「大丈夫です」では、済まなくなった。
ある夜、長い記事を読みました。
耳が痛い。
正論だから、反論できない。
怠惰な自分の横顔が、文章のあいだに見えた気がした。
日本衛生管理協会の「次世代危機管理」です。
プロスポーツ界の家庭内トラブルから始まり
理美容サロンでの衛生管理へとつながる内容でした。
昔は、お客様が「この症状、もしかして」と思っても、
店や役所に駆け込むには大きな勇気が要りました。
一歩踏み出して相談しても
「大丈夫だと思いますから」と言われ
納得させられることもあった。
時代は、変わりました。
いま、不安はスマホの中へ入ります。
AIに相談し、その答えをもとに動く。
それが当たり前になりつつある。
AIは、曖昧な安心を優先しません。
感染の可能性が少しでもあれば
医療機関や保健所への相談を勧めます。
躊躇なく手順に沿って進めます。
記事のなかには
丹毒の診断をきっかけにAIへ
相談が続くシミュレーションがありました。
シザーバッ
グ。電気シェーバーの使い回し。
洗浄なき消毒。
フェードカットの強い圧力。
読んでいるうちに、背筋が冷えました。
処罰や賠償の有無とは別の話として
問題提起そのもので、業界は深手を負いうる。
そう書かれていました。
私が、この記事で改めて確かめたかったのは
店のなかの「見る」仕事です。
施術に入る前。
施術のあいだ。
お客様の肌の状態。
表情。
声のトーン。
前回と違うところ。
変化に気づくこと。
それが、理容師の仕事の入口だと思っています。
気づいたらすぐに。
対応する。
処置を変える。
説明する。
「大丈夫でしょう」と流さない。
それが信頼の土台です。
軽視はいちばん怖い。
「今まで大丈夫だったから」
「みんなやっているから」
その言い訳が先送りに変わると
負担は未来のお客様へ渡されます。
AI時代では、その先送りがもう通用しない。
お客様の手元にもAIがあるからです。
正直に書きます。
四半世紀、理容師を続けると
お客様に傷を付けてしまう場面もあります。
刃物の仕事です。
ゼロにはできない。
そのとき、私ができるのは隠さないことです。
誠実に謝罪する。
理容師にできる応急処置をする。
医師への受診を勧める。
賠償責任共済に加入しているからこそ
補償の道も整えておける。
そう考えています。
相互の信頼はそこから担保される。
日々の施術への向き合い方。
仕事への取り組み。
理容師本人の人柄。
その積み重ねが
万一のときの対応の強さに影響すると、私は思っています。
関係性の浅いお客様とのトラブル。
外国の方とのトラブル。
これからは、想定しなければならない。
当店は新規客の紹介制へと移行しています。
言葉の壁があるほど、説明と記録の不備は許されません。
記事の事例を他人ごとにしない。
不備のない取り組みが求められている。
そう感じました。
だから私は、予防のほうを見直しました。
複合洗浄消毒。
有機物、血液や皮脂を物理的に取り除いてから消毒する。
この順番を怠らない。
記事が繰り返し示していたのはそこでした。
スプレーを吹くだけでは成立しない。
シザーバッグは、保管のためのものであって
施術中に身につける道具入れではない。
当店では、これまでどおりシザーバッグは使いません。
ヘアシェーバー(電気シェーバー)も使いません。
メーカーが第三者への使い回しを想定していない道具を
業務に流用することへの不安が
記事を通じてよりはっきりしました。
理容品質の感染症衛生管理者として
理容を通じた公衆衛生に邁進したい。
その言葉は、気合ではなく方向です。
関連業界の方にも一度、真剣に考えてほしいと思います。
技術のかっこよさだけが店の価値ではない。
国家資格の根拠は公衆衛生の向上にある。
「大丈夫です」と言える根拠を
説明できる形で持てているか。
それが、これからの危機管理だと私は受け取りました。
吉田町の小さな店から
自分の答えを整え直すところから始めます。
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