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知るメモ|【グルテン】|小麦は悪なのか?~腸だけじゃない、脳・皮膚・神経にまで及ぶその影響!

「グルテン」。
パンがふっくらしていたり、うどんのモチモチ感は、あるとないとでは食べた時の幸福感が違う。
一般的に見ればそんなに高くないパンもうどんも、どれも一様においしいのは「グルテン」の効果があればこそです。

でも小麦粉に含まれるこのタンパク質は、知らず知らずのうちに腸内環境を乱し、脂肪の蓄積を助長している可能性があります。
グルテンが引き起こす問題は、かつては「腸の病気」として語られることがほとんどでした。
しかし現在の医学では、グルテンが腸だけでなく、皮膚・神経・脳・自己免疫系など全身に影響を及ぼす可能性があることが明らかになってきています。

今回は、グルテンが関連する主なメカニズムを、できるだけわかりやすく解説します。


第1章|「グルテン」とは何か?

グルテンの正体

グルテンは、小麦・大麦・ライ麦などに含まれる「グリアジン」と「グルテニン」という2種類のタンパク質が、水と混ざることで生まれる複合体です。
パンがふっくら膨らんだり、うどんがモチモチした食感になるのは、このグルテンが粘弾性を生み出しているから。
つまり食感の立役者です。

しかし、この粘りけのある性質が、体の中でも問題を引き起こすことがあります。


第2章|グルテンが腸で「溜まる」メカニズム

腸の壁に起こること

健康な状態の腸壁は、「タイトジャンクション」と呼ばれる細胞同士の結合によって隙間なく覆われています。
これが消化された栄養素だけを選んで吸収し、有害物質の侵入を防ぐ「関門」の役割を担っています。

ところがグルテンは、腸の細胞に働きかけて「ゾヌリン(Zonulin)」というタンパク質を過剰に分泌させることが研究で示されています。
ゾヌリンはタイトジャンクションをゆるめる作用があり、これによって腸壁に微細な隙間が生じます。

この状態が「リーキーガット(腸漏れ症候群)」と呼ばれるものです。


リーキーガットが引き起こす連鎖

腸壁の隙間から、未消化のタンパク質・毒素・細菌の断片などが血流に漏れ出すと、免疫系がこれを「異物」として認識し、慢性的な炎症反応が起こります。

この慢性炎症は:

  • インスリン抵抗性を高める(血糖値が下がりにくくなり、脂肪が蓄積しやすくなる)

  • コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を促す(内臓脂肪がつきやすくなる)

  • レプチン抵抗性を引き起こす(満腹シグナルが脳に届きにくくなる)

という悪循環を生み出します。

つまり、グルテンが引き起こす問題はグルテンそのものの蓄積ではなく、腸内で起こる炎症の連鎖にあるのです。


グルテンが多く含まれる食品

  • 主食系(食パン、バゲット、うどん、パスタ、ラーメン、餃子の皮)

  • 間食・お菓子(クッキー、ケーキ、ドーナツ、クラッカー)

  • 加工食品(カレールウ、醤油、麦みそ、揚げ物の衣)

  • 飲料(麦芽飲料、ビール(大麦由来))

グルテン不耐性やセリアック病(グルテンに対する自己免疫疾患)がある人は、ごく微量でも深刻な反応が出ます。
自分の体質を知ることが最初の一歩です。


第3章|グルテンと関連が示唆される疾患

慢性的な疲労感、なかなか治らない肌荒れ、理由のわからない頭痛、気分の落ち込み。
こうした「病院に行くほどじゃないけれど、ずっと続く不調」の一因として、近年、グルテンとの関連が研究者の間で注目されています。

グルテン関連疾患(GRD)とは

グルテン関連疾患(Gluten-Related Disorders:GRD)とは、グルテンの摂取をきっかけに引き起こされる、様々な臨床症状を呈する疾患の総称です。

2011年に専門家グループによって、以下の3つのカテゴリーに分類されました。

  • 自己免疫系:セリアック病、疱疹状皮膚炎、グルテン失調症

  • アレルギー系:小麦アレルギー、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)、パン職人喘息

  • 原因不明・非自己免疫系:非セリアック性グルテン過敏症(NCGS)

それぞれメカニズムが異なり、血液検査で現れる抗体の種類も違います。
「グルテンに反応する病気」とひとくくりにされがちですが、実際には全く別の機序で起こる疾患です。


セリアック病|最も研究が進んだグルテン自己免疫疾患

セリアック病は、グルテンに対する遺伝性の自己免疫疾患です。
グルテンを摂取すると免疫系が異物とみなして抗体を産生し、その抗体が自分の小腸粘膜を攻撃してしまうのが最大の特徴です。

攻撃を受け続けた小腸の内壁では、栄養素を吸収するための微細な突起(絨毛)が徐々に破壊され、平坦になっていきます。
その結果、食事から必要な栄養素を十分に吸収できなくなります。

