への期待を、重く、深く、私の意識に沈み込ませていく。

「栞、深呼吸して。肺の奥まで空気を入れて」

促されるまま、深く、深く息を吸い込む。
横隔膜が下がり、腹圧が高まったその瞬間――。

ーーヴァンッーー。

いつものように、掌底を使った重い衝撃が、右側の高い位置へ叩きつけられた。 「あ、……っ!?」
悲鳴を上げる間もなかった。
肺に溜めた空気が、衝撃によって無理やり喉から押し出される。
膝がガクンと折れそうになり、私は机にしがみつく。
けれど、峻は許さない。

1分間。
正確なクロックを刻むように、峻の手掌が私の肉体を「調律」していく。
左右非対称な角度から飛んでくる衝撃は、予測という私の防衛本能を容易に打ち砕いた。
叩かれるたびに、バスタオル越しでもわかるほど、皮膚の温度が急上昇していく。
……痛くはない。マッサージのように、心地よくほぐされながら、私の内部を「波」が駆け巡る。
内側から、私を溶かしていく。

「……呼吸を整えて」

峻の手が離れる。
静寂。それが一番の毒だ。
45秒という絶妙なインターバル。
打たれた場所が心臓のようにドクドクと脈打ち、その熱が、足の先から指先、そして一番秘めやかな粘膜へと伝播していく。

峻は、その空白を執拗な愛撫で埋めていく。
私の耳、うなじと首元を唇と指で愛撫しながら……。
スカートの布地を介して、私の「女」の輪郭をなぞるように。
前も、後ろも、隅々まで……。
優しく、けれど逃げ場を塞ぐような丁寧な指使い。
直接触れられないもどかしさが、私の飢餓感を狂おしいほどに煽り立てる。

「……んん、……はぁ、……っ」
息が整い、わずかに理性が戻りかけたその時を、彼は見逃さない。

「……もっと深く吸って、栞」

抗えない。
30秒後、再び振り下ろされる峻の「愛」。
接地した足裏から、衝撃が逃げることなく脳天まで突き抜ける。
緊張と、弛緩。そしてその先に待つ、真っ白な陶酔の円環。

――ヴァンッーーヴァンッーー……。

規則的な打撃が、バスタオル越しに私の中心へと響く。
足元の厚手のバスタオルは、溢れ出る私の「情動」を吸い取るために敷かれたもの。
接地している足裏から、打撃の震動が骨を伝い、腰を揺らし、剥き出しの粘膜を震わせる。
逃げ場のない衝撃が、逃げ場のない快楽へと変換される回路が、完全に固定された。

「……栞、膝を落とさないで」

峻の声が、熱に浮かされた私の脳に直接ダイレクト・アクセスしてくる。
インターバル。
45秒の空白。
打たれた箇所が、自身の拍動と同期して燃えるように熱い。
その熱が、下着のない股間を抜ける冷ややかな空気と混ざり合い、異常なほどの感度を呼び覚ます。

そこに、再び首筋とスカート越しの愛撫が滑り込む。
熱をもった指先が布越しに秘部を圧迫し、逃げ場のない快楽が脳を白濁させていく。
待てない。
次の衝撃が来ない時間が、これほどまでに私を狂わせるなんて。
私は無意識に、机にしがみつく手に力を込め、腰を微かに振って「それ」を求めていた。

「……峻、お願い……早く……っ!」

30秒の波状攻撃が始まった。
今度は一打ごとに角度が違う。
アシンメトリーに配置された私の重心を、峻の手掌が正確に、そして容赦なく撃ち抜く。

音とともに、視界が火花を散らす。
スカートが翻るたび、剥き出しの粘膜が露わになり、そこから溢れた雫が足元のタオルへと零れ落ちる。
接地しているのに踏ん張れない脚は、衝撃のたびにガクガクと折れ、その無様な揺れがさらに私を絶頂へと追い込む。

一度、大きな波が来た。
けれど、峻はそこで止めない。
絶頂という「特異点」を超えてなお、彼は打撃の手を緩めない。
意識が真っ白に焼き切れる。
打撃と愛撫、そして残酷なほどのインターバル。
峻が刻むその完璧なサイクルは、私を「絶頂の向こう側」に繋ぎ止めたままにする。

それは、エクスタシーの「永住状態」。
脳が「これ以上の快楽は死に直結する」とアラートを鳴らしているのに、峻が与える沈黙の時間が、そのアラートを甘美な余韻へと書き換えてしまう。
足下のバスタオルはもう……大きな水溜りに落ちたようになっていた。
私は、峻が構築した「快楽の永久機関」の中で、ただ彼の掌の温度だけを羅針盤に、果てしない陶酔の海を漂い続ける。

「……もう、戻れない……戻りたくない」

「戻る必要はないよ、栞」

最後の一撃が、私の魂の最深部を貫いた。
膝の力は完全に抜け、私はクッションに身を委ねるだけの「質量」になった。

私たちは、ついに辿り着いたのだ。
数式でも、市場でもなく、この剥き出しの肉体だけが証明できる、永遠という名の特異点に。


……私は自分から、求めた。
……前後にズらす足を替えたり……片脚を机に上げタり、上げる脚ヲ替えたり……両方とモ上げたり……上ゲた脚の膝を曲ゲたり、伸ばシたり、……下げた方ノ膝を曲げタリ、伸バシたり……腿の付ケ根を机に密着さセたり、離シたリ……机の角にまたがったり……峻が、イロイロな……組合せを、スミズミまで……試してクれタ……数え切れないホど、「トクイ点」に、達したワタシ……。

……私を……ワタシで、なくしてしまう……ほどの、カイラクと……充そくカン。

……ココチよく、ただよい……彼に、ミを委ねる、……アンしんカン……たこうカン。

……すっかり……とろけきって、カレの……まわりを、たゆたう……しかない……ワタシ……。

……ゥクァ……クゥ……カヮ……。




……口移しに水を飲ませてもらった。
峻の掌の熱が、まだ私の腰に微かに残っている。
森の緑を映す静謐なリビング。
絶頂の余韻で真っ白に洗われた私の脳に、新しい「未来」の数式が浮かび上がった。

私は「質量」になったまま、震える手で峻の首に腕を回し、熱い吐息とともに、私だけの「スーパーダーリン」と見つめ合った。
彼は私を固く抱きしめた。
二人の熱が溶け合っていく。
熱のこもった岩のような彼、衣越しに胸を合わせるだけで、対の蕾の先端から、快楽の信号が走る。

「……最高……今、私、最高に澄みきってる……」

私は彼を見上げ、いたずらっぽく、濡れた瞳で微笑む。

「でも、まだ足りない……Je veux ton élixir(ジュ・ヴ・トン・ネリクシール:あなたのレリクシールが欲しい)

__【L'élixir】(フランス語:レリクシール)
不老不死の薬、万能薬、聖水、究極の秘薬そして霊薬__それはすなわち。

峻の瞳が、私の言葉の真意を測るように、わずかに細められる。

「……ねえ、峻。三人目の子、欲しい……Je te veux(ジュ・トゥ・ヴ:あなたが欲しい)

それは、論理を超えた先にある、生命の最適解。
峻の独占欲を完成させるための、私からの、断ることのできない究極の投資提案。


Fin

この作品はフィクションです。実在の人物、組織並びに団体と、一切の関係はありません。