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知るメモ|【ナフサとガンプラ】|ナフサ不足で大ピンチ!~本体から塗料まで全て不足する?

ガンプラ。
ガンダムのプラモデル、HGでも、RGでも、MGでも、あなたの手元に一つぐらいはあるはず。
ゲートからパーツを切り出して、丁寧にヤスリをかけて、墨入れして、トップコートを吹く。
その一連の工程に没頭しながら、ふと思ったことはないでしょうか。

「このプラスチック、いったいどこから来たんだろう?」

それは石油から来ている。
イラン紛争で原油不足が進む中で、ガンプラはどうなってしまうのか?
ガンプラは値上がりするのか、もしかしたら無くなってしまうのか・・・
今回は、そこを丁寧に解きほぐしていこうと思います。


◆ナフサって何? 

「ナフサ」という言葉を最近は多く聞きますが、実際に何なのかをちゃんと説明できる人は少ないかもしれないので、簡単に書いてみます。

ナフサ(Naphtha)は、原油を精製する過程で取り出される液体。
石油を沸点の違いで分けていくと、軽い順にガス、ナフサ、灯油、軽油、重油という具合に分かれていきます。
ナフサはその中でも比較的軽い成分で、沸点はだいたい30〜200℃あたり。 見た目は水みたいに透明で、揮発しやすい。
「ガソリンと同じ?」感じの液体ですが、比較的近い存在です。
実際にはナフサ=ガソリンではなく、ナフサに何段階かの手が加えて分子構造を組み替えられて初めてガソリンになるのですが、兄弟みたいなものです。


◆ナフサからプラスチックができるまで

ナフサがどうやってプラスチックになるのか、ざっくり追ってみよう。

ステップ1:分解(クラッキング)

まずナフサを高温(800℃前後)で加熱する。
すると分子が分解されて、エチレン・プロピレン・ブタジエンといった小さな分子(モノマー)が生まれる。
この工程を「熱分解」または「スチームクラッキング」といいます。

エチレンは石油化学の世界では「女王様」とも呼ばれるほど重要な物質で、ここから先の化学反応の出発点になる。


ステップ2:重合(ポリマー化)

エチレンやプロピレンといったモノマー(単体の分子)を、触媒を使って連結させていく。
これが「重合反応」で、できあがったものがポリマー(高分子)です。

  • エチレンを重合すると → ポリエチレン(PE)

  • プロピレンを重合すると → ポリプロピレン(PP)

  • スチレンを重合すると → ポリスチレン(PS)

そしてABS樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンという3種類のモノマーを組み合わせた共重合体。
頭文字を取って「ABS」と呼ばれています。


ステップ3:コンパウンド(配合・着色)

できあがった樹脂に、着色剤・安定剤・可塑剤などを混ぜ込んでいく。
バンダイが「成形色」にこだわるのはこの段階で、膨大な種類の色を独自に調合・管理しています。


ステップ4:射出成形

そして最後に、溶かした樹脂を金型に高圧で注入して冷やし固める。
これが射出成形で、ランナー一枚分が数秒で完成する。

あのランナーの美しい整列は、成形効率と品質の両立を突き詰めた工業デザインの結晶です。


◆ガンプラで使われる樹脂の種類と違い

ガンプラを組む人なら、説明書やランナータグで「ABS」「PS」「KPS」という表記を見たこともあるかと思います。
これらはいったい何が違うのか?

