メルローは、赤い果実だけじゃない
Vol.3『犬にワインを見せたらワイ~ンと鳴いた』
役に立つかは貴方次第!
他力本願。
しかし未来志向のワインコラム
このコラムは、ワインのテイスティングにおける**固定観念の打破**と、個々人が抱く**自由な感性**の重要性を説いています。著者はかつて出会ったフランス人ソムリエによる、メルロー種を「**鉄や血、あるいはより生々しい官能的な香り**」と称する破天荒な表現に触れ、教科書的な正解に縛られていた価値観を覆されました。ワインの香りは単なる「赤い果実」に留まらず、飲み手の人生経験や感覚に応じて**千差万別に表現されるべきもの**であると主張しています。知識を競うのではなく、自身の五感で**ワインの本質**を野性的に楽しむことこそが、その醍醐味であると締めくくられています。
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メルローは、赤い果実だけじゃない
ワインを語るとき、よくある表現がある。
「赤い果実のような」「赤い花のニュアンス」。
もちろん間違いではない。教科書的には正解だ。
だが、私の中でその“正解”が一度、音を立てて崩れ落ちた出来事がある。
それは私がホテルマンをしていた頃、あるフランス人ソムリエにパーティー会場で出会った時の話だ。
チ〇で、デ〇で、〇ゲ。見た目は正直、さえないおっさん。
だが中身は……強烈だった。
まず驚いたのが、通訳が女性の時と男性の時での態度の違い。
女性通訳の時は満面の笑みで
「お会いできて光栄です」
「素晴らしいですね」
と、終始ニコニコ。
ところが男性通訳に変わった瞬間、豹変。
ソムリエの私や業者をズラリと呼びつけ、突然の講義が始まった。
「いいか、お前ら」
「メルローを“赤い果実”だと?」
チッチッチッ。
ノンノン。
「メルローは鉄のニュアンスだ」
「パリジャンはな、“血の味”と表現する」
一同、ポカーン。
さらに続く。
「熟成して、スー・ボワ(腐葉土)の香りが出てきた状態――
それは生命感のある、生々しいニュアンス。つまり女〇器の香りだ!
69(シッ〇スナ〇ン)の味なんだ!よ~く覚えとけ!」
あ~だから私はメルローが好きだったんだ……まぁそれは置いといて笑
フランス人のそれを味わったことがないんでなんとも言えないな……アメリカ人と韓国人のはあるんだけど……まぁそれも置いといて……笑
そういえば「雨上がりの森を駆け抜ける少女の香り」って表現もあったな……それか!
あと、確かに「鉄のニュアンス」は信憑性がある。「シャトー・ペトリュス」の表現で「鉄棒で逆上がりした後の手のにおい」という表現を聞いたことがある。
……ともかく、この一言で私のワイン観は180度ひっくり返った。
そこにいた全員「先生!ご指導ありがとうございました!」
仏人おっさん「Oui Oui ! Ça va, ça va !(よっしゃ、よっしゃ!えぇから、ええから!)」
ワインの表現は、上品でなければならない。
そんな思い込みが、見事に打ち砕かれた瞬間だった。
それからというもの、お客様に自由に表現してもらうようになった。
ある産廃業者の社長は
「ラジコンのエンジンオイルの匂いがするな~」
あるドクトール(医者)は
「これはエチル系の、○○シアンだね」
……もう、何でもアリだ。
でも、いい。
それでいい。
ワインの表現は、千差万別。
感じたこと、思いついたことを、その人の言葉で語ればいい。
それを横から
「それは違う」
「表現として間違っている」
と平気で言う自称“ワイン通”がいる。
違うのは――
おんどれの方じゃい!
知り合いのフランス人のおっさん紹介したろけ?
ワインはテストじゃない。
正解を当てる競技でもない。
近視眼的な知識より、
自分の人生と感覚を総動員して味わうこと。
メルローは、赤い果実だけじゃない。
鉄であり、血であり、土であり、
時に、言葉にしづらいほど生々しい「何か」でもある。
だからワインは、面白いんだ。

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教科書は言う。
「赤い果実」
「赤い花」
だが、あるフランス人は笑った。
ノンノン。
メルローは
鉄だ。
血だ。
森の土だ。
グラスの奥にあるのは、
上品な言葉ではなく生き物の匂い。
シャトー・ル・ピュイ。
ワインは、もっと野蛮でいい。
