AI3兄弟の使い分け|Gemini・ChatGPT・Claudeを20年PMが本気で使い倒した結論
書籍販売記念
AIを使うな、AIが使える構造をつくれ: ――20年PMが考える「AIツール」から「AIエージェント」への仕事の変え方
https://amzn.asia/d/03CZw5D4
#Amazon @Amazonより
正直に言う。
AI3兄弟という呼び方は、最初は便宜上の呼称だった。Gemini、ChatGPT、Claude。三つを並行で使い始めて半年が経った頃、便宜上の呼称が、いつのまにか実務上の役割分担として固定化していた。
本稿はそのシリーズの第1弾である。三つのAIをどう使い分けるか、という問いに対して、PM歴二十年の実務観点から導いた結論を提示する。結論を先に置く。三つのAIには、それぞれ得意領域がある。すべてを一つで賄おうとすると、どれもが中途半端になる。三つを役割分担させることで、はじめてAIは「使える」道具になる。
シリーズ全体の構造として、本稿で総論を扱い、第2弾以降で各AIの個別運用、協働ワークフロー、暴走させない制御設計、収益化への応用、Agentic設計までを展開していく予定だ。本稿はその入口にあたる。
なぜ一つのAIでは足りないのか
AIを使い始めた最初の数ヶ月、私は一つのAIですべてを賄おうとしていた。多くの人が同じ道を通る。ツールを増やすコストが面倒だから、まずは一つに集中する。これは合理的な判断に見える。
けれども、三ヶ月もすれば気づくことがある。一つのAIで全領域を賄おうとすると、どこかで必ず詰まる。ある領域では強いが、別の領域では明らかに弱い。その弱い領域に直面したとき、無理やり同じAIで押し通そうとすると、出力の質が極端に落ちる。
これは性能の問題ではない。設計思想の問題である。三つのAIは、それぞれ別の哲学のもとで作られている。汎用性を追求したもの、対話性を追求したもの、論理性を追求したもの。哲学が違えば、得意領域が違う。哲学の違いを理解せずに使うと、道具に振り回される。
三つのAIの役割分担
二十年のPM経験から導いた、現時点での役割分担を提示する。これは絶対の答えではない。各AIのアップデートで変動する領域でもある。けれども、二〇二六年五月時点での実務感覚としては、以下の分担が最も機能している。
Geminiは、情報収集と要約に強い。Google検索との連動が深く、最新の情報を引いてきて整理する作業で他を圧倒する。市場調査、競合動向、法令確認のような「外部情報を取り込む」タスクは、まずGeminiに投げる。一次情報源へのリンクが返ってくるため、裏付けの確認が早い。
ChatGPTは、対話と発想に強い。アイデアブレストや、文章の方向性を探る初期段階で機能する。プロンプトの曖昧さに対する許容度が高く、こちらの言語化が未熟でも、それなりに対話を成立させてくれる。「まだ自分の中で固まっていない論点」を扱う初期工程に向いている。
Claudeは、構造化と長文処理に強い。長い文書を読み込ませて要約させる、複雑な論点を構造化させる、文体の一貫性を保ったまま長文を生成する、というタスクで他を上回る。本稿のような長文記事や、提案書のドラフト作成、契約書のレビューといった「論理を保ったまま長く書く」工程で機能する。
この三つの役割分担は、PMの実務工程に綺麗に対応する。情報収集はGemini、発想はChatGPT、文書化はClaude。プロジェクトの初期から終盤まで、工程ごとに適切なAIに切り替えていく。これがAI3兄弟運用の基本形である。
なぜ「兄弟」という呼び方なのか
「AI3兄弟」という呼称には、もう一つ意味を込めている。三つを並列の「ツール」として扱うのではなく、性格の違う三人の同僚として扱う、という運用観の表現である。
ツールとして扱うと、優劣の比較になる。どれが一番優秀か、という問いが立つ。けれども同僚として扱うと、優劣ではなく役割の話になる。誰に何を頼むか、という問いに変わる。問いが変わると、運用そのものが変わる。
PMの仕事は、本質的に「適材適所」の設計である。プロジェクトメンバーの強みと弱みを把握し、誰にどのタスクを振るかを判断する。AI3兄弟の運用は、この判断をAIに対しても行うということだ。Geminiという同僚にはこの仕事を、ChatGPTという同僚にはこの仕事を、Claudeという同僚にはこの仕事を、と振り分けていく。
この発想転換ができると、AI活用の質が一段上がる。ツール選択の最適化ではなく、チーム編成の最適化として捉え直せるからだ。
使い分けの判断軸
実務でどのAIに振るかを判断するとき、私が使っている軸は四つである。
一つ目は、外部情報の必要度である。最新のデータや一次情報源が必要なタスクなら、迷わずGeminiに振る。社内に閉じた情報で完結するタスクなら、他の二つで十分である。
二つ目は、論点の固まり度である。自分のなかで論点が曖昧で、対話を通じて固めていきたい段階ならChatGPTに振る。論点が既に固まっており、それを文書化する段階ならClaudeに振る。
三つ目は、文書の長さである。短文の生成、雑談的なやり取りはChatGPTで足りる。長文の構造を保つ必要があるなら、Claudeを使う。長文をChatGPTに任せると、後半で論理が崩れる現象がしばしば起きる。
四つ目は、論理の精度である。厳密な論理構造が求められるタスク、たとえば法務確認や契約レビュー、戦略文書の整合性チェックは、Claudeに振る。発想の自由度が求められるタスクはChatGPTに振る。
