知るメモ|【世界の4大「放送方式」】|世界の地デジ4K化に向けての覇権方式はどこか!~なぜ日本のテレビは韓国、中国で使えない?
地デジ化で地上波放送の進化は終わったわけではない。
現在の日本の地上波はフルHD(アスペクト比16:9の1920×1080)だと思っている人もいるかと思いますが、実際には違います。
かなりの番組が16:9のアスペクト比を4:3に横方向を圧縮してハイビジョン(1440×1080)で送信し、それをテレビ側で再度横に伸ばして見ている。
このなんちゃってフルHDの理由は単純で「帯域節約」です。
なぜ日本の地デジは「横幅をケチって」放送しているのか?
日本の地上波デジタル放送(ISDB-T方式)には、国から「1チャンネルあたり13セグメント(割り当てられた電波のブロック)」という厳格な枠が与えられています。
テレビ局(1つのチャンネル)が使える電波の幅(帯域幅:5.6MHz)を、均等に13個の部屋に細かく分割され、1つの部屋の単位を「1セグメント(セグ)」と呼びます。
「13個も使っているなら、フルHD(1920×1080)で送れるのでは?」と思うかもしれません。
規格上はフルHDとワンセグの両立はできますし、実際、NHK系では1920×1080ベースの運用例もあり、スマホのワンセグもちゃんと同時に受信できています。
しかし、送信するデータ量が増えれば送信環境や受信側の受信環境の影響は大きくなります。
近年のテレビは情報量が膨大です。
バラエティの派手なテロップ、スポーツ中継、CMなど、民放は画面全体の情報量が非常に多く激しい動きの映像はデータ量が大きいですし、高音質な音声データ、番組表(EPG)、災害時のためのデータ放送などをすべて詰め込むと、12セグメントでは「1920×1080」の映像データを送るにはどうしても帯域が足りなくなります。
そこでテレビ局は、映像の横幅を「1440」に間引き(圧縮)することでデータ量を節約し、なんとか枠内に収めているのです。
障害物やノイズに強くなる(OFDMと階層伝送)
なぜわざわざ13個に分割して送信しているのか?
デジタルデータ(映像や音声)を電波に乗せて飛ばすとき、もし1本の太い電波で一気に送ってしまうと、高いビルや山、車の移動、悪天候などによる「反射」や「ノイズ」の影響を強く受け、データ全体が一度に壊れてしまう危険があります。
そこで日本の地上デジタル放送(ISDB-T方式)では13のセグメントに分けて、データを大量の細かい周波数に分散して送る「OFDM(直交周波数分割多重)」という技術を採用しています。
周波数ごとに用途を分ける基本的な考え方は「FDM(周波数分割多重)」と呼ばれるもので、例えばラジオで、
76MHz → A局
77MHz → B局
78MHz → C局
のように、周波数帯を分けて利用しているのもFDMの一種です。
ただし、従来型のFDMでは周波数同士が干渉しないよう「隙間(ガードバンド)」を空ける必要があり、その分だけ電波が無駄になります。
そこでOFDMでは、「互いに干渉しないよう数学的に直交した周波数」を極めて高密度に並べることで、ほぼ隙間なく大量のデータを効率よく送れるようにしています。
さらにOFDMは、電波がビルや山に反射して少し遅れて届く「マルチパス」にも非常に強い特徴があります。
仮に一部の周波数成分がノイズで乱れても、誤り訂正技術やインターリーブ処理によってデータを復元しやすく、映像が途切れにくくなっています。
また、日本の地デジでは6MHzの帯域を13個の「セグメント」に分割し、
高画質な固定受信用(12セグ)
移動受信用のワンセグ(1セグ)
を同時に送る「階層伝送」を実現しています。
日本の地上波デジタル放送(ISDB-T方式)は、山が多く電波反射が起きやすい日本の地理条件の中で、「家庭の大型テレビ」と「移動中の携帯端末」を同時に支えるために設計された、日本独自色の強い放送方式でもあります。
「ワンセグ」の存在
帯域節約の一因が1セグ分を占有する、かつてガラケー時代に一世を風靡した「ワンセグ」の存在です。
ただし、ワンセグを廃止して1部屋回収したとしても、民放がフルHD化するのは難しいと言われています。ワンセグの1部屋が持つデータ容量は、全体の「13分の1」ではなく、全体の約2〜3%(約0.4Mbps)しかありません。
ワンセグは移動中に途切れないよう、わざとデータを極限まで薄くして送っているため、フルセグ側に合流させても「焼け石に水」なのです。
なぜいま、ワンセグを使っている人は誰もいないのか?