PS(ポリスチレン)装甲の主役

ガンプラで最も多く使われるのがPS(ポリスチレン)です。
装甲パーツ全般に使われます。
スチレンを重合させたシンプルな樹脂で、発色が良く、成形精度が高い。
表面がつるっとしていて、塗料の食いつきも良い。

ただし欠点もある。
衝撃に弱く、薄い部分は折れやすい
また有機溶剤(ラッカー塗料など)に侵されやすいので、直接塗ると素材が溶けたり割れたりすることがある。


ABS樹脂 強度と精度のバランス型

ABS樹脂はPS単体よりも衝撃に強く、複雑な形状も成形しやすい。
そのため、内部フレームや関節ブロック、精度が要求される部品に使われることが多いです。

しかし最近のガンプラでは、ABS樹脂の使用が減少傾向にあります。
理由の一つは「ストレスホワイト」と呼ばれる問題で、力がかかった部分が白く変色してしまう現象が起きやすいから。
もう一つは、塗料の食いつきがPSよりやや劣るという点もあります。


KPS(改質ポリスチレン系)現代ガンプラの関節の主役

そこで近年登場したのがKPS(Kinectic Polystyrene)です。
バンダイが独自開発した素材で、PSベースでありながら、ABSを超える強度と柔軟性を持つ。
ストレスホワイトが出にくく、塗料の乗りもPSに近い。
おまけに有機溶剤への耐性も高い。

HGやRGの関節部分に多く使われており、「最近のガンプラは関節が折れにくくなった」と感じているなら、それはKPSのおかげです。


FPS(フレキシブルPS)

FPSはさらに柔軟性を高めた樹脂で、手の指やケーブル類など、曲げてもへたらない部分に使われる。
PS系なので塗装との相性も良い。


◆ナフサ価格とガンプラの値段は連動している

「最近のガンプラ、高くなったよね」
そう感じている人は多いでしょう。
HGが昔は700〜800円だったのに、今では1,500〜2,000円超えが当たり前になってきた。
この値上がりの背景には、複数の要因があります。
金型の精巧化、人件費、輸送費など様々だが、その一つに原材料であるナフサの価格高騰があります。

ナフサの価格は原油相場と連動して動くのですが、2022年のウクライナ侵攻以降、エネルギー価格が世界的に高騰するとナフサも上がり、ナフサが上がれば樹脂コストが上がり、製造コストも増す。

さらに日本の場合、輸入した原油を国内精製してナフサを作るため、円安の影響もダイレクトに受ける。
2022〜2024年にかけての円安局面は、原材料コストをさらに押し上げた。

プラモデル1箱に使われる樹脂の量は数十〜数百グラム程度ですが、年間で数百万個単位の生産となれば、その積み重ねは膨大でしょう。

さらに今回の米国とイスラエルの攻撃から始まったイラン紛争により、原油調達に支障が出ている状況ではさらに上がるはず・・・


◆本体だけじゃない!塗料や接着剤も「ナフサの子供」

「ガンプラ本体さえあれば、なんとかなる」そう思っていませんか?
ナフサの供給不安は、本体の供給以上に「ガンプラを完成させるための環境」を根本から揺るがすポテンシャルを秘めています。

塗料の「液体」の正体は、実は石油そのもの

模型用塗料、特にガンプラでよく使われるラッカー塗料やエナメル塗料は、大きく分けて「色(顔料)」「固まる成分(樹脂)」「溶かす液体(溶剤)」の3つでできています。
このうち、私たちが「シンナー」と呼んでいる溶剤(有機溶剤)の多くは、ナフサを精製・分解する過程で生まれる副産物です。

  • どう関係している?:
    塗料をサラサラに保ち、筆塗りやエアブラシで塗りやすくしてくれるのが溶剤の役割です。

  • もし不足したら?:
    溶剤がなくなれば、塗料はビンの中でカチカチに固まったまま。
    薄めることも、筆を洗うこともできません。

  • ラッカーシンナーに含まれる「トルエン」や「酢酸エチル」といった成分は、まさに石油化学工場のパイプの中から生まれてくる兄弟たちなのです。


塗料が「膜」になるのは「液体プラスチック」のおかげ

「色が乾く」というのは、単に水分が飛ぶことではありません。
液体の中に溶けていた「樹脂成分」が、溶剤が蒸発することで再び手をつなぎ合い、薄いプラスチックの膜になる現象です。