症状としては消化器症状だけでなく、全身にわたる多彩な症状が現れます。

消化器症状

  • 下痢・慢性的な軟便

  • 腹部膨満感・腹痛

  • 体重減少・栄養不良

全身症状

  • 貧血(鉄・葉酸の吸収不良による)

  • 骨粗鬆症(カルシウム・ビタミンD吸収障害による)

  • 慢性的な疲労感・倦怠感

  • 口内炎・皮膚症状

  • 子どもの場合は成長障害

精神・神経症状

  • 抑うつ・不安感

  • 認知機能の低下(ブレインフォグ)

有病率|日本人は少ないが増加傾向

欧州では150人に1人、米国では250人に1人に発症するとされています。
一方、日本では島根県での疫学調査で有病率は0.19%程度と報告されており、欧米と比べて低い水準です。
ただし小麦消費量の増加を背景に、今後増加する可能性があると指摘されています。

他の自己免疫疾患との合併

セリアック病がある場合、他の自己免疫疾患を合併するリスクが高まることが知られています。

  • 1型糖尿病との合併率は、一般人口の10〜30倍

  • 自己免疫性甲状腺炎(橋本病)との関連も報告されており、一般人口の0.4%に対し、自己免疫性甲状腺炎の患者では4.3%にセリアック病がみられたとするデータがあります

  • 多発性硬化症(MS)との関連も指摘されており、MS患者の11.1%にセリアック病が確認されたとする研究もあります

診断と治療

診断は血液検査(抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体など)と十二指腸生検の組み合わせで確定します。
グルテンを食べながら検査を行うことが重要で、グルテンを抜いた後では正確な診断ができなくなります。

治療の基本はグルテン除去食(グルテンフリー食)の徹底です。
グルテンの摂取をやめると、多くのケースで腸粘膜は回復し、症状も1〜2週間で改善し始めます。


非セリアック性グルテン過敏症(NCGS)|診断が難しい「第三のグルテン病」

非セリアック性グルテン過敏症(Non-Celiac Gluten Sensitivity:NCGS)は、セリアック病でも小麦アレルギーでもないのに、グルテンを含む食品で体調が悪化する状態です。
研究によれば、NCGSはセリアック病より6倍多いとする報告もあります。

症状はセリアック病と非常によく似ており、腸の症状と腸以外の症状が混在します。

  • 下痢・腹部膨満感・腹痛(過敏性腸症候群様症状)

  • 慢性的な倦怠感

  • 頭痛・関節痛

  • 手足のしびれ

  • 皮膚の赤みや湿疹

  • 注意力の低下・ブレインフォグ

  • 不安・抑うつ

日本での実態研究

兵庫医科大学は2019年に日本初のグルテン専門外来を設置し、グルテン不耐症の実態調査と研究を進めています。
グルテン不耐症患者では抗グリアジン抗体が検出されることがあり、免疫系の過剰活性化との関連が示唆されているものの、病態機序はまだ完全には解明されていません。

NCGSには現時点で確立された診断基準も検査方法もなく、自覚症状をもとに判断されているのが現状です。

診断の手順としては一般的に:

  1. セリアック病・小麦アレルギーを血液検査・生検で除外する

  2. 数週間のグルテン除去食を試みる

  3. 症状が改善すれば、再びグルテンを摂取して症状が戻るか確認する(二重盲検法)

という流れが推奨されますが、日常診療では実施が難しいケースも多くあります。


疱疹状皮膚炎|腸ではなく皮膚に現れるセリアック病

疱疹状皮膚炎(Dermatitis Herpetiformis:DH)は、セリアック病の皮膚型ともいわれる自己免疫疾患です。
グルテンに反応して産生された抗体(抗TG3抗体)が、皮膚の真皮層に沈着し、激しい痒みを伴う水疱や発疹を引き起こします。

主に肘・膝・肩甲骨・臀部など、左右対称に症状が出るのが特徴です。

疱疹状皮膚炎の患者の多くは、明確な消化器症状を感じていないことがあります。
しかし、腸の生検を行うと、セリアック病と同様の絨毛萎縮が確認されることが多く、症状として現れていないだけで腸にはダメージが生じています。

治療はグルテン除去食が基本で、皮膚症状の改善には数ヶ月から1〜2年かかることがあります。


グルテン失調症|脳・神経を侵す「腸を介さない」グルテン疾患

グルテン失調症(Gluten Ataxia)は、グルテンに対する免疫反応が小脳や神経系を攻撃することで発症する疾患です。
グルテン関連疾患の中でも神経症状を呈するものとして最も多く報告されています。

「抗グリアジン抗体」や「抗TG6抗体」が小脳のプルキンエ細胞などを損傷することで、進行性の運動失調が起こります。

  • 症状

    • 歩行のふらつき・バランス障害(小脳性運動失調)

    • 手の震え・細かい動作の困難

    • 眼球運動の異常

    • 末梢神経障害(手足のしびれ・感覚異常)

    • まれに、てんかん・認知機能低下

グルテン失調症は、腸症状がほとんどない患者にも発症するという点が診断を遅らせる大きな要因です。
原因不明の運動失調として長年治療されてきたケースも少なくありません。

