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【奥さん2】ハニートラップには有給休暇を。【官能】

【閲覧注意】
本作には性愛に関する露骨な描写が含まれます。
18歳未満の方、およびこうした表現に抵抗がある方は閲覧をお控えください。


不届きにも、上の作品の続きを書いてしまいました。


待つ女

妻は夫からの「甘やかし」を今か今かと待ちわびている自分に、弁解を重ねていた。
(私、女盛りに入ったんだもん!仕方ないじゃない。……旦那様があれほどまでに、スケベだとは思いもしなかった。彼がエロに執着しすぎなのが悪い!私は被害者!……最初はおっかなびっくりだったくせに……でもその不器用な指の使い方、好き♡……最近の業務みたいな『営み』でも、試しているような触れ方をするときがあるわ。私の反応をじっと観てる。試すような指先。それが新鮮だった頃の『不器用さ』を思い起こさせる……♡

……奧さん、まったく弁解になっていません。完全なノロケです。

(『甘やかし』はまったく予想できない。だいたい月に1回か2回だけど、月の最初の週末と最後の週末のときもあれば、2日連続のこともあった。2ヶ月空けたこともある。……どうして2ヶ月も空けるのよ。……不倫するわよ!……って怒りそうになったら、ランチ後のキッチンで後ろから突然来たことがあった……。恥ずかしくて堪らなかったけど、とても燃えちゃった♡事後、彼が床にこぼれた『私の雫』をハンカチで拭ってた。『エロい臭いですね、奧さん』とか言いやがった!)
(……そのハンカチは、その日、ずっと夫が持ってた。手を洗った後で、そのハンカチで拭くの。フェチ炸裂だわ)
私は夫に言った。
「汚いから、そのハンカチは回収!」って。
夫は私に返した。
「お前由来だから汚くない」って。
(……この屁理屈男!……私だけのド変態♡)

……などと一人で悶々していたある日、友達気取りのお節介女からのメッセージが、彼女を地獄に突き落とした。写真が2枚添付されていた。
「気をしっかり持って、現実を見て。あなたにとってはつらいかもしれないけど、友達として隠しておくことは出来ないの。ご主人がものすごい美人さんと一緒に並んで歩いて、談笑しながらビジネスホテルに入っていったの。入ってから1時間ぐらいして、とてもスッキリした顔で、ご主人が出てきた。15分ぐらい遅れて女がチェックアウトした。女はちょっと焦っていたわ。物足りなかった?それとも、ご主人に沼った?」
1枚目の写真が談笑する夫と間女(?)。
2枚目は「一仕事終えてやりきった表情の夫」だった。

瞋恚の炎

(え?嘘!……そんな、あの夫が?あり得ないわよ。だって、私の雫を拭ったハンカチをそのままポケットに突っ込むような夫よ?……だけど、この女の人、とても綺麗だわ。とても私じゃ敵わない。この写真じゃ夫の横顔しか見えないけど、とても楽しそう……。この女、飛びきりの笑顔。……。ホテルから出てきた夫の顔、確かにスッキリしてる。『やりきった顔』だわ。私は何度もこの顔を見た。『甘やかし』の後、私を見るときの顔だわ……。私限定じゃなかったの?)
妻は勤務中だった。休憩中にそのメッセージを見た。
激しくショックを受け、とても仕事どころではなかった。
直ちに有給を届け出て、帰宅した。

家に帰って、泣きに泣いた。
いっそ飛び出して、何処かに行こうかとも思った。
だが、夫の言い分を聞きたかった。
もし不倫が本当でも、謝ってくれたら許すつもりだった。
夫を切り捨てる決断は、彼女には考えられない。
……しかし、どうにもならない嫉妬に火が点いた。
いや、底知れぬ怒り。
瞋恚(しんい)という言葉を聞いたことがある。
青白い色で、じわじわと自分も相手も舐め尽くして、いつまでも消えない怨みの炎。

奥さんの脳裏に浮かぶイメージ

夕方になった。
夫が帰宅した。いつもの夫の顔だ。
黙って彼の眼を見た。

被疑者弁明


夫は妻の顔を見た瞬間、察した。
妻の顔には涙の跡が見えるかのようだった。
(お節介なヤツが居たよ!誰か余計なことを伝えたな)
(包み隠さず、すべてをありのままに伝えよう)

「……話を聞いてくれるかい?」と彼は妻に言った。
妻は黙って首を縦に振った。
夫は自分のスマホを操作して、それをリビングのテーブルに置いた。

夫の話は次のとおりだった。

その女性は人事の担当者だよ。

「人事のヒヤリングを行います。生憎、社内の会議室は何処も一杯で、どうしようもないから、ホテルの一部屋を貸し切らせてもらいました」と言われてね。
本来、おかしいんだが、そういうこともあるかと、すっかり騙されていた。
本物の人事の方がそう言うんだから。
人事のヒヤリング内容は極秘だしね。
本来通すべきラインを通っていないことも、今なら不審だけど、上司にも伏せないといけない情報もあるから、騙されているときは、疑ってなかった。

