知るメモ|【知られざる最強大学】|18歳が「1人もいない」国立大学?~先端科学技術大学院大学のヤバさを解説!
「日本の研究力は低下している」
そんなニュースを最近はよく耳にするようになりました。
しかし、奈良の山奥や石川の丘陵地帯に、世界トップレベルの研究を叩き出し、GAFAMをはじめとする国内外の巨大 IT・メーカー企業へ人材を送り出し続けている「秘密基地のような国立大学」が存在することをご存知でしょうか?
それが、
奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)
そして
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
です。
どちらも普通の大学とは少し違います。
最大の特徴は「学部がない」こと。
つまり、大学なのに18歳の新入生がいません。
高校を卒業してそのまま入学する大学ではなく、基本的には大学を卒業した人などが、さらに専門的な研究を行うために進学する大学院大学なのです。
しかも、その研究分野は情報、AI、バイオ、半導体、材料、ロボティクスなど、日本の産業競争力そのものに関わる領域。
知名度は東大や京大ほど高くない。
しかし、研究者や技術者の世界では、かなり特殊な存在感を持っています。
今回は、この「知る人ぞ知る研究大学」が、なぜ作られ、何をしていて、海外からどのように評価されているのかを少し書いてみます。
なぜこんな大学を国が作ったのか?
実は、これは日本の科学技術政策と深く関係しています。
NAISTとJAISTが設立されたのは1990年代。
当時の日本では、情報技術、バイオテクノロジー、材料科学などの先端分野が急速に発展していました。
文部省(当時)も、従来型の大学だけではなく、
「最先端の科学技術を専門的に研究し、高度な研究者・技術者を育成する大学院大学」
という新しい形を必要としていていたわけです。
この大学で行われているのは一言で言えば、「10年後の当たり前を作る研究」です。
主な領域は以下の3つに集約されます:
情報科学(AI、ロボティクス、サイバーセキュリティ、自然言語処理)
バイオサイエンス(遺伝子、植物工学、創薬、がん研究)
物質創成科学(半導体、新素材、有機EL、ナノテクノロジー)対象分野
そして、入ってくるのは全員、他の大学を卒業した「学部卒生」や「社会人」。
つまり、キャンパスにサークルで騒ぐ18歳の新入生は1人もおらず、ほぼ「修士課程・博士課程」の大学院生だけで構成されています。
厳密には研究生などもいるため、学生が全員修士・博士と言い切るのは正確ではありませんが、大学の中心が大学院生であることは間違いありません。
いわば、「研究と高等教育のためだけに作られた、純度100%の国立研究施設」なのです。
「本当に世界レベルなの?」という疑問
「最先端大学です!」
と大学自身が言っているだけなら広報活動の一種になってしまいますが、大学の知名度や偏差値ではなく、研究成果そのものを見てみましょう。
NAISTが公表している研究データの一つに、論文の「Top 10%論文比率」があります。
これは、世界で発表された論文の中でも特に引用されている上位10%に入る論文が、その大学の論文の中でどれくらいの割合を占めているかを見る指標です。
NAISTのデータでは、2019年時点のTop 10%論文比率は14.8%。
世界平均が約10%ですからそれを上回っています。
これは単純に論文を大量に発表しているだけではなく、「世界の研究者から注目され、引用される論文を比較的高い割合で生み出している」ということです。
さらにNAISTが公表している別の指標を見ると、2015~2020年の論文・国際会議発表数を教員1人当たりで比較した場合、日本の大学の中で2位。
科研費についても、教員1人当たりの採択数で国立大学の3位というデータがあります。
ここで重要なのは、NAISTが東京大学や京都大学のような巨大な総合大学ではないということです。
学部を持たず、大学院に特化した小規模な大学だからこそ、「大学全体の規模」ではなく、「研究者1人あたり、どれだけ研究成果を生み出しているか」を見ると、その特徴が見えてきます。
もちろん、これらの数字だけで「日本一の大学」と断定することはできません。
研究分野によって論文の出やすさや引用されやすさも違いますし、大学の規模や専門分野も異なるからです。
それでも、「知名度の低い地方の大学だから、研究力も大したことはない」
というイメージが正しくないことは分かってもらえるかと思います。
「山中伸弥」
NAISTを語るなら、どうしてもこの人物を外せません。
2012年、山中氏はiPS細胞の研究によってノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
そして、その研究のルーツはNAISTにあります。
山中氏は1999年にNAISTへ着任。
