まだいない猫のはなし。|第9話🐾 猫を飼わない友人が、猫沼に落ちた日
必死の思いで抱っこを辞退し、店員さんが去ったあと。
友人がしみじみとした顔で、私にこう言った。
「美月な、毛色とか男の子とか条件で選ばんと、こういう『性格のいい子』を迎えた方が絶対に幸せになれるって」
その言葉が、私の胸にすとんと落ちた。
これまで私は、
「大きなメインクーンの男の子」
「ライオンみたいな、かっこいいたてがみ」
「理想の毛色と顔立ち」
と、かなり具体的なイメージをガチガチに固めていた。
でも、目の前で一生懸命に私を探してくれる三毛のサイベリアンを見つめながら、自分の中の何かが解けていくのを感じた。
女の子でも、いいのかもしれない。
三毛も、こんなにも愛おしい。
メインクーンにこだわらなくてもいいのかもしれない。
私が本当に求めているのは、「理想のスペック」ではなくて、
こうして心を通わせ合える「一匹との縁」なんじゃないだろうか。
もちろん、あの憧れのブリーダーさんの元で生まれる子猫を待つ気持ちに変わりはない。
だって……理想の条件で性格もよかったら最高じゃない?
けれど、私の中で「まだいない猫」の輪郭が、少しだけ優しく広がった気がした。
……と、感動的に心が整った翌日のこと。
車の助手席に座っていると、友人が突然、真顔で言った。
「ペットショップ行く?」
「昨日行ったやん!」
その日は鍾乳洞まで往復5時間のドライブをして、お互いヘトヘトだった。
本当は早く家に帰って休みたい私に、友人はこうまで言い放った。
「運転するの私やし、あんた横で寝てたらええよ」
……どうした、友人よ。
昨日まで猫に興味のなかった人間が、たった一匹の三毛のサイベリアンによって、完全に「猫沼」に引きずり込まれていたのだった。
結局その日は、もう疲れたからペットショップはやめよう、ということで話は落ち着いた。
……はずだった。
帰りに食事をしようと立ち寄ったショッピングモールで、偶然、別のペットショップを発見。
もちろん、入った。
ひと通り猫たちを眺めて店を出ると、友人が言った。
「ついでに、あっちのペットショップも寄っとく?」
「…………。」
あっちって、ここから一時間弱かかりますけど。
それのどこが“ついで”なん。
……まあ、気持ちはわかる。
猫って、それくらい危険なのだ♡
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