知るメモ|【ブルームバーグ L.P.】|金融業界のメディア帝国!~業界の標準基盤と慈善活動の両立?
経済ニュースや株式市場に少しでも興味があると、「ブルームバーグ」という名前を耳にしたことがあると思います。
テレビの株価報道、ウェブの経済記事、YouTubeの金融系チャンネル…どこかで一度は見かけた名前でしょう。
でも、ブルームバーグって何者なのだろう?
ニュースサイト?テレビ局?それとも金融会社?
この会社、一言では説明しきれないほどの巨大な存在であり、金融データ、ニュース通信社、テレビ・ラジオ放送、雑誌、そして慈善活動まで。
金融業界というジャンルの中では、その情報を牛耳るメディア帝国です。
今回はそのブルームバーグ・L.P.の正体を、創業の物語からビジネスモデル、社会貢献まで徹底的に解き明かしていきます。
◆一枚の解雇通知から始まった帝国
物語は1981年のニューヨークにさかのぼる。
当時39歳の「マイケル・ルーベンス・ブルームバーグ」は、ウォール街の老舗証券会社ソロモン・ブラザーズで株式取引部門のパートナー(共同経営者)として活躍していた。
しかし、同社が大手商品取引会社フィブロに買収されると、マイケルは事実上「クビ」を宣告される。
退職金として受け取ったのは1,000万ドル(当時の円換算で約30億円)。
普通のサラリーマンの生涯年収の10倍、そこで引退もできる額だが、マイケルは違った。
1981年10月、彼は3人のパートナーとともに、ニューヨークのワンルームオフィスで新会社を設立する。
社名は「イノヴェーティヴ・マーケット・システムズ(IMS)」。
この会社は証券会社ではない。では、何を売る会社だったのか?
答えは「情報」。
マイケルはソロモン時代、ロイターやダウ・ジョーンズの金融情報サービスに強い不満を抱いていた。
「データが見づらい」
「分析しにくい」
「使い勝手が悪い」
そんな現場のトレーダーの不満を、自分自身が味わっていたからです。
だからこそ彼は、もっと使いやすく、もっと分析機能が豊富な金融データサービスを作ろうとしたのです。
sonogo「ブルームバーグ L.P.」という現在の社名になるのは1986年のことです。
◆黒い画面に黄色い文字「魔法の箱」の誕生
1982年、IMSはついに最初の製品をリリースする。
「マーケット・マスター・ターミナル」
後に「ブルームバーグ端末」と呼ばれるコンピュータ・ソフトウェア・システムです。

最初の顧客は投資銀行大手のメリルリンチ。
同社はこのシステムに目をつけ、端末20台の導入と引き換えに3,000万ドルを出資し、IMS株式の30%を取得した。
さらに5年間、競合他社への販売を禁止する条件も付けた。
それほどまでに「使える」情報ツールだったわけです。
この端末の最大の特徴は「一画面に世界中の金融情報をすべて集約する」という発想にある。
株価、債券価格、為替レート、金利、経済指標、企業財務データ、ニュース速報をリアルタイムで取得・分析できる。
さらにユーザー同士がチャット機能(IB=インスタント・ブルームバーグ)でやりとりできる仕組みまで内蔵している。
1984年にメリルリンチとの独占契約が解除されると、ブルームバーグ端末は一気に普及していく。
ヘッジファンド、投資銀行、中央銀行、政府機関など、 世界中の「金融の意思決定者」が次々とこの黒い画面の前に座るようになった。
現在の利用者数は世界で35万人以上。
年間利用料は1端末あたり約3万2,000ドル(日本円で約480万円前後)にのぼる。
それでも「高いけど使わないと仕事にならない」と金融プロが口をそろえるほどの存在感を持っている。
◆「情報の民主化」最初の競合がロイターだった時代
1982年当時、金融データサービス市場はロイターとダウ・ジョーンズがほぼ独占していました。
後発のブルームバーグが食い込むのは、相当な挑戦だったことでしょう。
しかし、2007年のシェアを見ると、ブルームバーグが26%、ロイターが36%となり、2011年には両者それぞれ約30%ずつを占めるようになる。
しかも2012年以降は、ブルームバーグの端末事業の年間収益がトムソン・ロイターを上回るようになった。
この快進撃を支えたのは「使い勝手の良さ」への徹底的なこだわりです。
マイケル・ブルームバーグは創業当初から「ソフトウェアは常に改良し続ける」という姿勢を貫きます。
端末の操作性、データの見つけやすさ、分析ツールの豊富さ。
これらを地道にアップデートし続けた結果、競合を追い抜いたのです。
現在、ブルームバーグ端末の売上は同社年間収益の85%以上を占めるという。
いかにこの端末がビジネスの根幹を成しているかがわかるでしょう。
◆端末から帝国へ
ブルームバーグが金融業界の「メディア帝国」と呼ばれる所以は、端末ビジネスにとどまらない広大な事業展開にあります。
ブルームバーグ・ニュース(通信社)
1990年、元ウォール・ストリート・ジャーナル記者のマシュー・ウィンクラーを編集長に迎え、報道部門「ブルームバーグ・ビジネスニュース」を立ち上げます。
現在のブルームバーグ・ニュースは、世界150の支局に2,400人以上のジャーナリストを擁し、1日5,000本以上のニュース記事を配信しています。
提携先は450社以上のメディアに及ぶ。
ブルームバーグテレビジョン
1994年開局の24時間金融ニュース専門チャンネル。
衛星放送やケーブルテレビを通じて世界に配信されています。
ブルームバーグ・ラジオ
1992年、ニューヨークのラジオ局を1,350万ドルで買収し、24時間金融ニュース専門ラジオ局として開局。
現在は「WBBR」の局名でニューヨークから放送しています。
ブルームバーグ・ビジネスウィーク(雑誌)