正直に言うと、彼女と一緒に居ることは楽しかった。
本当に綺麗な人。「美しさ」って言葉を姿にしたら、彼女になるほどの立ち姿、容貌の持ち主。
……でも、楽しかったのは、ホテルの部屋には案内されたところまでだった……。

……彼女には、いろいろと噂があるんだよ。
曰く、彼女をめぐって多数の「兄弟」がいる。
曰く、百戦錬磨の不倫美女。
そして、旧姓由来のあだ名が有るんだ。

……「偸盗(ちゅうとう)さん」ってね。

つまり、「こそ泥」って意味だよ。

俺は案内されるまま、ホテルのスイートルームのリビングに通された。

偸盗さんは寝室に入った。
俺は待機するように言われた。
そこで何かきな臭いものを感じ始めたんだ。
彼女しか人事の社員が居ないんだよ。
だんだん、怖くなってきた。
(これはハニートラップだ。相手は偸盗さんだし……。危険だ)
(……彼女がこの部屋に入ってきたら、スマホで録画するしかない)
(俺と彼女が映るように、スマホを置き録画をONにする)
……やがて偸盗さんが入ってきた。俺は予定通り録画を開始したよ。

偸盗さん、俺のスマホにはすぐに気付いたよ。ダイレクト給電だから、モロバレだよ。
そして、彼女も自分のスマホを鏡台にセットして、録画していた。
彼女は、自分の魅力が男から斥けられるなんて、想像すらできないんだよ。
(どうぞ。お好きなように撮るといいわ。……私にかかれば、それは『秘め事』になって絶対に外部に出せないものになるんだから)

ここから先は、スマホの動画に語らせるよ。
聞いてくれるか?

妻の顔から険が消えつつあった。顔に生気が戻ってきた。

完封

スマホは初め、人事ヒヤリングのテンプレをずっと語った。

自分のキャリアをどのようにしたいと思うか。
健康状態に問題はないか。
家庭は円満か。
悩みはないか。
子を持つ予定はあるのか。

10分、20分そして30分、過ぎた。
時間が経つに連れ、打ち解けた雰囲気が音声からも伝わってくる。
しかし、動画に映る夫には、弛緩が一切ない。
(長すぎる。同じ質問を何度も繰り返している)
(特に家庭円満を執拗に尋ねる)
(これは人事ヒヤリングの擬態だ)
(妻を泣かせたいのか?妻があなたに何をしたんだ?)

「高野さん、奥様、どのような方ですか?」

「人事ヒヤリングの域を超えていませんか?」

「そんな、そんなに怖い顔なさらないで」
「妻は本当に、よく出来た人間です。しっかり者、誠実でチャーミング。真の『正妻』です。私にはもったいない伴侶です。あれほどの妻は、もう二度と得られません」
「……もう一度、私を見て、その言葉を言って欲しい」

画面奥から、衣擦れの音が微かにした。偸盗が上着を脱いだ。

「本当に人事ヒヤリングなのですか?プライバシーの侵害では?」
「実は、お二人ご一緒のところを、お見かけしたことがあります」
「……」
「とてもチャーミングな奥様でした。肉感的だけど、スリムでした。あれほどに魅力的な奥様、きっと職場でも噂で持ちきりです」
「……」
「誘惑もきっと多いでしょうね。私にはよく分かります」
「私にはさっぱり分かりません」
「……奥様があれほどお綺麗なのは、ご主人だけのお力でしょうか」
「さあ、妻のすべてを把握してはおりませんし。何かあってもおかしくはないですね。私の自慢の妻ですから。モテて当然です」
「……奥様、モテるんですね。やっぱり。あのプロポーションの磨かれ方、絶対にシてますよ」
「何をですか?」
「私に言わせるのですか?」
「私は色恋には非常に疎く、女心の複雑さはまったく理解できなくて、悩んでいます」
「女心については、私が教えて差し上げます。……私、見ました。奥様があなた以外の男性と腕を組んで、このホテルにチェックインしたところを。人目もはばからず、とてもラブラブでした」
「情報提供、感謝します。私があとは引き継ぎ、妻に調査を付けます」
「……冷静なフリして。カワイイひと。でも、あの奥様をあそこまで仕上げたのは、やっぱりあなたの功績が最大ですよ。どうやって、奥様を開発されたの?ねえ、教えて。できれば実地で」

偸盗が席を立った。
同時にスカートが足下に落ちた。
彼女が夫に近づいてきた。
その姿は下着、ガーターベルトとストッキングの姿に、ブラウスを羽織っただけのだった。
淡いピンクのブラウス。透けて見える、胸と腰の……黒い下着。

「そういうお話は止めてください。私はあなたを最高級の美女と思っていましたが、どうやら違っていたようですね。これ以上、業務を偽装した誘惑にとられる時間はありません。職場に帰らせていただきます」

画面の中の夫は、スマホに右手を伸ばすと鷲づかみにした。
そして、荷物を持って勢いよくソファから立ち上がった。そのままつかつかとドアに向かう。
偸盗は入口側にいた。少しもみあいになっていた。
カメラにわずかに移った偸盗。
余裕の笑みを貼り付けていたが、動画の揺れが激しい。
彼女は全力で夫に縋り付いたようだ。

