知るメモ|【脱アメリカIT】|もしGoogleが明日使えなくなったら? ~欧州が本気で始めた「デジタル独立戦争」!
「明日からGoogleやMicrosoftが提供しているものが一切使えません。」
そう言われたら、あなたは仕事を続けられるでしょうか。
Gmail
Google検索
Google Drive
さらに、
Microsoft 365
Teams
Windows
Azure
もしこれらが突然停止したら、数日どころか大半の企業は当日の数時間以内に業務が麻痺・完全停止するかもしれない。
これをITではなく普段の生活で例えるなら、「水道・電気・ガス」が外国企業に握られていたらどう思うかというのと同じレベルのことです。
もちろん現実に明日停止するわけではないですが、しかし欧州各国は今その可能性そのものが危険だと考え始めています。
それは国家として危険すぎるという議論が本気で始まっている。
そんな彼らが始めたのが「脱アメリカIT」です。
インフラを他国に握られるという「恐怖」
私たちが普段何気なく使っているクラウドサービス。
企業活動の基盤であり、私たちの個人情報や企業の機密データ、あるいは国家の根幹に関わるデータでさえも、現在その多くが「GAFAM」と呼ばれるアメリカの巨大IT企業のサーバー(データセンター)に保管されています。
この状態を、欧州(EU)の国々は「デジタル主権の喪失」と呼び、強烈な危機感を抱いています。
なぜなら、もしアメリカ政府があの国には「サービスの提供を停止する」と言い出せば、他国の経済活動を完全にコントロールできてしまうからです。
これは決してSFの話ではありません。
近年のロシア・ウクライナを巡る情勢の中で、西側諸国がロシアに対して経済制裁やサービスの提供停止を行ったのを私たちは目の当たりにしています。
今は同盟国だから大丈夫であっても、国家の生命線であるインフラを他国籍の私企業に100%依存している状態は、安全保障上、極めて脆弱なのです。
さらに経済的な問題もあります。
クラウドインフラを利用するたびに支払われる巨額のライセンス料や利用料は、すべてアメリカに吸い上げられていきます。
「21世紀の石油」と呼ばれるデータとその利益が、自国に還元されない構造ができあがっているのです。
欧州の逆襲:「ルール」と「インフラ」の両輪
この状況を打破するため、欧州は「デジタル独立戦争」とも言える取り組みを本気で進めています。
そのアプローチは大きく2つあります。
1. 法規制(ルール)による支配からの脱却
EUは「GDPR(一般データ保護規則)」をはじめ、「DMA(デジタル市場法)」や「DSA(デジタルサービス法)」といった厳しい法規制を次々と打ち出しています。
これはGAFAMによる市場の独占を防ぎ、自分たちのデータは自分たちのルールで守るという強い意思表示です。
「欧州でビジネスをしたいなら、欧州のルールに従え」というわけです。
2. 独自のデータ流通基盤「Gaia-X(ガイアエックス)」
いくらルールを作っても、代替となるインフラがなければ結局はアメリカ企業に依存し続けることになります。
そこでドイツとフランスが中心となって立ち上げたのが「Gaia-X」という構想です。
これは、どこか一つの巨大企業(メガクラウド)にデータを集中させるのではなく、欧州内の様々な企業や組織のクラウドを安全に連携させ、「データの主権」を欧州の手に取り戻そうという巨大なプロジェクトです。
自動車業界(Catena-Xなど)をはじめ、すでに多くの企業が参画し、実用化に向けて動き出しています。
ドイツの州が始めた「脱Windows・脱Office」の実力行使
衝撃的なニュースもあります。
ドイツ北部のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州は、「デジタル主権の維持」と「データ保護」を掲げ、州の行政機関や学校などで使われている約3万台のPCを、Windowsから「Linux(オープンソースのOS)」へ完全に移行させるという計画を進めています。
同時に、Microsoft Officeも「LibreOffice(無料のオープンソースソフト)」へと切り替える方針です。
「本当にそんなことができるのか?」と思いませんか。
しかし彼らは、増え続ける外資系ソフトウェアのライセンス料から脱却し、システムの手綱を自分たちの手に取り戻すために、あえて移行の苦労を選んだのです。
日本は? 繰り返される「3つの敗北パターン」
さて、ここで私たちの国、日本に目を向けてみましょう。
日本政府も行政システムの共通基盤として「ガバメントクラウド」の整備を進めていますが、初期に選定されたのはAWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracleという「すべてアメリカのIT企業」でした。
近年ようやく「さくらインターネット」等の国産クラウドが採択され始めましたが、依然としてアメリカ依存は圧倒的です。
なぜ日本は、国内で独自の強固なデジタルインフラを構築して一致団結することができないのでしょうか?