この四軸でタスクを振り分けるだけで、出力の質が体感で三割は変わる。同じプロンプトを三つのAIに投げて比較するのではなく、最初から適切なAIに投げる。これが時間効率の上でも品質の上でも、最も合理的な運用である。
使い分けの実例
具体的なPM業務の例で、三つの使い分けを示す。
新規プロジェクトの立ち上げ局面を想定する。まず市場調査が必要になる。競合三社の動向、業界の規制動向、最新の技術トレンドをGeminiに投げる。一次情報源へのリンクとともに、整理された要約が返ってくる。これが初期インプットになる。
次に、プロジェクトの方向性を固める段階に入る。集まった情報をもとに、「どういう切り口で攻めるか」を考える。この段階で、ChatGPTと対話する。曖昧なアイデアを投げて、対話のなかで論点を絞っていく。「Aの方向もあるが、Bの方向ならこういう展開も可能だ」というような、発散と収束の往復をChatGPTと進める。
論点が固まったら、提案書の作成に入る。Claudeに方向性と論点を渡し、構造化された長文ドラフトを生成させる。Claudeは長文の論理を保つ力が強いため、十ページから二十ページの提案書ドラフトでも、最初から最後まで論理が一貫した形で出てくる。これを人間が編集して仕上げる。
最後に、提案書のなかで使う数字や法令の根拠を再確認する段階で、もう一度Geminiに戻る。一次情報源との照合を行い、根拠の正確性を担保する。
この一連の流れを、一つのAIで完結させようとすると、必ずどこかで質が落ちる。三つを役割分担させることで、各工程で最高品質の出力が得られる。これが「AI3兄弟運用」の実装である。
使い分けで詰まりやすい三つの罠
実際に運用していると、三つの罠にはまりやすい。先回りして共有する。
第一の罠は、慣れたAIに固執することである。最初に使い始めたAIに愛着が生まれ、本来は別のAIに振るべきタスクも同じAIで処理してしまう。これは多くの人が陥る。意識的に「このタスクはどのAIが最適か」を毎回問い直す習慣を持つ必要がある。
第二の罠は、三つを同時に使いすぎることである。すべてのタスクを三つのAIに並列で投げて比較する運用は、時間効率を著しく下げる。比較は初期の慣らし運転だけで十分で、慣れたら最初から一つに振る。
第三の罠は、AIに評価を任せることである。これはシリーズ全体を通じて何度も触れる論点だが、AIは発散には強いが収束には弱い。三つのAIに「どれが一番いいか選んで」と聞くのは、最も避けるべき運用である。評価は人間の仕事として握り続ける。
結論
AIは一つでは足りない。三つあれば、たいていのPM業務は回る。
役割分担を理解した上で、適材適所で使い分けることが、AI活用の本質である。ツール選択の最適化ではなく、チーム編成の最適化として捉え直す。この発想転換ができたとき、AIは「便利な道具」から「信頼できる同僚」に変わる。
明日からやることは一つだけ提案する。次に発生したタスクで、どのAIに振るかを意識的に選んでから着手する。慣れたAIに反射的に投げるのではなく、本稿の四軸で判断してから投げる。これだけで、一週間後の出力の質が体感で変わる。
▼あわせて読みたい
努力は量か質か——この議論がズレている理由https://note.com/quiet_emu2080/n/ne7bbc096de54
その努力、環境のせいで無駄になっているhttps://note.com/quiet_emu2080/n/n373a5cc65323
役職で仕事をすると失敗する理由——その働き方、市場価値を下げていますhttps://note.com/quiet_emu2080/n/nff1b906accea
PMという仕事は、誰も教えてくれない——20年現場で学んだことの全目次https://note.com/quiet_emu2080/n/nc727b32351ab
▼マガジン
AI活用実験室——ツール・エージェント全部使ってみたhttps://note.com/quiet_emu2080/m/m79242a34a2cb
努力がズレる構造
https://note.com/quiet_emu2080/m/mf4ecbf2d6332
50代からのAI時代キャリア術——等身大の発信ノートhttps://note.com/quiet_emu2080/m/m2c943315dd13
現場PMの実践ノート——炎上・セキュリティ・研修、全部実体験https://note.com/quiet_emu2080/m/mb3eda5b30688
©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090
▼ 現場の運用をさらに深めたい方へ
問題は、人ではない。構造が、人をそう動かしている。
最初の2週間で土台を作れたなら、次は3ヶ月・1年の設計に入る。
炎上対応・SH管理・リモートPM・育成論まで、現場で機能した技術をExcelテンプレート8点付きで体系化しました。PMとして長く戦うための実務地図としてご活用ください。
・20年PMが全技術を詰め込んだ実務完全インデックス(¥2,980)
https://note.com/quiet_emu2080/n/nd22c7c98908c
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!