2009年、経済誌の老舗「ビジネスウィーク」をマグロウヒル社から買収。
経営難だった同誌を「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」として再建しました。
Bloomberg.com(ウェブ・デジタル)
1993年にウェブサイトを開設。
現在は一般向けの経済ニュースポータルとして機能しています。
2026年5月には日本版でも有料サブスクリプションサービスが開始されました。
つまりブルームバーグは、端末という「プロ向けの情報インフラ」を軸に、テレビ・ラジオ・雑誌・ウェブという「一般向けメディア」もすべて傘下に収めた、文字通りのメディア帝国なのです。
◆日本とのつながり・1987年から始まった縁
ブルームバーグが日本に初めて拠点を構えたのは1987年。
これは創業からわずか6年後のことであり、日本がいかに早い段階から重要市場と位置づけられていたかを示しています。
東京オフィスはブルームバーグのアジア初拠点でもあった。
現在、東京支局には約600名の社員が在籍し、日銀や財務省といった政府機関でも利用されています。
2026年5月には日本版サブスクリプションサービスも正式スタートし、100名以上の記者・アナリストによる日本語ニュースが国内一般ユーザーにも届くようになっている。
また2024年5月には、TBSテレビとの5年間にわたる戦略的パートナーシップを締結。
TBS NEWS DIGへのニュース配信や、「TBS CROSS DIG with Bloomberg」という共同ブランドのニュースサービスも始動するなど、日本市場での展開はさらに深まっています。
◆創業者の「もう一つの顔」政治家・マイケル・ブルームバーグ
ブルームバーグ帝国の創業者マイケル・ブルームバーグは、2001年にCEOの座を降り、ニューヨーク市長選に出馬する。
結果は当選。
2002年から2013年まで、実に12年間にわたってニューヨーク市の第108代市長を務めた。
この間、会社は創業者不在でも成長を続けました。
市長退任後の2014年、マイケルはブルームバーグに復帰しCEOに返り咲く。
2019年には民主党候補として大統領選への出馬を表明するも、翌2020年に撤退を表明。
現在もWHO親善大使として国際的な公衆衛生問題に関わり続けている。
金融情報で帝国を築き、政治でニューヨークを動かし、世界保健に取り組む。
マイケル・ブルームバーグという人物のスケールは、彼が作った会社と同じくらい巨大です。
◆利益の大半を社会へ「ブルームバーグ・フィランソロピーズ」
ブルームバーグの特徴的なあり方のひとつが、慈善活動との徹底的な結びつきです。
「ブルームバーグ・フィランソロピーズ」は、2006年に設立されたマイケル・ブルームバーグの慈善財団です。
重点分野は「アート、教育、環境、政策革新、公衆衛生」の5つ。
世界150カ国・700都市で活動を展開しており、2024年には総額37億ドル(約5,600億円)もの資金を拠出した。
その資金の出どころは?
ブルームバーグの公式サイトには「利益の大半は、創業者マイケル・ブルームバーグとともにフィランソロピーズの活動に充てられ、世界各地で生活の質を向上させるために使われています」
と明記されている。
上場企業ではなく、創業者が株式の大半を保有する非公開企業だからこそ、このような利益の使い方が可能なのでしょう。
個人的な寄付実績も桁外れ。
2009年の寄付総額は2億ドル以上で、その年の全米トップを記録した。
2018年には母校のジョンズ・ホプキンズ大学に18億ドル(約2,000億円超)を寄付すると発表。
この寄付は奨学金の拡充に使われ、低所得世帯出身の優秀な学生がエリート大学で学べる機会を広げることが目的だとマイケルは述べた。
さらに「ギビング・プレッジ」にも参加しており、自らの資産の半分以上をいずれ社会に還元することを公約している。
慈善活動は文化分野にも及ぶ。
「ブルームバーグ・コネクツ」という無料アプリは、世界中の美術館・文化施設のガイドを50以上の言語で提供するもので、2019年のニューヨークでのローンチ以来、世界1,500以上の施設が参加し、ユーザー数は800万人を超えた。
日本でも約40の施設が参加している。
「アートを一部の人の特権にしない」という理念のもと、テクノロジーで文化への扉を開こうとする取り組みです。
◆まとめ
「退職金1,000万ドル」
ブルームバーグ・L.P.の歩みを振り返ると、一人の男が「解雇」という挫折をバネに、金融業界の情報インフラを丸ごと作り上げた物語に行き着く。
端末事業という超高収益の「屋台骨」を持ち、テレビ・ラジオ・雑誌・ウェブというメディア事業を展開しながら、その利益の大半を世界の社会課題に還元する。
非公開企業だからこそ実現できる、創業者の価値観が会社の全体を貫く経営スタイル。
金融の世界の「神経網」として機能し続け、慈善活動という形で社会にも還元し続けるブルームバーグのあり方は、「企業はどうあるべきか」を考えるうえでの、ひとつの強烈な実例であることは間違いないでしょう!
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次回は「スポーツ業界のメディア帝国」について少し書いていますので、お時間あれば読んでみてください。
日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
前回の記事も時間がありましたら読んでみてください。
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