  • 樹脂=プラスチックの親戚:
    アクリル樹脂、エナメル樹脂といった成分は、ガンプラの本体(ポリスチレン)とルーツは同じナフサです。

  • もし不足したら?:
    「色の粉(顔料)」だけでは、パーツに色が定着しません。
    触れば指に粉がつく、まるでチョークで描いたような状態になってしまいます。


「削る・貼る」の道具もすべてナフサ育ち

ガンプラを改造したり、合わせ目を消したりするのに欠かせないツールたちも、実はナフサの影響をダイレクトに受けます。

  • プラ板・プラ棒:
    言うまでもなく、本体と同じポリスチレン製。
    ナフサ不足は「自作パーツ」の道を閉ざします。

  • パテ(穴埋め材):
    傷を埋めるパテも、ポリエステル樹脂などが主成分。
    これも石油由来です。

  • 接着剤:
    プラモデル用の接着剤は「プラスチックを溶かしてくっつける」という性質上、非常に強力な溶剤が含まれています。
    これもまた、ナフサから作られる化学薬品の塊です。


スプレー缶の「シュッ」と出る力まで石油由来

手軽に塗装できるスプレー缶。
実は、中身の塗料だけでなく、それを押し出す「噴射ガス(プロペラント)」も石油と無縁ではありません。

  • DME(ジメチルエーテル)やLPG(液化石油ガス):
    これらは石油精製や天然ガスの副産物として作られます。

  • もし不足したら?:
    塗料がいくらあっても、缶から吹き出す「力」がなくなります。
    エアブラシを持っていないビギナー層ほど、スプレー缶(ガス)の不足は致命的なダメージになるのです。


◆環境問題と「脱石油」の動き

ここまで読んで、一つ引っかかった人もいるかもしれない。

「石油を使い続けていいの?」

正直な話をすると、プラスチック産業全体が今、大きな転換期を迎えています。

バイオマスナフサの登場

従来のナフサは化石燃料由来ですが、最近注目されているのが「バイオマスナフサ」です。
植物由来の油脂(廃食油、ヤシ油など)を精製して作るナフサで、燃焼・廃棄しても大気中のCO₂を増加させない「カーボンニュートラル」な原料として期待されている。
すでに一部の化学メーカーがバイオマスナフサを使った樹脂の商用生産を始めており、玩具業界へも波及し始めている。


ランナーのリサイクル

バンダイ自身も環境対応を進めており、ランナーのリサイクル回収や、パッケージの簡素化に取り組んでいます。

一部のモデラーコミュニティでは、不要になったランナーを溶かして再利用する「ランナーリメイク」も行われている。
これはナフサから作られた樹脂を、できる限り無駄にしないという意識の表れでもあるでしょう。


材料の薄肉化・軽量化

最近のキットは、技術の進歩によって同じ強度をより少ない樹脂量で実現できるようになっています。
これは環境負荷の低減だけでなく、原材料コストの削減にもつながるでしょう。


◆プラモデルを組むことの、もう一つの意味

ナフサ不足は、単なるプラスチックの不足だけではありません。
プラスチックを加工し、色を塗り、作品として仕上げるというホビーの生態系そのものを麻痺させてしまう力を持っているのです。
私たちが当たり前のように使っている「ビンの接着剤」や「使い慣れた溶剤」も、実は地球の裏側から運ばれてきた原油が、巨大な化学コンビナートで姿を変えた貴重な資源であることを忘れてはいけません。

ガンプラを組み立てるという行為は、実は「地球の資源を作品に変換する」という贅沢な遊びでもあります。
ナフサを取り巻く情勢を知ることで、ランナー一枚一枚、パーツ一個一個がより貴重に、愛おしく感じられるかもしれませんね。
次にショップでキットを手に取った時は、ぜひその素材の背景にも思いを馳せてみてください!


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次回は「香水」について少し書いていますので、お時間あれば読んでみてください。

日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
前回の記事も時間がありましたら読んでみてください。


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