本来、通信網が途絶する災害時における、独立した情報伝達インフラとして存在意義のあった「ワンセグ」。
では、そこまでして守っているワンセグは、いまどうなっているでしょうか。
街を見渡しても、スマホでアンテナを伸ばしてワンセグを見ている人など、ほとんど誰もいないと思います。
実際、2025年から2026年にかけて、NHKや民放各局はワンセグ向けの「データ放送(ニュースや天気予報の画面)」を相次いで終了・縮小させており、ワンセグは事実上の「終活」に入っています。
なぜワンセグはここまで急速にオワコン化したのでしょうか?理由は3つあります。
① スマホの「ギガ定額」と「TVer・YouTube」の普及
ワンセグが始まった2006年当時、携帯のデータ通信は「パケ死」という言葉があるほどの従量課金制でした。
そのため、通信料無料でテレビが見られるワンセグは神機能だったのです。
しかし現代は、大容量・定額制の5G/4Gが当たり前。
TVer、YouTube、Netflix、Amazonプライムがスマホでいつでも高画質で見られる時代に、わざわざ「320×180ピクセル」という、初期のYouTube以下の超粗い画質のワンセグを見る理由がなくなりました。
② Apple(iPhone)の圧倒的シェアと「アンテナ問題」
日本で7割近いシェアを誇るiPhoneには、初代から現在に至るまで一度もワンセグ機能が搭載されませんでした。
また、近年のAndroid端末もほぼ国産機は消滅しグローバルモデルの日本仕様が多くなる中で、「防水性能を高めるため」「デザイン性を保つため」に、ワンセグ用のホイップアンテナや内部チューナーを排除していきました。
受像機(見られる端末)自体が市場から消滅したのです。
③ NHK受信料を巡る裁判沙汰
「ワンセグ機能付きの携帯電話を持っているだけで、NHKの受信契約を結ぶ義務がある」という最高裁判所の判決(2019年)が出たことも決定打となりました。
メーカー側もユーザー側も、トラブルを避けるために「ワンセグが付いていない端末」を選ぶようになり、需要は完全にトドメを刺されたのです。
◆世界の「4大方式」の壁:なぜ日本のテレビは中韓で使えない?
世界は全く異なる方式を採用し、独自の勢力圏を作りました。
そのため、日本のISDB-T方式のテレビ(スマホ含む)を韓国や中国に持っていっても、電波の「言語」が全く違うため、現地の地上波を映すことは絶対にできません。
ISDB-T方式
日本・中南米のほぼ全域・フィリピン
日本が開発。移動体(携帯端末)向けの「ワンセグ」を同時に流せる強みで中南米を席巻。
ただし、ブラジルが採用した ISDB-T 規格は「ISDB-T International」(SBTVD)として一部改良が加えられており、日本式とブラジル式は互いにテレビの互換性がない状態です。利点:移動体受信が非常に強い。地形条件が悪くても安定。
欠点:構造が複雑で、帯域効率がそこまで高くない
ATSC方式
アメリカ、カナダ、韓国、ジャマイカなど利点:高ビットレートで画質が良い。音質も強い。構造がシンプル
欠点:都市部の反射に弱い。移動受信が苦手。
DTMB方式
中国本土、香港、マカオ、パキスタン、カンボジアなど
国家主導の独自規格。圧倒的な人口規模でゴリ押し。利点:独自規格で特許主導権を握れる(欧米特許に依存したくない)
比較的新しい世代の技術をかなり盛り込んでいるので移動耐性やマルチパス耐性がかなり高い欠点:構造がかなり複雑。中国市場依存。世界互換性が低い
DVB-T方式
欧州、アフリカ、アジア、オセアニアなど (世界最多の90ヶ国以上)
世界で最も広く普及している世界標準。利点:運用自由度が高い。DVB-Tは2000年前後の設計のため帯域効率は高くないが、DVB-T2へ移行しトップクラスの帯域効率を獲得。4K映像の配信も可能。
欠点:日本のISDB-Tが比較的割り切った設計なのに対してDVB-T2はかなり高度な信号処理を使うため高負荷。
旅行や出張で海外へ行った際に、日本から持っていったポータブルテレビなどが映らないのは、この電波方式の違いが原因です。
◆第2の規格争い「放送と通信の融合」へ
アナログ停波を巡る第1ラウンドは地デジ化により幕を閉じましたが、
「次世代の放送規格」を巡る第2ラウンド(地デジのアップデート)が始まっています。
現在、世界を二分しつつある注目のトレンドです。
① アメリカの次世代規格「ATSC 3.0」
いま最も勢いがあるのが、アメリカが開発したインターネット(IP技術)と完全融合した地デジ規格「ATSC 3.0」です。
何がすごいの?:
4K・HDRの超高画質放送だけでなく、ネット回線のように「視聴者の好みに合わせたターゲット広告」を流したり、災害時にスマホへ一斉に緊急警告を送ったり、走行中の自動運転車にデータを一斉配信したりできます。現在の動き:
アメリカ全土や韓国、ジャマイカなどで導入が進む中、2025年後半、かつて日本方式(ISDB-T)の盟主だったブラジルが、次世代テレビ(TV 3.0)のベースとしてこの「ATSC 3.0」の技術を公式採用することを決定。
2026年のFIFAワールドカップに向け、実験放送や対応機器の普及が急速に進んでいます。
② 欧州の「DVB-I」
DVB-I:「チャンネルの届け方を問わない」オープン標準
DVB-Iとは、テレビサービスをインターネット中心の方法で「信号発見・記述」するための技術仕様。
技術的な基盤としてはHTTPS と XML をベースとしており、ブロードバンドでも放送でも届けられたコンテンツを、あらゆる接続済みデバイス(テレビからスマホまで)で統一された形で表示できるようにするものです。