その後、NAIST在籍中に行った研究が、最終的にiPS細胞の開発へつながりました。
彼が「受精卵以外の細胞から万能細胞(iPS細胞)を作れるはずだ」という仮説を立て、最初のブレイクスルーとなる研究を開始し、実験を成功させた舞台こそが、NAISTのバイオサイエンス研究科(当時)だったのです。
NAIST自身も「山中教授がNAISTで始めた研究が、ノーベル賞につながった」と明確に記録しています。
この大学は、既に答えが分かっている問題を勉強する場ではなく、「まだ答えが存在しない問題に挑戦する」大学であることを示す実例でもあります。
海外から見ても「ただの地方大学」ではない
NAISTには2025年10月時点で348人の外国人学生が在籍しています。
しかも中国、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、ドイツ、フランス、アメリカなど、非常に多くの国・地域から学生が集まっています。
NAISTは海外の大学・研究機関とも積極的に交流しており、北米ではブリティッシュコロンビア大学、ミネソタ大学、ミシガン大学、UCサンディエゴ、ローレンス・バークレー国立研究所などとの交流実績があります。
JAISTも2026年7月時点で、16か国・1地域、94機関と学術交流協定を結んでいます。
つまり海外から見ても「日本の地方にある無名大学」という存在ではありません。
研究者ネットワークの中では、かなり国際的な大学なのです。
さらに凄いのが「世界トップ2%研究者」
2025年、世界中の研究者を「どれだけ研究成果が他の研究者に引用されているか」という指標で分析したところ、JAISTの教員8人が「世界で引用数上位2%の研究者」に選ばれました。
「上位2%」と言われても、少しピンとこないかもしれません。
世界には数百万人規模の研究者がいます。
そしてその研究者の論文が、世界中の研究者からどれだけ注目され、引用されているかを想像すれば、その優れた研究者の中でも上位2%というのはかなり厳しい基準です。
しかも、これは大学の入試偏差値や大学の知名度を評価したものではありません。
これも、NAISTやJAISTが一般人には知られていないけれど、研究者の世界では評価されている大学である理由の一つなのです。
産業界からの猛烈なラブコールと「隠れたエリート・ルート」
もう一つ、この2つの大学の凄さを語る上で絶対に外せないのが、「産業界からの圧倒的な評価」です。
一般の知名度が低いにもかかわらず、日本の名だたる大企業や世界的IT企業の人事・採用担当者で、NAISTやJAISTを知らない人はいないと言っても過言ではありません。
両校とも、就職を希望する学生の就職率は毎年ほぼ100%に近い数字を叩き出しています。
外資系IT企業をはじめ、トヨタ、ホンダ、ソニー、パナソニック、NTTデータ、武田薬品工業など、各業界のトップ企業へ、毎年当たり前のように人材を送り出しています。
なぜ、企業はこれほどまでに彼らを欲しがるのでしょうか?
理由はシンプルで、彼らが「入社初日から使える、本物の即戦力」だからです。
普通の大学の学部生が教科書で学んでいる間に、ここの学生たちは数十億円クラスの世界最高峰の研究設備を使い倒し、企業との共同研究を通じて「社会のリアルな課題」に日々立ち向かっています。
また、知る人ぞ知る事実として、これらの大学院は「高専(高等専門学校)出身の優秀なエンジニアの集結地」でもあります。
早くから実践的な技術を身につけた高専生や、地方の国公私立大学で基礎を学んだハングリーな学生たちがここに集まり、世界トップクラスの教授陣に揉まれることで、数年で「世界水準の研究者・技術者」へと化けるのです。
偏差値という物差しでは測れない、日本の技術界の「最強のキャリアパス」がここに存在しています。
ちなみに、大学院だからといって誰でも入れるわけではありません。
一般的な大学院と同様に入学者選抜があり、研究分野との適性なども含めて選考されます。
おわりに
「日本の研究力は低下している」
その言葉自体は、一面の事実かもしれません。
しかし、日本の科学技術の火は決して消えてはいません。
NAISTやJAISTは偏差値ランキングには登場しません。
でも「まだ世界が知らない技術」に没頭する研究者と学生たちが集まります。
知名度を追わず、ひたすらに最先端の知を追求し、社会へ実装していく。
奈良の山奥と石川の丘陵地帯で、今日も静かに、しかし熱狂的に「10年後の当たり前」を作っている秘密基地があることを!
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それでは次回をお楽しみに・・・
日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
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