そこには、日本の産業史を振り返ると見える、時代を超えて繰り返されてきた「3つの敗北パターン」が存在します。
① ガラケーの「過剰最適とガラパゴス化」
2000年代、日本の携帯電話(ガラケー)はiモード、おサイフケータイ、ワンセグなど、世界に先駆けた圧倒的な高機能を誇っていました。
しかし、国内の通信キャリアとメーカーが「日本国内の狭い市場」に特化した独自進化を追求しすぎた結果、世界標準から乖離。
そこへiOS(iPhone)やAndroidという「グローバルなプラットフォーム」が一気に押し寄せ、日本の携帯メーカーは壊滅状態に追い込まれました。
② 日本半導体の「自前主義と水平分業への遅れ」
1980年代後半、世界シェアの50%以上を誇っていた「日の丸半導体」。
しかし日本企業は、設計から製造まで自社で抱え込む「自前主義(垂直統合)」や過剰なまでの高品質に固執しました。
その間に世界は、設計特化(ファブレス)と製造特化(ファウンドリ)に分かれる「水平分業」へシフト。
さらに国内メーカー同士で開発投資が分散したことも響き、人口経済規模で勝る大国や国策に近い形で支援される海外企業が、年間数兆円規模の莫大な設備投資を続ける中で追い抜かれ、一気にシェアを落としました。
③ コード決済の「自社経済圏の囲い込み戦」
現在進行形の例がQRコード決済です。
一時は多数の事業者が独自サービスで〇〇Payを提供し、今も「PayPay」「d払い」「au PAY」「楽天ペイ」などが乱立、各社は自社の「経済圏」にユーザーを囲い込もうと莫大なキャンペーン費用を投じました。
国家レベルでの共通基盤(インドのUPIのような標準インフラ)を作る「全体最適」ではなく、自社の利益を優先する「部分最適」に走った結果、国内で不毛な消耗戦を繰り広げています。
共通する構造:「自前主義」「部分最適」「協調領域の欠如」
「ガラケー」「半導体」「コード決済」、そして現在の「クラウドインフラ」。
一見バラバラに見えるこれらの問題には、まったく同じ構造的欠陥が潜んでいます。
国内での顧客の奪い合い(部分最適)に終始し、世界標準を狙わない
すべてを自社で抱え込もうとする(自前主義)
業界全体で共通基盤やルールを作る「協調領域」の構築に失敗する
巨大クラウドの構築・運用には、GAFAMのように年間数兆円単位の研究開発費とインフラ投資が必要です。
日本のIT企業が各社バラバラに自社用クラウドを作ったり、国内の顧客を囲い込もうとしたりしているだけでは、資金力でも技術力でも世界基準に太刀打ちできるはずがありません。
欧州が「Gaia-X」で目指したのは、自国版の巨大IT企業を1つ作ることではなく、各社のサービスを安全に繋ぎ、データを自国で管理するための「共通のルールと標準基盤」を国や企業の垣根を越えて作ることでした。
日本が真のデジタル主権を取り戻すために必要なのは、まずは国内でパイを奪い合うことではなく、「どこまでを共通基盤(協調領域)として束ねるか」という戦略的な団結なのではないでしょうか。
私たちにできる「ロックイン(囲い込み)」の回避
国家レベルの「デジタル主権」の話をしてきましたが、これは私たちが日々の仕事や個人でデータ扱う上でも無縁な話ではありません。
すべてを一つのサービス提供企業や製品に依存しすぎることを、IT用語で「ベンダー・ロックイン」と呼びます。
一度どっぷりと浸かってしまうと、値上げをされても、サービス内容を改悪されても、他へ乗り換えることができなくなってしまう状態です。
例えば、多くの企業では
Windows
Microsoft 365
Teams
OneDrive
Azure
を組み合わせて利用しています。
あるいは
Gmail
Google Drive
Google Meet
Google Workspace
を中心に業務を回している企業も少なくありません。
これらは初期は無料や内容のわりに比較的安価で、非常に便利なサービスです。
さらに同じメーカーで揃えれば連携もスムーズになり、管理も楽になります。
しかし便利さには代償があります。
気が付けば「そのサービスなしでは仕事ができない」状態になっているのです。
例えばMicrosoft 365の料金が大幅に値上がりしたとします。
「高いから別のサービスへ移ろう」と簡単に言えるでしょうか。
現実には、
数万件のメール
共有フォルダ
業務マニュアル
社内ワークフロー
マクロや業務システム
などがすべてMicrosoft環境に依存していることが珍しくありません。
その結果、多少高くなっても使い続けるしかない。
実際、多くの企業では使い続けているソフトウェアの利用費用よりも、乗り換えに関わる時間的な費用の方が高くつくケースがあります。
データ移行。
社員教育。
業務フローの変更。
システム改修。
これらを考えると「高いけれど今のままでいいか」となりやすいのです。
そして、欧州が恐れているのも本質的には同じ問題です。
欧州が心配しているのは「明日Googleが消える」こともですが、「Googleが消えたら困る状態になっている」ことも大きな問題だということなのです。
つまり本当に危険なのは可能性が低いサービスの完全停止ではなく、いざとなれば変えられるという選択肢がなくなることなのです。
では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。
答えはシンプルで、すべてを一社に依存しないことです。
例えば、重要なデータは定期的にローカルにもバックアップを残したり、別形式でも保存する。
業務システムを選ぶ際には、自由にデータを取り出せるかを確認する。こうした小さな積み重ねが、将来の選択肢を守ります。
便利さを否定する必要はありません。
GoogleもMicrosoftも素晴らしいサービスを提供しています。
しかし便利だからこそ「もし使えなくなったらどうするか」を考えておく。それが個人にとってのデジタル主権であり、企業にとってのリスク管理なのかもしれません。
◆まとめ
明日Googleが止まることはないかもしれません。
しかし、大幅な値上げや突然のアカウント凍結リスクは常に存在します。
重要なのは、特定の企業やシステムに依存しすぎず、「いざとなれば別の手段に切り替えられる」という選択肢を持っておくこと。
欧州が国家を挙げて戦っている「デジタル独立戦争」、そして日本の産業史が教える過去の過ちは、私たちが日々の業務環境やデータの扱い方を見直すための、極めて重要なヒントを与えてくれていますよ!
もしこの記事が役立ったら「スキ」やフォローしてくれると嬉しいです!
次回は「アパートメントホテル」について少し書いていますので、お時間あれば読んでみてください。
日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
前回の記事も時間がありましたら読んでみてください。
いいなと思ったら応援しよう!
応援ありがとうございます!