グルテンフリー食を早期に開始することで症状の進行を止め、改善が期待できます。
ただし神経細胞の損傷は不可逆的な部分もあるため、早期発見・早期対応が非常に重要です。


小麦アレルギー・WDEIA|即時型の免疫反応

小麦アレルギーは、グルテンを含む小麦タンパク質に対するIgE抗体(即時型アレルギーの抗体)が産生されることで起こります。
セリアック病が「数ヶ月〜数年かけてゆっくり発症する」のとは異なり、摂取後比較的短時間でじんましん・呼吸困難・アナフィラキシーなどの症状が現れます。

特に注意が必要なのが 「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA:Wheat-dependent Exercise-induced Anaphylaxis)」です。

これは、小麦を食べただけでは症状が出ないが、食後に運動をするとアナフィラキシーが誘発されるという、非常に特殊なタイプのアレルギーです。
「食べた後にジョギングしたら突然倒れた」というケースがこれにあたります。

主な原因抗原は小麦のω-5グリアジンというタンパク質で、運動や解熱鎮痛薬(アスピリンなど)が誘発因子になることが知られています。


グルテンと関連が示唆される疾患(研究段階)

以下の疾患については、グルテンとの関連が指摘されていますが、因果関係が完全に証明されているわけではなく、現在も研究が続いています。
「関連の可能性がある」という段階として理解してください。

  • 精神疾患との関連

    • うつ病・不安障害:
      腸内炎症→神経炎症→セロトニン産生低下という経路が仮説として提唱されている

    • 統合失調症:
      抗グリアジン抗体の陽性率が一般人口より高いとする研究がある

    • 自閉スペクトラム症(ASD):
      腸内環境との関連から注目されているが、エビデンスは限定的

    • ADHD:
      グルテンフリー食で改善したケースが報告されているが、大規模な研究はまだ少ない

  • 自己免疫疾患との関連

    • 関節リウマチ
      慢性腸管炎症が関節の自己免疫を増悪させる可能性

    • 橋本病・バセドウ病(甲状腺自己免疫疾患):
      セリアック病との合併率の高さから、グルテンフリー食が症状改善に寄与するケースが報告されている

    • 全身性エリテマトーデス(SLE)
      腸粘膜の透過性亢進との関連が示唆されている

  • 皮膚疾患との関連

    • 乾癬
      グルテンフリー食で改善するケースが一部で報告されている

    • アトピー性皮膚炎
      腸内環境の乱れとの関連から研究が進んでいるが、直接的な因果関係は未確定


第4章|完全小麦除去をするなら何を食べればいい?

「小麦を完全に抜こうと思ったら、何を食べればいいの?」
実際にやろうとすると、多くの人がここで困ります。
というのも、小麦は想像以上に多くの食品へ使われているからです。
特に日本では、醤油、出汁、加工調味料にも小麦が入ることが多く、知らないうちに摂取しているケースが珍しくありません。
そのため、医学的理由(セリアック病など)がない場合は、「まず減らす」くらいから始める人も多いです。

主食は何を食べればいい?

◎ 米(かなり優秀)基本の主食になります。

  • 白米

  • 玄米

  • 雑穀米

  • 酵素玄米

  • おかゆ

など。日本人には取り入れやすく、脂質も少ないため扱いやすい炭水化物です。


十割そば

注意点として、普通の蕎麦は小麦入りが多いです。
完全除去なら「十割そば」を選ぶ必要があります。


◎ オートミール(グルテンフリー表記)

オーツ麦自体は小麦ではありません。
ただし製造工程で小麦混入することがあるため、完全除去では「グルテンフリー認証」付きの物が推奨されます。


◎ 米粉食品

最近はかなり増えています。

  • 米粉パン

  • 米粉麺

  • 米粉パスタ

  • 米粉お好み焼き

ただし注意点として、「米粉使用」でも小麦混合の商品があります。
原材料確認は重要です。


外食

シンプルに焼肉&ステーキです。
ただし、成型肉、加工肉とタレに注意。


意外と落とし穴な食品

  • カレー市販ルーは小麦使用がかなり多いです。

  • ハンバーグ:つなぎにパン粉使用が多いです。

  • ソーセージ・ハム:加工時に小麦使用される場合があります。

  • ドレッシング:小麦入りがあります。

  • 醤油:普通の醤油は麹として小麦使用が一般的です。
    完全除去なら、「大豆・塩・水」のみを原料として造られることが多い「たまり醤油」やグルテンフリー醤油などが必要になります。


まとめ

「グルテンが悪い」という極端な結論に飛びつく必要はありません。
しかし、自分の体に長年続く原因不明の不調がある場合、グルテンとの関連を一つの視点として持っておくことは有意義です。

気になる症状がある方は、自己判断でグルテンを抜く前に、まず消化器内科や専門医に相談し、セリアック病や小麦アレルギーの検査を受けてみることをおすすめします。

(本記事は医療的なアドバイスを目的としたものではありません。特定の疾患がある方や、食事制限を検討されている方は、専門の医師・管理栄養士にご相談ください。)


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