視聴者にとって何が変わるのか一言で言えば「電波が届かなくてもインターネットが繋がれば、同じチャンネル番号で見られる」ということ。
地デジアンテナのない家庭や放送波切り替え時に、放送またはストリーミングが同じEPG(電子番組表)のチャンネル番号を共有できる仕組みを作るのが狙いです。
ドイツでは Deutsche TV-Plattform が受信機向けの DVB-I 実装プロファイル(Version 1.00)を公開し、2026年後半の公開サービス開始を目標としています。
アイルランドでは、公共放送 RTÉ が国内 DTT プラットフォーム Saorview 向けの DVB-I クローズド技術試験を 2026年6月〜11月に100ユーザー規模で実施する計画を発表しており、次世代ハイブリッドプラットフォームへの移行判断材料にするとしています。
スペインでは RTVE と FORTA が共同で DVB-I パイロットを正式に発表し、公共・民間双方の放送事業者が参加する形で技術評価を進めています。
③通信界からの刺客「5G Broadcast」
5G Broadcast(3GPP Release 14/16/17/18で規格化)は、携帯基地局から「1対多」でコンテンツをスマホに直接マルチキャスト配信する技術です。
普通のネット配信番組とは違い「1対1」でデータを送信する仕組みではないので、大勢が同じコンテンツを視聴する場面でも回線が詰まりません。
欧州では、5G Broadcast を既存のセル型ストリーミング配信と組み合わせる「高塔高出力(High Tower High Power)オーバーレイモデル」の提案も浮上しており、高トラフィック地域や大規模イベント時にユニキャストと 5G Broadcast をシームレスに切り替える構想が検討されています。
米国では、ボストン市場の WWOO-LD 局が世界初の24時間連続 5G Broadcast 局として2023年9月に実証を開始し、2024〜2025年にかけてフェーズ2へ移行。
Single Frequency Network(SFN)動作・緊急通知・道路標識更新・ファーストレスポンダー通信・チャンネルボンディングなどの先進機能のテストが行われています。
◆日本の地上波の次世代化(4K地デジ)の「大幅な遅れ」
現行の4K・8K放送は衛星(BS・CS)が中心であり、地上デジタル放送で衛星と同等の4K/8K放送を実現するための議論は2019年から始まり、開始時期は現在は「未定」ですが、NHK放送技術研究所が中心となって研究開発を進めてきた次世代の地上テレビジョン放送方式「地上放送高度化方式」の標準規格が、2025年3月に電波産業会(ARIB)で承認されました。
これにより、地上波で4K放送を実現するための基本的な準備が整ったとされています。
規格化されたのは3方式です。
既存 ISDB-T と同じ周波数に重ねる「ISDB-T1.5(階層分割多重方式)」、LDPC+BCH符号と4096QAMまでの変調を採用する「ISDB-T2」、そして将来の本命として ISDB-T と大きく異なる「ISDB-T3(地上放送高度化方式)」です。
しかし規格ができても放送開始には大きな距離があります。
予測では放送開始や全国への普及は2020年代後半〜2030年代に入ってからになると見られています。
ただし、関係者の間では
「総務省は次世代地デジを実現しようとは考えていないのではないか」
という疑念も出ている。
その背景には動画配信サービスの伸長・若者のテレビ離れ・広告市場の地上波離れなどがあり、放送局や視聴者に移行の負担を強いる理由が薄れつつあるという現実があります。
日本でも放送とネットの連携はNHKや民放が実用化しており、「何もしていない」わけではありませんが、欧州の DVB-I が「あらゆる配信手段を透過的に統合するオープン標準」として国際的に広がっているのとは性格が大きく異なります。
◆まとめ
地デジ化とは、単なる「テレビのデジタル化」ではありませんでした。
山が多く、移動受信を重視し、災害時の情報伝達も求められる日本特有の事情の中で、「限られた帯域をどう使い切るか」という思想の上に築かれた国家規模の通信インフラだったのです。
しかし2020年代に入り、その前提は大きく揺らぎ始めている。
かつて地デジの切り札だったワンセグは役割を終えつつあり、若い世代はテレビではなくインターネット動画を主戦場に選び始めた。
世界では「放送と通信の融合」が急速に進み、ATSC 3.0、DVB-I、5G Broadcast といった次世代規格が、電波だけで完結しないテレビを前提に進化を始めている。
日本でも ISDB-T3 など次世代地デジの規格化は始まった。
しかし本当に問われているのは、「4K化できるか」ではないかもしれません。
テレビ放送そのものをこれからの時代にどう存在させるのかといった、根本的な意味がいま改めて問われているのでしょう!
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次回は「シャトレーゼ」について少し書いていますので、お時間あれば読んでみてください。
日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
前回の記事も時間がありましたら読んでみてください。
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