「人生の正解探し」に疲れた人へ。50代PMが見つけた「勝ち方」より重要な「壊れない構造」の育て方
正直に言う。
私は、ずっと、正解を探してきた。
正しいキャリアの選び方。
正しい働き方。
正しいお金の使い方。
正しい生き方。
どこかに、正解があるはずだ。
それを見つけて、その通りにやれば、人生はうまくいく。
長いあいだ、そう信じて、探し続けてきた。
本を読み、人の話を聞き、成功した人のやり方を、まねしようとした。
だが、五十を過ぎて、ようやく、おかしなことに気づいた。
正解を、いくら探しても、満たされないのだ。
正しいとされることを、いくつもやってきた。
なのに、心のどこかが、ずっと、落ち着かない。
そこで、私は、ある仮説にたどり着いた。
もしかすると、人生は、正解を探す旅では、ないのではないか。
別の何かを、育てる旅なのではないか。
正解を探すほど、苦しくなる構造
まず、なぜ、正解を探すと苦しくなるのか。
ここに、見落とされがちな構造がある。
正解を探す、という前提には、一つの仮定が、隠れている。
それは、「どこかに、唯一の正しい答えがある」という仮定だ。
唯一の正解があるなら、いま自分がやっていることは、それと比べて、足りないか、間違っているか、のどちらかになる。
つまり、正解を探している限り、いまの自分は、常に「まだ正解にたどり着いていない状態」になる。
これは、永遠に満たされない。
なぜなら、正解は、いつも、いまの自分の外側にあるからだ。
手に入れたと思った瞬間、また別の、もっと正しそうな何かが、目に入る。
人の成功談を見れば、自分のやり方が、間違っていた気がする。
新しい理論を知れば、これまでが、無駄だった気がする。
正解を探す旅は、終わらない。
ゴールが、常に外側に、逃げていくからだ。
そして、外側のゴールを追い続ける人は、自分の足元を、いつまでも肯定できない。
苦しいのは、正解にたどり着けないからではない。
そもそも、唯一の正解があるという前提が、間違っているからである。
サーバー構成に、唯一の正解はない
ここで、少し角度を変えたい。
仕事で、システムを組むとき、よく分かることがある。
「これが唯一の正しい構成です」というものは、存在しない。
処理速度を優先するなら、こう組む。
安定を優先するなら、こう組む。
コストを抑えるなら、また別の組み方になる。
何を大事にするかで、最適な形は、変わる。
つまり、正解は、一つではない。
その状況に、適合しているかどうか、があるだけだ。
人生も、おそらく、同じだ。
万人に通用する、唯一の正しい生き方など、ない。
あるのは、その人に、適合しているかどうか、だけだ。
ある人にとっての正解が、別の人にとっては、苦しみになる。
だから、人の成功法則を、そのまま自分に当てはめても、合わないことがある。
合わないのは、あなたが間違っているからではない。
他人の構成を、自分のサーバーに、無理にコピーしようとしているからだ。
正解を、探すのをやめる。
代わりに、自分に適合するものを、育てる。
ここに、発想の転換がある。
人生に必要なのは、唯一の正解ではない。
自分に適合した、自分だけの構成である。
「勝ち方」ではなく「壊れない方法」
ここで、もう一つ、切り分けたい。
世の中の多くの教えは、「勝ち方」を語っている。
どうすれば、勝てるか。
どうすれば、抜きん出るか。
どうすれば、人より上にいけるか。
これは、これで、価値がある。
だが、勝ち方には、欠点がある。
勝ち続けることは、できない、ということだ。
どんなに強い人でも、勝ち続けることはできない。
いつか、負ける。
いつか、衰える。
勝ち方だけを頼りに生きていると、勝てなくなった瞬間に、立つ場所を失う。
だから、私は、最近、別のことを考えている。
勝ち方ではなく、壊れない方法を。
勝ち続けることはできなくても、壊れずに、立ち続けることは、できる。
派手に勝つことより、静かに、壊れずにいること。
これは、地味だ。
あまりに、地味だ。
だが、長い人生で、本当に効いてくるのは、こちらのほうだと思う。
勝った回数で、人生は決まらない。
壊れずに、立ち続けられた時間で、決まる。
ここで、大事なのは、勝ち方を捨てることではない。
勝ち方は、勝ち方で、持っていていい。
ただ、その土台に、壊れない構造を、先に作っておく。
人生で本当に必要なのは、勝つための強さではない。
負けても、衰えても、壊れずにいられる構造である。
ここまで読んで、疲れている人へ
ここで、一度、立ち止まりたい。
ここまで読んで、こう感じた人がいるかもしれない。
「正解を探すのに、疲れた」