動画が大きく動き、夫は偸盗の腕を振り切って、ドアに走ったようだった。そのままドアを飛び出し、走った。

エレベーターホールで偸盗に追いつかれ、またもみあいになった。
偸盗と夫の声。
「私と密室に入った事実は消えないわ。私が下着の上にブラウスだけという動画もあるし!」という偸盗。
彼女は続けざまに誘惑の言葉をまき散らした。
「私はカウンターの動画を持ってます。……男を誘惑したいのなら、まずは旦那さんを誘惑してください!」
「旦那じゃ物足りないの。優しくされても、疼くだけ」
「それは、私の責任範囲ではありません。帰らせてもらいます!」
……やがてエレベーターが来た。夫は速やかに乗った。偸盗も乗った。
でも、それ以降の会話はもう記す価値もない。
妻の私を貶め、夫を誘惑する言葉の羅列に過ぎなかった。

彼女、執拗だわ。そんなに私の夫が欲しいの?
……それに計画が穴だらけだわ。自信過剰なのよ。

夫が私の目を見て言った。
「偸盗さんには『兄弟』がたくさん居るんだから、そっちにアウトソーシングすればいいのに」
底冷えのする冷たさだった。
でも、その冷たさ、大好き♡

夫の動画の開始時刻と終了時刻、友人気取りの送ってくれた2枚の写真の時刻と完璧に整合した。
談笑して歩いていた写真の撮影時刻は、動画スタートの前の時間だし、「スッキリ」した夫の撮影時刻は、動画の終わりの後だった。

夫はホテルから職場に直行し、上司に事情を説明し、動画を見せ、公式なラインで人事に通報。
……「偽装ヒヤリング」の時間に、有給休暇を充てたんだって。

偸盗さんは人事から、何やらカタカナ混じりの、やけに長ったらしい名称の部署に動かされたそうだ。
既婚の女性社員が人事ヒヤリングを偽装して、妻帯者を自らとの不倫に誘ったのだから、もっと厳罰にしないといけないんじゃないの?
夫は言う。
「旦那さんはじめ、『兄弟』の力でクビだけは免れたんじゃないの?」って。

私は夫を苛めたくなった。

「どうして、自分から私に言わなかったの?」と。
夫はこう答えた。
「お前が嫌な思いをするだろうからさ」
私は言った。
「私には『大勝利』だったよ」
「それは見終わったから言えることだろ。どういう顔でお前にこういう既婚女性からの誘惑を伝えればいいんだよ。できないよ」

私は夫に縋り付いた。
「……私が不倫したって信じた?……私、絶対にそんなことしてないよ。……だから、ねえ、お願いだから、私から逃げないで。1人にしないで」
夫はこう返した。
「……偸盗さんのでまかせを真に受けてなんかいないよ。……そういう顔をするなよ。敦子。胸を締め付けられるような、切ない顔。お前は笑っていれば、それだけで俺は幸せなんだから」
私は夫の右手をとって、私の身体の中心に導いた。
「私を『甘やかし』て。あなたの指でないと……」
夫はうろたえていた。
「……お前、求愛が大胆すぎるぞ」
あなただって、執着が大胆じゃない♡
私、ちょっと息苦しいわ。
深呼吸しなきゃ。夫の腕の中で。
夫成分が不足しているわ。

……そのときだけ、私はとても大胆ではしたなかった。
夫の中心に顔を擦り付け、ベルトに手をかけて外しにかかったのだから……。

おい、風呂に入ってないから、止めなさい!

……私がおかしくなったのは、旦那様のせいなの!


……俺は平穏な生活が欲しいだけなんだ。

だから、妻に「大サービス」するし、偸盗さんも完封した。
妻をヒステリックな怪物にしないために、その芽を摘んでいるだけなんだ。

……それが、誰かのお節介のせいで、秘密の動画を見せる羽目になった。
……妻がご機嫌なら、明るい気持ちになれるし、何より妻は可愛いから、悪くはない。

だけど、あの動画のせいで、妻のハードルが上がったよ。
どうすりゃいいんだよ。

キザな外国映画みたいに、「愛してる」って言葉を安売りしたくない。
どうすりゃいいの、本当に。
助けてよ。

……あれ?


聞いちゃった!聞いちゃった!

どうしようっかなー。
困るわ。

ねえねえ、どんな言葉をかけてくれるの?
どんな風に構ってくれるの?
どんなふうに「甘やかし」てくれるの?

……変態ドスケベ(私限定♡)の妻は大変だわ。
困っちゃうわ。本当。
……とうしよう、ニヤニヤが止まらないんですけどー!

あなた、責任とってよね!
いいえ、とるに決まってるわ!

……やだ、もうドキドキしてきた。
せきにん、とってくれないと、いじけちゃう。

とりあえず、明日から玄米ね♡
あなたに、無期懲役を言い渡す。
健康である義務も負わす。
私の魅力を維持しなさい♡


この上ないバカップル、誕生!

なお、この話はフィクションです。現実世界に実在する人物、組織や団体等とは一切無関係です。マジレスしないでください。