「勝ち続けることに、疲れた」
もし、そう感じたなら。
それは、弱さの証ではない。
むしろ、正解を探す旅の、限界に、ちゃんと気づいたという、成熟の証かもしれない。
ここから先は、その疲れを抱えた人に向けて、壊れない構造を、どう育てるかを書いていく。
遠くの成功ではなく、足元の構造の話だ。
壊れない構造は、半径五メートルから作る
では、壊れない構造とは、何でできているのか。
結論を急がず、切り分けておきたい。
壊れない構造は、遠くにはない。
すべて、半径五メートルの中にある。
信頼できる、数人の人。
好きな、音楽。
帰る場所としての、家族や、暮らし。
無理のない、自分の速度。
そして、自分が、続けている何か。
これらは、どれも、派手ではない。
世間に自慢できるような、立派なものでもない。
だが、人が本当に壊れそうになったとき、最後に支えてくれるのは、たいてい、このあたりのものだ。
遠くの成功は、壊れたときに、助けてくれない。
助けてくれるのは、半径五メートルの中にある、小さなものたちだ。
だから、半径五メートルを、好きなもので満たす。
これは、単なる気晴らしの話では、ない。
人生という構造の、土台を作る作業だ。
好きな音楽を、聴ける状態にしておく。
信頼できる人と、つながりを保っておく。
自分の速度を、守れるようにしておく。
これらを、意識して、整えておく。
それが、いざというとき、自分が壊れないための、負荷分散になる。
一つがつらくても、別のものが、支えてくれる。
全部を、一つの柱に頼らない。
仕事だけ、お金だけ、評価だけ、に立っていると、それが折れたとき、全部が倒れる。
単一障害点だ。
そうではなく、小さな支えを、いくつも持っておく。
ここで、二重否定を置いておきたい。
遠くの成功を、追うな、とは言わない。
だが、足元の構造を、後回しにしてまで、追うな。
あなたに必要なのは、もっと大きな成功では、ないかもしれない。
いまある半径五メートルを、丁寧に整えることかもしれない。
壊れない構造は、遠くの成功で作るものではない。
半径五メートルの中の、小さなものを、丁寧に並べて作るものである。
「今日も悪くなかった」と思える設計
最後に、長い目で見たい。
私が、最近、目指しているのは、派手な成功ではない。
普通に、仕事をして。
少し、笑って。
身近な人と、話して。
好きな音楽を、聴いて。
夜、布団に入るときに、「今日も、悪くなかった」と思える。
それだけだ。
これは、小さい。
あまりに、小さい目標に見えるかもしれない。
だが、この「今日も悪くなかった」を、何千回も積み重ねた先に、ある人生がある。
派手な絶頂はないが、静かに、壊れずに続いた人生だ。
私は、こちらのほうが、よほど豊かだと思うようになった。
人を責めるより、構造を見る。
うまくいっていない誰かを、努力不足だと責めるのは、簡単だ。
だが、その人は、ただ、半径五メートルの構造が、いま少し、崩れているだけかもしれない。
自分を責めるより、構造を見る。
満たされない自分を、欲が足りないと責めなくていい。
それは、遠くの正解ばかりを追って、足元の構造を、整え忘れているだけ、なのかもしれないのだから。
気合や根性で、正解を探し続けるのではない。
壊れない構造を、一日ずつ、丁寧に育てる。
人生は、遠くの成功を、追いかける旅ではない。
自分と、周りの人が、明日も笑って歩ける構造を、一日ずつ作っていく旅である。
正解は、どこかに、隠れているのではない。
正解は、探すものではなく、半径五メートルの中に、自分で育てるものなのである。
この記事は、いずれ一冊にまとめたいと考えている連作の一篇である。
気合や根性ではなく構造として自分を運用する。
人を責めるより、構造を見る。
自分を責めるより、構造を見る。
優しいまま、壊れないこと。
誰かに勝つ輝きではなく、自分を壊さず誰かを少し安心させられる光。
短期評価ではなく長期残存価値である。
次回は、「なぜ、半径五メートルを整えると、遠くまで歩けるようになるのか」を書く予定である。
壊れない構造を作った人が、その先で、どう動けるかの話である。
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©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090
構造学。──人を責めず、構造を見る。
問題は、人ではない。構造が、人をそう動かしている。
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